パンセ(みたいなものを目指して)

好きなものはモーツァルト、ブルックナーとポール・マッカートニー、ヘッセ、サッカー。あとは面倒くさいことを考えること

後を引くフランス映画みたい

2009年06月11日 21時31分06秒 | 
やっと読み終えた(?)オルハン・パムク「雪」
ゴールデンウィークに読み始めだから約1ヶ月要した訳だ

文字がページ全体をびっしり覆っていたけれど
それでも最後のページまで行き着いたところをみると
苦労した割には結構楽しんでいたのかもしれない
最近ではミステリー以外でこの厚さの本を読むのは久しぶりだ

それにしてもこの読後感は、後を引く
まるで一時期のフランス映画みたいに
急に変な(悲惨な)結末で、
やり切れなさがなかなか消えない

当初感じたドストエフスキーの悪霊のようなイメージは
いつの間にか消えて、かわりに浮かんだのが
漱石の「それから」

つまりこの本は政治や宗教を扱っているものの
メインとなるのは恋愛
しかし、その割には対象となる女性のキャラクターがイマイチ
わかりにくいのも事実だが

よく言われることだが、男女が別れ話になった時に
未練たらたらなのは男の方

女の方は未来に向けて、済んだことはあっさりと
忘れてしまえるかもしれないが、女の過去を知ってしまい
どうしても嫉妬の気持ちから抜け出せない男の導いた悲劇

そんなことはよくありそうなことだし
そのやりきれない気持ちは男の自分は理解できる
そしてこの男の気持ちの沈んだトーンを
ずっと間接的に表現しているのが
タイトルとなった「雪」の描写

トルコには行ったことがないが
この翻訳物の本を読んだだけでも
日の射さない、薄暗い雪の田舎町の姿が目に浮かぶ

この本の翻訳が上手いのか下手なのかわからないが
少なくとも充分に様々なイメージを浮かべることができたのは
やはり作者の文章力、技術なのだろうか

それにしても、後を引く、どこかやりきれない印象
その強さは残念ながら村上春樹よりも上をいくかもしれない
等と思うのはオルハン・パムクが既にノーベル賞を
受賞したのを知っているからだけではない

確かに欠点はありそうだが
その表現されたものの強さ、真剣さは
今生きている人間に何かを感じさせたり
考えさせたりする力を有り余るほど持っている
と思うのだが、、、

コメント
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