初志貫徹的イメージがある三島が、初めに手掛けたスポーツ、ボクシングを何故止めたのか知りたかったが、鈴木邦男さんの『遺魂』(無双舎)に始めたきっかけを含め出て来る。
銀座のゲイバーで外人の喧嘩を止めたのが安部譲二。「君が今、使った術は何ですか」「ボクシングです」。三島は笹崎ジムを紹介されたそうだが、安部がジムの人間に「あの方は頭で仕事する偉い先生だから、ボクシング教えてもいいけど頭を叩くんじゃないぞ」。しかし加減をされていることに気づいた三島は「僕は不愉快です!」と安部に青筋立てて叫んだそうである。「それは僕が言いました。当たり所が悪いと涎がたれっぱなしになるし、“さしすせそ”も“たちつてと”も言えなくなります。ボクシングで食っていく方じゃないんだから、頭を叩かないよう頼んだんです。何が悪いんですか」。三島は怒って席を蹴立てて帰るが、その後ボディビルに転向する。
それにしても三島関連本を読むと石原慎太郎という人物は、つくづく三島を虐めるのが得意である。初対面では「思ったより小さいですね」。三島が芝居に出れば「足が震えてましたね」。いちいち、一番三島がいわれたくないことをいう。相手の気持ちはどうでもいいから、思ったことは口にだせ、という躾を受けたのであろう。私は弟の方も歌を別にすれば、坊っちゃん臭くて苦手である。
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