ある禅師のエピソードを作品化したいので、資料を集めつつある。しかし。中国の臨済宗の開祖たる臨済義玄が古過ぎてビンと来ないか?であれば、と日本に禅を持ち込んだ日本の開祖栄西ならと思ったら、臨済宗も十四派あり、派が違えば栄西に対する敬意扱いもそれぞれ違う、と知ると、無邪気に作りたい、と手を伸ばすのも躊躇してしまう。ならばとりあえず、差し障りのない所で寒山と拾得の二代目と不動明王の頭を開始している。不動明王と言ってもその表情自体に新味を加える訳でもない。むしろ相変わらずの憤怒の顔していながら、背中の火焔が濡れるのを気にして傍に置いている、というのが可笑しいだろう。その代わり身体は肉々しく作り、滝に濡れて張り付いた衣を生々しくしてみたい。私としてはそれがこのモチーフの作り所である。滝に関しては『虎渓三笑図』用に考えていた手法があったのだが、遠景だったので出番がなかった。それを試したい。火焔はもちろん筆描きにしたい。