昨年の寒山拾得展は長年の友人をも後退りさせた。2000年の、写真の素人なのに古書街に通い詰め挑んだ廃れた技法オイルプリントによる初個展を思い出した。一度書いてしまったし、余計な腹の中を晒すなと私を心配した母は施設にいる。私は素晴らしい作品を制作する事を目指している訳では全くない。単に快楽を貪るためにやっている。なのであの頃の手法や作品が良かった、といくら言われようとも、快楽が味わえなくなれば止める。三島由紀夫が死んでいる所など、と周囲に止められても、あんな私に快楽をもたらすモチーフはなかったし、これ以上私に快楽をもたらす作家はいない、と思えば何十年やって来た作家シリーズも止めるのである。そんな趣旨の物を見ていただくのは失礼という向きもあろうが、それを観て、呆れたり微笑んでもらうのが私の役割、渡世だと信じている。なのでその妨げになることは一切しない。 明日はやはりそんな快楽に幼い頃から取り憑かれ、結果スーパースターになってしまった男が観られる。彼はストイックだ努力だ、などのトンチンカンな常人の分析は無駄である。快楽に陶酔していつも笑っている。