明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



私が参考にした大覚禅師(蘭渓道隆)の肖像画のすぐれた写実性は、宗画の〝観照法”に基づくもので、禅宗興隆期におけるもっともすぐれた彫像の一つ、だそうである。頂相彫刻の最高峰といわれる無学祖元にしても、よりによってまたえらい作品をモチーフにしてしまったものだが、京都より鎌倉が先だし、鎌倉五山の第一位の建長寺と第二位の円覚寺のそれぞれ開山であるから当然といえばそうなのだが、どうせなら完成した頃に知りたいものである。下手に図書館など立ち寄るものではない。 観照法とは何か?仏教用語から転じて主観を交えず冷静に現実を見つめることらしい。これはまさに絵画的写真、ピクトリアリズムを古くさい年寄りのサロン的写真と断じ、写真はカメラという機械を使って冷徹に撮る物、という新即物主義写真作家のセリフのようである。ただカメラという機械を使わない七百数十年前の肖像画には〝主観を交えず冷静になって現実を見つめよう、という念が濃厚に塗り込められている。

 

 



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