明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



ジャズ、ブルース好きが高じて人形制作を始めたが、その頃よく眺めた写真集が長濱治さんの『Hell's Angels -地獄の天使』である。ところが当時の私は、映画や写真を監督や撮影者で観る習慣がなく『ブルータス』の表紙を撮っていただき「次はならず者シリーズだ」なんていっていたのに長濱さん作と気付かないまま。後年、ブルースをテーマの作品を拝見してやはり感銘を受けた。 写真撮影に興味がないはずの私が90年代、一時人形制作を放って技法習得に夢中になったのは、大正期の野島康三の油性絵の具を使用する、ピグメント法による肖像写真であった。オイルプリントの初披露の頃、古典技法を試みる人も多い現在と違い、修験者の術の如き手法に、観る人の目に、明かりは灯り難いものだ、と思っていた。その頃『月刊太陽』の人形特集の撮影にみえたのが、須田一政さんで慌てた。二眼レフで撮っていただいたが、私の知らない私が写っており、写真家というものは、こんなものを撮るのか!と被写体になってビックリした。撮影が終わり、話のついでにオイルプリントをお見せしたら面白がっていただき、個展にもお邪魔し、そのチャレンジ魂に感銘を受けた。陰影のない手法の初個展を前に、須田さんならと数十年ぶりにお知らせすると、体調が悪く、出かけることもないが、面白そうなので伺います、とのメールをいただいたが、間に合わなかった。 番外。実をいうとカメラを持つ男性写真家の男性性みたいな物が苦手で、好きなのは女性写真家が多く、一番はシンディ・シャーマンであった。可愛いらしかったし。



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