第75回、カンヌ国際映画祭「ある視点」部門受賞作。
日本は“高齢化社会”ではなく、すでに“高齢者社会”に突入している。そして、2025年には団塊の
世代が後期高齢者となり、国民の5人に1人が75歳以上となる。少ない子どもたちで多くの高齢者
を支えることになるこの問題を正面から捉えた作品。
75歳以上が自ら生死を選択できる〈プラン75〉が国会で可決し、施行された。
夫と死別し、一人で暮らす角谷ミチ(倍賞千恵子)は78歳。ホテルの客室清掃の仕事で慎ましく
暮らしてきたが、突然、解雇される。職を失い、住む場所も失くしそうになった彼女は、〈プラ
ン75〉の申請を考え始める。
一方、〈プラン75〉の申請窓口で働くヒロム(磯村勇斗)は、的確に業務を遂行し、死を選んだ
高齢者に“その日”までサポートするコールセンターのスタッフ瑤子(河合優実)は、担当となっ
たミチの頼みで会うことに。
そんな時、ヒロムのおじが〈プラン75〉を選択し、手続きにやってくる。そうこうする中で、
ヒロムは“あること”の真実に気づいてしまう。瑤子もまた、このシステムについて疑問を持ち
始めていた。
ミチの同僚清掃スタッフを大方斐紗子、〈プラン75〉の施設で働く男性スタッフを串田和美
とベテランキャストが揃う。
監督・脚本は本作が長編初監督作品となる早川千絵。年齢により命を線引きするという重い
テーマを、繊細なタッチで描いた。
“生きて逝く“ということをどう捉えるか?を突きつけられる。一人でも多くの人に観てほし
いと思う。日本は、いつこういう法案が成立してもおかしくないところまできている。
外国人の介護スタッフが存在ということも日本は直面していることも忘れてはならない。