小日向文世、高橋克実、浅野和之、大谷亮介、平田満という演技巧者の舞台人が
集結した。ローレンス・オリヴィエ賞やトニー賞を受賞し、「21世紀のクリスマ
ス・キャロル」と評されたコナー・マクファーソンの名作。それを栗山民也が演
出しているという興味満載の作品。9年ぶりの再演となる。
台詞量の多さと丁々発止のやり取り、絶妙な間で繰り広げられる秀逸な舞台劇。
アイルランドのダブリン北部。海沿いの古い家に、もう若いとは言えない兄妹が
住んでいる。兄のリチャード(高橋克実)は大酒飲みで、最近は目が不自由にな
っている。その世話のために戻ってきたという弟のシャーキー(平田満)は、本
来酒癖が悪く多くもの物を失ってきたため、今は禁酒中だ。リチャードは陽気で
開放的なため、クリスマス・イヴから友人のアイヴァン(浅野和之)を家に招き、
飲んだくれている。そこに、シャーキーが顔を合わせたくない男であるニッキー
(大谷亮介)がやってきて「クリスマスだから」とカードゲームに誘い、シャー
キーを怒らせる。さらにニッキーはロック・ハート(小日向文世)という男を連
れていた。そのロック・ハートこそが、ニッキーの最も会いたくない男だった。
高橋克実、平田満、浅野和之の三人の酔った演技から舞台は始まる。このキャス
トでの一番年下は高橋克実だが、年長の役だ。もうその入口からおもしろい。台
詞の量も冒頭から膨大である。前半の後半でロック・ハートの小日向文世が登場
し、カードゲームを始めよう…というところで後半に入る。その時の小日向文世
の歩き方と振り向き方に怪しさを感じ、ゾクッとした。
物語は家の地下室のみで、舞台変換はなし。ワンシチュエーションのように進ん
でいく。百戦錬磨のベテランたちの競演を観られることの幸せ。だが、観念的な
表現もあり、重層的。捉え方がいろいろできそう。とりわけ、小日向文世演じる
ロック・ハートの存在。フライヤーの文言に、愛すべきダメおやじたちの“クリス
マス・ファンタジー”とあるので、シャーキーが生み出した存在なのかもしれない。
過去に引き込む人物でありながら、未来へも導いていく存在でもある。
カーテンコールの際、キャスト5人が並んだ姿が圧巻であり、圧倒的な人たち!
平均で70歳になるキャストたち。また、違う舞台でもお元気で!!
(1月28日、サンケイブリーゼにて鑑賞)
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