大震災によって4月の統一地方選挙実施困難な地方自治体の選挙延期を決めた臨時特例法案が3月17日に衆議院本会議でみんなの党を除く与野党の賛成多数で可決、18日に参院で同じくみんなの党を除く与野党の賛成多数で可決、成立した。
この再延期を図る法案提出が見送られたと《被災地の統一選再延期は当面見送りへ 解散絡み野党反発》(asahi.com/2011年5月2日0時31分)が伝えている。
4月30日開催の衆院政治倫理確立・公選法改正特別委員会の理事懇談会で野党側が「次の衆院選まで先延ばしになる」と反対し、合意が得られなかったためだという。
被災地の統一地方選延期を決めた現行特例法は同法の施行日(3月22日)から2カ月~6カ月の範囲内で延期幅を決めると規定。最長6カ月の延長となると、9月22日までの延期となる。
但し復旧に追われる被災自治体が依然として多い現状から片山総務相が4月22日、現行法に従って最長「6カ月延長しても選挙は困難という自治体がある」として再延期を表明。菅政権は、来年5月までか、今年末までの再延期を狙った。
対して野党側が「延期幅が長い。衆院選も延期されかねない」と反発。4月30日開催の与野党協議で議論、6月以降に任期満了を迎える被災自治体の地方選については最長の9月22日までの延期で合意したが、統一選再延期では合意に至らなかった。
記事は次のように結んでいる。〈一方、被災地選出の国会議員からは「結局、被災地の感情を考えると再延期は避けられない」との意見も根強い。そこで30日の与野党協議では、今後の復旧・復興状況によっては再延期も検討する、との付帯決議を行う方向で調整をすることになった。〉――
付帯決議にしてもどう解釈し、実行するかは与野党で利害損得が異なる以上、立場の違いを見せるにことになるに違いない。
6月以降任期満了の被災自治体地方選は9月22日までの延期ということなら、現行法と何ら変わらない。要するに支持率が超低空飛行の菅内閣としては可能な限り先延ばしして失点を防いで余分な雑音を遮断し、そうすることで求心力を保ち、可能な限りの政権延命を謀りたい。
対する自公等の野党は地方選で菅内閣低支持率をチャンスとして民主党を敗北に持っていくことで菅内閣のなお一層の弱体化を図り、延命を阻止したい思惑があり、この与野党の思惑の違いが、結局は利害損得の違いとなるのだが、合意のすれ違いを生じせしめたそもそもの原因といったところなのだろう。
いくら付帯決議をつけたからと言っても、利害損得とは別にいつまでも延期が許されるわけではない。地方選と言えども内閣支持率が反映する以上、政権選択に向けた国民の中間的な意志表示となり得るからだ。
勿論、政権党が統一選を敗北しても、次ぎの国政までに支持率を回復、国政に勝利して政権基盤を強化することもあり得る。だが、政治に対するそのときどきの国民の意志表示の機会として、あるいは評価の機会として地方選は欠かせない対象である以上、実施の条件が整い次第可能な限り早期に実施すべきであろう。
特に菅内閣の震災対応・原発事故対応に対する世論調査での評価はかなり酷い水準に達していて、この評価が影響した4月の統一戦前後半戦の民主党の敗北につなっがたはずだが、菅仮免首相自身がこのことを認めていないことも延期状態にある被災地域の地方選の早期実施の理由となり得る。
なぜなら被災地域の選挙結果によって菅仮免の震災対応・原発事故対応が影響しているか否かの答が明確に出るからだ。このことはいくら面の皮の厚い、鉄面皮な菅仮免といえども否定はできまい。菅政治の実態、菅仮免の指導力の実態に関わる毀誉褒貶いずれかを知らしめることになるだろう。
一度ブログに取上げたが、菅仮免が地方選の民主党敗北は震災対応・原発事故対応の拙劣さ・不備が影響した結果ではないと否定した4月25日の参院決算委員会での答弁を岡田広自民党議員の追及の一部と共に再度取上げてみる。
岡田広自民党議員「統一地方選挙の前半戦、後半戦が終了いたしました。衆議院の愛知補選でも、結果が出ました。ま、結果はご承知のとおりであります。特に統一地方選につきましては、、震災、対応が、今回の選挙の結果に反映をしたと、私はそういうふうに考えております」
菅仮免「シー、先ず、ウー…、ウー…、3月、11日の、この決算委員会の、おー、ときに、イー、大震災が発生して、えー…、決算委員が、あー、迅速に、休憩を、おー、宣して、シ、その後に対応に、イ、当たる、ことができたことについて、シ、その扱いを含めて、えー、改めてお礼を申し上げたいと思います。
シー、それから、ア、40日、イー、あまり経過、をいたしました。シー、また私は、あー、今回の、大震災、えー…震災、津波、と同時に、エ、発生した、福島原子力発電所事故に関して、シー、えー、えー、全力を挙げて、えー、取り組んでまいりました。シー、えー…、先ずは救命ということで、えー、特に自衛隊には当日に、えー…、しっかりと、おー、対応するようにということを申し上げ、また原子力発電所についても対応をしてまいりました。
シー今、あー…、岡田委員の方から、シー、えー…、この間のいくつかの選挙の結果について、どう考えるかというご質問をいただきました。シー、確かに、イー、それぞれ厳しい結果、あー、に、えー、なっていて、シー、そのことは真摯に受け止めなければならないと、思っております。
ただ、私は、この大震災に対する対応について、シー、えー…、そのことが、あー、今回の、おー、結果に、イー…、直接に、大きく響いたという、いわ、いわゆる、うー、選挙ですから、色んな要素がありますけれども、少なくとも震災対応については、私は、ア、政府を挙げて、やるべきことは、しっかりやってきていると、そのように、イー…、考えておりまして、ま、そういう意味で、えー、今回の結果は、結果として、真摯に受け止めなければなりませんけども、震災の、えー、復旧・復興、そして原子力、発電所事故の、おー…何としても、これを抑えるということに、今後も全力を挙げて取り組んでまいりたいと、このように考えております」
この苦し紛れな言葉遣いから相当に強弁を働かせていることが理解できる。最後の「今後も全力を挙げて取り組んでまいりたい」は、「政府を挙げて、やるべきことは、しっかりやってきている」と言っていることに反して実際にはやるべきことをやってきていない空白を埋めようとする意識も働いた今後の取組みの強調ということであろう。
菅仮免のこの「政府を挙げてやるべきことはしっかりやってきている」として統一選が震災対応・原発事故対応が影響した結果ではないとする論理は国民はそうは見ていない世論調査の否定でもある。このことは「一生懸命やっているのに、支持率が上がらないのは分からない」と言っていることと相互対応する世論調査の否定であろう。
菅首相はさらに一歩踏み込む、より積極的評価を自らに下している。《菅首相 自画自賛…震災対応「一定の評価を頂いている」》(スポーツニッポン/2011年4月19日 06:00)
4月18日の参院予算委員会。震災や原発事故への政府対応について。
菅仮免「100%とは言わないが、国民にも政府全体としては一定の評価を頂いている」
「100%とは言わないが」とは、90%前後か、100%に近い90%以上を意味するはずだ。相当強気であり、自信に満ちた「一定の評価」としている。この自己評価にしても、世論調査の否定なくして成り立たない論理となる。
枝野官房長官も菅仮免に歩調を合わせてなのかどうか分からないが、世論調査を否定している。《枝野官房長官の会見全文〈25日〉》(asahi.com/2011年4月25日13時20分)
記者「フジテレビと産経新聞の世論調査で、原発事故への政府の対応が評価できないとの答えが75%を超え、復興、震災対応が評価できないとの答えも60%を超えている。何が国民から評価されていないと思うか」
枝野官房長官「国政を運営する上では、国民世論、声は大変重要だと思っているし、個々の世論調査はそれを推し量る一つの大きな要素だとは思うが、世論調査が世論を正確に反映できるものとは思っていないので、個別の世論調査のことについてはお答えしないというのは従来から申しあげている通りだ。
その上で、多くの被災者の皆さん、原発事故で避難、影響を受けられている皆さん、たくさんいる中で、厳しい声があるのは、ある意味では当然だと思う。厳しい声を踏まえて、一刻も早く、こうした皆さんが平常の生活に戻れるよう最大限努力してまいりたい」――
《枝野官房長官の会見全文〈27日午後〉》(asahi.com/2011年4月27日18時47分)
記者「最近の報道各社の世論調査などで、長官が総理候補の上位に名前が挙がっていることについてどう受け止めているか」
枝野官房長官「「先日も世論調査についてお尋ねの時に答えたが、国民の皆さんの世論というのは国政を進めていくうえで大変重要なことであると思っている。世論調査もその世論というものがどこにあるかということを判断、推測する上での大きな要素であるのは間違いないと思っている。ただ、個別の一個一個の世論調査の具体的な数字が世論そのものとイコールであるかというと、そうではないと思っているので、個別の世論調査について一つ一つコメントすることは避けたい」 ――
4月25日の発言。「国政を運営する上では、国民世論、声は大変重要だと思っているし、個々の世論調査はそれを推し量る一つの大きな要素だとは思うが、世論調査が世論を正確に反映できるものとは思っていない」
4月27日の発言。「国民の皆さんの世論というのは国政を進めていくうえで大変重要」で、「世論調査もその世論というものがどこにあるかということを判断、推測する上での大きな要素」だが、「個別の一個一個の世論調査の具体的な数字が世論そのものとイコールであるかというと、そうではないと思っている」
いずれも後段の言葉で前段の言葉を否定している。いわば詭弁としかなっていない。
「世論調査が世論を正確に反映」していないなら、国民の声を「推し量る一つの大きな要素」とはなり得ないし、当然、国政運営に於ける重要な要素ともなり得ないことになる。
「個別の一個一個の世論調査の具体的な数字が世論そのものとイコール」でないなら、「国政を進めていくうえで大変重要」な因子とはなり得ないし、と同時に世論調査の結果が「世論というものがどこにあるかということを判断、推測する」必要事項ともなり得ないことになる。
詭弁家躍如の枝野の例の如しの論理となっている。
被災地域の国民が菅内閣の震災対応・原発事故対応にどういう評価を下しているか、その実態を明確な答で知るためにも、あるいは菅内閣に知らしめるためにも延期中の地方選を早急に行う必要がある。だが、避難所生活を余儀なくされている被災者はまだ宮城・岩手・福島の3県を中心に約12万7000人(4月30日現在・NHK)に上っている。各自治体の職員がボランティアの助けを借りて職員の人手不足、時間不足を補いつつ、投票箱を各避難所に持ち込む移動投票所方式で行うこととし、被災者の名前と住所を聞いてパソコンで役所の住民台帳と照らし合わせるか、運転免許書のようなもので本人証明ができたなら、その場で投票用紙に書き込んでもらうことにすれば選挙は実施できないわけではないし、立候補者は各避難所にまわって政策を訴えることにすれば選挙運動も可能とすることができないわけではない。
だが、菅仮免は必要とする仮設住宅をすべて完成させ、希望する全員を入居させると力強く確約したを8月のお盆以降を何よりの選挙投票日とすることができるはずだ。
《首相“お盆までに仮設住宅入居”》(NHK/2011年5月1日 12時0分)
5月1日の参議院予算委員会。
菅仮免「8月中旬のお盆までには、すべての希望者が入れるよう、私の政権の責任、内閣の責任として実行する。まだ、見通しが決まっていないところがあれば、急がせて必ずやらせる」
プライバシーも守れない、ストレスが溜まるばかりの窮屈な避難所生活を余儀なくされている被災者にとって何とも頼もしい、この上ない希望と力を与える言葉となっている。
8月中旬のお盆までに全員が入居して半月も置けば、最も遅い入居者にしても仮設住宅生活も一定の落ち着きを確保できるはずだ。9月に入って早々に延期していた地方選はできる。選挙の日時を今から決めることによって菅仮免の約束の尻を叩いて確実に実現させる制約ともすることができるメリットともなる。
9月初旬投票日は臨時特措法の最長9月22日よりも前倒しとなる。
選挙結果が被災地域の世論を正真正銘示すことになる。その世論こそが菅内閣の震災対応・原発事故対応に対してシロクロ決着をつける審判となる。果して菅仮免や枝野官房長官の世論に関する発言を強弁や詭弁とするか、正論とするか。
但し正論とした場合、世論調査で示す国民の声は選挙時の世論と違って無意味化する。勿論、世論調査自体を無意味とすることになるが、常に世論調査に現れた支持傾向が如何なる選挙に於いても常に反映されてきたはずだ。
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