菅仮免首相が東電海水注入国会答弁でウソをついていたことから分かるその必要性

2011-05-26 13:30:30 | Weblog



 東電の海水注入一時中断問題で昨5月25日(2011年)新たな事実が判明した。菅仮免は5月23日(2011年)の衆院震災復興特別委員会で谷垣禎一自民党総裁の質問に対して次のように答弁していた。

 菅仮免「注入のときも、それをやめる時点も含めて私共には直接には報告上がっておりませんでした。・・・報告が上がっていないものを、やめろとか、やめるなと言うはずがありません」

 菅仮免「注水を止めたと言うような一部報道があるけれども、少なくとも私が、このメンバーが止めたということは全くありません」

 但し東電から海水注入準備(開始ではない)の前以ての報告があったいう事実を原子力安全・保安院も政府も昨日になって認めた。

 この事実の判明は菅仮免が国会答弁では触れていなかったという事実の判明でもある。もし触れていたなら、2日後ではなく、その時点で判明した事実となる。当然のことだが、意図的に触れないようにしていたとしたら、ウソをついたということになる。

 《「準備整いしだい海水注入」東電、ファックスで国に連絡》asahi.com/2011年5月25日15時53分)

 〈経済産業省原子力安全・保安院は25日、「準備が整いしだい海水を注入する予定」という東電からの連絡を、水素爆発直前の3月12日午後3時20分にファクスで受け取っていたことを明らかにした。 〉

 但し、西山英彦審議官によると、その報告はファクス右下の「参考情報の欄」に書いてあったから、「主たる連絡ではない」し、受け取った保安院の担当者がこれを読んだかどうかについては確認できないとしているという。

 西山審議官「たくさんの紙がくるので、そこに書かれていただけでは、何か(担当者の対応などが)起こるとは考えにくい」

 保安院がその連絡を認識したかどうかとファクスを受け取った16分後に起きた水素爆発に関しては――

 西山審議官「影響を与えたとは思えない」

 届いた海水注入準備報告のファクスを認識したかどうかが届いた16分後の水素爆発と影響関係がないのは素人でも分かる当たり前のことを言っているに過ぎないが、そういった問題ではない。

 原子炉冷却のための注水は原子炉を守るための絶対必要事項として行っていたはずである。菅仮免も谷垣総裁との質疑応答で、「真水の注水が行われた。真水がなくなった場合には海水を入れるしかないわけだから、そういう必要性は十分に認識していた」と答弁しているし、班目原子力安全委員会委員長も同じ国会の場で、最切迫した絶対必要事項と看做して、「私の方からですね、この6時の会合よりもずうーっと前からですね、格納容器だけは守ってください。そのためには炉心に水を入れることが必要です。真水でないんだったら、海水で結構です。とにかく水を入れることだけは続けてくださいということはずーっと申し上げていた」と答弁している。

 いわば原子炉は切迫した緊急事態にあった。当然、原子力安全・保安院はスタッフの誰であろうと、役目上の責任から、「参考情報の欄」に書いてあろうとなかろうと、特に原子炉事故に遭遇している当事者である東電からのすべての報告に洩らすことなく目を通さなければならなかったはずだ。

 また東電が真水による注水を行っていたのは保安院も認識していたはずだ。それを海水に変えた場合、塩分による機器の腐食等を招き、廃炉につながることは早くからマスコミが伝えていたことだから、原子力問題の専門機関として見過ごしていい海水への転換ではなかったはずだ。

 16分後の水素爆発に影響はなかったとしても、約4時間後の19時25分の事故を拡大させたかもしれない海水注入中断につながった可能性は否定できない。

 西山審議官の「参考情報の欄」に書いてあるから、「主たる連絡ではない」とする認識は無責任極まりないとしか言いようがない。例え「主たる欄」に記入の連絡であったとしても、その情報を読み取る側の読み取りようによっては参考程度の連絡と判断する場合もあり、逆に「参考情報の欄」に書かれていたとしても、重要な連絡と読み取る場合もあるはずである。

 「参考情報の欄」に書いてあるから、参考程度の情報に過ぎないと機械的に判断するのは固定観念に囚われた、あまりにも杓子定規に過ぎる認識能力の持主でしかない。
 
 ここに改めて3月12日の1号機に於ける海水注入に関わる出来事を時系列で挙げてみる。

「海水注入を巡る経緯」(3月12日 1号機)

 15:20         原子力安全・保安院、東電から海水注入準備のファクスを受け取る。
 15:36         水素爆発
 18:00         菅首相、海水注入を指示(のちに指示を出していないと否定)

       (以下、谷垣総裁使用のパネルから)
 18:00~18:20頃   菅総理、官邸に於いて打ち合わせ(海水注入による再臨界の危険性回避のた
               めの協議)
 19:04         東電、海水注入(試験注水)
 19:25         東電、海水注入中断
 19:55         菅総理、海水注入指示
 20:05         海江田経産相、海水注入命令
 20:20         東電、海水注入

 上記「asahi.com」と同内容を伝えている次ぎの記事を見てみる。 《福島第1原発:東電、海水注入は事前に通告 爆発16分前》毎日jp/2011年5月25日 14時15分)

 海水注入に関するファクス内容「今後準備が整い次第、消火系にて海水を注入する予定」

 ファクスは原子力災害対策特別措置法(原災法)に基づく通報連絡で、福島第1原発から保安院や各自治体に送付。

 東電内では清水正孝社長が3月12日正午頃、社内で海水注入の準備を進めていることを確認。同午後2時50分頃、海水注入を了解。

 主たる報告は、放射性物質を含む蒸気を放出する「ベント」報告。

 西山審議官「付随的な連絡だった。(内容を把握していたかは)確認できていない。(海水注入は)紙の隅に書いてあった。誰がどこまで認識してどう行動したかは確認できていない。水素爆発への影響はない」

 〈保安院はこれまで東電が海水注入したことを知らされていなかったとしてきた。〉

 西山審議官「実際に海水注入しているということでないので、矛盾しない」

 報告はあくまでも海水注入の準備を伝えたもので、海水注入の実際の実施を伝える報告ではないから、知らされていなかったとしても矛盾しないということなのだろうか。

 準備は実施を前提とする。報告があろうとなかろうと、実施は準備の次の段階として、少なくとも予定して待ち構えなければならない。ファクス内容にしても、「今後準備が整い次第、消火系にて海水を注入する予定」となってことからも分かるように計画上は実施を予定事項としている。予定が決行されないとなったとしても、その報告を待つだけということなのだろうか。東電を監督・指導する立場にある以上、準備から実施、さらに効果の程度に向けて推移を見守る姿勢を責任としなければならなかったはずだ。

 枝野詭弁家官房長官も東電の海水注入準備報告を記者会見で認めた。《枝野官房長官の会見全文〈午前11時〉》asahi.com/2011年5月25日12時34分)

 記者「東京電力が3月12日午後3時20分ごろ、経済産業省原子力安全・保安院に対して海水注入を事前に報告したという報道があるが、これについて政府はどう認識しているか」

 枝野詭弁家「一部報道で発言が矛盾しているという風に報道されているが、全く矛盾していない。そもそも夕方6時の打ち合わせにおいても、東京電力から、海水注入の準備をしているが、もうしばらく時間がかかるという報告を受けている。それに先立って、保安院に対して、そのような趣旨の報告があったということは報告を受けている」

 記者「それは、今までの話と矛盾しないか」

 枝野詭弁家「だって6時の打ち合わせの時に海水注入の準備進めているがまだ時間がかかるということが、東京電力からその打ち合わせの場で報告を受けている。それに先だって、準備ができたら海水注入したいという報告があったのは全く矛盾しない」

 記者「首相は海水注入を知らなかったと」

 枝野詭弁家「海水注入が実施されたことについて報告がなかった。実際に水を入れ始めましたということの報告は全く聞いていない」――

 菅仮免は5月23日の国会で答弁している。

 菅仮免「注入のときも、それをやめる時点も含めて私共には直接には報告上がっておりませんでした。・・・報告が上がっていないものを、やめろとか、やめるなと言うはずがありません」

 枝野詭弁家が言っている「海水注入の準備進めているがまだ時間がかかるということが、東京電力からその打ち合わせの場で報告を受けている」という点については――
 
 菅仮免「現場(官邸)に私共と一緒にいた東電関係者に海水注入を準備しても1時間半程度はかかるという指摘があった」

 東電からの海水注入準備の前以ての報告について菅仮免が国会答弁では触れていなかったということを前提に菅仮免の前後二つの答弁を整理すると、菅仮免と共に官邸に詰めていた東電関係者の「海水注入を準備しても1時間半程度はかかるという指摘があった」は、上記「毎日jp」記事が伝えている15時20分のファクス内容が「今後準備が整い次第、消火系にて海水を注入する予定」とあるように準備を15時20分近辺以降を起点としていることに反することになるが、反するゆえに官邸に詰めていた東電関係者は原発の現場と連絡を取っていなければできなかった「海水注入を準備しても1時間半程度はかかる」の指摘だったはずであり、そういった指摘でなかればならない。

 東電の準備がファクスを送った15時20分以降を予定していながら、遅れに遅れたということなのだろう。

 一昨日に書いたブログ、《菅仮免の5月23日国会答弁の海水注入一時中断指示とメルトダウン認識両否定に見る数々の矛盾とウソ》では、頭が蛍光灯にできているから気づかなかったが、東電関係者の指摘の部分とそれに続けた発言をまとめて見ると、次のようになる。

 菅仮免「現場(官邸)に私共と一緒にいた東電関係者に海水注入を準備しても1時間半程度はかかるという指摘があったので、じゃあ、色んな可能性を検討してくださいと。当然リスクを対象化することは重要であるから、検討してくださいと言ったので、注水の前から検討をはじめていることからして、それに対して注水を止めたと言うような一部報道があるけれども、少なくとも私が、このメンバーが止めたということは全くありません」

 東電の海水注入準備開始をこれからのこととしているからこそ、準備にかかるとしている1時間半の時間を見て、「じゃあ、色んな可能性を検討してください」と言うことができた。 

 官邸に詰めていた東電関係者が原発の現場と連絡を取り合って菅仮免に示すことができた「海水注入を準備しても1時間半程度はかかる」の指摘であるなら、当然、東電の方から開始の報告がなくても、少なくとも開始を念頭に置いていなければならない。

 「海水注入を準備しても1時間半程度はかかる」の準備時間の1時間半は一旦は菅仮免が海水注入を指示したとされ、のちに指示は出していないと否定した、打ち合わせ開始の時間でもある18時から東電が海水注入を実際に開始した19時04分までの時間に20分ほど早まっているが、ほぼ相当する。

 いわば枝野の「準備ができたら海水注入したいという報告があった」の証言を待つまでもなく、菅仮免自体が東電から海水注入準備の報告があったことを承知していて、それを前提に東電関係者で連絡を取らせて得た情報である準備時間の1時間半の余裕を予定してリスク対象化の協議に入ったということであろう。

 枝野の証言と併せて菅仮免が東電から海水注入準備の報告があったことを承知していたと断ぜざるを得ない以上、海水注入の指示を出す準備をしていたはずだ。

 3月12日18時「菅首相 海水注入指示」は政府の菅仮免本部長原子力災害対策本部発表資料に午後6時に「真水処理をあきらめ、海水を使え」とする首相指示の記述があると、《東日本大震災:福島第1原発事故 海水注入中断「東電独自の判断」 影響検証が焦点に》毎日jp/2011年5月22日)に書いてある。

 5月21日の政府・東電統合対策室の記者会見。

 細野補佐官は注入開始も中断も東電の判断で、官邸は最近まで知らなかったと発表。

 細野首相補佐官「当時(3月12日)は現地と連絡を取るのにも時間がかかった。政府内では、午後7時半ごろまでは注水は困難という前提で議論しており、(東電で)7時4分に海水注入が行われていたことも後日知った。(18時の首相指示に関して)正確ではない。午後6時(18時)の時点では(海江田万里)経済産業相が東電に海水注入の準備を進めるよう指示した』というのが事実だ」

 菅仮免本部長原子力災害対策本部発表資料に記述してある(消してあるなら、「あった」の過去形となる。)午後6時「真水処理をあきらめ、海水を使え」とする菅仮免指示を「海江田指示」に説明の上だけのことなのか、変更(改竄?)している。

 例え海江田経産相が指示を出した海水注入指示であったとしても、海江田指示と同時にそれを受けて、例え東電からの海水注入準備の報告がなくても東電が海水注入実施に向けてその準備に入っていることを官邸は承知し、予定していなければならない。

 断るまでもなく準備に入らなければ、海江田指示に反することになるからだ。

 だが、東電は菅仮免が言っていることだが、「注入のときも、それをやめる時点も含めて私共には直接には報告を上」げずに、あるいは枝野が言っていることだが、「海水注入が実施されたことについて報告がなかった。実際に水を入れ始めましたということの報告は全く聞いていない」ままに東電は19時04分に海水注入を開始した。

 ここで残る疑問は、なぜ菅仮免は国会答弁で東電の準備報告を隠していたのかである。

 考え得ることは隠すことによって菅仮免の「注入のときも、それをやめる時点も含めて私共には直接には報告上がっておりませんでした」が正当性を得るということであろう。

 打ち合わせの開始時間の18時以降、東電関係者同士で連絡を取り合い、「海水注入を準備しても1時間半程度はかかる」と情報を伝えた段階で東電の現場では準備から実施まで連続していることとして1時間半以内の注入開始をも伝えたとしていたらどうだろうか。

 このことを打ち消すには菅仮免が「注入のときも、それをやめる時点も含めて私共には直接には報告上がっておりませんでした」を強調することによって可能となる。

 準備から実施まで連続して行った場合の不都合はリスクの対象化として「再臨界の危険性」を言い立てはしたが、班目委員長が立場上学習を義務としていなければならない既知の知識であったはずであるし、もし海水注入を断念させなければならない「再臨界の危険性」なら、東電から準備報告があった時間以降早い段階で官邸から東電に伝えなければならない情報のはずだ。

 例え班目委員長の「再臨界の可能性はゼロではないと言ったのは、事実上ゼロという意味だ」が後付けの釈明だったとしても、まさか海水注入準備の1時間半もかけなければ導き出すことができない結論と言うわけではあるまい。

 だが、1時間から1時間半前後もかけて結論を出すことができなかった。東電は19時04分開始の21分後の19時25分に注入を中断しているが、その理由を「官邸が『海水を注入すると再臨界の危険がある』としたので政府の判断を待った」(MSN産経)としている。
 
 結論を出すのが遅いばかりか、官邸から、少なくとも中断を示唆する報告があったことになる。だが、菅仮免は「報告が上がっていないものを、やめろとか、やめるなと言うはずがありません」と自らの中断指示を否定している。

 だとしても、東電としては機械上の障害が生じたわけではないのだから、指示もないのに中断する理由は持たない。

 とすると、《震災翌日の原子炉海水注入 首相の一言で1時間中断》MSN産経/2011.5.21 00:42)が伝えているように、東電が現場の判断で、いわば菅仮免の承諾なしに19時04分に海水注入を開始したことに対して、これを聞いた菅仮免が激怒したとの情報が入ったため、首相の意向を受けてから判断すべきだとして中断したというのが俄かに信憑性を帯びてくる。

 首相周辺の誰かが菅仮免の激怒をご注進に及んだと言うわけである。それが中断を示唆する菅仮免からの間接的な報告となった。

 菅仮免本人が中断を直接的に指示したわけではない。だが、激怒が中断を誘導した。それを隠す必要性からの国会答弁の直接的・間接的なウソということでなければ、連続して行うべき東電の海水注入の一時中断は説明できない。


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