五百旗頭復興会議議長の復旧・復興は「今の首相がバカかどうかという問題」ではないとする幼稚な認識能力

2011-05-15 11:11:22 | Weblog

 

 昨日ウエブ記事の中に面白い記事と出会った。

 5月13日午後、東京・内幸町の日本記者クラブで行った講演で飛び出した発言だそうだ。発言の主は復興構想会議の五百旗頭真議長。例の復興構想会議の議長に就くや否や、いきなり復興財源確保には「震災復興税」の創設が必要だと言い出した人物である。「会議の中で議論を深めていただきたい」とは言ったものの、記者会見で言うことではなく、会議の中で提言し、増税以外の財源確保策と議論を尽くしていく中で議論の過程をマスコミを通じて国民に知らせつつ構想会議として一つの方向性を出していくという手続きを取ることが公平性確保の賢明方法であったはずだ。

 だが、そういった賢明さは備えていなかった。

 4月13日の復興構想会議初会合で、「16年前の(阪神・淡路大震災の)被災がかわいく思えるほどの、すさまじい震災だ。空襲で遺体がなくなることはなかったが、今回は津波で多くの方が連れ去られた」(MSN産経)と今回の被害と比較した発言を当ブログ記事――《五百旗頭復興構想会議議長の人間を見ない阪神大震災と東北関東震災との比較 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之で取上げたが、認識能力を欠いているからなのか、何となく人間味を感じさせない人間だとは思っていた。

 五百旗頭議長の発言を伝えた記事は、《五百旗頭氏「首相がバカかどうかではない」》MSN産経/2011.5.13 18:41)

 〈歴史家の視点を持って被災地復興に取り組む考えを強調した。〉と記事は書いている。その上で応仁の乱(1467年)や戦国時代を振り返って、次のように発言したそうだ。

 五百旗頭「国中が、血で血を洗う争乱で乱れに乱れた。今の首相がバカかどうかという問題のレベルではなかった」

 記事は、〈菅直人首相の資質を問うべきではないとの認識を示した。〉発言だとしているが、具体的にどういった発言だったのか詳しく伝える記事、もしくは動画がないかとインターネット上を探したが、あいにく見つからなかった。

 産経新聞系の「SankeiBiz」が同じく日本記者クラブの講演を取り上げているが、主として経済問題を扱うマスメディアらしく、その方向の視点からの報道となっている。 《増税論議は不可欠 復興財源で五百旗頭氏》SankeiBiz/2011.5.13 18:20)

 五百旗頭(復興財源について)「借金をさらに上積みすると、財政的な『レベル7』への引き金になるのではないか」

 何が何でも増税でなければ国の経営が成り立たなくなるとする主張は一つの考えではあっても、また理解しやすい表現として用いた言葉ではあっても、増税なしによるなお一層の危機的財政状況への予想される進展を国際原子力事象評価尺度で最悪のレベル7(深刻な事故)で比較するのは、実際にレベル7(深刻な事故)を受けて放射能避難をしている被災者にはいい気持がしないのではないのか。

 こういったことにも認識能力が満足に働いていない様子を否応もなしに見てしまう。

 五百旗頭「外国人の永住を含め人材を吸引することが大事だ」

 これは農漁業再生のための外国人労働者受け入れを課題とした発言だそうだ。

 これ以外には、〈復興会議が6月末に纏める第1次提言では、地域限定で規制緩和を進める「特区」構想の具体像や、国による被災した土地の買い上げ、住民の移住支援策を盛り込むと表明。農漁業を主力産業とする地域では過疎化問題に取り組む必要性を指摘し〉たという。

 そして最後に上記「MSN産経」と同じ内容の発言を伝えている。野党の復興策批判と首相退陣の動きを批判する趣旨の発言だそうだ。

 五百旗頭「政治には制度をチェックする反対派が必要だが、国難の時には政局、政略を一時棚上げしてでも協力しなければならない。今の首相がばかかどうかという問題ではない

 民主党内にも、「党内で足を引っ張り合っているときではない。一致協力して首相を支えるべきだ」とか、「今こそ挙党一致が必要だ」といった発言が時折持ち上がるが、実質的には協力とか挙党一致といった行動の在り方は求めて得るべき人事上の秩序ではない。

 一見、求めて得られた協力というのは基本的には求められた者をして協力をしてもいいという動機付けが必要となる。それが高額報酬の約束であったり、役職の提供であったりする場合もあるが、そういった協力関係は役職や報酬に惹きつけられて集まった人間相手の能力発揮となるから、協力が絆まで深まる成果は期待しにくい。

 協力関係に於ける欠かすことができない要素は何よりも指導者の指導者としての資質であろう。指導者としての資質とは優れた指導力を言う。求めて得られた協力の形式を取ったとしても、実質的には指導者の優れた指導力が人を惹きつけた協力関係であるはずだ。

 優れた指導力が軸となって、そこに求心力が働き、否応もなしに一致協力、あるいは挙党態勢の絆が築かれていく。

 いわば確かな協力関係とか挙党一致とかは指導者の資質が常に問題となる。もし指導力を欠く指導者なら、協力を求めていくら得られたとしても、たいした協力関係は築き得ない。

 当然、「今の首相がバカかどうか」は重要な問題点となる。

 だが、五百旗頭は「今の首相がバカかどうか」は協力関係に於ける要素としては必要ない能力だとし、そのような能力を抜きに協力は求めて得ることができるものとする認識能力を示している。

 前者の「MSN産経」記事が伝えている五百旗頭の、「国中が、血で血を洗う争乱で乱れに乱れた。今の首相がバカかどうかという問題のレベルではなかった」が正確にどうよな文脈のもと発言したのかはっきりとは分からないが、記事が解説する、〈菅直人首相の資質を問うべきではないとの認識を示した。〉から悪い頭で察するに、今回の被災地の惨状は応仁の乱や戦国時代の惨状にも等しい最悪の状況にあり、「今の首相がバカかどうかという問題」を超えている。そういった問題を抜きに一致協力して復旧・復興の当たらなければならないといった文脈を取ったと思う。

 後者の「SankeiBiz」の発言は簡単な解説で済む。「政治には制度をチェックする反対派が必要だが、国難の時には政局、政略を一時棚上げしてでも協力しなければならない。今の首相がばかかどうかという問題ではない」は、国難の現在問われていることは「今の首相がばかかどうかという問題」ではなく、「政局、政略を一時棚上げして」反対派も賛成派も一致協力すべきだという趣旨であろう。

 応仁の乱も戦国時代も人間営為のなせる業として歴史上現出した。地震は人間営為と関係ない自然の営為であり、自然現象である。

 だが、肝心要の復旧・復興は人間営為そのものによって成し遂げられる。指導者の「今の首相がバカかどうかという問題」――指導力のあるなしが諸に影響していく。当然、「今の首相がばかかどうか」という指導者としての資質は問うべき重要問題となるはずである。

 提言を最終的に評価し、実行を指示するのは指導者なのである。指導者が指導力を欠いていたのでは成せることも成せないことになる。

 大体が現在の被災地の惨状を応仁の乱や戦国時代の惨状と同等だとするために、あるいは国難に於ける一致協力を求める必要性から、「今の首相がバカかどうか」は小さな問題に過ぎないとすること自体の認識能力を疑う。

 枝野詭弁家官房長官が4月11日の記者会見で五百旗頭の復興懐疑議長就任について次のように述べている。《枝野官房長官の会見全文〈11日午後4時10分〉》asahi.com/2011年4月11日21時41分)

 枝野「議長は五百旗頭真さんにお願いする。ご承知の通り、我が国を代表する政治学者であり、また、阪神淡路大震災の復興を後押しし、現在も『ひょうご震災記念21世紀研究機構』副理事長として21世紀の新しい街づくりなどの研究活動をリードされている。こうした経験を生かしてぜひに、とお願いしたところだ。また、同じく阪神淡路大震災の復興に尽くされた世界的な建築家である安藤忠雄さん、政治学者で関東大震災、阪神淡路大震災からの復興の過程に関する研究もなされている御厨貴さんに議長の補佐をお願いすることとした」

 「我が国を代表する政治学者であり、また、阪神淡路大震災の復興を後押しし、現在も『ひょうご震災記念21世紀研究機構』副理事長として21世紀の新しい街づくりなどの研究活動をリードされている」かどうか知らないが、認識能力に幼稚さしか感じない。

 4月23日放送のNHKスペシャル「東日本大震災『被災地は訴える~復興への青写真」で、出演した五百旗頭は次のような発言を行っている。

 司会者の「復興会議の提言が具体的に実行されない懸念がありますが」との問いに対して――

  五百旗頭「今日も会議があって、3人の被災地の県知事の話、それからその他の委員の話を、3時間半に亘って、熱い議論があったんですが、驚くべきことに1回目のみならず、今日の2回目の、総理以下の政府幹部がずうっと動くことなく張り付いて聞いてらっしゃるんですね。

 これはやっぱりしっかり受け止めてやるという意志がなければね、こういうことはあり得ないと思うんですね。私はどういう形かっていうのはまだ検討中だと思いますが、必ず受け止めて、全力を尽くしてくれるものと思っています」――

 熱心に聞く能力が指導力に結びつく保証とは必ずしもならない。指導力の欠如を補うために一生懸命聞く努力を払う場合もある。

 司会者は復興会議の提言が具体的に実行されない懸念の存在を質した。懸念の具体的な払拭を以って答えるべきを、議論を聞く姿勢の熱心さを根拠に「必ず受け止めて、全力を尽くしてくれるものと思っています」と期待感に代えて済ましている。

 この認識能力にしても幼稚としか言いようがない。

 「具体的に実行せざるを得ないような提言を示します。誰もが飛びつく提言です。実行せざるを得ないでしょう」と言うべきだったろう。

 提言の内容とそれを実行する際の指導力が具体的な実行実現の何よりの保証となるはずである。



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