一昨日の5月19日(2011年)に福山哲郎官房副長官が記者会見。菅仮免が福島第1原発視察直前の3月12日午前1時頃、放射性物質の飛散状況を予測する「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」の試算に基づく予測図がファクスで首相官邸に届けられていたが、菅仮免の許には上がってこなかったと発言した。《首相視察前、放射性物質の飛散予測図 福山官房副長官》(日経電子版/2011/5/20 1:01)
この福山と言う男、20110年11月13日日ロ首脳会談で菅仮免がメドベージェフ大統領に「北方四島は歴史的に我が国固有の領土である」と常套句を告げたのに対して、「大統領は、領土問題はロシアにとっても極めて神経質な問題だと述べるにとどめた」と、さも露骨にロシア領土だと主張しなかったような情報操作と情報隠蔽を謀った男である。
だが、情報操作も情報隠蔽も2日後の11月15日のNHK番組までの命を保ったに過ぎなかった。
福山官房副長官「大統領は『自分が北方領土に行くのが悪いことなのか。当然のことだ』という言い方をした」
要するにロ大統領は日ロ首脳会談の席で菅仮免に向かって露骨なまでに北方四島はロシア領土だと宣言したということである。
福山がNHK番組で内幕をバラさなければならなかったのはマスコミが14日になってメドベージェフ大統領の11月1日国後島訪問日のツイッターの投稿文、 「大統領の義務は、最も遠いところも含めたロシアの全地域の発展を監督することだ」 、13日日ロ首脳会談後のツイッター投稿文、「日本の首相に会い、解決できない論争より経済協力の方が有益だと伝えた」(47NEWS)と報道したために、福山発言の「大統領は、領土問題はロシアにとっても極めて神経質な問題だと述べるにとどめた」どころではない不整合が生じたからだ。
どちらのツイッター文も「北方四島はロシアの領土だよ」と言っている。
このような重大犯罪の前科を持った男だから、基本的には信用できない政治家のブラックリストに載せている。
では、福山が「SPEEDI」に関してどう発言したか見てみる。
福山官房副長官「何らかの形で利用したのではないか。首相のもとにあがった事実はない」
何のために原発事故発生後2ヶ月以上も経過してから、公表したのだろうか。あるいは、どのような理由から、原発事故発生後2ヶ月以上もこの事実を伏せていたのだろうか。あるいは隠していたのだろうか。
この「SPEEDI」、呼び名は「スピーデイ」と呼ぶそうだが、ちっともスピーデイではなかった。
他の記事が伝えていることだが、3月12日午前1時頃「SPEEDI」が首相官邸に届いた。5時間後の12日6時14分に菅仮免が原発視察のためにヘリコプターで官邸を出発した。この関係から、菅仮免が自身の安全性確保のために利用したのではないかとの疑惑が浮上しているらしい。
要するに住民には避難指示を出していながら、福島第一原発周辺は放射能の飛散は見受けられないから、安全だろうとして視察に出かけた。
このことは公にすべき情報の私物化を図ったのではないかという疑惑となるが、枝野詭弁家官房長官が否定している。「SPEEDI」の試算に基づく予測図がファクスで首相官邸に届けられていたが、菅仮免の許には上がっていなかったと発言している。《枝野官房長官の会見全文〈20日午前〉》(asahi.com/2011年5月20日12時59分)
5月20日午前の記者会見――
記者「原発のSPEEDIのデータが、昨日夕方の福山副長官会見で、総理には上がってないと発言した。本当に上がっていないとすれば、何のためにデータを取り寄せたのか。」
枝野「これは私も見ていない。福山副長官も見ていない。危機管理センターの幹部のところには、各省いろんな関連部局から情報がファクス等送られてくるのはコピーをとって配られるわけだが、そういうところにまったく上がってこなかった。まったく少なくとも政府とか危機管理センター幹部のレベルのところで全く共有されずにあった情報であるということだ。私も報道等をみて、どういうことになっているのかと問い合わせたところだが、官邸の担当部局のところにファクスはきていたが、そこの段階で止まっていたと報告を受けている」
記者「政府のこれまでの説明は、SPEEDIの元となるプラントの放出量が分からないから使えなかったということだが」
枝野「だから少なくともその何日か後の段階で、SPEEDIというのがあるようだがどうなっているんだと私が問い合わせた時に、放出放射性物質量がわかることを前提としたシステムなので、これは役に立たないという報告を受けた。
私から、いや逆に放射線量、周辺地域の放射線量がわかっているんだから、それは逆算して放出放射線量が逆算できるのではないかというアプローチはないのか、ということが数日後にあった。その時点での私への報告も、その2日目の未明にそうしたファクスが届いていたこととどういった整合性があるのか、しっかりと確認をしたいと思う」
記者「政府は情報はすみやかに公開したいと言ってきた。SPEEDIを公表しなかったことをどう考えるか」
枝野「私などからは繰り返し、すべての情報は迅速に公開するようにと指示を繰り返している。少なくとも私の手元に来ているような情報は、少なくとも問い合わせがあれば公表するということでやってきた。しかしそもそもが情報そのものの存在自体が伝えられていないなかにあったことについては大変遺憾に思っている。ただ、こうした今回取り上げられている推測も含めて、単位1ベクレルが放出された仮定でどうなるのかとか、仮にこれくらい出ていたらこういうことになりそうだな、ということも、我々の承知しないところでいろいろ試算していたものがあるということを把握した段階で、それは全部出せと指示した結果として皆さんの手元に届いている」
記者「ファクスが来て上に上がってなかったというが、その情報はいらないという判断だったのか、何らかのミスだったのか。」
枝野「そこのところについてはしっかりと検証を、我々自身としてもやりたいし、遠からず検証委員会を立ち上げたら第三者的にも検証してもらいたい」
記者「仮定に基づく試算とはいえ、避難指示を出す前に総理が見ていたら役だったのではないか」
枝野「少なくとも避難区域の指示等についての時に、そういった情報があればそれは意義があったと思う」
記者「長官はSPEEDIの存在を知らなかったが、原子力安全委員会という総理に助言する立場の部局は知っていたはずだが」
枝野「その点は常に私、例えば班目委員長などのそばにいたわけではないので、その辺のそういうやりとりがあったかどうかは承知していない」 ――
「放出放射性物質量がわかることを前提としたシステムなので、これは役に立たないという報告を受けた」
報告を受けたことに対して、「私から」と続けているから、枝野方から何か注文を付けたのかと思ったら、何のことはない。逆に注文を受けたことの発言に過ぎなかった。
詭弁家を元々の体質としているから、ついつい誤魔化しの言葉が出てしまう。
枝野が「役に立たないという報告を受けた」と言っていることと、逆算によるアプローチの可能を裏付ける記述が「原子力安全委員会」のサイト「文部科学省 緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)による計算結果」のページに載っている。
〈緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)は、本来は、原子炉施設から大量の放射性物質が放出された場合や、あるいはそのおそれがある場合に、放出源情報(施設から大気中に放出される放射性物質の、核種ごとの放出量の時間的変化)、施設の周囲の気象予測と地形データに基づいて大気中の拡散シミュレーションを行い、大気中の放射性物質の濃度や線量率の分布を予測するためのシステムで、文部科学省によって運用されているものです。
しかし、今回の東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故では、事故発生当初から、放出源情報を原子炉施設における測定や、測定に基づく予測計算によって求めることができない状況が続いています。このため、大気中の放射性物質の濃度や空間線量率の変化を定量的に予測するという本来の機能を活用することはできていません。〉――
〈今回の事故では、原子炉施設における測定によって放出源情報を得ることができないことから、SPEEDIを用いて発電所周辺の放射性物質の濃度や空間線量率の値を計算することができない状態が続いていました。このため、原子力安全委員会では、SPEEDIを開発した(独)日本原子力研究開発機構の研究者の協力を得て、原子炉施設での測定に代わる方法を検討し、試行錯誤を繰り返した結果、環境中の放射性物質濃度の測定(ダストサンプリング)結果と発電所から測定点までのSPEEDIによる拡散シミュレーションを組み合わせることによって、ダストサンプリングによってとらえられた放射性物質が放出された時刻における放出源情報を一定の信頼性をもって逆推定することができるようになりました。こうして推定した放出源情報をSPEEDIに入力とすることによって、過去にさかのぼって施設周辺での放射性物質の濃度や空間線量率の分布を求め、これによる事故発生時点からの内部被ばくや外部被ばくの線量を積算したもの(積算線量)の試算結果を以下の通り公表しています〉――
このページには日付が載っていない。情報提示は「いつ・どこで・何が」が基本だが、こういった不備は政府関係のページに多いように思える。3月12日午前1時頃、首相官邸に届いた「SPEEDI」の試算に基づく予測図が既に「一定の信頼性をもって逆推定」した予測かどうかはページの文章からでは読み取ることができないが、首相官邸に届ける場合は、「一定の信頼性」は不可欠条件となるはずだ。
でなければ、首相への報告であったろうから、報告する意味を失う。
だが、首相にまで上がっていなかった。
政府が「SPEEDI」の計算条件となるプラントの放出量が不明として使えないとしていた予測を、原子力安全委員会が今後公表すると4月25日の記者会見で発表した。《放射性物質の拡散予測、今後は公表 原子力安全委》(asahi.com/2011年4月25日23時58分)
公表は1時間ごとの放射性物質の拡散予測だそうだ。
記事が、〈拡散予測は、事故直後の避難に活用する計画だったが、原発からの放出源情報が得られないとして、3月23日と4月11日に公開されただけだ。しかし、事故直後から一定量の放出を仮定した1時間ごとの予測はしており、数千枚に及ぶ過去のデータについてもホームページに公開するという。〉と書いているから、3月12日午前1時頃首相官邸に届いた予測は「一定量の放出を仮定した1時間ごとの予測」ということになるが、例え「仮定」の放出量であっても、それ相応の裏付けが担保されていなければ、やはり作成した意味を失う。
記者会見に同席していた細野補佐官が公表の遅れについて文科省と原子力安全委の間で運用や公開などを巡って調整に手間取ったと明かしたという。
だが、首相にまで上がってこなかったと言っているが、3月12日午前1時頃首相官邸に届けた。もし首相にまで上がっていたなら、公表もあり得たかもしれない放射性物質の拡散予測である。ここに矛盾はないだろうか。
原発から放射線放出情報が得られないとして2度の公表以外は4月25日まで未公表としてきたことによって3月12日午前1時頃頃首相官邸に届けた事実の情報隠蔽が可能となる。
あるいは逆に首相官邸に届いた事実を情報隠蔽する必要上、2度の公表以外は4月25日まで未公表としてきた。
首相官邸に届けられた事実を公表するについては、それを見なかったことにしなければならないために、首相にまで上がってこなかったとした。
最初に菅仮免が自身の安全性確保のために利用したのではないかとの疑惑が浮上していると書いたが、このこと以上に問題なのは菅仮免が拡散予測を見ていたなら、住民避難に関して重大な過ちを犯した別の疑惑が浮上し、より大きな問題となる。
その放射性物質拡散予測には風向きや風の強さに応じた放射性物質の飛散方向、当然飛散量もだろう、それらの濃淡、あるいは多い少いが示してあるから、そのデータに基づいて避難地域を決定しなければならない。
だが、政府は風向きや風の強さ等の気象条件を無視して、同心円に避難地域を決定した。
この問題点を昨5月20日の参院予算委員会で佐藤正久自民党議員が追及している。
《炉心溶融、首相が判明遅れを陳謝 福島第1原発事故》(47NEWS/2011/05/20 17:01 【共同通信】)
記事題名の菅仮免の陳謝とは、1号機が地震発生16時間後に既にメルトダウンしていたことを東電が公表したのは5月16日という、地震発生後2ヶ月も過ぎてからのことに対する陳謝である。
菅仮免「国民に言った内容が根本的に違っていた。東電の推測の間違いに政府が対応できず、大変申し訳ない」
公表遅れを基本的には東電の責任としている。
佐藤自民党議員の追及に対する海江田経産相の風向き等の気象条件を考慮せずに第1原発から同心円状に避難区域などを設定したことについての答弁。
海江田経産相「風向きは気にしていたが、手元にデータがなかった。取りあえず同心円でやるのがベストだと思った」
佐藤正久議員「風下に住民を行かせないのはイロハのイだ。風下に避難し、浴びなくていい放射線を浴びた住民がいる。人災だ」
「手元にデータがなかった」からといって、許される判断だろうか。避難住民の生命・財産がかかるかもしれない避難である。「風向きは気にしていた」が事実なら、自分から求めるべき気象情報であろう。
しかも、結果的にベストではなかった。政府自身も後で同心円の避難地域を継続する一方で、気象条件等に影響を受けた実際の放射線量の測定値に基づいて、比較的放射線量の高い地域を「計画的避難区域」に設定、住民に避難を求めたのだから、ベストではなかったことは政府自身が証明している。
「政治は結果責任」である。NHKテレビで質疑中継を見ていたが、結果的にベストではなかったにも関わらず、謝罪一つしなかった。
海江田経産相は「風向きは気にしていたが」と言っているが、次ぎの記事では風向きを計算に入れた避難地域決定となっている。
《福島・原発、放射性物質漏れの可能性 経産相「微量」と強調》(MSN産経/2011.3.12 06:13)
3月12日未明(0時~3時)の記者会見。
この時間は福山官房副長官が明らかにした「SPEEDI」に基づいた予測図が首相官邸に届いていたとする3月12日午前1時頃にほぼ相当する。
実際は予測図を見ていたとしたら、丸きりの情報隠蔽・情報操作となる。
海江田経産相(放射性物質が大気中に放出される可能性について)「事前の評価では(放出されても)微量とみられる。(陸地から海側に吹いている風向きなどから)半径3キロ以内の避難や、3~10キロの屋内退避を実施しているので住民の安全は保たれる」
海江田経産相自身の言葉として伝えてはいないが、記事の説明として気象条件を考慮した避難実施となっている。
だが、昨日の参議院予算委員会では「風向きは気にしていた」だけとなっていて、それを計算に入れない同心円避難地域決定を「ベストだと思った」と自己正当化している。
もしも3月12日午前1時頃首相官邸に届けられた「SPEEDI」に基づいた放射性物質拡散予測を見ていた上での同心円避難地域設定だったとしたら、3月12日午前1時頃から約4時間44分後の5時44分に菅首相が出した半径10キロ圏内の避難指示は政府の住民の生命・財産・健康を考えない、佐藤正久議員が指摘しているように菅政府が自ら招き出した人災そのものとなる過った決定となり、責任問題が浮上する。
避難しなくてもいい住民にまで避難の苦労をかけ、佐藤議員が指摘するように政府の指示通りの避難をして浴びなくていい放射線を浴びる住民をつくり出したことになる。
なぜ福山幹部副長官は地震発生から2ヶ月も経過した5月19日になってから、首相官邸に「SPEEDI」に基づいた放射性物質拡散予測をファクスで送られてきたが、首相にまで上がっていなかったなどと明らかになどしたのだろう。
なぜ政府はそれまで2度しか公表していなかった1時間ごとの放射性物質拡散予測の公表を、地震発生から1ヵ月半も経った4月25日の記者会見で今後行うと発表したのだろうか。
考え得ることは、菅仮免が設置表明している原発事故に関する検証委員会の立ち上げである。隠蔽していた情報のうち、検証によって明らかになると予想される情報は前以て明らかにしておかないと不都合が生じる。
だが、政府に決定的に不都合な情報は最後まで隠蔽を謀らなければならない。その兼ね合い上許される範囲が放射性物質拡散予測が首相官邸にファクスで届けられていたというところまでではなかったのではないだろうか。
そして最後まで徹底的に隠蔽を謀らなければならない情報は菅首相以下、海江田経産相も枝野幹事長も目を通していたという事実ではないか。そこに予測を参考にした避難地域設定ができず、放射能の危険に曝したかもしれない住民を出してしまったという、菅内閣の人災となる次ぎの事実を浮かび上がらせかねないことになる。 |