一昨日の5月14日(2011年)、自民党の石破政務調査会長が山口市の講演で、内閣不信任案提出を目指すと発言。《石破氏 不信任決議案提出目指す》(日テレNEWS24/2011年5月16日 0:58)
石破政務調査会長「中部電力の浜岡原子力発電所を止めるというのは、見た目はいいかもしれないが、菅総理大臣は、関係機関にも相談せず、今後のエネルギー政策も議論していない。政治主導という名の政治暴走に陥っており、これ以上続けることは被災地のためにも日本のためにもならない。菅政権を打倒するには内閣不信任決議案を可決するしかない。衆議院では、民主党が圧倒的な議席を持っており、頭の痛いところだが、不信任案を可決するために全知全能を絞らないといけない」――
「不信任案を可決するために全知全能を絞らないといけない」とは民主党内の同調者を念頭に入れてのことなのは断るまでもない、既に周知の事実となっている。
記事も、〈民主党で菅総理大臣の批判を強めている議員の動向をにらみながら、今の国会に内閣不信任決議案の提出を目指す考えを示しました。〉と解説している。
石破議員にしても同調の可能性が低ければ、不信任案可決の見通しを失うことになるのだから、内閣不信任案に言及することはなかったろうし、野党優勢の参議院での首相問責を内閣を追い込むより可能性の高い手段として言及したに違いない。
自民党も民主党内の反菅派も、「首相の存在自体が震災復旧・復興の障害だ」と言っている。
石破議員が期待した民主党内の同調の根拠となったに違いない動きを次ぎの記事が伝えている。《内閣不信任案賛成を働きかけ》(4NHK/2011年5月15日 4時4分)
民主党の小沢元代表が菅内閣の原発事故対応の拙劣さ、遅滞等を理由に菅仮免の自発的な退陣を求めていて、その退陣要求に呼応してのことだろう、小沢氏に近い議員が野党が内閣不信任決議案を提出した場合、賛成に回るよう、署名活動等の党内活動を行っていると伝えている。
小沢元代表「今のような対応を続ければ、被害は拡大し、取り返しのつかないことになる」
反菅グループの活動は党内にとどまらず、自民党に対しても不信任決議案を早期に提出するよう働きかけているという。
民主党内の反応。当然のことがだが、不信任決議案に賛成することを決めている議員と非賛成派の存在。
非賛成派議員「菅総理大臣の対応がベストだとは思っていないが、原発事故の収束の見通しがたたないなかで政局を起こすべきではない」
「菅総理大臣の対応がベストだとは思っていない」とはベストを追求していく能力と姿勢を持ち得ていないということであろう。ベストを追求していく能力と姿勢を持ち得ていなければ、「原発事故」に関わる菅内閣の対応にしてもベストを追求していく能力と姿勢は望み得ないことになる。
政治は国民に対してベストを追求する義務と責任を負っているはずだ。その能力と姿勢を持ち得ないなら、首相の座を去る選択こそがベストとなる。
いずれにしても、石破議員の内閣不信任案提出への言及は民主党内のこういった動きに呼応した言及だと分かる。
このような民主党内の動きを民主党の岡田幹事長が牽制したと、次ぎの記事が伝えている。《不信任案賛成は離党覚悟が当然~岡田幹事長》(日テレNEWS24/2011年5月16日 0:58)
昨5月15日(2011年)、民主党の岡田幹事長が青森市で記者団に話したそうだ。
岡田幹事長「野党が内閣不信任案を出すというのは、当然の反応かと思う。(その不信任案に)与党の中で賛成する、あるいはそれを募るということは、まさしく与党としての責任を放棄するもので、当然、党を離れるということを覚悟した上で不信任案に賛成するというのが当然だと思う」
野党提出の内閣不信任案に同調して賛成するなら、離党を覚悟で賛成しろと言っている。この発言に正当性はあるのだろうか。
民主党の代表は指導力ゼロの菅直人である。内閣を担ったものの、未だ仮免状態で、本免の政権運営ができていない。
菅仮免が民主党の代表であったとしても、民主党という政党の所有者ではない。いわば民主党は菅仮免の所有物=私物ではない。民主党は民主党の国会議員、地方議員、サポーター、そして民主党を支持する国民の所有物である。
例えそこに党内抗争が存在したとしても、党紀に違反する行為がない以上、野党提出の内閣不信任案に賛成したからといって、民主党が菅仮免の所有物でない以上、出て行け、離党せよと言う資格も権限もないはずである。
1980年5月、社会党が大平内閣に対して内閣不信任決議案を提出、与党自民党の反主流派がその採決時に欠席した結果、賛成が上回り、可決、大平内閣は衆議院を解散、衆参同日伝挙に持ち込んだ。
大平正芳は選挙中に急死、同情票を掻き集めて自民党は衆参とも勝利。このとき、不信任案採決時に欠席したからといって、主流派による反主流派に対する離党騒動に至ったわけではない。
もし離党要求に正当性があるとしたら、民主党が菅仮免の所有物でも、菅執行部の所有物でもない以上、反菅派の菅派に対する離党要求も正当性を得ることになる。
菅仮免の進退についての言及の正当性如何に関係することだが、5月14日(2011年)の夜、菅仮免が「自然エネルギー財団」の設立を表明しているソフトバンクの孫正義社長と東京都内で会食した。《不信任案賛成は離党覚悟が当然~岡田幹事長》(毎日jp/2011年5月15日 2時3分)
孫正義「浜岡原発停止要請は歴史的な英断」
菅仮免「再生可能エネルギー普及と原発の安全性を懸命にやっていきたい」
ベストを追求していく能力も姿勢も持ち合わせていないが、政策だけは口にする。
与野党に広がる菅仮免の退陣論を批判する趣旨で――
孫正義「嵐のど真ん中で船長を代えることはあり得ない」
菅仮免「大変元気をいただいた」
浜岡原発停止要請を「歴史的な英断だ」とお褒めをいただき、無能でも構わない、首相は続けるべきだとお墨付きをいただいたのだから、いやでも元気をいただくだろう。
孫正義は菅仮免に対する退陣要求は正当性がないと談じた。その理由は国難(=嵐)のときだからだとしている。
いつも見せている死んだ魚の生気のない目を生きいきと輝かせただろうし、国会で追及を受けているときは唇を不満げに突き出しているが、唇を閉じることなく得たり顔でニヤニヤとにやけたことだろう。
だが、帆船や蒸気船の時代、嵐に満足に対処できない実際の船長は実力行使を受けて幽閉され、一等航海士等が代って船長を務めている。嵐のときこそ、国難のときこそ、政権運営の能力を問わなければならないはずだ。
それを孫正義は「嵐のど真ん中で船長を代えることはあり得ない」と、嵐のときこそ問うべき能力、指導力を問わなくてもいいとしている。
倒錯的認識を示しているように見えるが、そうではないだろうか。
指導力ゼロの無能な菅仮免には嵐とは正反対の波が立つことはない小さな池でボートでも漕がせておけばいい。
岡田民主党幹事長の「不信任案同調は離党を」の正当性にしても、孫正義の首相擁護の正当性にしても、いずれも正当な理由になっているとは言えないはずだ。
|