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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ハイチ緊急人道支援任務終了2675名を治療、ハイチ地震救援はPKOへ転換

2010-02-14 23:43:37 | 国際・政治

◆テロとの戦いに代えての政府迷走か、ハイチPKO

 防衛省によれば陸上自衛隊によるハイチでの国際緊急人道支援任務が終了したとのことです。

Img_0279_1  国際緊急人道支援任務は輸送支援、医療支援という二つの任務が行われていたのですが、この中で医療支援が終了し、隊員は帰国の途につくようです。国際人道支援任務は終了するのですが、一方でPKO任務というかたちで国連ハイチ安定化任務へ陸上自衛隊が参加することとなっていて、先遣隊が現地入り、アントノフAn-225輸送機で最初の車両が派遣されまして、PKO任務に不可欠な宿営地建設の準備が進められています。

Img_3831  ハイチ大地震、緊急援助隊の活動終了へ 防衛省 ・・・ 防衛省は12日午前、ハイチ大地震を受けて現地で医療支援にあたっていた国際緊急援助隊の活動を終了すると発表した。派遣していた160人のうち130人が18日に帰国する予定で、残りは米・マイアミで物資輸送などの任務に引き続きあたる。国際緊急援助隊は1月23日からハイチのレオガン市内で活動を開始し、これまでに延べ2675人を診療していた。(12:30) http://<wbr></wbr>www.nik<wbr></wbr>kei.co.<wbr></wbr>jp/news<wbr></wbr>/seiji/<wbr></wbr>2010021<wbr></wbr>2ATFS12<wbr></wbr>00E1202<wbr></wbr>2010.ht<wbr></wbr>ml

Img_9076  PKOの派遣期間は六ヶ月、本隊はまだ現地に到着していませんから、先遣隊の派遣と併せて八ヶ月間、ハイチでの任務がはじまったわけです。日本国内では、政府部内を含め、一種の災害派遣のように受け取られているようですが、安定化任務ということで、報道された映像に、宿営地建設のために空輸された車両には、軽装甲機動車も含まれていました。

Img_1240  日本国内では、三重県の火災事故への災害派遣の際に軽装甲機動車が派遣されたことはあるのですけれども、今回派遣された軽装甲機動車は、イラク派遣時のような防盾を装備した車両でした。災害派遣で装甲車が派遣される、ということも希有な事例ですから、本質的に災害派遣ではないのだ、という認識は必要でしょうね。

Img_2228  自衛隊は、悲しいことですが日本国土が何度も噴火、地震、津波、台風というもの凄い災害に見舞われています。その都度災害派遣要請に応じて出動していますから、災害派遣では豊富な経験があるのです。けれども、物資や物量、人員の規模では決して恵まれているとはいえません。

Img_4842  近年では、人数でこそ、ドイツ連邦軍やイギリス陸軍よりも規模は大きくなっているのですけれども専守防衛という国内政策の関係から、外国で長期間活動できるような後方支援能力などでは限界があります。国土で、陣地を構築して、上陸する敵を、海岸や山岳部、都市部や隘路で撃滅するのが任務ですからね。

Img_2221  その点、PKOで何ヶ月も離れた場所で活動するよりは、初動に必要な救助装備品が詰め込まれた人命救助システムとともに、被災地にいち早く駆けつけて、一ヶ月程度で後続の各国に任せ、撤収する、というのが理想であった訳なのですけれども、ね。今回は理想とする任務のありかたの逆をおこなってしまった、ということでしょうか。

Img_1367  一方で、自衛隊を派遣するかで一時話題となったアフガニスタンでは、ヘルマンド州において米軍が今年最大規模の攻勢に出た、とのことです。昨今、米軍が”最大規模の攻勢”に出ることが多くなっていますけれども、これは来年七月に米軍の撤退!と発表したオバマ大統領の焦りの現れ、ともいえます。

Img_6178  現状のままタリバーンの武装解除とアフガニスタンの安定化ができないままに米軍を撤退させてしまえば、日本が復興支援を行う土台はもちろん、2001年から行われている米軍のアフガニスタン介入が無意味になってしまいます。タリバーンは追いつめられたようで、市民に向けての無差別テロで応戦していて、あのままでは確実にアフガニスタン国内での支持は得られないでしょうから、アフガニスタン国民の支持を得られなくなれば、それがタリバーンの敗北を意味します。

Img_5398  タリバーンのイスラム原理主義がアフガニスタンで支持された背景には、タリバーン以外の軍閥が、極めて無責任で国民に不当な圧力を掛けていたからこそ支持されていたので、どのような政治形態でもそうであるように、アフガニスタン国民の支持がなければタリバーンは復権できません。

Img_6164  しかし、オバマ大統領が来年七月に撤退、という発言を行ったことで、これは言い換えれば来年七月まで山間部にてタリバーンが粘れば、米軍が撤退する、という表現となってしまったわけです。アフガニスタンでは、現政権の汚職が問題になっていて、そこに日本の民主党のように、それ支援だ資金だと大量の投入をおこなうのだから、更にその状況は顕著になっています。かつて民主党が提案していたように、自衛隊を派遣するか、自民党政権時代のように補給艦を派遣したほうが、余程効果があると言えるでしょう。

Img_3231  この状況を打破できなければ、米軍が撤退して、もちろん欧州各国がISAFに派遣しているのですけれども、彼らがアフガニスタンの汚職などの問題を解決することができず、撤収すれば、その後は徐々にタリバーンが勢力を取り戻す機会を与えます。しかも、米軍撤退後はISAFに米軍三万の空虚を支えることは難しいでしょう。自衛隊の戦闘部隊を大規模に派遣しても不可能です、前述のように外征を考えていない編成ですからね。撤退後ならばタリバーンにとって時間はいくらでもあるのですからね。そうした状況を避けるために、今後もアフガニスタン情勢は緊迫度を増してゆくでしょう。オバマ大統領の明らかな失策です。

Img_1309  さて、鳩山政権は、今回のハイチPKO派遣で、アフガニスタン派遣やインド洋給油の代替にできないか、と考えているようです。民主党が常々派遣する派遣する、といっていたアフガニスタン派遣が、自衛隊の派遣でも非常に危険、民間人の場合は、殉死する覚悟を固めるか民間軍事会社の精鋭でも選りすぐって派遣しなくては危険の度合いが示せないほどの状況です。

Img_0002  だから代わりにPKO!、という意気込みなのでしょうが、これも普天間移設案の迷走と同じくらい的外れで、アメリカはテロとの戦いで、欧米対イスラムという構図を避けるために日本の参加を求めて、既存の秩序対反秩序、という構図を導き出していたわけです。ですからPKOに派遣しても、国連にアピールすることはできても、アメリカにアピールすることはできないでしょう。問題ばかりが山積している状況ではありますが、他方、政治の失策により遅ればせながら派遣された緊急人道支援任務自衛隊派遣ではありますが、多くの方の治療を行い、無事任務を完遂できたことは、厳しい中でのせめてもの朗報といっていいのでしょうか。

HARUNA

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