◆対テロ情報の連環から離脱する日本
テロ対策特別措置法の失効にともない、1月15日に終了したインド洋海上阻止行動給油支援ですが、先日補給艦ましゅう、とともに東京港晴海埠頭で帰国行事が行われましたことは周知の通り。そして連絡官として派遣されていた自衛官が25日に帰国したとのことです。
やや情報としては古いですが、本日はこのお話をもう少し考えてみましょう。これは11日付朝雲新聞に掲載されていたとのことで、本文を朝雲新聞HPから引用します。補給支援活動終了で連絡官が帰国:海自のインド洋補給支援活動のため中東・バーレーンに派遣されていた連絡官の尾崎拓彦2佐(48)が任務を終え、同25日に帰国した。尾崎2佐はバーレーンで米軍などとの連絡調整業務に当たっていたが、補給支援特措法が15日で失効、インド洋に派遣されていた海自部隊が撤収したことを受け、帰国した。http://www.asagumo-news.com/news.html
こうして、完全に日本はテロとの戦いから離脱したのだなあ、と感じるとともに、この離脱ということは、テロ関係のアメリカやテロとの戦いに参加する当事国から、テロの動向に関する一次情報、つまりナマの情報が入りにくくなるのだなあ、ということも感じました。こうしたテロ関係の情報はバーターで入るものですし、もちろん、インターポールを通じての情報もはいるのですけれども、本来はこうしたルートで入らないような一次情報が、司令部に日本が自衛官を派遣していることで得られる、というものもあったわけですから、情報のつながりという連関から外れてしまうのは、少なくない不安がありますね。
テロとの戦いから日本は離脱したのだから、もう日本がアルカイーダのようなテロ組織から狙われたりすることはないのでは?、テロとの戦いで主導権を握っているアメリカとの関係から、日本国内の米軍基地だけを厳重に警備しておけば大丈夫でしょう!、と思いたいところですけれども、日本とアメリカは軍事面以外でも結びつきは強いですし、日本国内には多くのアメリカ人やアメリカの企業が活動していて、この関係の、つまり日本全国が全般的に狙われる可能性を抱えているのですよね。しかも、アルカイーダの掲げる目的、ムハンマド師の時代を理想とするイスラム原理主義の価値観と、八百万の神々とともに倫理感に依拠して自由と繁栄を謳歌する日本の価値観は一致しないわけですから、万全の安全ということはいえないわけで、テロ対策関連の情報は非常に重要なわけです。それに、日本人は世界中で活躍していますから、テロに巻き込まれないようにするという目的からも情報は重要です。
テロとの戦いに、インド洋に補給艦と護衛艦を派遣して海上阻止行動の給油支援を行う、というかたちで参加していたのが、民主党にとっては野党時代から問題だ、としていたわけですし、これにかわって今度はアフガニスタンに陸上自衛隊を派遣する、とか、テロとの戦いに民間人を指揮下に組み込む形での協同という参加の形を模索していた民主党ですが、いざ、政権に就いてみると、本当に派遣すれば高い確率で犠牲者が出るというアフガニスタン、そんな場所に派遣して犠牲者が出れば時の与党が責任をかぶる形になるので、与党になった民主党は一転して慎重になったわけです。こうして、テロ対策特別措置法が執行するまでの期間、代わりにアフガニスタンに派遣するという計画は水泡に帰して、いっそのこと治安状況が落ち着いてきたイラクにもう一回復興人道支援で自衛隊か民間人を派遣する、という議論もなく、補給支援は終了、代案なしで今回の連絡官帰国、ということになったわけです。
海賊対策やハイチPKO,それに最長期間のPKOとなってるゴラン高原派遣という任務はあるのですけれども、どれもテロとの戦いではなく、海賊対策任務に派遣していることでソマリア沖での海賊に関する情報は入ってくるのですけれども、テロ関連は別の指揮系統なので入ってきませんし、ハイチPKOでもハイチや中南米での情勢は判るのでしょうけれども、テロ関係の情報は入ってきません。日本には、テロは友愛精神で起きないという漠とした自信があるのか、現在の民主党鳩山政権の意図は分からないのですけれども、リスクは増えている、ということがいえるのではないでしょうか。もう一度、海上自衛隊の方々には大変なのは判るのですけれども、補給艦を、対テロ海上阻止行動給油支援で護衛艦とともにインド洋に派遣する、という選択肢は、政府部内で検討されてもいいのではないでしょうか。
HARUNA
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