◆P-1哨戒機部隊配備へ
海上自衛隊は、川崎重工を中心として日本中の防衛産業が結集して開発中の新哨戒機P-1について、その実用化と部隊運用を行うに当たって飛行試験を実施してきましたが、その結果が良好であったことから、いよいよP-1哨戒機の部隊配備が開始されるとのことです。
P-1はP-X,XP-1としてC-X,現在のXC-2とともに並行して開発が進められてきた航空機で、輸送機と哨戒機を同時開発することで設計費用の低減を図り、所要の性能を損なわない範囲内での可能な限りの部品共通化を図り、量産効果を高めるべく開発されたもので、世界で広く使われている冷戦時代に導入された哨戒機を置き換える新型哨戒機、そして30㌧台の装備品を比較的高速度で長距離を輸送することが可能な新型輸送機と、果たして全く運用性能が異なる機体を同時開発出来るかも含め、世界注目の新型機です。
神奈川新聞からの記事の引用です。厚木の海自後継哨戒機にP1を4機配備へ、ジェットエンジン搭載で「騒音激化」と地元反発/神奈川 ・・・防衛省は15日、海上自衛隊P3C哨戒機の後継として開発中の次期固定翼哨戒機(P1)4機を2011年度末から、全国で初めて海上自衛隊厚木基地(大和、綾瀬市)に配備する計画を明らかにした。併せて基地内に関連施設を整備する。同省南関東防衛局が同日、両市に通知した。プロペラ機のP3Cとは異なり、P1はジェットエンジン4基を搭載している。国がジェット機の使用制限を定めた「46文書」の扱いが、今後の課題となりそうだ。
配備計画の通知を受けた両市は騒音被害が増大することなどを懸念し、反発している。防衛省によると、配備されるのは性能評価のために08年9月から同基地に順次乗り入れている試作機2機と、新たに取得する4機(703億円=08年度予算契約ベース)のうちの2機。12年度には残りの2機も同基地に追加配備するという。また、搭乗員のシミュレーション施設として、滑走路東側の空き地部分に2階建ての「訓練講堂」も整備。10年度予算案に5億6千万円を盛り込んだ。ジェット機のP1をめぐっては、地元から「騒音の激化につながる」との声もあるが、防衛省はこれまで「騒音はP3Cと同等か静か」と説明していた。
通知を受けた大和市の大木哲市長は「受け入れられない。46文書との関係も含め、地元に十分な説明と対応を求めたい」とコメント。綾瀬市の笠間城治郎市長も「超過密地の基地は移転すべきだ」とし、市が掲げる「基地機能の整理縮小」が遠のくことを危惧(きぐ)した。P3Cは潜水艦や不審船の監視などを任務とする海自の主力機。全国に約95機が配備され、厚木には約20機が常駐している。耐用年数がすぎていることなどから、防衛省は国産のP1への切り替えを決めている。]2010/02/16 09:00 【神奈川新聞】引用は以上です。http://www.47news.jp/localnews/kanagawa/2010/02/post_20100216104936.html
今回配備される機体は、試作機とともに配備されるということで、航空集団隷下の航空隊に配備されるのではなく、第51航空隊において性能調査を行うか、教育訓練用、という印象が強いです。しかし、評価試験の目的で既に厚木航空基地において試作機二機が配属されているのですから、正しくは第一線配備に向け第51航空隊で部隊運用を行う、という意味のようですね。第51航空隊は試験評価部隊なのですが、第51航空隊での運用が終了したのちにP-3C哨戒機を運用する航空群の後継に配備が始まると考えられるのですが、この場合、まず要員を養成するために航空教育集団司令部が置かれている下総航空基地に厚木航空基地に続いて配備されるとかんがえるべきでしょうか。
P-1哨戒機は四発のジェット機であることから、これまで運用されていたP-3C哨戒機よりも騒音が大きいのでは、という危惧は繰り返し為されていたのですが、岐阜基地で幾度か発着を文字通り真下から見上げたという個人的経験から、騒音はP-3Cよりも小さいです。防衛省が発表した騒音数値でも小さいというデータが示されていますが、いわゆる耳障りな低周波音や空気微振動のような騒音もありませんでした。なにぶんジェット機の方がプロペラの航空機よりも大きい音が、という発想も、もともとP-3Cの原型機が非常に古い事を考えれば、騒音の低減が実現した、ということにも納得がいきます。
P-1哨戒機は、総重量79.7㌧、全長38.0㍍、全幅35.4㍍、ターボファンエンジン四基により21.6㌧の推力を発し速度は450ノットに達します。飛行高度や速度はP-3Cよりも大きくなっていますので、より高い高度から各種電子機器を用いて広範囲の潜水艦や水上目標を索敵警戒することが出来ますし、進出速度が速いという事は、現場海域までの展開に要する時間も短縮することが出来ます。P-1哨戒機はこの通り高性能な機体で、任務達成能力も向上します。また、P-3Cは素晴らしい航空機と言う事ですが、旧式化が進めば事故のリスクも増大するのですし、P-1哨戒機の迅速な装備化が期待されるということができるでしょう。
HARUNA
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