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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

救難ヘリコプターへ初の空中給油訓練 米軍空中給油機の支援受け

2010-02-22 23:27:22 | 防衛・安全保障

◆空自C130Hの給油機改造は年度末に完成

 航空自衛隊では、救難ヘリコプターへの空中給油受油装置の装備化を行っていますが、この装備を利用した最初の給油訓練が米軍の協力を受けて行われたとのことです。

Img_8321  朝雲新聞より:2/18日付:ニュース トップ ・・・救難ヘリに空中給油 那覇救難隊のUH-60J 米機の支援で試験  昨年4月から空自那覇救難隊に配備されている空中受油機能が付加されたUH60J救難ヘリ2機が、2月中旬から3月中旬まで、米軍嘉手納基地で約3日間の地上試験を経て、沖縄周辺の訓練空域で米空軍のHC130、KCなど空中給油機の支援により、計約10回の空中給油の飛行試験を行う。 同型機は、遠隔地での災害派遣や島しょ防衛など救難捜索活動で欠かせない長距離、長時間の運航を可能とする空中受油機能が付加されており、中期防(17~21年度)に基づき今年度末までに空自にさらに2機、22年度末までに1機の計5機の導入が予定されている。

Img_8162  空自のC130H輸送機に空中給油機能を付加し、海・空自のUH60J救難ヘリの航続距離を延伸、救難能力の向上を図るのがねらいで、時速250キロ程度で飛行するヘリに固定翼機のC130Hが低速でコンタクト、プローブ・アンド・ドローグ方式で後方に延ばした給油ホースからヘリに空中給油をする。 このため、今年度末までに空中給油機能が付加された1輸空のC130H輸送機の改修機1機が小牧基地に導入される予定http://www.asagumo-news.com/news.html

Img_8408  空中給油機は、現在小牧基地に配備されているC130H輸送機を改修して導入されるということになっていますが、これにより救難ヘリコプターの飛行時間は大きく延伸することが期待されます。一方で、今後のC130HのXC2輸送機配備後の新しい任務、そしてもう一つ考えられるのは、米軍機演習空域の柔軟化への寄与、この二つの面で意味があるのだといえるかもしれません。

Img_6692  本日は月曜日、一週間の始まりということで岐阜基地ではXC2輸送機が飛行試験を行ったとのことです。飛行試験は順調に進んでいるようですが、一方でこれまで国際貢献任務に空輸支援を行ってきたC130Hは航続距離と搭載量の面でXC2よりも下回る部分があります。C130Hは不整地においても自由に離着陸できる能力があって、先述輸送機としては最高の機体と呼ばれています。

Img_6653  XC2のこの種の能力は未知数なのですけれども、一方で国際貢献ではこの能力を確実に発揮できるような状況では投入されませんから、XC2の方が向いているともいえるわけです。そこで、国際貢献の任務はXC2が第一線に配備されたのちにはC130Hは空中給油という新しい任務にあてよう、ということです。

Img_8195  空中給油任務に充てられるC130Hは、特殊な給油装置を翼の下に装備するのですけれども、同時に必要があれば機内に物資を搭載することも可能です。もう一つ、つけ加えればすべてのC130Hが空中給油機に改造されるのではありませんし、救難ヘリコプターの支援以外に、大災害で機能が充分回復していない空港に緊急の物資を送り届ける任務、ミサイル攻撃などを受けて麻痺状態の飛行場に部隊や物資を送り届けるという任務の必要性が生じたときには、即座に対応することも出来るわけです。

Img_1652  もうひとつ、この空中給油方式は、KC767のように、上から燃料を送り込む方式ではなく、チューブを通じて供給する方式で、この方式は海軍機やNATO軍機などに採用されている方式です。航空自衛隊がC130H輸送機の空中給油機への改造を発表した頃に、在日米軍再編計画の一環として厚木航空基地に展開していた空母航空団が岩国航空基地へ移転することが発表されました。

Img_2353  そして、長いこと首都圏の懸案でありました、深夜の騒音、陸上空母発着訓練のなかの夜間発着訓練も厚木から極力、岩国や硫黄島など、首都圏以外の基地に移転することが発表されていますので、その支援も行うということが考えられているのでは、とされているわけです。

Img_2435  C130H輸送機の空中給油機への改造は、救難ヘリコプターへの支援強化ということが主眼ではあることは確かです。ヘリコプターはホバーリングの際に多くの燃料を使いますし、気流の影響も燃料消費に反映されますので、滞空時間の延伸は非常に重要です。一方で、一つはC130HがXC2、制式配備されればC2ですが、この機体にこれまでの任務の一部を譲った際の新しい任務の付与、そして、選択肢として米海軍機による騒音問題への解決策に、米海軍機の航続距離を延伸させることができるという一点を加える、こうした意義がほかにもある、といえるのではないでしょうか。
HARUNA

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コメント (4)
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