北大路機関

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無人偵察機墜落 硫黄島沖でエンジン停止、遠隔操作で墜落処分

2010-02-09 23:29:47 | 先端軍事テクノロジー

◆9日0945時、事故発生

 An-225輸送機が成田へハイチPKO輸送支援のチャーター機として飛来したそうです。関空でAn-125は見たことがあるのですがAn-225は世界最大という未知の機体、愛称のムリアはロシア語で夢を示すそうですが、夢でもいいから見てみたいですね。

Img_9779  さて、夢といえば、日本では念願のXC-2が初飛行を果たしましたが、同時に開発試験中の無人偵察機が海上に墜落したそうです。本日はこの話題を扱いましょう。毎日新聞からの引用です。無人偵察機:飛行試験中に墜落、海へ落下 防衛省: 防衛省技術研究本部によると、9日午前、硫黄島基地(東京都小笠原村)周辺で飛行試験をしていた開発中の無人偵察機(全長5.2メートル、全幅2.5メートル、高さ1.6メートル)のエンジンが停止し、安全確保のためF15のパイロットが遠隔操作して機体を海に落下させた。

Img_9852  同本部によると、無人偵察機はF15戦闘機の翼の下に搭載され、空中で切り離されて自律飛行する仕組み。午前9時45分ごろ切り離されたが、直後にエンジンが停止。同50分ごろ、パイロットが付近に船舶がいないことを確認して硫黄島北北西約155キロの海面に落下させた。機体は水没した。同本部で原因を調べている。無人偵察機は04年度から開発に着手。09年度までの開発経費は約103億円(4機分)。機体は1機約8億円。【樋岡徹也http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100210k0000m040086000c.html

Img_3338  引用は以上です。この無人偵察機は、昨年から硫黄島での飛行試験が行われていたもので、F-15から空中で発進し、偵察飛行を行った後に基地に戻り着陸するというものです。偵察飛行を行った後で自分で基地に戻って自動で着陸する、というのがこの無人偵察機の利点です。“この”、と表現したのは、同じ無人偵察機の機体を使って、自動着陸を行わない無人機が過去に開発されていたから、という背景があります。自動着陸装置の搭載されていない昔の無人機は、任務終了後海上に着水して艦船により回収されるという方式で運用されていたのですが、今回の無人機は水没したということですから、浮揚装置は現在の無人機に搭載はされていないようです。

Img_9000  今回の墜落は、問題ではあるのですが、エンジンの空中停止という問題と発表されていますし、空中でエンジンが停止したのちにF-15から危険防止のために海上に不時着するよう操作して、海没処分としたのが実態のようです。つまり、自律操縦装置や遠隔操縦装置には重大な問題が無かった、ということにもなりますから、墜落という不幸の中のせめてもの幸いというべきでしょうか。そして、無人機ですから、操縦者はいませんですし、海上に墜落したことにより人的な損害が無かったことも幸い、と言えるでしょう。

Img_8822  無人偵察機によって、F-15は“偵察番長”となることができる、とその昔Weblog北大路機関には掲載しました。といいますのも、現在、航空自衛隊は偵察機としてRF-4E,RF-4EJを運用しています。しかし、RF-4は、後継機を探しているF-4ファントムの派生型ですから、こちらも後継機が求められている訳です。そこで、F-15のなかで近代化改修が出来ない初期型のアナログ配線で設計されている機体を偵察機として改修することが決定しています。F-15は機体寿命がまだ残っているので、現代の航空戦に対応できるようなバージョンアップは難しいから、戦闘機として用いるのは難しいので、偵察機に転職させてみよう、ということです。愛称はRF-15、となるのでしょうか。

Img_2703  最近の各国が運用する偵察機の趨勢は、偵察専用機ではなくて、普通の戦闘機に偵察の為の機材を機外に搭載して偵察任務を行う、というのが潮流です。その背景には、戦闘機が高性能化して、偵察を兼務しても充分な能力を持っているくらいに技術が進んだ、ということもいえるのですけれども、航空自衛隊のF-15偵察型は無人機を搭載することで、偵察機本隊とは分離して無人機が偵察を行う事が出来ますし、最悪の場合は無人偵察機が囮になることもできますので、偵察機としての能力が大きく向上します。無人機二機を搭載することができますから、“偵察番長”ということが出来るようになります。

Img_7536  最近の無人機は、写真のU-2偵察機のように、高高度を長時間飛行して、戦域監視のような任務に充てることができるものが主流となっています。見た目では翼が大きいものがそれにあたるのですが、航空自衛隊の無人偵察機はミサイルのような翼が小さい形状を採用しています。この形状ですと高速飛行することは出来るのですが、滞空時間は短くなってしまいます。逆にいえば、航空自衛隊の無人偵察機は、高高度をゆったりと長時間滞空出来るような機体では、撃墜されてしまうような、戦闘機の脅威があるような状況で運用することができるわけです。

Img_7863  高速で飛行できる無人機は、普通に危険な、有人機が入ることのできない空域へ偵察飛行することができますし、そして例えば、対艦攻撃を行う支援戦闘機が索敵を行う強行偵察任務にあたることもできます。つまり、日本が必要としている任務に合致する機体だけに、完成には期待が集まる訳です。墜落、という状況は好ましい状況ではありませんが、試作機はまだまだ残っていて、エンジン停止の原因を早急に究明して、次の段階へ進んでほしいと願うばかりです。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (9)
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