◆宿営地開設と任務開始
ハイチでの陸上自衛隊PKO任務は、社会部偏重国際部冷遇という日本のマスコミが有する問題点を反映しているように殆ど報道されません。
そこで、防衛省自衛隊統合幕僚監部のWebサイトをみてみますと、定期的に活動情報などが掲載されています。ハイチ地震が発生したのは1月12日、2月3日時点のハイチ政府公式発表では、死者20万人を確認しているとのことで、行方不明者を含めれば被害が局地的に集中する直下型地震という点も踏まえ、首都ポルトープランスを襲った被害が想像を絶するというほかないことがみえてきます。
このハイチ地震に対して、日本政府は傍観を決め込んでいたのですが、旧与党の自民党からの働き掛けなどもあり、国際緊急援助隊を医療支援として派遣、2月5日、加えて国連ハイチ安定化任務へ陸上自衛隊の派遣を決定し、チャーター機により先遣隊と必要な車両などを空輸しています。
統合幕僚監部Webサイトには、チャーターした世界最大のアントノフAn-225輸送機から車両が展開する様子、そして倒壊したナデール美術館における瓦礫撤去作業の様子が掲載されていました。撤去作業には、油圧ショベルが作業にあたっている写真が掲載されています。また、ダンプにより宿営地周辺の平坦化作業の様子が載せられていました。
輸送機により中型セミトレーラとともにブルドーザーや油圧ショベルが派遣されているのですが、長距離を自走できないこの種の車両は、国内の災害であれば大きな役割を果たすことが出来るのですが、今回の任務では搭載量が限られた輸送機によりセミトレーラを空輸しなくてはならない、という点が少し気になりまして、将来的に施設科装備体系にも、空輸、という概念を含めて設計を行う必要があるのかな、と思いました次第。
バケットローダーも派遣されていまして、宿営地設営は無事完了したようです。記念しての集合写真の背景には七張のテントを確認することが出来ます。派遣された隊員は、現地で国連IDを取得し、教育隊の駐屯地祭でお馴染みの自衛隊体操から一日が始まる、という快活な様子も写真として掲載されていました。
今回は、派遣決定から短時間で現地へ部隊が派遣することが出来たのですけれども、一方で、国会でのハイチ支援に関する議論は殆ど行われず、マスコミもハイチという遠隔地という背景から取材力の限界を来たし、ほとんど報じられていません。しかし一方で、日本を代表して被災地復興に尽力する姿がかの地にあることは確かな訳で、もうひとつ、昔の派遣する、しないをめぐる議論を思い出せば、日本と世界のかかわりについても、一歩議論があっても良いのではないかな、と思います次第です。
HARUNA
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