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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

普天間飛行場移設案最近の動向:国民新党案まとまり、民主党が分散案を示唆

2010-02-21 23:38:39 | 国際・政治

◆民主党の新しい“分散”案は“さまよえる海兵隊”方式

 日曜日なので、落ちついて普天間問題について情報をまとめてみたいと思います。普天間飛行場の移設案が今まで異常に迷走しているようです。これまででも充分迷走しているのですが、それ以上、首相の発言も日々どころか数時間おきに変更されるほどの状況です。

Img_993_3  十二月までに結論を要求していたのがアメリカの立場で、そこを何とか五月までに日米合意に至るとしていた鳩山政権なのですが、少し前に五月末までに日本における意見を調整すると大きく交代しました。五月まで、と五月末までにということでほぼ一ヶ月延ばしたことになるので透けれども、付け加えて日米合意に至るということが日本からの意見を集約する、と大きく退行したわけです。しかし、それも難しいだろうということから、オバマ大統領が訪日する十一月までをめどに意見を調整するという予測が出ていまして、もともと一つの飛行場を沖縄県内で移設しようとしただけの話なのですけれども、日米関係の大きな外交問題として浮上しつつある状況です。

Img_8312  普天間問題、選択肢を整理してゆきましょう。まず、この問題は日米間の国際関係に依拠した問題ですから、日米間の合意を模索した上で、各論、つまり基地をどこに移設するのか、即ち移設地について日米合意の範囲内で検討するというものになります。今回は、この合意の範囲外も含めて、日本国内で意見を調整した上でアメリカとの交渉を行おう、ということで問題が複雑化している、ということになるのですよね。選択肢としては、第一に現在の日米合意に基づいて名護市辺野子沖に海上の航空基地を建設しよう、という選択肢、正直なところこれがもっともだ東名のですけれども、今日では辺野子の地元である名護市が基地反対運動の加熱という状況にあり、連立与党を組む社民党も大きく反対しています。もう一つの選択肢は、ほかの地域に移転予定地を探すということ、こちらは連立与党が必死に模索している分野なのですけれども、時間的にこちらは難しいでしょう。選択肢として最後に挙げたいのは選択肢となり得ないことなのですけれども、結局移設先を決定できず、普天間飛行場を現状維持するということです。

Img_0005  普天間移設、過去の計画も対象に 首相「検討する価値ある」  鳩山由紀夫首相は17日、沖縄の米軍普天間基地の移設先について「かつてうまくいかなかった案でも検討する価値はある」と述べ、自民党政権時代に検討対象となった候補地も含める意向を示した。首相官邸で記者団の質問に答えた。  政府はこれまで、米軍キャンプ・シュワブ陸上部やキャンプ・ハンセン、ホワイトビーチ、嘉手納基地などを検討したことがある。いずれも地元の強い反対で断念した。 沖縄県名護市の稲嶺進市長は同日、都内で国民新党代表の亀井静香郵政・金融担当相、北沢俊美防衛相らと相次いで会談。国民新党が掲げるキャンプ・シュワブ陸上部への移設案に反対する考えを伝えた。(07:00) http://<wbr></wbr>www.nik<wbr></wbr>kei.co.<wbr></wbr>jp/news<wbr></wbr>/seiji/<wbr></wbr>2010021<wbr></wbr>8ATFS17<wbr></wbr>0391702<wbr></wbr>2010.ht<wbr></wbr>ml

Img_9118  必死なのでしょう。過去に問題があったことから却下された案を模索するということなのですから。キャンプシュワブ陸上部、こちらはなぜキャンプシュワブ沖合になったのかということに目を向ける必要があるでしょう。地図をみれば一目瞭然なのですけれども、陸上部に設置した場合、名護市の市街地が離着陸する米軍機の進路と重なってしまいます。海上に滑走路を配置した背景には、騒音が住宅街上空ではなく海上ならば、騒音被害も局限化することができるのですし、万一、墜落事故が発生したときには、過去には住宅街や大学構内に墜落し大きな問題となったこともあるのですけれども、海上に墜落すれば、悲劇ですし、機体燃料の流出など環境被害が零とはいえないものの、市街地に落ちるよりは市民への被害は低くなるといえるでしょう。埋め立てることで環境破壊は無視できませんが、自然環境か人間の生活環境かという究極の選択になるところですし、関西国際空港や中部国際空港といった海上空港の環境に与える影響や漁場に与える影響は当初考えられたほど大きくなかった、ということを一つ提示したいと思います。

Img_0176  ホワイトビーチ地区、沖縄の勝連半島先端にあるこの場所には、揚陸艦の桟橋がありまして、海上自衛隊の施設もおかれている場所です。11基の燃料タンクと二本の桟橋を中心とした施設で、艦船への整備補給機能は佐世保基地に比べれば限定されるものの桟橋は850メートルのA桟橋、450メートルのB桟橋、ともに幅24メートルの大きなもので、揚陸艦から海兵隊の乗艦に不可欠な施設です。桟橋のとなりに航空基地、舞鶴基地のような配置でしょうか、検討されたものの、そもそもホワイトビーチは強襲揚陸艦が入港できる数少ない基地でして、面積的にも那覇軍港と呼ばれる那覇港湾施設よりも大きな基地です。ここに航空基地を建設するという案は、ホワイトビーチ地区の海軍基地機能を損なうような案であれば、アメリカ側が了承しないでしょう。もちろん、ホワイトビーチ地区の拡張案というものであれば、検討に値するものがあるのかもしれませんが、ホワイトビーチへの統合という案では不可能です。

Img_8619  嘉手納統合案、この案が可能か不可能なのかでもっとも右往左往した案でしょうか。嘉手納基地からF15一個飛行隊が青森県の三沢基地に移転するという情報が流れ、三沢基地へは先だって展開するF16飛行隊が2009年内をもってアメリカに帰国するという情報が流れたのですけれども、F16のアメリカ本国移転という情報は事実ではなく、嘉手納基地もF15だけの基地ではないことから、仮に一個飛行隊が移転したとしても普天間の機能は統合し得ないということが理解から抜け落ちていたようです。そもそも、普天間は海兵隊の、嘉手納は空軍の、有事における集約拠点になる基地なのですから、平時は空いているように、いえても有事の際にはその限りではないわけでした。自民党時代に検討された嘉手納統合案は、どちらかといえば嘉手納基地に隣接する嘉手納弾薬地区に普天間代替飛行場を建設するという、実質的には嘉手納基地拡張案というべきものでした。弾薬地区の隣接してヘリコプターを運用することは少し安全乗難しいことなのでしょうけれども、加えて騒音は確実に増大する、これが住民の理解を得られなかった訳なのですよね。嘉手納基地は、騒音の規模では沖縄最大の基地といわれています。そこにもう一カ所飛行場を隣接して建設し、このことを嘉手納統合案としていたので、少々無理があるものではあったのです。民主党政権時代にはいってから提示された嘉手納統合案では、嘉手納基地の運用を制限して騒音を現時点よりも低くする旨が提唱されていましたから、自民党時代の嘉手納拡張案とは似て非なるものだったということになります。

Img_0026  国民新が普天間移設2案了承 ・・・ 国民新党は17日午前の政務調査会で、沖縄県の米軍普天間基地の移設先として、県内の米軍嘉手納基地への統合案と、名護市辺野古のキャンプ・シュワブ陸上部への移設案の2案を党の方針とすることで了承した。  両案とも暫定的な移設であり、普天間基地は10年間閉鎖した後、返還する。県内移設の前提として、県外に訓練を分散移転し、騒音など沖縄の負担軽減策も盛り込む。  嘉手納統合案は、基地内のゴルフ場跡地にヘリの格納庫などを新設し、普天間基地のヘリ部隊23機を移す。キャンプ・シュワブ陸上案は、ヘリポートと1500メートルの滑走路を新設。嘉手納統合案は約1000億円、陸上案は約3000億円で移設可能と試算している。(17日 16:22) http://<wbr></wbr>www.nik<wbr></wbr>kei.co.<wbr></wbr>jp/news<wbr></wbr>/seiji/<wbr></wbr>2010021<wbr></wbr>7ATFS17<wbr></wbr>00V1702<wbr></wbr>2010.ht<wbr></wbr>ml

Img_8436  国民新党案は、キャンプシュワブ陸上部か嘉手納基地に暫定的な飛行場を建設して、普天間飛行場を閉鎖、閉鎖から十年後に返還するというものです。十年間閉鎖ということは一つは有事の際に代替飛行場の面積がたりなかった場合に再開するという海兵隊への利点、そして返還された後の再開発計画が全く未定の宜野湾市に対して、十年間借地料を地権者に支払い続けるとともに返還後の用途を検討するというものでした。ただ、キャンプシュワブ陸上案は、前述のように騒音の問題がどうにもなりません。嘉手納統合案は、こちらも前述のように嘉手納基地そのものの騒音hんもんだいがどうにもならないという一点、そして嘉手納基地の面積は余裕がありそうな中で余裕が実のところ少ないことがあり米軍側の合意が難しいという一点。この二つが解決されない限り、現実性が難しいでしょう。なぜ、ここに国民新党が、思い切ってキャンプシュワブ沖合案を盛り込まなかったのでしょうか。国民新党は2005年に自民党議員を中心に一部民主党議員を受け入れ誕生した政党ですから、自民党案が制定された合意形成の過程に参加していたわけです。そういう背景から自民党時代のキャンプシュワブ沖合案を支持するという動きがあっても、おかしくはないと思うのですけれども、ね。

Img_8392  社民党には、ううむ、台湾海峡や朝鮮半島をにらむ沖縄の米軍基地をグアムやサイパン似移設するということは非常に現実離れしているといわざるを得ません。そこまで無理を押し通すのならば、いっそのこと中国共産党や挑戦労働党との間で太いパイプを有する社会民主党なのですし、香港や中国の一部に駐留するという意味で北京の了解を得て台湾、もしくは北朝鮮の理解を得て、韓国国内、いやもういっそのこと北朝鮮国内にでも基地を移設できないか東奔西走してみるのも一つの手かもしれません。米朝関係を修復して北朝鮮に米軍基地を移設させることができれば、福島党首はアメリカのTIME誌からPerson of the Yearとして選ばれ、さらにはノーベル平和賞が贈られること間違いないでしょう。出来れば、の話なのではあるのですけれども。

Img_8690  普天間移設問題:暫定的に存続 首相周辺で検討、米難色 ・・・ 【東京】米軍普天間飛行場移設問題の解決策として首相周辺で、普天間飛行場を存続させた上で海上自衛隊管理とし、緊急時のみに自衛隊と米軍が使用、すべての訓練を九州の複数の自衛隊基地に分散する「首相案」を検討していることが19日までに分かった。既に首相側近が米政府幹部にも打診。だが訓練環境が不十分などとして難色を示しているという。  政府内では、同案とは別に名護市のキャンプ・シュワブ内にヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)か、滑走路を造る「シュワブ陸上案」も検討されており、政府・与党3党でつくる基地問題検討委員会以外に政府内で複数の案が検討されている模様だ。  いずれの政府検討案も県内移設によるもので、昨年の衆院選中に「最低でも県外」とした首相発言との整合性が問われそうだ。  「首相案」は、普天間飛行場存続は暫定的とし、返還時期は周辺の安全保障状況を踏まえ検討していく。常駐機は置かず、訓練は航空自衛隊の新田原(にゅうたばる)基地(宮崎)や築城(ついき)基地(福岡)、陸上自衛隊日出生台演習場(大分)、海上自衛隊大村航空基地(長崎)などに分散移転することを柱にしている。  政府関係者は「首相は訓練を県外の自衛隊基地へ分散することで普天間を閉鎖状態とし、事実上『県外移転』を実現した形にしたい考えだ」と述べた。  シュワブ陸上案は、キャンプ・シュワブ陸上に約500メートルのヘリパッドか、1500メートル程度の滑走路を建設し、訓練を鹿児島の徳之島や馬毛島に移転する計画。しかし米側は、代替施設に垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを配備する予定で、同機の運用には1600~1800メートルの滑走路が必要。陸上案が実現しても、滑走路機能が不十分のため普天間の継続使用が予想される。(仲井間郁江) (琉球新報) http://<wbr></wbr>mainich<wbr></wbr>i.jp/ar<wbr></wbr>ea/okin<wbr></wbr>awa/new<wbr></wbr>s/20100<wbr></wbr>220rky0<wbr></wbr>0m01000<wbr></wbr>7000c.h<wbr></wbr>tml

Img_7888  この案は”さまよえる海兵隊方式案”というべきなのでしょう。最低でも県外という首相の提案は、最高でも議論の圏外といわざるを得ません。現在海兵隊が運用しているCH46輸送ヘリコプターの代替として、航続距離が非常に大きいティルトローター機V22が導入されることとなっています。これにより、海兵隊陸上戦闘部隊がおかれている沖縄本島からもう少し距離のある場所に飛行場を建設できる可能性が考えられたのですけれども、戦闘ヘリコプターであるAH1WはAH1Zに置き換えられ、CH53大型ヘリコプターもCH53Kに置き換えられるのですけれども、こちらはそこまで既存機と比べて航続距離が大きくなっているわけではないわけでして、ちょっと難しいでしょう。従って分散案は、日本が航続距離が大きく搭載量の大きい機体、SFのサンダーバード2号のような機体でも開発してアメリカに供給することができなかったらば、不可能でしょう。九州全般に移設して、というのは、思いつきもここまできたのか、というような話です。機体を分散移転させるとともに、この案では水陸両用戦闘車両をはじめとした海兵隊陸上部隊をどこに配置するか言及していませんし、九州に及ぶ負担はどのくらいになるのかということも全く未知数です。沖縄がどうにななれば九州はどうでもいいという、思い切った案ですが、思いつきにしてももう少しいいものがあるのではないでしょうか。しかも、普天間の基地機能を全て移設できない場合は普天間の部分運用継続も選択肢に入れるという非常に苦しい案となっています。北大路機関では、普天間機能を那覇基地に統合し、那覇空港を辺野古沖に沖縄空港として移設し、移設完了までは一部海上施設で暫定的に普天間の機能を辺野古沖に移設、新空港工事終了とともに那覇空港と辺野古沖普天間暫定代替基地を入れ替える案を提示したのですが、実際はどうなるのでしょうか、最終的に、移設後20年以内、2035年までに国外を含めた県外移設を目標として第一に辺野古沖に移設するのが理想とは思うのですけれどもね。

HARUNA

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