北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

南スーダンPKO自衛隊派遣:空爆・国境衝突と悪化する情勢へ万全の備えを!

2011-11-14 23:24:14 | 防衛・安全保障

◆90式戦車や地対空誘導弾派遣も検討すべき

 南スーダンへの施設部隊を中心とした自衛隊PKO派遣が決定されましたが、ここ数日間国境地域でのスーダン軍との軍事衝突やスーダン軍による空爆が行われるなど状況は急速に悪化しています。

Img_2630 南スーダンは産油地域ですが、長い独立運動が実を結びスーダン国内での国民投票の結果独立が承認、今年独立を果たしました。しかし、国内には神の抵抗軍など武装勢力が存在しており、加えてスーダンと南スーダンの関係も決して良好ではない実情があり、この地域は独立後の国家創建についての国際社会からの支援を必要としていまして、野田内閣は自衛隊の派遣を決定したのですが、そこに情勢悪化が加わっているという状況。

Img_8845 自衛隊はこれまでも危険が想定される地域への海外派遣へは、主力となる施設科部隊に加えて普通科部隊の護衛を編成し、これまではルワンダ派遣の際に機関銃を持っていくのは憲法上禁止されている武力の使用にあたるかの議論が生じ、結局62式機銃を一丁ならば抵触しないとする討議が行われましたが2002年の東ティモール派遣には62式機銃10丁を携行、イラク派遣では重機関銃を搭載した96式装輪装甲車や軽装甲機動車、無反動砲が装備されていました。

Img_2376 現与党民主党が野党時代に激しくアフガニスタンへ派遣を提言していましたが、自らが与党となった際、海外派遣で犠牲者が出れば責任者の立場にあることを思い出したのか、一転して慎重となりました。このアフガニスタンでさえも、一応は国際治安部隊ISAFが治安の優勢を担っているという前提での散発的な戦闘が繰り返されているという実情を前に派遣を見合わせたのですが、今回の南スーダンは隣国から正規軍による圧力がかけられている、という厳しい現実があります。

Img_2261 イラクでも脅威対象は武装勢力でしたので、少なくとも相手が航空機を運用することや戦車を保有していることはなく、攻撃はもっぱら自爆テロや仕掛け爆弾、それに散発的な迫撃砲攻撃と場合によって狙撃があった程度でしょう、第三世代戦車など、イラク戦争以前のイラク軍でも旧ソ連仕様からスペックダウンされたT-72というくらいでした、スーダン軍の運用する99式G型はもっと強力です。

Img_2041 スーダン軍、アフリカ中部の国ですからどのくらいの軍事力を持っているのか、というとどうしても軽視する傾向がありますが、陸軍は中国製99式G型戦車のライセンス生産を行っており、陸上自衛隊の74式戦車よりははるかに高い攻撃力と機動力に防御力を備えています。

Img_0334 空軍は飛行隊規模でMiG-29を持っており、どの程度運用されるかは未知数ですが現実的に考えた場合、全面的な攻勢に出られるならばF-15Jの派遣も検討しなくては、というほどの規模、加えてハインドの愛称で知られる重武装の旧ソ連製Mi-24攻撃ヘリコプターを保有していますので、空からの脅威に対抗するためには最低限93式近距離地対空誘導弾、戦車による攻撃を想定すれば90式戦車の小隊くらいは、派遣するかもしくは周辺地域の洋上に輸送艦などにより事前配備しておく必要はあるでしょう。そして緊急撤収などの視点も必要ですが、自衛隊がこれまで考えてこなかったほどの地域への部隊派遣というところは重大な課題です。

Img_1659 自衛隊の警護はルワンダ軍が実施することとなっていますが、ルワンダ軍は装備戦車がT-55、装甲車は半世紀前のフランス製M-3,それにAML-60があるほどで、砲兵はなく主力火力は81mm迫撃砲。やはり自前で戦車や地対空誘導弾が無ければ丸裸というもの。実質、一個連隊戦闘団以下の規模の陸軍、という表現になるのでしょうか。

Img_7420 戦車を持っていかずとも01式軽対戦車誘導弾を携行すれば戦車が出てきてもタンデム弾頭を搭載しトップアタックにより対処できる、と考える方もいるかもしれませんが、それは対戦車戦闘を実施した場合の話でしてミサイルそのものはそこまで大きなよき視力とはなりません、しかし90式戦車を派遣していれば、戦車の存在そのものが大きなプレゼンスとなりますから相手に戦車の使用を思いとどまらせることが期待できます。師団対空戦闘システムから外れた近距離地対空誘導弾単体での運用も能力を著しく制限するのですが、こちらが地対空ミサイルを持ちこんでいる、という事実だけが日本に対する攻撃に大きなリスクを付与させることになります。こうした抑止という認識だけは忘れてはなりません。

Img_6037 南スーダンは内陸国ですので、移動や後方支援の基盤を構築するには中継地を設定することが必要ですからこのための輸送調整部隊を個々に置く必要があり、加えて内陸国であるという事実は緊急時に輸送艦によりそのまま撤収するということが難しくなることを意味します。派遣隊員が根本的な危険に曝された場合には、極端な話、かなりの決断の下準備が必要でしょう。

Img_7954 具体的にはソマリア沖海賊対処任務の派遣航空部隊拠点となっているジブチ航空拠点にF-15飛行隊とKC-767空中給油輸送機、E-767早期警戒管制機を緊急展開させ、一時的に航空優勢を確保、そのうえで洋上に輸送艦かヘリコプター搭載護衛艦を展開させ、派遣部隊員を収容できるだけの機数にあたるCH-47JA輸送ヘリコプター6機を展開させ、派遣部隊は装備を鹵獲されないよう破壊し隣国のケニアかエチオピアへ緊急離脱する、という選択肢も検討しなければなりません。

Img_1506 憲法上どうなのか、という次元ではなく危険な場所に派遣するのですから政府はそれだけ、安全を確保し最悪の場合に備える義務があります、現に空爆と武力衝突が始まり、スーダン軍は有力な装備を保有しているのですからね。とにかく、安易に派遣することは決定したのですけれども、緊急時に玉砕の強要をするような無為は政府には避けてほしく、最低限、重装備の派遣、更に緊急時における離脱というものを検討してほしいと切に願う次第です。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする