北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

第300回護衛任務を完了! ソマリア沖海賊対処任務護衛艦派遣

2011-11-19 22:38:58 | 防衛・安全保障

◆第300回護衛達成は11月12日

 防衛省によれば海上自衛隊はソマリア沖海賊対処任務における護衛任務第300回を無事完了したとのことです。

Img_6932 ソマリア沖に出現する海賊による船舶占拠や乗員拉致事案の連続は我が国のシーレーンへの重大な脅威です。このため海上自衛隊は既に十次に渡り派遣海賊対処水上部隊として護衛艦二隻を常駐させ、船団護衛に充てていると共に八次に渡り派遣海賊対処航空隊として哨戒機を派遣、任務にあたってきています。特にソマリアの位置が欧州とアジアを結ぶ地中海からアラビア海とインド洋への要衝というアデン湾に面していることもあり、ここを通行する船舶量が多いこともあるのですが、日本への関係船が多いという実情があります。

Img_8664 海上自衛隊の海賊対処任務は長期化しています。元来は、ソマリア沿岸に跳梁跋扈した外国漁船による漁業資源の不法奪取への自衛策として武装漁民が外国漁船を強制排除したのに端を発し、武装漁民が外国船舶を拿捕し懲罰的な身代金の要求を行ったところ大きな金額を得ることが出来ることが確認され、続いて貨物船や客船、タンカーなどの一般商船を標的し、期せずして海賊は外貨収入に乏しいソマリアにおける主要産業となってしまったことに加えて、ソマリアの治安機構が崩壊状態からの再興途上にあることから海賊を取り締まることができない状況がこれを助長しているという現状です。

Img_6678 第十次派遣海賊対処水上部隊は横須賀基地を10月11日に出港した護衛艦たかなみ、護衛艦おおなみ、を以て編成される第六護衛隊で、共に同型の、たかなみ型護衛艦。横須賀基地を出港して一か月後に海上自衛隊による海賊対処任務としての第300回護衛任務達成を迎えました。海上自衛隊による護衛は、各国海軍が海賊掃討に重点を置き紹介任務を行う中、海上自衛隊では船団を組みその前後に護衛艦を配置するという方式を採用し、現在まで護衛対象船舶への被害は零という記録の更新を続けており、恐らく今後も更新が続くことでしょう。

Img_9313 海上自衛隊の護衛方式は、護衛任務達成が確実であるという利点はあるのですが、他方で、船団を編成するまでに時間を要し、加えて船団が海賊出現海域をツウ供するまでは36時間から48時間、護衛船団の航行頻度が現状では低いという難点があります。目下のところ受動的ですので、主体的に相当するべき、という意見も参加国にあるようですが、同意に隣国などの海上治安機構再建への支援を行っている日本ですから、確実な護衛と確実な取締り体制、ということを考えた場合有効な案として上位に或るといえるやもしれません。

Img_2990 他方で、任務艦が増大する中、護衛艦不足が顕著化しています。今年三月の東日本大震災において、端的な事例を出せば第三護衛隊群では隷下の護衛艦八隻のうち、二隻が海賊対処任務派遣中、一隻が南西諸島警戒監視任務、四隻が定期整備中で、唯一の護衛艦しらね、は定期整備に向け燃料弾薬を陸揚げした状態で震災への派遣に向かいました。現在は経団連が海賊対処任務部隊の派遣と補給艦の派遣を求めています。船団のより高い頻度での護衛を考えると経団連の要請にも一理あるのですが、艦艇は不足し無い袖は振れません。やはり、護衛艦は現在の防衛大綱に明記された47隻では不足で、冷戦時代の約六十隻、とまではいかずとも冷戦後の約五十隻、編成定数では54隻でしたが、この水準まで戻す事も必要ではないでしょうか。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする