◆世界最大級の通常動力潜水艦、横須賀へ
第6回西太平洋潜水艦救難訓練参加艦豪州海軍潜水艦の横須賀入港、本日撮影してまいりました。EOS-7Dの写真は整理中なのでPowerShotG-12の撮影速報を。
コリンズ級潜水艦ウォーラー、横須賀基地逸見桟橋に停泊中の様子を、ヴェルニー公園から撮影したもので、背景には韓国海軍潜水艦救難艦チョンヘジョンとチャンボゴ級潜水艦が見えます。ウォーラーは1996年から2003年にかけ6隻が就役した中の3番艦で、本艦は1999年に就役しました。一見しますと日本の潜水艦には無い、丸みを帯びた艦首の形状などが目を引くという印象ですね。
本型は、旧式化したオベロン級潜水艦の後継として、スウェーデンのコックムス社の技術協力を受け設計されたもので、コックムス社とオーストラリア国内の複数企業による合弁会社オーストラリアサブマリン社により設計、建造されたオーストラリア海軍初の国産潜水艦となります。
コリンズ級の最大の特色はその大きさで、通常動力潜水艦として海上自衛隊そうりゅう型潜水艦が就役するまで、世界最大の通常動力潜水艦となっており、水中排水量3353t、全長77.8m、全幅7.8m、喫水7mと巨大です。同時に入港した韓国海軍のドイツ製209型チャンボゴ級が世界的には平均的な大きさであるものの水中排水量が1285tというと、その大きさが分かるでしょう。
大型通常動力潜水艦は、通常の潜水艦と比較し航続距離と行動半径が大きくなる利点がありますが、併せて潜水艦の生存性を左右する水中放音の増大を生むため、海上自衛隊も1970年の潜水艦うずしお型建造の際に雑音に苦労させられていますが、コリンズ級もそれ以上に苦労をしたと伝えられるところ。
一番艦は艦首部分と中央部をスウェーデンより輸入し、その後は全てオーストラリア国内で建造されていますが、問題点として特に水中雑音が致命的に大きく、艦形に問題があるとする点と機器設置建造精度に問題があるとする点が指摘され、幾度か大改修を行っています。このほか、戦闘情報装置の容量不足と処理能力不足等の問題もあり、改善に多くの努力を要しました。
こうした中、本型はいうつかの近代化改修計画があり、コックムス社との協同で本型へのIP潜水艦化、つまり非大気依存機関であるスターリング機関の搭載改修に関する陸上試験が行われたほか、船殻外装式の機雷敷設装置の搭載などが検討されましたが、こちらは実現していません。
他方で、コリンズ級の後継潜水艦として、海上自衛隊から、そうりゅう型潜水艦を輸入するべき、とのオーストラリア議会と海軍の動きもあり、海上自衛隊とオーストラリア海軍は広い太平洋を任務範囲としつつ、政治的理由から原子力潜水艦の保有が現実的ではないため、共に大型化している、そういった意味でも興味深い一隻です。西太平洋潜水艦救難訓練は一昨日より開始され、明日から相模湾での洋上訓練が行われるとのことです。
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