北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

レッドフラッグ・アラスカ2014演習へF-15戦闘機・E-767早期警戒管制機など12機を派遣

2014-06-02 23:50:34 | 防衛・安全保障

◆多国間軍事演習へ日米共同訓練として参加

 航空自衛隊は本日よりレッドフラッグアラスカ2014演習へ部隊を派遣しました。

Img_8455_1 航空自衛隊は強いのか、これは素朴な疑問であると共に様々な機会で問われる命題です。練度は高い、と言ってもどのくらいか、実戦経験の有無からどう考えるのか、弱いのならばどの部分を補強するのか、戦争を仕掛けられたときに勝てるのか、その結論への羅針盤がレッドフラッグアラスカへの派遣です。

Nimg_8307 レッドフラッグアラスカは、米空軍がヴェトナム戦争での経験から様々な想定を具体的にシナリオとして推進します。具体的には航空阻止や航空撃滅戦に近接航空支援や輸送支援と策源地攻撃に防空網制圧などなど、航空戦力が実任務を想定した部隊運用を技術から戦術、作戦立案から各国間調整、情報収集に不意遭遇対処、などざまざま。

Cgimg_2274 こうした行動を通じ、あらゆる不測の事態へ対応する能力を最前線から上級指揮官まで練成する目的で開始された訓練です。自衛隊は米国アラスカ州アイルソン空軍基地及びエレメンドルフ-リチャードソン米軍統合基地並びに同周辺空域等に派遣されます。

Iimg_3314 演習は、広大な米本土の訓練空域を舞台に、実際の広大な地域を想定某国に見立て、実際にF-16等の仮設敵や防空部隊を準備、例えば奇襲により生起した武力紛争を如何に短期間で軍事的に封じ込めるか、例えば弾道ミサイル脅威を如何に索敵し敵防空網を制圧し撃破するか、例えば大規模紛争を隣国の競合国に影響を与えず制圧するか、など。

Nimg_5472  そもそも、航空作戦とは戦闘機同士の空戦や対地攻撃などだけでは決まりません、電子戦や防空網制圧は当然加わりますし、実任務ばかり考えますと後方支援が疎かになる、輸送機を護衛する任務もあるのだ、と考えていますと民生被害の問題や情報収集の問題も出てきます、どれだけ秀でていても片手落ち。

Nimg_8338  そのために実戦的な訓練を目指すのですが、実戦というものは、上記の通りの総合的な最前線の第一線級装備がすべて投入され展開される実戦となりますと、2003年のイラク戦争ではイラク空軍がほぼ飛行しませんでしたし、1982年のフォークランド紛争や1991年の湾岸戦争に1998年のユーゴ空爆など、なかなかありません。

Img_1234  実戦的な訓練とは気合の入った訓練だ、と勘違いし、不眠不休に徹夜を重ねる訓練自慢などは、実のところ我が国でも耳にしますし、隣国でも我慢大会のように実施している話は聞くのですが、状況が想定外の長期化を迎えた場合、一週間に週刊徹夜で通せるのか、など、逆に非現実的な訓練となる話もあるところ。

Img_7046  この演習が実施される前は空戦訓練や航空攻撃訓練などが重視され高度な能力を以て実戦に臨んだのですが、実戦とは想定外の状況が連続し、錯誤の連続と対応が現場と指揮官共に追いつかなくなり、結局当初計画通りの想定が成り立たず訓練程対応がうまくいかないという反省がありました。

Kimg_6849  レッドフラッグ演習が実戦的なシナリオを想定して展開する背景とはまさにこの点で、訓練通りの実戦を目指す事は相手が想定外の行動を採るため難しく、敢えて仮設敵と実戦通りの想定を用意し実戦通りの訓練を経験させる、故に徹頭徹尾実際の武力紛争を想定し、審判部が参加部隊に極度の負担を掛け練成する、というもの。

Eimg_3182  自信満々の各国演習参加部隊が袋叩きにされ、そこから学ばせる手法が採られるとのこと。事前研究と事前準備万端で展開しても、やはり不確定要素が一つ入ることで想定が反転してしまい、失敗から学ばされることも多いらしいです。

Img_0025  航空自衛隊からの参加部隊は航空総隊及び航空支援集団より310名が参加し、参加航空機はF-15戦闘機6機、E-767早期警戒管制機1機、C-130H輸送機3機、KC-767空中給油輸送機2機、という制空戦闘と後方支援能力を考える上で、一つのまとまった部隊が参加します。

Eimg_5050 F-15戦闘機はアラスカまでの長距離飛行に際し、米空軍の空中給油機より空中給油支援を受け展開します。前述の通りレッドフラッグアラスカ演習では様々な想定の訓練が行われるのですが、航空自衛隊が参加する訓練は、防空戦闘訓練、空中給油訓練及び戦術空輸訓練、とのことでした。

Himg_6118 多国間合同演習というレッドフラッグアラスカ演習は、アメリカの同盟国であるオーストラリアにNATO諸国や韓国より空軍が参加、それだけでなくイスラエル空軍やその周辺の中東諸国からも空軍部隊が参加し、インド空軍なども参加するため、基地には新旧航空機が並ぶことに。

Img_90_00  参加航空機は米国製F-16やF-15から欧州製EF-2000にトーネード、更にはロシア製Su-27戦闘機なども参加します。こうした多国間演習ですが、我が国では集団的自衛権行使への憲法解釈上の制約から多国間演習に参加し各国との連携を行うことが完全には出来ません、そこで日米共同訓練として参加しています。

Img_3092 このあたり、非実戦的ではないか、と指摘されるかもしれませんが、有事の際に即座に憲法を改正できる訳ではありませんし憲法を無視することも出来ません。ですから、憲法上の制約のもとで可能な協力関係の限界を演習から学ぶことも、逆に日本が参加する演習の重要な要素と言えるかもしれませんね。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

 

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