北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

日米の防衛への認識の相違はないか? 集団的自衛権論争とイラク・クリミア問題

2014-06-22 23:49:43 | 国際・政治

◆最悪の場合、日本主体の集団的自衛権行使も

 我が国の防衛ですが、昨今のアメリカによる軍事力行使の現状を見た場合、ある種根本から再検討を強いられることとなるやもしれない、そんな印象を危惧として感じるようになりました。

Img_6592  イラクにおけるISIL攻勢に対し、オバマ大統領は宗派間合意が軍事介入の要件として提示しました、そもそも宗派間対立がISIL攻勢の遠因にある訳ですから、宗派間合意が実現すれば内戦状態に近い現状の状況は解消されます、これはアメリカが友好国支援のための軍事力の行使へのおおきな躊躇が生じ得る、という現状を端的に示しているにほかなりません。

Iimg_1781 ISILの攻勢は、その策源地であるシリアの内戦が長期化し、反政府組織とテロ勢力の合流と戦力蓄積が背景にあり、これは昨年のシリア空爆による内戦の早期終結をアメリカが準備しつつも見送った事が遠因で、結果的に元々の主体である民主化勢力へテロ組織が合流してしまた。

Img_0264  現状ではテロ組織と民主化勢力、その判別が難しくなり、アメリカがアサド政権を支援することは残念ながら考えにくい訳ですけれども、アサド政権かそれに代わる強権政権の樹立無しにはシリア介入が解決策とならない手遅れの状況を成立させるに至ったところ。

Eimg_4619 シリアからイラクへ政権が意図しないテロの輸出という状況にいたっている現状ですが、イラクへの軍事介入がこれ以上遅れたならば、イラク戦争と同等の介入が必要な状況となるか、シリアとイラクの一部融合の懸念、イランのイラクシーア派政権支援への介入による内戦の本格化、破綻国家化と中東産油地域全域への不安定の拡大、危惧は収まるところを知りません。

Img_8666 クリミア情勢についても、まず、ウクライナにおける親ロシア政権の暴動による崩壊を契機として混乱が予想された際に、艦隊と海兵遠征群を含めた事前展開とウクライナ支援の姿勢を前面に押し出していたならば混乱は局限化できたでしょうが、現状ではロシア系住民保護にクリミアを併合して以降、ロシア系住民が多い東部ウクライナのロシアへの合流を求め、事実上の内戦に展開しています。

G12img_4857 アメリカは軍事力を使わない選択肢を選択する、主として事態を放置し状況が広域化且つ悪化する懸念を踏まえても、やはり軍事力の投入に躊躇する、この状況は、一部では、例えばロシア軍のウクライナ国境への進出に際してNATO諸国への戦闘機部隊派遣などで拡大阻止には臨んだ米軍ではありますが、やはり積極性の欠如は否定できません。

Img_8934  アメリカは第二次大戦におけるモンロードクトリンの堅持による中立路線、義勇兵という形で航空部隊等を派遣しましたが、日本からの直接攻撃を受けるまでの最後までの不介入という実例がありますので、現在のオバマ政権が例えば軍事介入の選択肢を排除することで長期的により大きな被害が生じる可能性を無視してでも、その姿勢を堅持する、可能性としては否定できないでしょう。

Kimg_7381 すると、日本の島嶼部防衛に関する有事、日米は同盟国ですのでこの危惧は杞憂でしょうが、我が国海上交通路上の死活的利益に関わる重要事案、具体的には南シナ海ですが、事態が発生した際に米軍は必要な行動を採り得るのか、憲法上周辺事態でもない海域での状況へ我が国はどう対処するのか、検討する必要が出てくるでしょう。

Img_3828 この点で防衛に関する視点は、日米で非常な温度差があります、自国のシーレーンを支えるために艦隊を出す場合でも国際紛争に直面する状況では対応できない、という我が国の防衛力への消極性は理解されないでしょうし、その場合に米軍の行動に依存しているという日本の世論もさらに理解されない可能性はあります。

Jimg_2746  危惧するところはシーレーン途絶など我が国が間接的な形で大きな被害を受ける状況が南シナ海地域で生起し、その状況をアメリカが対応することが出来ず、大規模な海上戦と陸上戦闘が長期的に展開し、介入の体制を採らず国際社会の合意を待つというような無介入の意志を示し続け、手遅れになるという状況、こうした際にどうするか。

Bs_img_7985 専守防衛を国是として世界にも認知される日本の防衛政策ですが、そもそもその専守防衛は、歴史上自らを侵略国と名乗った国家は存在せず、概ねどの国であっても専守防衛に類する国防政策を採っています、が、我が国は諸国とは比較にならないほどの軍事力の行使を選択肢から排した国家ということは、通念として諸国には理解されていない。

88img_1087 こうしたうえで、極限まで軍事力の運用を政策にとる事を排した我が国の姿勢が、結局は予防外交という形での紛争の武力紛争化を回避する選択肢をも排しているという状況が、諸国間の国際の平和と安全に大きな影響を及ぼすという現実に直面した際、どうすればよいのでしょうか。

Himg_4040 昨今、某政党のポスターなどで“海外で戦争する国にさせない”という標語を散見しますが、海外での事態拡大を放置し戦線が国土に展開する状況まで待つことは即ち、“戦争はやはり国内で”、という意味でもあり、専守防衛は国土が戦場となる前提での悲壮な覚悟が必要となるはずなのですが、この部分に関する合意が採られているとは言い切れないところ。

Iimg_4317 すると、例えばアメリカを除いた多国間の防衛協力を構築し、友好国をステイクホルダーとして支える覚悟というものも長期的に必要となるのかもしれません。日本主体の集団的自衛権行使、戦後の憲法観では完全に禁忌であった概念ではありますが、好むと好まざるとに関わらず、選択肢がその一つになるまで追いつめられる状況、想定しておく日が来ないよう祈りましょう。

北大路機関:はるな

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コメント (1)
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