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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

米政府、四月日米首脳会談に“自衛隊のアフリカ派遣を要請”オバマ大統領より安倍総理へ

2014-06-03 23:50:39 | 国際・政治

◆欧州NATO加盟国陸軍の縮小を背景に考える

 共同通信などの報道によれば、アメリカ政府は4月24日の日米首脳会談においてオバマ大統領が安倍総理へ更なる自衛隊の平和貢献を促したとのこと。

Img_2369 現在陸上自衛隊は内戦状態に陥った南スーダンの建国後におけるインフラ整備へ大隊規模の部隊を派遣しているほか、ソマリア沖海賊対処任務へジブチ航空拠点の海上自衛隊哨戒機部隊警備任務へ地上部隊を派遣しています。南スーダンについては危機的な状況が昨年末より半年以上継続し、緊張状態となっていることは報道により広く知られているところです。

Gimg_1585 4月24日の日米首脳会談においてオバマ大統領は、イスラム過激派などが活動を強めるアフリカ地域での国連による国際平和維持活動へ、具体的な国際平和維持活動については明示されなかったようですが、アフリカ地域としたうえでより積極的な自衛隊の参加を求めたとのことです。

Fimg_6468_1 現在自衛隊が派遣しているアフリカでのPKO任務は国際連合南スーダン派遣団 (UNMISS)、陸上自衛隊施設部隊が最大330名と現地政府機関等との調整へ40名、更に人員や物資等の空輸及び空輸を行う航空機を運用する170名規模の部隊を派遣しています。UNMISSは8000名規模の部隊が展開していますので、占める重要度は低くはありません。

Img_1268 アフリカでのPKO任務には、南スーダンの隣国で南スーダンが独立したスーダンにおける国際連合アフリカ連合ダルフール派遣団(UNAMID) の停戦監視任務に当たる19000名の派遣、リベリア内戦の停戦監視に15000名の兵員が展開している国際連合リベリア・ミッション (UNMIL)、など。

Hbimg_9466 内戦状態の停戦監視と民兵部隊への警戒に16700名の兵員を派遣する必要が示された国際連合コンゴ民主共和国ミッション (MONUC)、内戦終結後の和平プロセスの平和維持や治安維持任務に10000名の兵員が展開しつつ和平合意履行への監視が緊張度を増し更なる派遣の必要性が提唱される国際連合コートジボワール活動 (UNOCI)、こういったものが展開中です。

Gimg_3596  日本政府は憲法上の制約から停戦監視任務へ国際平和維持活動の本隊業務への参加については非常に慎重な姿勢を維持しており、自衛隊はインフラ整備支援や人道支援任務における物資輸送や医療支援など、活動は限定させていますが派遣の実績は着実に積み重ねてきました。

Nimg_1609  しかし、冷戦終結後から既に20年以上、各国、特にNATO加盟国は欧州地域を中心に陸軍部隊の大規模な削減を進めており、アフリカ地域での治安悪化へアフリカ諸国が展開できる部隊規模の不足をその周辺地域では補うに十分な能力を維持しているとは言いにくくなってきたところ。

Img_1432 陸上自衛隊は1994年の18万名の定員と比較し2014年の新防衛大綱下でゃ15万1000名へ、削減されています。以前の防衛大綱ではさらに少なく、14万5000名の規模となっていました。しかし、欧州NATO諸国の削減幅や現役人員規模から比較しますと、先進国中非常に大きな陸軍戦力を日本は有しています。

Img_5383  イギリス陸軍は1995年に26万4300名の兵員を有していましたが2013年には12万1800名まで削減されています、2007年の時点では10万5000名の兵員まで削減されていまして、アフガニスタン派遣などの必要性から増勢に転じましたが、実のところイギリス陸軍よりも現状では陸上自衛隊の方が大きいのです。

Himg_0855  フランス陸軍は1996年の時点で23万6000名の規模を有していましたが2010年には12万3000名にまで削減され、2013年には更に11万9070名にまで削減されました。削減幅が顕著に大きいのはドイツ陸軍で1994年に28万7000名を数えた陸軍は2010年に9万2500名へ、更に2013年には6万2280名にまで削減されました。

Img_13081 イタリア陸軍も1994年の22万3000名から2012年には10万5060名にまで縮小していますし、オランダ陸軍も1995年には4万3300名の規模を有していましたが、2013年には2万1500名へ縮小、スペイン陸軍も1994年の13万8900名から2013年には75000名規模まで縮小されているところ。現在NATO加盟国で陸上自衛隊よりも規模が大きいのはトルコ陸軍の23万名くらいでしょう。

Img_1624 アメリカ陸軍は54万名の規模を維持していますし、カナダ陸軍(統合軍陸上部隊)は1994年に2万名であたのが2013年には2万1600名に、オーストラリア陸軍は1994年に2万8600名であったのが2013年には30240名に、冷戦終結直後と比較し逆にそれぞれ増強されています。

Img_3907 しかし、陸上自衛隊は基盤的防衛力に依拠し全国に普通科連隊を配置させ連隊管区を置いているため、削減されたとはいえ15万の規模を維持しています。政府の南海トラフ地震対処基本計画では自衛隊に10万規模の動員を求めていますので、削れない実情はあるのですが、冷戦時代に陸上自衛隊よりも重厚な陸軍を有していたイギリスやフランスにドイツとイタリアの陸軍が今や陸上自衛隊よりも小規模というのは驚くところでしょう。

Kimg_0478 さて、アフリカ地域へのPKOですが、欧州NATO諸国が大きう兵員を削減し併せてアフガニスタン治安任務への国際治安部隊へ派遣を実施しているため、なかなかアフリカ知己でのPKO任務へ部隊を派遣することが余裕がありません、西アフリカ共同体などが治安任務へ部隊を派遣しているところですが、能力的にまだ高いとは言えず、後方支援任務一つ挙げても苦労しているのが現状のようです。

Gimg_1048 オバマ大統領の自衛隊へのアフリカ地域でのPKO参加の増強要請はこうした実情へ比較的陸上戦力に余裕があるように見える日本へ期たいの表れというべきでしょうか。特に輸送機と輸送艦などを一通り装備しているほか、財政難が伝えられるもののほかの諸国よりはかなり余裕があるようみえる点も含まれるのかもしれません。

Img_453_1 安倍総理は4月24日の日米首脳会談において、オバマ大統領の要請を検討するとしたようですが、昨今の集団的自衛権に関する国際平和維持活動における駆け付け警護などの再検討は、こうした実情に自衛隊を派遣する際、実情に合わない運用を強いられ損害が生じることに対する日本政府の配慮、というべきなのかもしれません。

北大路機関:はるな

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コメント (2)
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