◆大統領命令無ければ航空攻撃は不実施
報道などによれば米海軍はアラビア海を行動中の空母ジョージHWブッシュ戦闘群をペルシャ湾へ派遣することとなったようです。
これはヘーゲル国防長官命令によるもので、ペルシャ湾からの即座の航空攻撃は実施せず、数日内にアラビア海からホルムズ海峡を経てペルシャ湾に展開後、しばらく遊弋しオバマ大統領がイラク政策に関して、航空攻撃を命じたさいに即座の対応をとるための事前展開にあたるとのこと。
空母戦闘群は50機の戦闘攻撃機等や早期警戒機を中心とした空母航空団とイージスシステムを搭載したミサイル巡洋艦とミサイル駆逐艦、攻撃型原潜等から成る戦略単位で、空母ジョージHWブッシュは横須賀のジョージワシントンと同型のニミッツ級です。
米政府はイラクにおけるISLSの攻勢が激化しイラク軍が敗走している現状について、介入策としてイラクのマリキ政権への経済支援から武装勢力ISLSに対する航空攻撃を含めた幅ひろい選択肢を検討しているとのことですが、その選択肢には地上部隊の派遣は現時点では含まれていない、とのことでした。
空母戦闘群の打撃力は非常に大きなものがありますが、航空攻撃は前線航空統制と地上部隊の前進との連携が不可欠で、例えば2001年のアフガニスタン空爆等の際には空爆主体でのタリバン攻撃と北部同盟支援が実現していますが、併せて特殊部隊や海兵隊に陸軍山岳部隊の派遣が正確な航空攻撃を支えたことは忘れてはなりません。
なお、空母部隊はペルシャ湾に進出しますが、オバマ大統領の命令までは攻撃は当然実施されることはなく、現時点では検討中の段階です。航空攻撃とともに地上部隊派遣が仮に実施されたならば、マリキ政権に対してアメリカが全面支援するとの最大限の意思表示になり政治的な意味が大きいのですが、このあたり決断がまだ固まっていないようです。
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