北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

安保法制への最大の誤解、徴兵制(第5回):長期間を要する人員の体力練成と部隊養成

2015-08-18 21:39:33 | 防衛・安全保障
■個人技量を高練度部隊へ昇華する難易度
前回に引き続く徴兵制について、今回は個人技量を高練度部隊へ昇華する難易度との視点から。

訓練検閲、つまり部隊として行動できているかどうかの評価、一回受けられるかどうか、になてしまいまして、そもそも二年間の一任期で自衛官候補生に応募し任官した隊員でも戦闘団検閲は一回しか受けられません。部隊の一員として、大きな作戦の末端を小銃を抱えて担う、簡単そうに見えるのですが普通科隊員の歩兵としての素養の養成は簡単ではないのです。

欧州各国が徴兵制を排し若しくは休止した背景は、まず半年間で兵士を養成できても戦闘部隊として養成できない、そして半年間で「予備役に編入し軍隊を去ってしまうという前提で多数の辞任を毎年教育し続ける事の費用と負担の均衡が取れない、という判断があったからに他ならないのです。さらに空軍や海軍になりますと、基地警備と車両積載支援などしか、本当に半年ではやることを教えられない。

また、体力とっても簡単に身に付きません。普通科隊員は、射撃と格闘技術に銃剣格闘技術と持久走能力が求められます、徒手格闘は主として日本拳法および合気柔術を原型として禁じ手を含めた殺傷力と即戦力を持つ技のみ厳選した総合格闘技術、 銃剣格闘は着剣した小銃を用いて行われるものでもともとは宝蔵院流槍術から発展した旧軍銃剣術の現代版、短剣格闘は銃剣を利用して行われるものです。

現代に格闘等、と思われるかもしれませんが、残念ながら戦争に区分される武力紛争は土地の収奪に収斂する目的で行われるため、敵が我が土地を奪い占有する意図、それに対し防護し兌換する我、という構図がどうしても成り立つものでして、この場合、陸上戦闘はどうしても最後は我と彼、一対一の構図となるためで、必須とはこういうことに他なりません。

自衛隊体力検定、普通科隊員は一級を採る事が求められます。自衛隊体力検定一級は腕立て82回に腹筋85回に3000m走11分26秒以内と懸垂17 回と走幅跳び5m10cm以上、ソフトボール投60m、全部できて一級でして、一つでもクリアできませんと二級、若しくはそれ以下になります、正直当方には無理です。

新隊員教育の前期教育で求められるのは自衛隊体力検定七級ですと、腕立て伏せ28回、膝半屈腹筋40回、3000m走16分33秒、懸垂腕屈伸3回、走り幅跳び3m60cm、ソフトボール投げ30m以上、と。これなら高校生の頃運動系部活にいた方は何とかなりそうですが、当方の様に放送部兼合唱部ですと、特に3000m走が厳しいかもです。ソフトボールもコツを掴まないと意外にとびません。

これが半年で練成できるものでは無いのです。もし皆さんの中に、小中高と全く格闘系競技に体育授業以外で参加した経験がない中で、大学にて日本拳法や合気道に柔道や空手等のサークルに参加し、有段者となるまでを御頃観られた方がいるのでしたら、その難易度が分かるのでは、と思います。コンパ重視の和気あいあい系ならば、参加でき交友関係を深められるでしょうが、大会重視ですと未経験者がついてゆく事は難しい。

北大路機関:はるな くらま
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