■海外防衛産業買収・資本提携
政府、日本企業による海外防衛産業買収へ関連法規解釈変更、本日はこの話題について。

日本企業による海外防衛産業買収を政府が方針に転換するとの報道がでましたが、そもそも防衛産業の定義が不明確で何とも言えません、そして反発する方も居るようですが、そういった方は我が国企業で防衛産業はどの会社か、充分な知識がない方も多かったりします。ですから、資本提携や海外買収というと、また勘違いしがちな方々が、戦争準備か、とうとうはじまるか、と身構えそうなものですが、この誤解について。

じつは防衛産業同士の国際資本提携や買収は既に広く行われていまして、思い出すのは2005年(もう10年も前!)、東芝がアメリカのエネルギー企業ウェスティングハウスを買収しようとしたときのひと騒動でした、ウェスティングハウスは防衛部品を供給していたのです。仮に日本のグループ企業となった場合はどうなるのか、法制度をしっかり理解していなかった場合、日本の武器輸出三原則にどういう影響が生じるのか、アメリカ海軍への装備などの供給に支障が起こる事は無いのか、など。

東芝はサザエさんのCMで“エネルギーとエレクトロニクスの東芝”と自負しているように、エネルギー部分が強く、原子炉など原子力部門が強いのですが、同じく原子力部門に伝統と技術をもつウェスティングパワーを買収し、技術力と経営体力を強化しようとしたものです、が、ウェスティングハウスはアメリカ海軍の原子力空母や原子力潜水艦向け原子炉製造や核燃料の精製を行っている企業でしたので、アメリカ政府とひと悶着起こったかたち。

しかし、一見して軍需産業ではなく、東芝も防衛産業という側面を以て買収しようとしたわけではありません、もともと核兵器や原子力艦艇を持たない日本に原子力分野の防衛産業を買収する意味は無かったわけなのですが、アメリカ政府の視点からは、自国の原子力艦艇の原子炉と核燃料を受け持つ企業が買収されるという状況が生じた訳ですので、少々関心を持たざるを得なかった、ということでした。

現在東芝の子会社ですが、核燃料と原子炉は防衛用として完成していなければ武器輸出三原則に当時規制される防衛装備品には当たりませんし、日本国内からの供給でも、日本企業ではないので、米海軍などへの供給は従来通り続いています。しかし、形の上では東芝の子会社が米海軍へ原子炉を供給しているわけでして、ちょっと考えると、凄いことだと思うのですが、意外と日本国内で報道された際には騒がれませんでしたね。

なお、東芝は日本国内では意外と知られていませんが防衛産業の一角を担っています、防衛需要の全体比率が小さく、実質、本業の片手間に防衛装備品を生産しているかたちですが、81式短距離地対空誘導弾を1960年代から苦心の末完成させ、日本最初の地対空ミサイルシステムを完成させた企業でして、後継の11式短距離地対空誘導弾システムや91式携帯地対空誘導弾と93式近距離地対空誘導弾を生産し、陸上自衛隊野戦防空の全装備生産を担い、ミサイル生産では三菱電機や川崎重工とならぶ名門企業の一つ。基幹連隊指揮統制システムReCsも東芝です。

一方、我が国防衛産業がフランス企業に買収された事例があります、勿論中小企業で防衛分野の企業というような小さな話ではなく、2014年の資本金6058億1300万円と売上高10兆4825億2000万円に営業利益4983億6500万円、かなりの大企業です、そしてその買収に際し防衛部門の存在は買収へ日本政府が関与する事由とはなりませんでした、その企業とは、ルノーによる日産自動車買収と子会社化です。

日産自動車というと、一般的な視線からは、四輪駆動車でも自衛隊に納入しているのか、と思われるかもしれませんが、現在IHIに譲渡しました日産の航空宇宙部門が防衛装備品分野のロケット関連を担当していました、ロケットというと人工衛星を打ち上げるイメージがありますが、その一部門がロケット弾の製造を担当していました、着上陸阻止の決定打というMLRS多連装ロケットシステムのロケット弾生産や110mm個人対戦車弾など、担当していたわけです。

今回は法解釈の変更という部分が伝えられるように、既に防衛産業の海外企業買収は行われています、もちろん、防衛装備移転三原則により防衛装備品の海外供与が行われますので、海外企業の買収は、防衛装備品海外移転へ寄与する視点からの対応が行われる事となるのでしょうが、既に防衛産業同士の買収というは広く実施されており、更に航空自衛隊の次期戦闘機F-35の決定により、多国間国際分業での生産が執り行われる事が決定しており、法解釈変更により実情を換える、というものではなく、実情に法解釈を合わせている、という視点で行われている、と理解することが出来ましょう。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
政府、日本企業による海外防衛産業買収へ関連法規解釈変更、本日はこの話題について。

日本企業による海外防衛産業買収を政府が方針に転換するとの報道がでましたが、そもそも防衛産業の定義が不明確で何とも言えません、そして反発する方も居るようですが、そういった方は我が国企業で防衛産業はどの会社か、充分な知識がない方も多かったりします。ですから、資本提携や海外買収というと、また勘違いしがちな方々が、戦争準備か、とうとうはじまるか、と身構えそうなものですが、この誤解について。

じつは防衛産業同士の国際資本提携や買収は既に広く行われていまして、思い出すのは2005年(もう10年も前!)、東芝がアメリカのエネルギー企業ウェスティングハウスを買収しようとしたときのひと騒動でした、ウェスティングハウスは防衛部品を供給していたのです。仮に日本のグループ企業となった場合はどうなるのか、法制度をしっかり理解していなかった場合、日本の武器輸出三原則にどういう影響が生じるのか、アメリカ海軍への装備などの供給に支障が起こる事は無いのか、など。

東芝はサザエさんのCMで“エネルギーとエレクトロニクスの東芝”と自負しているように、エネルギー部分が強く、原子炉など原子力部門が強いのですが、同じく原子力部門に伝統と技術をもつウェスティングパワーを買収し、技術力と経営体力を強化しようとしたものです、が、ウェスティングハウスはアメリカ海軍の原子力空母や原子力潜水艦向け原子炉製造や核燃料の精製を行っている企業でしたので、アメリカ政府とひと悶着起こったかたち。

しかし、一見して軍需産業ではなく、東芝も防衛産業という側面を以て買収しようとしたわけではありません、もともと核兵器や原子力艦艇を持たない日本に原子力分野の防衛産業を買収する意味は無かったわけなのですが、アメリカ政府の視点からは、自国の原子力艦艇の原子炉と核燃料を受け持つ企業が買収されるという状況が生じた訳ですので、少々関心を持たざるを得なかった、ということでした。

現在東芝の子会社ですが、核燃料と原子炉は防衛用として完成していなければ武器輸出三原則に当時規制される防衛装備品には当たりませんし、日本国内からの供給でも、日本企業ではないので、米海軍などへの供給は従来通り続いています。しかし、形の上では東芝の子会社が米海軍へ原子炉を供給しているわけでして、ちょっと考えると、凄いことだと思うのですが、意外と日本国内で報道された際には騒がれませんでしたね。

なお、東芝は日本国内では意外と知られていませんが防衛産業の一角を担っています、防衛需要の全体比率が小さく、実質、本業の片手間に防衛装備品を生産しているかたちですが、81式短距離地対空誘導弾を1960年代から苦心の末完成させ、日本最初の地対空ミサイルシステムを完成させた企業でして、後継の11式短距離地対空誘導弾システムや91式携帯地対空誘導弾と93式近距離地対空誘導弾を生産し、陸上自衛隊野戦防空の全装備生産を担い、ミサイル生産では三菱電機や川崎重工とならぶ名門企業の一つ。基幹連隊指揮統制システムReCsも東芝です。

一方、我が国防衛産業がフランス企業に買収された事例があります、勿論中小企業で防衛分野の企業というような小さな話ではなく、2014年の資本金6058億1300万円と売上高10兆4825億2000万円に営業利益4983億6500万円、かなりの大企業です、そしてその買収に際し防衛部門の存在は買収へ日本政府が関与する事由とはなりませんでした、その企業とは、ルノーによる日産自動車買収と子会社化です。

日産自動車というと、一般的な視線からは、四輪駆動車でも自衛隊に納入しているのか、と思われるかもしれませんが、現在IHIに譲渡しました日産の航空宇宙部門が防衛装備品分野のロケット関連を担当していました、ロケットというと人工衛星を打ち上げるイメージがありますが、その一部門がロケット弾の製造を担当していました、着上陸阻止の決定打というMLRS多連装ロケットシステムのロケット弾生産や110mm個人対戦車弾など、担当していたわけです。

今回は法解釈の変更という部分が伝えられるように、既に防衛産業の海外企業買収は行われています、もちろん、防衛装備移転三原則により防衛装備品の海外供与が行われますので、海外企業の買収は、防衛装備品海外移転へ寄与する視点からの対応が行われる事となるのでしょうが、既に防衛産業同士の買収というは広く実施されており、更に航空自衛隊の次期戦闘機F-35の決定により、多国間国際分業での生産が執り行われる事が決定しており、法解釈変更により実情を換える、というものではなく、実情に法解釈を合わせている、という視点で行われている、と理解することが出来ましょう。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)