■徴兵制は何故有り得ないのか
10周年を迎えましたWeblog北大路機関、その新特集は、安全保障法制整備への国民の懸念として最大の誤解、徴兵制が安保法制により敷かれるのではないか、という視点について、今回から誤解を解いてゆきたいと思います。

安全保障法制整備に伴い我が国において徴兵制が施行されるのではないかとの指摘が主に野党と一部民間団体などより為されています。安全保障法制は国土が戦場となる以前に域外での予防外交の延長として防衛力を用い得る視点ですので、この論理が不明瞭なのですが、以下のような三段論法に依拠し生まれた発想のようです。

まず、自衛隊が安全保障法制に依拠し国外での戦闘が可能となる、すると大規模な戦闘により自衛官の犠牲者が大勢出るかもしれない、犠牲者続出ならば自衛隊を志願する規模が大きく減るだろう、故に不足する自衛官を増勢するために徴兵制で無理矢理入隊させられるに違いない、子供たちを戦場に送るな、と。

ううむ、分からない論理です。最初は冗談で皮肉を利かせたつもりなのだろうと解釈していたのですが、防衛や軍事への基礎知識は我が国では主体的に資料を集め知る意思がなければ得られませんので、全く予備知識のない方々、特に中高生の方々が不安を抱いているようで、このあたり、分かりやすく解説する必要を感じるようになりました。

現在ではあり得ません、冷戦時代の想定として、特に集団的自衛権は論外という政府解釈があり、大規模紛争の想定がソ連軍の日本本土直接侵攻という時代、集団的自衛権が無いという前提なのですから対処するのが日本一国として、米軍が1980年代に三沢へ再展開する以前、横田基地以北の防衛が自衛隊だけであった頃、ならば、多少説得力はあったやもしれません。

ソ連が相手であれば、日本の位置は太平洋外縁部の弧状列島で戦略上の要衝でしたし、ソ連領サハリンから北海道までは30kmの距離でした。識者の視点には、ソ連軍を本土奥深くに迎え撃つ前提で、北海道北部に戦線を押し止められない場合、本土防衛に陸上自衛隊の人員規模が足りなくなる、との指摘は為されていまして、それこそ最悪の場合は、専守防衛が相手の侵攻を待って防衛に当たるとの特性上、理論の喚起に必然性があったのです。

専守防衛は相手を迎え撃つ前提、領域外で阻止する選択肢を省いていますので、専守防衛を前提とする限り、国土が戦場となるのは必然で、その結果として戦線拡大を阻止できなければ、徴兵してでも押し止める必要か、戦闘に巻き込まれるという形の参加という危惧はありました。

この点、専守防衛を固持する方が戦闘に巻き込まれるリスクは大きく、一部野党が、海外で戦争する国にさせない、との標語を街頭に貼り付けています、対義語は、戦争は近くて速い国内で、というところでしょう。戦争に行かせない、という選択肢は、しかし国家間の武力紛争が少なくとも二か国以上が参加し行われるものですので、1国だけで戦争をしない、と決めることが出来ないのです。

無抵抗ならば蹂躙されるだけですので戦争にさえなりませんが、この選択肢はありません、相手側に攻撃の意思があれば、戦争に行かずとも戦場がこちらにやってくる、これを国外で大きな武力紛争に展開する以前に抑止阻止するものですので、上記のような想定はそもそも成り立ちません。

こうした上で、徴兵制が我が国で採用し得ない事由を幾つかみてゆくこととします。まず人口、我が国は1億2000万の人口をもち、この中から志願制により13万の陸上自衛隊を維持しています、海上自衛隊と航空自衛隊がそれぞれ4万5000名程度の規模です。人数的に、そもそも徴兵制を必要としていない事が分かるでしょう。

中国人民解放軍や朝鮮人民軍が100万の兵力を持っているのに対し、少々規模が小さいようにも見えますが、日本は島国ですから、海を軍隊が渡り、燃料弾薬の海を越えた補給を維持する事は容易ではなく、このために現在の人員規模で防衛し得る、として防衛力整備が為されてきました。

我が国隣国の韓国は、陸上国境を経て北朝鮮の朝鮮人民軍を対峙していますので、徴兵制を敷き、徴兵期間を1年9か月として、人口4000万の韓国が50万人の陸軍を有しています。陸上国境がないという島国日本は、陸上防衛力に加え海上航空防衛力の重要性が大きい為、大規模な陸軍が必要ないのです。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
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安全保障法制整備に伴い我が国において徴兵制が施行されるのではないかとの指摘が主に野党と一部民間団体などより為されています。安全保障法制は国土が戦場となる以前に域外での予防外交の延長として防衛力を用い得る視点ですので、この論理が不明瞭なのですが、以下のような三段論法に依拠し生まれた発想のようです。

まず、自衛隊が安全保障法制に依拠し国外での戦闘が可能となる、すると大規模な戦闘により自衛官の犠牲者が大勢出るかもしれない、犠牲者続出ならば自衛隊を志願する規模が大きく減るだろう、故に不足する自衛官を増勢するために徴兵制で無理矢理入隊させられるに違いない、子供たちを戦場に送るな、と。

ううむ、分からない論理です。最初は冗談で皮肉を利かせたつもりなのだろうと解釈していたのですが、防衛や軍事への基礎知識は我が国では主体的に資料を集め知る意思がなければ得られませんので、全く予備知識のない方々、特に中高生の方々が不安を抱いているようで、このあたり、分かりやすく解説する必要を感じるようになりました。

現在ではあり得ません、冷戦時代の想定として、特に集団的自衛権は論外という政府解釈があり、大規模紛争の想定がソ連軍の日本本土直接侵攻という時代、集団的自衛権が無いという前提なのですから対処するのが日本一国として、米軍が1980年代に三沢へ再展開する以前、横田基地以北の防衛が自衛隊だけであった頃、ならば、多少説得力はあったやもしれません。

ソ連が相手であれば、日本の位置は太平洋外縁部の弧状列島で戦略上の要衝でしたし、ソ連領サハリンから北海道までは30kmの距離でした。識者の視点には、ソ連軍を本土奥深くに迎え撃つ前提で、北海道北部に戦線を押し止められない場合、本土防衛に陸上自衛隊の人員規模が足りなくなる、との指摘は為されていまして、それこそ最悪の場合は、専守防衛が相手の侵攻を待って防衛に当たるとの特性上、理論の喚起に必然性があったのです。

専守防衛は相手を迎え撃つ前提、領域外で阻止する選択肢を省いていますので、専守防衛を前提とする限り、国土が戦場となるのは必然で、その結果として戦線拡大を阻止できなければ、徴兵してでも押し止める必要か、戦闘に巻き込まれるという形の参加という危惧はありました。

この点、専守防衛を固持する方が戦闘に巻き込まれるリスクは大きく、一部野党が、海外で戦争する国にさせない、との標語を街頭に貼り付けています、対義語は、戦争は近くて速い国内で、というところでしょう。戦争に行かせない、という選択肢は、しかし国家間の武力紛争が少なくとも二か国以上が参加し行われるものですので、1国だけで戦争をしない、と決めることが出来ないのです。

無抵抗ならば蹂躙されるだけですので戦争にさえなりませんが、この選択肢はありません、相手側に攻撃の意思があれば、戦争に行かずとも戦場がこちらにやってくる、これを国外で大きな武力紛争に展開する以前に抑止阻止するものですので、上記のような想定はそもそも成り立ちません。

こうした上で、徴兵制が我が国で採用し得ない事由を幾つかみてゆくこととします。まず人口、我が国は1億2000万の人口をもち、この中から志願制により13万の陸上自衛隊を維持しています、海上自衛隊と航空自衛隊がそれぞれ4万5000名程度の規模です。人数的に、そもそも徴兵制を必要としていない事が分かるでしょう。

中国人民解放軍や朝鮮人民軍が100万の兵力を持っているのに対し、少々規模が小さいようにも見えますが、日本は島国ですから、海を軍隊が渡り、燃料弾薬の海を越えた補給を維持する事は容易ではなく、このために現在の人員規模で防衛し得る、として防衛力整備が為されてきました。

我が国隣国の韓国は、陸上国境を経て北朝鮮の朝鮮人民軍を対峙していますので、徴兵制を敷き、徴兵期間を1年9か月として、人口4000万の韓国が50万人の陸軍を有しています。陸上国境がないという島国日本は、陸上防衛力に加え海上航空防衛力の重要性が大きい為、大規模な陸軍が必要ないのです。
北大路機関:はるな くらま
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