■全通飛行甲板型護衛艦増勢提案
安全保障情勢が日々緊迫化を続け、朝鮮半島情勢の米朝核放棄交渉停滞と南西諸島情勢緊迫化、海洋安全保障秩序へ危機という状況下、今年もこの日がやってきました。
八月八日は八八艦隊の日、毎年恒例の新しい八八艦隊特別企画を本年も議論してみましょう。八八艦隊とは旧帝国海軍が構想した太平洋方面における艦隊決戦兵力整備を志向する一大建艦計画です。艦齢8年以下の最新鋭性能を備えた高速戦艦八隻と巡洋戦艦八隻を主軸に、巡洋艦及び航空母艦と駆逐艦に潜水艦を整備し太平洋上での優勢を期すものです。
新しい八八艦隊が必要だ。海上自衛隊には旧海軍が構想したような巨大な八八艦隊は必要ではありませんが、護衛艦隊の能力について、特にヘリコプター搭載護衛艦を増強するというかたちで、護衛艦隊隷下の護衛隊群を構成する八個護衛隊について、イージス艦重視編成やヘリコプター搭載護衛艦特化の編成を共通化する必要がある、という提案の一つ。
ひゅうが型ヘリコプター搭載護衛艦、いずも型ヘリコプター搭載護衛艦、海上自衛隊には、ひゅうが、いせ、いずも、かが、と全通飛行甲板構造を有する護衛艦を4隻運用しており、四個護衛隊群のDDHグループと称される護衛隊、第1護衛隊群第1護衛隊、第2護衛隊群第2護衛隊、第3護衛隊群第3護衛隊、第4護衛隊群第4護衛隊、に配備されています。
こんごう型ミサイル護衛艦、あたご型ミサイル護衛艦、はたかぜ型ミサイル護衛艦は、基本的に第1護衛隊群第5護衛隊、第2護衛隊群第6護衛隊、第3護衛隊群第7護衛隊、第4護衛隊群第8護衛隊、に主として配備、艦隊防空任務に当っています。特にイージスシステム搭載艦を弾道ミサイル防衛に充てる、という主眼に依拠し編成されている部隊運用だ。
北朝鮮弾道ミサイル脅威への対処から、かが旗艦の第4護衛隊にはミサイル護衛艦が一隻も配備されておらず、FCS-3搭載の僚艦防空能力を有する護衛艦も配備されていない護衛隊がありますし、ひゅうが旗艦の第3護衛隊のようにイージス艦2隻と僚艦号空能力を有する護衛艦を運用し非常に、卓越して高い艦隊防空能力を有する護衛隊も存在しています。
ヘリコプター搭載護衛艦-イージス護衛艦-汎用護衛艦-汎用護衛艦、という編成に統合し、護衛艦隊隷下の護衛艦をヘリコプター搭載護衛艦8隻とイージス艦8隻、この八八という組み合わせを基本として、艦隊運用を護衛隊間の能力格差を省こう、というものがこの新しい八八艦隊構想の骨幹となるものです。要するにヘリコプター搭載護衛艦を増勢すべき。
まや型ミサイル護衛艦が今月横浜で進水式を迎え、ターターシステムを搭載し能力が旧式化している護衛艦はたかぜ型は将来的に、まや竣工を待って順次練習艦隊へ移管される事となるようですが、2021年までにイージス艦は八隻体制が揃います。一方、現在の艦隊運用に影響を与えたミサイル防衛は2023年にイージスアショア完成を待って移行が可能です。
護衛隊の編成をヘリコプター搭載護衛艦-イージス護衛艦-汎用護衛艦-汎用護衛艦、として統合する意味ですが、全通飛行甲板を有する航空中枢艦と艦隊防空艦を合わせる事で、島嶼部防衛から災害派遣に大規模対水上戦闘から船団護衛と包括した任務対処能力の一元化が図れることとなり、如何なる状況へも部隊問わず護衛隊を派遣し対処が可能となります。
いずも型護衛艦の建造費は1200億円規模となり、気になるのは財政面での負担です。実際には、ひゅうが型護衛艦の満載排水量19000t規模と、いずも型護衛艦の満載排水量27000t規模の中間程度、基準排水量15500t満載排水量23000t規模の艦が一番多用途性が高いと考えるのですが、他方、日本の経済力で1200億円規模の護衛艦四隻増強は可能でしょうか。
旧海軍が構想した巨大な八八艦隊、ここまでの必要性はありません。現在に再現するとすれば、ニミッツ級原子力空母八隻とオハイオ級戦略ミサイル原潜八隻、それに護衛に充てるイージス巡洋艦や汎用駆逐艦と攻撃型原潜を揃える、という水準でしょうか。これだけあれば日本の防衛は安泰でしょうが、ここまでの強力な打撃力は日本に必要ありません。
長門型戦艦、加賀型戦艦、天城型戦艦、紀伊型戦艦、と高速戦艦と巡洋戦艦を大量建造し、艦齢8年以下の高速戦艦と巡洋戦艦を共に八隻建造するという計画ですので、実に毎年戦艦長門や後に空母に改造される事となる戦艦加賀のような大型艦を2隻建造し就役させるという壮大な計画、何しろ国家予算への負担は現イージス艦とは比較にならない程でした。
ワシントン海軍軍縮条約により戦艦の大量建造は中止され、建造中の戦艦加賀は関東大震災で破壊された天城に代えて航空母艦へ、建造中の戦艦土佐は標的艦へ、完成間近の戦艦陸奥は維持され、その分英米戦艦建造枠を認め、結果的に長門、陸奥、コロラド、メリーランド、ウェストバージニア、ネルソン、ロドネイ、ビック7という戦艦群が誕生します。
戦略兵器という位置づけの戦艦、八八艦隊計画当時の1920年代は戦艦を撃沈する方法は戦艦同士の海戦以外は難しく、強力な沿岸要塞と機雷原に誘致するか、高速航行中の戦艦は潜水艦が捕捉する事は困難ですが僥倖に期待するか駆逐艦の大群を遮二無二叩きつけ魚雷の飽和攻撃を行う他無く、攻撃力は艦砲という巨大なものを有する大怪獣のようなもの。
戦略核ミサイルに相当する戦艦、その建造費も巨大で伊勢型戦艦の建造費は4000万円、対する当時の日本国家予算総額は10億円程度でした。これは現代の福祉国家としての日本国家の予算と単純比較することは出来ませんが、敢えて単純比較するならば、100兆円の国家予算で4兆円の護衛艦を建造するのと同じ、戦艦という国家の戦略兵器建造の負担は凄い。
ジェラルドFフォード級原子力空母一隻とF-35統合打撃戦闘機140機に匹敵する国家予算の負担、というところでしょうか。八八艦隊構想がワシントン海軍軍縮条約に中座させられることが無ければ、この戦艦の負担だけで毎年二隻分要する訳で、この他に巡洋艦や艦隊航空戦力の近代化、海軍兵学校定員増と最後を除き日本の財政が耐えられたかは難しい。
新しい八八艦隊構想ですが、しかし、上記の巨大な建造計画のような無理は通さずとも、護衛艦の寿命は通常24年、延命改修で32年、はるな型護衛艦の事例を見れば35年程度は運用可能です。言い換えれば35年間でヘリコプター搭載護衛艦を8隻建造する、という水準であり、上記のような艦齢八年以内の巨艦を八隻建造、とは大きく意味が違うのですね。
新しい八八艦隊、この構想は海上自衛隊護衛艦隊を構成する四個護衛隊群八個護衛隊の編成をヘリコプター搭載護衛艦-イージス護衛艦-汎用護衛艦-汎用護衛艦、という四隻の体制へ統合し、任務対応能力を高める、という視点ですが同時に、ひゅうが型等の全通飛行甲板型護衛艦は必要であればF-35B戦闘機を固定翼艦上哨戒機として運用する事が可能です。
F-35B固定翼艦上哨戒機、F-35A戦闘機を航空自衛隊は新戦闘機として旧式化が進むF-4EJ改の後継機に充てていますが、F-35Aは滑走路を従来通り運用する戦闘機であるのに対し、F-35Bは垂直離着陸が可能であり、90m程度の短距離滑走、30ノットで航行中の護衛艦からは70m程度の短距離滑走を行う事で多数の各種装備を搭載する事が可能な航空機です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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安全保障情勢が日々緊迫化を続け、朝鮮半島情勢の米朝核放棄交渉停滞と南西諸島情勢緊迫化、海洋安全保障秩序へ危機という状況下、今年もこの日がやってきました。
八月八日は八八艦隊の日、毎年恒例の新しい八八艦隊特別企画を本年も議論してみましょう。八八艦隊とは旧帝国海軍が構想した太平洋方面における艦隊決戦兵力整備を志向する一大建艦計画です。艦齢8年以下の最新鋭性能を備えた高速戦艦八隻と巡洋戦艦八隻を主軸に、巡洋艦及び航空母艦と駆逐艦に潜水艦を整備し太平洋上での優勢を期すものです。
新しい八八艦隊が必要だ。海上自衛隊には旧海軍が構想したような巨大な八八艦隊は必要ではありませんが、護衛艦隊の能力について、特にヘリコプター搭載護衛艦を増強するというかたちで、護衛艦隊隷下の護衛隊群を構成する八個護衛隊について、イージス艦重視編成やヘリコプター搭載護衛艦特化の編成を共通化する必要がある、という提案の一つ。
ひゅうが型ヘリコプター搭載護衛艦、いずも型ヘリコプター搭載護衛艦、海上自衛隊には、ひゅうが、いせ、いずも、かが、と全通飛行甲板構造を有する護衛艦を4隻運用しており、四個護衛隊群のDDHグループと称される護衛隊、第1護衛隊群第1護衛隊、第2護衛隊群第2護衛隊、第3護衛隊群第3護衛隊、第4護衛隊群第4護衛隊、に配備されています。
こんごう型ミサイル護衛艦、あたご型ミサイル護衛艦、はたかぜ型ミサイル護衛艦は、基本的に第1護衛隊群第5護衛隊、第2護衛隊群第6護衛隊、第3護衛隊群第7護衛隊、第4護衛隊群第8護衛隊、に主として配備、艦隊防空任務に当っています。特にイージスシステム搭載艦を弾道ミサイル防衛に充てる、という主眼に依拠し編成されている部隊運用だ。
北朝鮮弾道ミサイル脅威への対処から、かが旗艦の第4護衛隊にはミサイル護衛艦が一隻も配備されておらず、FCS-3搭載の僚艦防空能力を有する護衛艦も配備されていない護衛隊がありますし、ひゅうが旗艦の第3護衛隊のようにイージス艦2隻と僚艦号空能力を有する護衛艦を運用し非常に、卓越して高い艦隊防空能力を有する護衛隊も存在しています。
ヘリコプター搭載護衛艦-イージス護衛艦-汎用護衛艦-汎用護衛艦、という編成に統合し、護衛艦隊隷下の護衛艦をヘリコプター搭載護衛艦8隻とイージス艦8隻、この八八という組み合わせを基本として、艦隊運用を護衛隊間の能力格差を省こう、というものがこの新しい八八艦隊構想の骨幹となるものです。要するにヘリコプター搭載護衛艦を増勢すべき。
まや型ミサイル護衛艦が今月横浜で進水式を迎え、ターターシステムを搭載し能力が旧式化している護衛艦はたかぜ型は将来的に、まや竣工を待って順次練習艦隊へ移管される事となるようですが、2021年までにイージス艦は八隻体制が揃います。一方、現在の艦隊運用に影響を与えたミサイル防衛は2023年にイージスアショア完成を待って移行が可能です。
護衛隊の編成をヘリコプター搭載護衛艦-イージス護衛艦-汎用護衛艦-汎用護衛艦、として統合する意味ですが、全通飛行甲板を有する航空中枢艦と艦隊防空艦を合わせる事で、島嶼部防衛から災害派遣に大規模対水上戦闘から船団護衛と包括した任務対処能力の一元化が図れることとなり、如何なる状況へも部隊問わず護衛隊を派遣し対処が可能となります。
いずも型護衛艦の建造費は1200億円規模となり、気になるのは財政面での負担です。実際には、ひゅうが型護衛艦の満載排水量19000t規模と、いずも型護衛艦の満載排水量27000t規模の中間程度、基準排水量15500t満載排水量23000t規模の艦が一番多用途性が高いと考えるのですが、他方、日本の経済力で1200億円規模の護衛艦四隻増強は可能でしょうか。
旧海軍が構想した巨大な八八艦隊、ここまでの必要性はありません。現在に再現するとすれば、ニミッツ級原子力空母八隻とオハイオ級戦略ミサイル原潜八隻、それに護衛に充てるイージス巡洋艦や汎用駆逐艦と攻撃型原潜を揃える、という水準でしょうか。これだけあれば日本の防衛は安泰でしょうが、ここまでの強力な打撃力は日本に必要ありません。
長門型戦艦、加賀型戦艦、天城型戦艦、紀伊型戦艦、と高速戦艦と巡洋戦艦を大量建造し、艦齢8年以下の高速戦艦と巡洋戦艦を共に八隻建造するという計画ですので、実に毎年戦艦長門や後に空母に改造される事となる戦艦加賀のような大型艦を2隻建造し就役させるという壮大な計画、何しろ国家予算への負担は現イージス艦とは比較にならない程でした。
ワシントン海軍軍縮条約により戦艦の大量建造は中止され、建造中の戦艦加賀は関東大震災で破壊された天城に代えて航空母艦へ、建造中の戦艦土佐は標的艦へ、完成間近の戦艦陸奥は維持され、その分英米戦艦建造枠を認め、結果的に長門、陸奥、コロラド、メリーランド、ウェストバージニア、ネルソン、ロドネイ、ビック7という戦艦群が誕生します。
戦略兵器という位置づけの戦艦、八八艦隊計画当時の1920年代は戦艦を撃沈する方法は戦艦同士の海戦以外は難しく、強力な沿岸要塞と機雷原に誘致するか、高速航行中の戦艦は潜水艦が捕捉する事は困難ですが僥倖に期待するか駆逐艦の大群を遮二無二叩きつけ魚雷の飽和攻撃を行う他無く、攻撃力は艦砲という巨大なものを有する大怪獣のようなもの。
戦略核ミサイルに相当する戦艦、その建造費も巨大で伊勢型戦艦の建造費は4000万円、対する当時の日本国家予算総額は10億円程度でした。これは現代の福祉国家としての日本国家の予算と単純比較することは出来ませんが、敢えて単純比較するならば、100兆円の国家予算で4兆円の護衛艦を建造するのと同じ、戦艦という国家の戦略兵器建造の負担は凄い。
ジェラルドFフォード級原子力空母一隻とF-35統合打撃戦闘機140機に匹敵する国家予算の負担、というところでしょうか。八八艦隊構想がワシントン海軍軍縮条約に中座させられることが無ければ、この戦艦の負担だけで毎年二隻分要する訳で、この他に巡洋艦や艦隊航空戦力の近代化、海軍兵学校定員増と最後を除き日本の財政が耐えられたかは難しい。
新しい八八艦隊構想ですが、しかし、上記の巨大な建造計画のような無理は通さずとも、護衛艦の寿命は通常24年、延命改修で32年、はるな型護衛艦の事例を見れば35年程度は運用可能です。言い換えれば35年間でヘリコプター搭載護衛艦を8隻建造する、という水準であり、上記のような艦齢八年以内の巨艦を八隻建造、とは大きく意味が違うのですね。
新しい八八艦隊、この構想は海上自衛隊護衛艦隊を構成する四個護衛隊群八個護衛隊の編成をヘリコプター搭載護衛艦-イージス護衛艦-汎用護衛艦-汎用護衛艦、という四隻の体制へ統合し、任務対応能力を高める、という視点ですが同時に、ひゅうが型等の全通飛行甲板型護衛艦は必要であればF-35B戦闘機を固定翼艦上哨戒機として運用する事が可能です。
F-35B固定翼艦上哨戒機、F-35A戦闘機を航空自衛隊は新戦闘機として旧式化が進むF-4EJ改の後継機に充てていますが、F-35Aは滑走路を従来通り運用する戦闘機であるのに対し、F-35Bは垂直離着陸が可能であり、90m程度の短距離滑走、30ノットで航行中の護衛艦からは70m程度の短距離滑走を行う事で多数の各種装備を搭載する事が可能な航空機です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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