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【京都発幕間旅情】三笠記念艦,日露戦争日本海海戦勝利の殊勲艦は戦後の日米海軍友好象徴

2018-08-01 20:03:12 | 旅行
■東郷元帥とニミッツ提督
 戦艦三笠、横須賀市の象徴の一つという記念艦について前回に続いて今回は艦内の様子とともにその歴史を紹介しましょう。

 戦艦三笠、1898年に建造が決定し1900年にイギリスのバロー造船所での進水式を経て1902年に竣工しました。40口径305mm艦砲を搭載する基準排水量15140tの戦艦です。旧海軍時代の戦艦ですが歴史的価値に鑑み三笠記念艦として横須賀に保存されています。

 敷島型戦艦四番艦として建造され全長131.7mと全幅23.2m、日本海軍には富士型戦艦に続く戦艦で戦列艦から新しい主力艦を建造する六六艦隊計画に基づく最後の一隻で、続く香取型戦艦から日本海軍は戦艦を主力艦とする世界の趨勢へその終幕まで進んでゆく一隻だ。

 40口径305mm艦砲を搭載し、229mmクルップ装甲を備える三笠はベルヴィール式石炭専焼水管缶と直立型三段膨張式レシプロ機関の15000馬力により当時としては高速艦といえる18ノットを発揮できました。この高性能を活かし日露戦争へ連合艦隊旗艦として臨む。

 連合艦隊旗艦として戦艦三笠は日露戦争の黄海海戦と日本海海戦に臨み、敗戦即亡国の危機に在った日露戦争を辛勝とはいえポーツマス条約により戦勝を勝ち取る事が出来ました。戦艦としての第一線を退いた後は海防艦として活躍し、第一次世界大戦へも参戦している。

 関東大震災、戦艦三笠は海防艦へ転籍の後に第一次世界大戦とシベリア出兵に活躍した後、ウラジオストック沖に濃霧下で座礁損傷し、応急修理後に横須賀へ入港中、1923年9月1日を迎えました、関東大震災により海防艦三笠は大きく損傷し、結果、除籍が決定します。

 大正時代に記念艦となりましたが、昭和20年の太平洋戦争敗戦と共に管理者不在となり、一時荒廃しました。荒廃といいましても状況は非常に厳しく、国家経済が破綻し凶作が重なった日本の敗戦は民心の荒廃へと悪化し、上部構造物が金属窃盗の被害にあっています。

 太平洋戦争敗戦後の荒廃はガスバーナーを用いて上部構造物を大規模に切り取る悪質な金属窃盗の被害に遭い、その後は水族館が主砲砲塔跡地に、上部構造物の残りはダンスホールに転じられ、更に悪化、ソ連軍は日露戦争敗戦への復仇に三笠解体を要求した程でした。

 東郷平八郎、日本海海戦の連合艦隊司令長官を尊敬する一人の提督がこの状況を救いました。チェスター-ニミッツ海軍元帥は日本海海戦における連合艦隊勝利の際、東京寄港中の戦艦オハイオ艦上にあり、当時のニミッツ少尉は戦艦三笠艦上の祝賀会に招かれています。

 ニミッツ提督は少尉時代、日本海海戦で世界に知られた東郷提督と直接話し、バーニーズアカデミー海軍予備学校に学んだ東郷提督を胴上げし、時にはユーモアを交えた語り口に感激したと自著に記し、重巡洋艦オーガスタ艦長時代には東郷提督の国葬に参列しました。

 レイモンド-スプルーアンス提督やウィリアム-ハルゼー提督、太平洋戦争で帝国海軍と激戦を交えた提督も少尉時代、日露戦争後のホワイトフリート米海軍世界一周航海に参加し、と共に訪日していまして、実は日米は太平洋を挟む隣国として長い関係があったのですね。

 ニミッツ提督は日本占領時代に横須賀に在って、戦艦三笠の惨状を知り驚くと共に文化財としての保護を命令、海兵隊の立哨を開始しました。世にも不思議な縁、という事なのでしょうか、荒廃を逃れ今日に威容を伝える礎と共に戦後の日米友好関係を開拓しました。

 艦内の調度品は戦利品として持ち去られましたが返還され、また日本で解体されたチリ海軍戦艦アルミランテ-ラトーレの部品等を転用し復元しています。2009年には原子力空母ニミッツ横須賀寄港に際し乗員有志による清掃も行われ日米友好の拠点ともなっています。

 戦艦三笠、旧海軍の遺産であると同時に、日米両国海軍の友好の象徴というべき存在となっており、日米には太平洋戦争という厳しく悲しい歴史がありますが、こうした激動の歴史さえも友好へと昇華できるものだ、戦艦三笠は皇居を遥拝しつつ米海軍施設を向き今日も佇んでいます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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