■国土に合致する装甲車の難しさ
96式装輪装甲車の調達を継続するのか、更なる新型を開発するのか、多少大型でも海外製装甲車を模索するのか、即応機動連隊が次々と誕生する中、喫緊の課題です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/68/74/fb8280ec3b1f64a99014feefebc66e85.jpg)
日本で日常的に運用する装甲車とするには、道路運送車両法の車両限界内に当たる車幅2.5m以内に収めなければ行動通行に際し道路管理者である関係当局に届け出が必要となり、非常に煩雑となります。96式装輪装甲車が細長い形状となっているのもこうした配慮からです。一方アメリカ陸軍主力装輪装甲車、ストライカー装甲車はこれよりも大きいのです。
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日米合同演習にて何度か日本にも展開していまして、前回の中央観閲式本番でも登場しています。車高は2.64m、と装輪装甲車(改)よりも低く押さえられ、一方で車幅は2.72mあります。装輪装甲車(改)は車幅よりも全高のほうが高い、トップヘビーな形状となっていましたが、戦闘中に横転は致命的問題といえまして、ストライカーは重心を考慮しています。
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ただ車幅は道路運送車両法の特殊大型車両似含まれる2.5m以上で、公道走行時には道路管理者と所轄警察署長への届け出と許可が必要となります。この煩雑さをどう考えるか。16式機動戦闘車、陸上自衛隊の装輪装甲車で車幅が2.5mをこえる車種はこの一種類だけです。車幅2.98mあり、正直なところ試作車が完成した際には車幅が公表され、当時驚きでした。
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16式機動戦闘車、思い切った仕様で開発したものだ、と驚いたことを思い出します。しかしこのほかは、豪州製ブッシュマスター耐爆車両を邦人救出用に取得した輸送防護車も、96式装輪装甲車も巨大なNBC偵察車も、全て車幅は2.5mに収められています。しかし防衛装備庁がスラローム射撃映像を公開すると、安定性を考慮しての車幅と理解できました。
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実は機動戦闘車開発開始当時も、新規開発ではなく、何故96式装輪装甲車に105mm砲を搭載しないのか、という識者からの批判はかなり多くありました。これについて、残念ながら機動戦闘車開発者の方に直接聞くことはできませんでしたが、射撃時の反動を考慮するならば、車幅2.5m以内では技術的に不可能だった、というお話を人づてに聞いています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/26/8c5c4744ac3bd4c4f5097c22a840d20c.jpg)
106mm無反動砲を60式自走無反動砲のように二門後部に砲架ごと括り付けるならば可能かもしれないが、無人砲塔にしても有人砲塔にしても砲塔搭載時の安定性を設計していない既存装甲車に搭載する事は簡単ではなく、低姿勢で、低圧砲を背負い式に搭載しても、射角や射撃姿勢の制限、停車射撃を要する等制約が大きくなる、ということなのでしょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/02/8d/6009bb7303cea6fba9a0c191e566d573.jpg)
自衛隊が車幅2.5mの分水嶺を自ら超えた、しかし、興味深いのは2.98mという、もう一つの車幅制限、3mを厳格に下回っている点は注目すべきでしょう。3mとは国鉄狭軌貨物輸送車両限界、61式戦車が車幅3mに抑え、妙に高いシルエットを採用した背景には貨物列車で輸送したいという戦略上の要件を満たすためでした。その意味で戦略機動性は高い。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/69/1f/2d2557b255f9d1105dfd1ae10131df0b.jpg)
61式戦車は車幅3m以内、しかし90mm戦車砲か105mm戦車砲かの開発当時の議論があり、90mm砲の交戦距離900mでも錯綜地形の多い日本では十分であるという結論と共に、3m以内に収める戦略機動上意義があったという。そして16式機動戦闘車も車幅2.98m、つまりJR在来線の貨物列車で大量輸送が可能です。61式と16式というのも妙な一致やも。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4e/16/b8ad9e22a228e85d4a0e8fa28c8dad39.jpg)
日本全国の道路が一車線当たりあと1m広ければ様々な外国製装甲車両が導入出来た事でしょうが、これは今から全国的に拡幅を行うには厳しいものがあります。そして専守防衛、つまり国内を戦場と想定して運用する装甲車なのだから、設計に制約を課すこととなっても車幅を抑える努力があり、結果、装備開発全般を難しくする要素となっているようです。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
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(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補足-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
96式装輪装甲車の調達を継続するのか、更なる新型を開発するのか、多少大型でも海外製装甲車を模索するのか、即応機動連隊が次々と誕生する中、喫緊の課題です。
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日本で日常的に運用する装甲車とするには、道路運送車両法の車両限界内に当たる車幅2.5m以内に収めなければ行動通行に際し道路管理者である関係当局に届け出が必要となり、非常に煩雑となります。96式装輪装甲車が細長い形状となっているのもこうした配慮からです。一方アメリカ陸軍主力装輪装甲車、ストライカー装甲車はこれよりも大きいのです。
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日米合同演習にて何度か日本にも展開していまして、前回の中央観閲式本番でも登場しています。車高は2.64m、と装輪装甲車(改)よりも低く押さえられ、一方で車幅は2.72mあります。装輪装甲車(改)は車幅よりも全高のほうが高い、トップヘビーな形状となっていましたが、戦闘中に横転は致命的問題といえまして、ストライカーは重心を考慮しています。
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ただ車幅は道路運送車両法の特殊大型車両似含まれる2.5m以上で、公道走行時には道路管理者と所轄警察署長への届け出と許可が必要となります。この煩雑さをどう考えるか。16式機動戦闘車、陸上自衛隊の装輪装甲車で車幅が2.5mをこえる車種はこの一種類だけです。車幅2.98mあり、正直なところ試作車が完成した際には車幅が公表され、当時驚きでした。
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16式機動戦闘車、思い切った仕様で開発したものだ、と驚いたことを思い出します。しかしこのほかは、豪州製ブッシュマスター耐爆車両を邦人救出用に取得した輸送防護車も、96式装輪装甲車も巨大なNBC偵察車も、全て車幅は2.5mに収められています。しかし防衛装備庁がスラローム射撃映像を公開すると、安定性を考慮しての車幅と理解できました。
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実は機動戦闘車開発開始当時も、新規開発ではなく、何故96式装輪装甲車に105mm砲を搭載しないのか、という識者からの批判はかなり多くありました。これについて、残念ながら機動戦闘車開発者の方に直接聞くことはできませんでしたが、射撃時の反動を考慮するならば、車幅2.5m以内では技術的に不可能だった、というお話を人づてに聞いています。
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106mm無反動砲を60式自走無反動砲のように二門後部に砲架ごと括り付けるならば可能かもしれないが、無人砲塔にしても有人砲塔にしても砲塔搭載時の安定性を設計していない既存装甲車に搭載する事は簡単ではなく、低姿勢で、低圧砲を背負い式に搭載しても、射角や射撃姿勢の制限、停車射撃を要する等制約が大きくなる、ということなのでしょう。
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自衛隊が車幅2.5mの分水嶺を自ら超えた、しかし、興味深いのは2.98mという、もう一つの車幅制限、3mを厳格に下回っている点は注目すべきでしょう。3mとは国鉄狭軌貨物輸送車両限界、61式戦車が車幅3mに抑え、妙に高いシルエットを採用した背景には貨物列車で輸送したいという戦略上の要件を満たすためでした。その意味で戦略機動性は高い。
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61式戦車は車幅3m以内、しかし90mm戦車砲か105mm戦車砲かの開発当時の議論があり、90mm砲の交戦距離900mでも錯綜地形の多い日本では十分であるという結論と共に、3m以内に収める戦略機動上意義があったという。そして16式機動戦闘車も車幅2.98m、つまりJR在来線の貨物列車で大量輸送が可能です。61式と16式というのも妙な一致やも。
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日本全国の道路が一車線当たりあと1m広ければ様々な外国製装甲車両が導入出来た事でしょうが、これは今から全国的に拡幅を行うには厳しいものがあります。そして専守防衛、つまり国内を戦場と想定して運用する装甲車なのだから、設計に制約を課すこととなっても車幅を抑える努力があり、結果、装備開発全般を難しくする要素となっているようです。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
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