北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ロシア軍ウクライナ侵攻開戦一年【2】戦争を回避するには戦争を政治を国際法を学ぶことを恐れないこと

2023-02-16 20:15:51 | 国際・政治
■占領され失われるもの
 わたしは負けてしまえば楽だという発言を聞くと何故日中戦争の時中国はそうしなかったかを考えるべき、と反論します。

 ウクライナへロシアは侵攻しない、こう主張した方々は猛省すべきです、そのうえでどういった状況で戦争は起こるのか、ということを真剣に考えるべきです。これは、軍備がなければ戦争が起きない、という論調ならばロシアの非武装化をどのように現実的に行わせるか、その過程で戦争が起こりえないのか、こうした視点まで踏み込まねばなりません。

 ウクライナ周辺にロシア軍の戦闘基本単位であるBTG大隊戦術群が70個以上集結した時点で、実はロシアは確たる覚悟を決めていた、と言わざるを得ない状況でした。それは自衛隊の演習を見学しますとわかるのですが、BTG大隊戦術群の人員規模は800名、この人数の部隊が二週間演習するだけで膨大な物資が必要になるのは自衛隊を見てもわかります。

 威嚇のためだけに、これほどの部隊を展開させることはありません、戦前の日本が行った、関東軍特種大演習のように、相手の反応が遅ければ侵攻する前提の大規模演習です。訓練期間、部隊集結は2021年から開始されていますので、通常よりも大きな演習という度合いではなく、この期間に演習を行うだけで費用は膨大なものとなります、そして移動負担も。

 開戦前のロシア軍部隊集結状況は、極東地域からも兵力を抽出していました、例外的に北極圏駐留部隊とロシアの欧州飛び地であるカリーニングラード駐留兵力からは抽出されていませんが、北極圏の部隊は装備が北極圏仕様の特殊なもので使いようがなかったもの、カリーニングラードは引き抜こうにも引き抜けない規模であり、それ以外から全部集めた。

 識者、自称識者を含めてですが、侵攻しない、今の時代にとか、侵攻すると大変なことになる、といった、楽観論でしょうか、現実を見ていない議論があったことで、こうした方々が、戦争の危険はない、と日本の安全保障を語ることには非常に危険性と憤りを感じるのです。いや、語るな、ではなくなぜそうした論理体系に帰結したのかを明確にしてほしい。

 もちろん独自情報があったならば別です、例えば、アメリカやイギリスとは別の情報源から、ウクライナ軍も侵攻できるロシア軍を即時に撃破できるほどの兵力を集結しているために、関東軍特種大演習のように、今回は侵攻できないので見送るのではないか、と。しかし、ウクライナ軍の準備状況は軽歩兵主体、動員体制も不十分、どの情報源なのか、と。

 サッカーで有名な日本人選手でさえ、ウクライナは降伏するべきだ、という論調をWebで発信した方がいましたが、恥を知れとしか言いようがありません。もちろん、恥を知ることは重要です、それは情報を、ロイターやAFPやCNNとNHK,簡単に入手でき、ファクトチェックにも相応に費用を投じている報道機関からでも得られる情報を得ていない事に。

 ウクライナとしては、どういった施策を取れば戦争を回避できたのか。少なくとも政権について間もないゼレンスキー大統領の打てる手段は、すべて打ったといえます。ロシアの求める非ナチス化は、そもそもナチスが本当に居るのか、ナチスの定義は不明でした。東部地域でのロシア系住民への虐殺の危機も、OSCE監視団さえ居る中でありえません。

 要求をのめば、大統領と議会議員の人員はロシア政府が推薦する、ロシアに反対する勢力は逮捕して取り締まる、ウクライナの非武装化とウクライナに欧米軍隊が接近しないようにロシア軍が進駐して占領する、ウクライナがどの国と友好関係を深めるかはロシア政府が決めることとなりロシア政府と非友好的な国との関係は遮断する、こうした位でしょう。

 こんなことを日本に行われればどうなるか、戦争反対と叫んだだけで全員逮捕される、降伏したことで平和になったと思った住民に徴兵の召集令状が突き付けられる、個別のWeb発言はすべて監視されスマートフォンさえ内容を開示するよう求められる、投票していないのに選挙で自ら賛成したことにされ、報道は政府が管理し政府発表以外情報がなくなる。

 ロシアの行動に正当化できる余地は、ロシア政府にしかありません、世界全てが自国領土であり日本政府は日本を不法占拠している、というようなものですから、賛同しても占領、賛同しなければ戦争、この状況を突き付けられたうえでロシア支持というのは、自分にも軍事的野心があるのか、暴力を問題の解決手段として常用しているのか、愚かであるか。

 平和運動に反対するものではありませんし、私自身平和は大切だと思う、平和だからこそ航空祭が行われ、外国艦艇が日本に訪問した際の一般公開が行われる。しかし、現実を見ないで主張を繰り広げ、またすぐ間近に様々な知る手段がありながら、その努力を怠り、そのうえで持論を形成すること、自称識者や街頭で叫ぶにしても、猛省すべきでは、と思うのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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トルコシリア地震,死者4万1000名-航空自衛隊政府専用機現地救援医療物資輸送と日本国際緊急援助隊活動開始

2023-02-16 07:00:32 | 防災・災害派遣
臨時情報-トルコシリア地震
 トルコ南西地震と当初称していましたが被害規模からトルコ南部地震と言い換え、しかし現状ではトルコシリア地震という1900年以来最大の被害という厳しい状況です。

 トルコシリア地震への緊急援助物資を搭載した政府専用機が14日にトルコへ到着しました。政府専用機が輸送したのは医療器材15.4tとのこと。医療器材には人工呼吸器や麻酔器とベッドなどが含まれていて、現在既に国際緊急援助隊41名が派遣されていますが、政府によれば被害の大きさと現地の状況に鑑みて、更に増勢し、75名体制を目指すようです。

 4万1000名、トルコシリア地震の死者数は15日時点で東日本大震災の倍以上という規模に達しています、現地では地震発生から200時間以上を経ているものの生存者発見の朗報はあるようです。実際問題、14日程度は生存事例がありますので、所謂“72時間の壁”というものはあるのですが、今少し生存者捜索は諦めず継続して欲しいとも考えるのです。

 国際緊急援助隊41名はトルコ南部のガジアンテプ近郊において14日から医療支援を開始しました。ガジアンテプ市は南部ガジアンテプ県の県都で人口は88万名、神戸市の人口が153万ですので半分強という規模の街です。しかし地震により大半の医療施設が機能不随に陥っているということで、日本の国際緊急援助隊は市が設置した医療拠点にはいりました。

 ガジアンテプ市郊外の職業訓練校が臨時両拠点に指定され、日本の国際緊急援助隊は内科と外科及び産婦人科などの診療に対応するとの事です。このガジアンテプは東ローマ帝国が造営した城塞都市を元に発展した都市ということですが、1500年以上維持されてきたガジアンテプ城塞も城壁や稜堡などの施設が倒壊したといい、熊本地震の熊本城を思い出す。

 トルコ国内では今回の被害を拡大させた政治の責任を問う声もでているとされますが、トルコ政府の初動については1900年以来最大規模の地震といい、阪神大震災の村山政権を思い出せば、初動に考えさせられるところはあるが、危機管理上は国軍が防災などを作戦体系に含めていない場合には限界があったのではないか、今後に活かす方が重要ともおもう。

 建築法令違反が多数の建築物倒壊に繋がったという報道もありますが、この点については耐震強度審査の自治体能力拡充と共に、耐震強度を確保した場合に中産層へどのように現実的な建築費で住宅を供給するのか公営住宅制度の拡充などが今後課題となるのかもしれません。いや、日本が出来る現時点の支援は限られていますが、復興と制度構築では貢献できるのかもしれません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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