北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】ノルウェーK-9自走砲増強とオーストラリア装甲戦闘車棚上げ,韓国L-SAMミサイル迎撃実験

2023-02-20 20:05:54 | 先端軍事テクノロジー
週報:世界の防衛,最新12論点
 今週は陸軍関連の12論点を紹介しましょう。

 ノルウェー陸軍は韓国ハンファエアロスペース社よりK-9自走榴弾砲を追加調達します。この調達計画はノルウェー軍の防衛力強化の一環であり、特にロシア軍ウクライナ侵攻を受けての情勢悪化を受けてのもの、また増強は第一次契約のオプション契約として含まれます。11月7日、ハンファエアロスペース社はノルウェー政府との正式契約を結びました。

 K-9自走榴弾砲はノルウェー陸軍に24両が調達される計画で、現在の旧式化したM-109自走榴弾砲を置き換えます。今回追加されたのは4両で、更にK-10弾薬車についても現在の10両にくわえて8両を追加する方針、これらは今後に年間で引き渡される計画で、これによりノルウェー軍のK-9自走榴弾砲は28両、そしてK-10弾薬車は18両となります。

 ハンファエアロスペース社が製造するK-9自走榴弾砲は52口径155mm榴弾砲の長い射程と1000hpエンジンを採用したことによる極めてたかい機動性能により、ポーランド軍にインド軍やエジプト軍など各国で採用され、現在世界で製造される自走榴弾砲の半分以上がK-9、2023年にはK-9運用国会議がノルウェーにおいて開催される計画となっています。
リトアニアJLTV増強
 JLTVをさらに300両増強し機械化旅団を強化する。

 リトアニア軍はアメリカから導入するJLTVをさらに300両増強し500両体制とします。JLTVはアメリカ陸軍がハンヴィー高機動車後継として導入する統合軽量戦術車両で、リトアニア軍は2019年に200両を調達決定しています。JLTVの第一陣は2021年からリトアニアに到着し、装備化を開始していてさらに50両が年内に到着する見込みとのこと。

 これらの装備はアイアンウルフ旅団とグリフィン旅団に配備されますが、今回さらに増強されることとなる。JLTV統合軽量戦術車両はリトアニア軍では12.7mm重機関銃型のRWS遠隔操作銃塔を搭載し機械化歩兵車両として運用されるとともに、NATO加盟国であるリトアニア国防省ではアメリカ軍との運用相互互換性も期待されているようです。
ウクライナ用T-72改良
 戦車は古いままでは能力が制限されますがウクライナへ供与されるチェコ製T-72戦車をオランダにおいて近代化改修するという。

 アメリカ陸軍はウクライナへ供与する90両のチェコ製T-72戦車をオランダにおいて近代化改修する計画です。ウクライナ軍は10月までにポーランド軍とチェコ軍において余剰となったT-72戦車を300両供与されており、首都キエフ北部防衛戦や東部ハリコフでの反撃に大きな原動力となっていますが、なお現在も戦車の不足という状況が続いています。

 T-72戦車は旧式戦車ですが、NATO加盟国のT-72は射撃統制装置や暗視装置及び通信装置を新型に改良しています。今回更に90両が追加供与されますが、これを最新型の電子装置に換装することが目的とされます。ただチェコ国内での改造には限界があることから、オランダ国内の装備デポを利用し、電子系を第一線級の水準に引き上げる構想となっている。
ワイルダー特殊装甲車
 ワイルダー超軽量装甲車は自衛隊の空挺団にも高機動車よりも軽かいな車両の必要性を痛感させます。

 イスラエルのプラサン社はワイルダー超軽量装甲車を発表、これは特殊部隊や競合地域の警戒監視用として、きわめて軽量な装甲車両の需要を見込んだもの。特殊部隊などは軽量の一方で防御力を犠牲としてきた歴史がありますが、ワイルダー超軽量装甲車は操縦士に加え3名の乗員を乗車させ、CH-47輸送ヘリコプター機内に収容が可能となっている。

 ワイルダー超軽量装甲車は四輪駆動、NATO防弾規格レベル2の防御力を有し、一方車体重量は3.7tと軽量に抑えられ800kgまでの物資輸送も可能、また興味深いのはトレーラ牽引能力で、これはUGM地上ロボット車両を最前線まで牽引する能力としても活用できるとのこと。プラサン社ではワイルダーのEV電動車仕様なども開発可能と発表しています。
APKWS対戦車用
 ロケット派生APKWSは威力よりも精度の高さを重視する昨今の流れに合致している。

 イギリスのBAE社は70mm空対地ロケット派生APKWSによるHEAT/APAM対戦車弾頭実験を実施しました。ハイドラ70として知られる70mmロケット弾は対戦車ヘリコプターにTOW対戦車ミサイルやヘルファイア対戦車ミサイルとともに搭載され、主に面制圧や目標指示などの用途で用いられています。APKWSはそのレーザー誘導型にあたるもの。

 APKWSの試験では今回新しく開発されたAGR-20レーザー誘導装置が搭載され、ここにHEAT/APAM対戦車弾頭を装着したもの。威力はヘルファイアなどに比べれば劣りますが、コストも重量も三分の一以下です。実験はアメリカテキサス州のマイルハイ射撃場において実施、MRAP耐爆装甲車両に対し命中し、その精度と威力を確認したとのことです。
チェコのTITUS装甲車
 TITUS装輪装甲車は安価に数を揃えるという視点のもの。

 チェコ陸軍は新型のTITUS装輪装甲車の評価試験状況を発表しました。チェコ陸軍は緊急展開部隊用に旧式化し老朽化著しい冷戦時代の装輪装甲車後継車両を模索しており、フランスのネクスター社の協力を受けチェコのタトラディフェンスビーグル社が新型装輪装甲車を開発していました、この車両は六輪式でMRAP耐爆車両構造を採用しています。

 TITUS装輪装甲車は基本型の歩兵機動車を62両、指揮通信車を20両調達予定となっていて、緊急展開部隊である第4即応機動旅団へ配備される計画です。MRAP耐爆車両構造を採用した装輪装甲車ですがエンジンはカミンズ社製500hpと比較的強力なエンジンを採用しており、また車上に20mm機関砲までのRWS遠隔操作銃塔が搭載可能とのことです。
カナダの装甲車補填
 供与したACSVバイソン装輪装甲車を補填するという。

 カナダ統合軍はウクライナへ供与した装甲車両の補填として新たに39両の装輪装甲車を導入します、カナダ軍は生産されたばかりのACSVバイソン装輪装甲車をウクライナへ供与しました、これはLAV6装輪装甲車でピラーニャシリーズの最新型、陸上自衛隊も次期装輪装甲車候補としていましたが期日に試験車が納入されず脱落した経緯もありました。

 ACSVバイソン装輪装甲車は基本重量が20.6tあり増加装甲装着により28.5tとなります。標準型は機関砲を備えていますがACSVは装甲輸送型となっているもの、製造はカナダ国内のオンタリオ州ロンドンのゼネラルダイナミクスカナダ社の工場で行われています、今回の39両取得費用は1億6500万ドルであり、ウクライナ支援予算から補填されます。
スカイレンジャー機関砲
 スカイレンジャー35mm機関砲について。

 インドネシア軍は自走高射機関砲にドイツ製スカイレンジャー35mm機関砲塔システムを採用します。インドネシア軍はピンダッド社が製造する国産のバダク装輪装甲車に搭載可能である高射機関砲システムを模索していました、スカイレンジャーはドイツのラインメタル社が開発と製造を担い、スイスのエリコンL-90高射機関砲の発展型のものです。

 スカイレンジャー30砲塔の場合、30mm機関砲を採用しIRカメラとAESAレーダーなどを複合化した照準装置を搭載し、特にAESAレーダーは砲塔周辺に五枚のAESAアレイアンテナを配置し全周にわたり150の目標を同時追尾しつつ40の優先目標を選定、毎秒16発の速度で弾幕を張り一発あたり162の子弾を備えています。砲塔システムは2.5tです。
スイスペトリオット
 スイスのペトリオット続報です。

 スイス軍はペトリオットミサイルPAC-3-MSEについてアメリカ国務省より有償軍事供与が承認されました。スイス政府は防空能力強化へペトリオットミサイル取得を計画しており、今回要求されている輸出規模は7億ドル規模、ミサイル72発と関連機材となっています、MSEは自衛隊も導入、航空機対処にくわえ弾道ミサイル迎撃能力を有しています。

 スイス空軍は空軍戦闘機部隊の規模が限られており、対領空侵犯措置任務をすべての国籍不明機に対して行っているわけではありません、また2017年までは土曜日と日曜日は空軍戦闘機部隊は休日という信じがたい状況もありました、2021年からは夜間の緊急発進も開始されていますが、限られた戦闘機の防空の間隙を埋めるのが地対空ミサイルなのです。
フクスA9装甲車発表
 なにかトラック然としていた装甲車が更にトラックの様になりました。

 ドイツのラインメタル社は新型のフクスA9装甲車を発表しました、フクスは言わずとしれたドイツ製汎用装甲輸送車であり、兵員輸送は第一線での戦闘輸送よりも機甲部隊に随伴する支援車両や前線地域での強行輸送、また兵員輸送からNBC防護車両などにも活用され、六輪式の高性能装甲車ですが、フクスA9はこれを大型化して大幅に改良しています。

 車内天井高は1.6mへ大幅に拡張されており、これは車体後部の天井部分を高める、自衛隊の82式指揮通信車と似た形状であるのですがフクスA9は遙かに大型で車内容積は12立方メートルとなっています。一見不格好ですが高価すぎる装甲トラックとも指摘されたフクスは後部の拡張された区画が洗練された装甲トラックの形状となりましたのは皮肉です。
韓国L-SAM発射実験
 L-SAMのような日本も独自のミサイル防衛システムが必要とおもえるところで。

 韓国軍は独自に開発しているL-SAM弾道弾迎撃ミサイル発射実験に成功しました。北朝鮮が保有する多数の短距離弾道ミサイル脅威に直面している韓国軍はKAMD韓国多層ミサイル防衛システムの開発を急いでいて、L-SAMは高高度での迎撃を担当、この発射実験は11月末、北朝鮮の火星17型弾道ミサイル発射実験にあわせて実施されたとのこと。

 KAMD韓国多層ミサイル防衛システムは複数のミサイルシステムとレーダーシステムを組み合わせ複合的に多段階の迎撃能力を構築するといい、AESA方式で車載式のSバンドレーダーにより検知、先ず今回試験されたL-SAMにより迎撃をおこない、これらが討ち漏らした目標を韓国製M-SAMミサイルとアメリカ製ペトリオットPAC-3が迎撃に当たる。

 L-SAMは機動式であり移動発射装置により展開し、目標を高度40kmから100kmの高い高度で迎撃することが目的という。ただ当面はアメリカが韓国に展開させているTHAADミサイルと同程度の50kmから60kmの高度での迎撃を想定するとのこと、韓国ではミサイル防衛システムの中等などへの輸出も重視し韓国軍による中東展開も行われます。
豪州次期装甲車棚上げ
 甲乙付きがたいのか無理しすぎた調達計画の破綻か。

 オーストラリア陸軍はリンクス装甲戦闘車かレッドバック装甲戦闘車かの選定決定を延期すると発表しました。これはランド400計画フェーズ3として進められている老朽化したM-113装甲車の後継車両選定で、オーストラリア軍はASLAV装甲偵察車の後継として導入したボクサー装輪装甲車とあわせ陸軍機械化部隊を大幅に近代化する構想でした。

 M-113の後継にはドイツのラインメタル社製リンクス装甲戦闘車と韓国のK-21装甲戦闘車を改良したAS-21レッドバック装甲戦闘車が最終候補車両として試験中です。しかし調達計画は450両を2015年には150億ドル以下で調達する見積もりでしたが、選定の長期化により現在は270億ドルが提示、調達数300両への削減を含め決定の延期を決定しました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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北朝鮮火星15型ICBM発射-問われるミサイル防衛,むらさめ型護衛艦後継オールイージスの可能性を考える

2023-02-20 07:00:44 | 防衛・安全保障
■臨時情報-ミサイル防衛
 北朝鮮が土曜日に発射したICBM大陸間弾道弾は火星15型であると発表されました。

 北朝鮮ミサイル実験、考えてみますと1993年に最初のミサイル実験が実施された際には、この時は北朝鮮のラジン級コルベットというめったに出航しない水上戦闘艦を海上自衛隊哨戒機が確認していながら、アメリカより通知されるまでミサイル実験そのものを把握できなかった、この頃のミサイル実験は数年に一回、という規模でしかありませんでした。

 現在のような高頻度となり、しかも核弾頭を搭載する懸念が高いミサイル脅威の増大を前に、ミサイル防衛をどのように扱うか、という課題へ取り組まねばなりません。具体的には、ミサイル防衛専用艦として、イージス艦、当初はかなり大型艦を建造する方針でしたが、その後修正され護衛艦型のイージス艦が建造されるようですが、この扱いについて。

 むらさめ型護衛艦後継艦にイージスシステムが搭載される可能性はあるのか、という点を具体的に考えてみたいと御思います。むらさめ型護衛艦は汎用護衛艦、つまり汎用護衛艦をミサイル護衛艦に統合する、現在のアメリカ海軍駆逐艦の様にオールイージスを目指す可能性は無いのか。こうした案はおととしに示せば予算が無いとして一蹴されたでしょう。

 しかし、長年の防衛費不足、その背景には脅威と任務が増大する中で政治が防衛費を抑制しようとしたため、多くの部隊で装備が足りず人員も増員無く部隊だけが増大し非情な定数割れに見舞われた中での防衛崩壊という状況に政治が目を向け、方向性は怪しいものの、防衛費だけはGDP2%へと、実質的に倍増させる方針へ舵を切った為、現実性が生まれる。

 反撃能力を整備するのでミサイル防衛は不要ではないか、こうした指摘もあるのかもしれませんが、核兵器による恫喝を日本が通常兵器による反撃能力で圧するには無理があります、2000発5000発という問題ではなく、核兵器に通常戦力で対抗するには10万20万という単位の弾道ミサイルが無ければ抑止できず、結果的にミサイル防衛は必要となります。

 イージス艦のローテーションという問題が、ミサイル防衛には常に付きまといましたが、汎用護衛艦をミサイル護衛艦へ統合したならば幾分かはこの問題を解消できるでしょう。無論問題はあり、イージスシステムはアメリカからの有償軍事供与を受ける為、多額の防衛費が外国企業に流れ、国内雇用に繋がりません。ただ、ミサイル防衛という視点からは検討の余地があるのかもしれません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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