北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】オランダとスウェーデンのCV-90,ハンガリーのリンクス装甲戦闘車とポーランドのボルスク装甲戦闘車

2023-02-06 20:22:56 | 先端軍事テクノロジー
特報:世界の防衛,最新論点
 今回は欧州の装甲戦闘車の最新動静を纏めました。もっともれいによって写真は自衛隊の89式装甲戦闘車で代用ですが要するに日本もこうした潮流に乗り遅れるべきではない。

 オランダ陸軍はCV-90装甲戦闘車の延命改修車両を受領しました。スウェーデンのヘルグランド社が製造しているCV-90,現在ヘルグランド社はBAE社参加となりBAEシズテムズヘルグランド社となっていますが、オランダへCV-90装甲戦闘車を供給、オランダ軍ではCV-9035-NL装甲戦闘車として実に122両が採用されています。今回の改修幅は広い。

 CV-9035-NLは元々強力な35mm機関砲を装備していますが、今回の改修ではATGM対戦車ミサイルの運用能力を付与、またEOPS複合電子光学照準装置を新型に更新しました、しかし最大の特色はAPSアクティヴ防御装置を追加したことであり、これにより対戦車ミサイルによる攻撃から装甲戦闘車と乗車する歩兵や乗員を守ることができる改造です。

 オランダ政府はこの改修に5億ユーロを投じています、それに見合った性能向上となりますが、同時に車体の老朽部分も換装されたことで2039年までの長期運用が可能となりました。オランダは冷戦時代に1000両以上のレオパルド2戦車を装備しましたが冷戦後一時戦車を全廃した時代があり、今も戦車は若干数である為、装甲戦闘車の重要性は高いのです。

 ハンガリー軍はリンクス装甲戦闘車の一号車をドイツのラインメタル社から受領しました。引き渡し式典はブダペストのペトフィサンドル駐屯地において実施され、ラインメタル社のCEOやハンガリーの国防大臣も臨席しました。リンクス装甲戦闘車はラインメタル社がプライベートベンチャーで開発、45tの車体は極めて高い防御力を誇るものといえる。

 リンクス装甲戦闘車を導入したのはハンガリー軍が世界初であり、2020年9月に209両のリンクス装甲戦闘車、そして9両のバッファロー装甲回収車と9両のAVLB戦車橋とともに20ユーロの契約を結んでいます。当面はドイツのラインメタル社での製造となりますが、契約では後期の生産車両はハンガリー国内で組み立てられ、国内での雇用を生む契約です。

 リンクス装甲戦闘車は高い汎用性をもつ車体構造が特色であり、ハンガリーが今回採用したものは30mm機関砲の有人砲塔を搭載しますが、リンクス120機動砲として自動装填装置を備えた有人砲塔に120mm低圧砲を搭載した重量50tのものもあります、近年の120mmHEAT弾威力増大は凄まじいもので、場合によっては戦車を置き換える事も可能だ。

 スウェーデン国防軍はCV-90装甲戦闘車派生型であるCV90-RENOについて9000万ドル相当の追加契約をBAEシステムズ社との間で結びました。CV-90はヘルグラント社を吸収合併したBAEシステムズ社が生産と国際流通を担当しており、今回の契約はそのジョイントベンチャーである国内のHBトヴィックリングAB社との間で契約されています。

 CV-90装甲戦闘車はスウェーデンが開発し、重量は23tと平均的でエンジンも625hpと平均水準、対戦車ミサイルもガンポートも搭載しない一見平凡といえる装甲戦闘車でしたが、ボフォース40mm機関砲を搭載し強力な火力を有しており、なにより火力以外の個性のなさが優等生的な設計と理解され、欧州共通装甲戦闘車というべき地位を獲得した装備です。

 今回契約されたのはCV90-FM前線整備車両とCV90-CE工兵戦闘車両で、ともに強力な40mm機関砲塔は取り除かれ小型の機関銃を搭載したRWS遠隔操作銃塔を搭載、後部兵員室を作業用汎用区画するとともに工兵戦闘車は排土板を装備しています。今回契約された車両は2023年から2027年にかけ順次スウェーデン軍へ納入される計画となっています。

 ポーランド陸軍は新型のボルスク装甲戦闘車をNATO戦闘群へ配備開始しました。これは2022年11月24日のNATOポーランド戦闘群編成完結式において示されたもので、ポーランドは冷戦時代の旧式化が進んだBMP-1装甲戦闘車の後継車両として開発を続けてきました国産装甲戦闘車の初度作戦能力獲得をNATOの同盟国に示す機会ともなりました。

 NATOポーランド戦闘群は、アメリカ第1歩兵師団隷下となった第1騎兵師団第3機甲旅団戦闘団第8騎兵連隊第3大隊とポーランド第15機械化旅団、イギリス王立槍騎兵連隊プリンスオブウェールズ戦闘群及びクロアチア軍砲兵中隊とルーマニア軍防空砲兵部隊から編成されています。このなかでポーランド軍は歩兵と偵察任務を担当しています。

 ボルスク装甲戦闘車のNATO戦闘群配備に際してはポーランドのマリウシュブラシュチャク副首相兼国防大臣も臨席しています。この車両は韓国のK-9自走榴弾砲車体部分の1000hpエンジンを搭載した機動力の高さに注目し、155mm砲塔を軽量な30mm自動砲塔へ置き換えた上で後部兵員室を配置した構造で、車体は水陸両用性能を有しています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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フランス海軍戦闘機-シンガポール空軍と共同訓練,中国核軍拡が強いるフランス海軍の東南アジア地域展開

2023-02-06 07:00:22 | 国際・政治
■フランスの東南アジア関与
 イギリスの空母クイーンエリザベスが横須賀に親善訪問しインドのフランカーが百里基地に来る時代ですので、次は空母シャルルドゴールかラファールが来日する可能性が。

 フランス海軍はシンガポール空軍との戦闘機共同訓練を実施しました、これはフランス海軍の戦力投射試験の意味合いも兼ねており、インド洋上の原子力空母シャルルドゴールを発進したラファールM戦闘機3機は実に4000㎞もの長距離を飛行しシンガポールへと展開しています。今回訓練に参加したのは比較的新しいラファールM-F3型とのこと。

 ラファール戦闘機はシンガポール空軍のF-15戦闘爆撃機やF-16戦闘機とともに南シナ海海上において訓練も実施しています。同じ2023年1月にはインド空軍戦闘機が日本へ展開し日印戦闘機部隊訓練を実施しましたが、今回の実例を見ますと日本にも近く、フランス海軍のラファール戦闘機来日という共同訓練も、あり得ることなのかもしれません。

 フランス海軍は今後南シナ海地域への安全保障上の関与を大幅に増大させる可能性があります、それは中国の軍事力拡大と関連しているものです。中国の軍事力拡大がいかに及ぼうとも、人民解放軍がフランスに上陸するには地中海も大西洋も遠すぎるのではないか、こう思われるかもしれません。実際に着上陸の可能性は低いものの、最大の懸念は核です。

 中国海軍は南沙諸島地域に占拠した環礁を次々と浚渫船により人工島へ造成していますが、従来は北海艦隊へ配備されていた戦略ミサイル原潜基地を海南島へ移設、南沙諸島を含む南シナ海を潜水艦の聖域としています。そして現在のJL-2潜水艦発射弾道弾はは欧州全域を射程には収めていませんが、開発中のJL-3は射程11000km、欧州を射程にふくみます。

 フランスは今後、他のNATO諸国とともに中国の核ミサイルが欧州NATO諸国を射程に収めることを受け、太平洋上からNATO諸国へ弾道ミサイル攻撃が行われ、核爆発による被害が生じた場合、特に朝鮮半島や中国本土ではなく、洋上の国籍不明潜水艦から発射された場合に、モスクワか北京か、発射命令を下した側を正確に把握する必要が生じます。

 フランス太平洋艦隊がタヒチに司令部を置き、艦艇を展開させていますが、現在配備されている水上戦闘艦は通報艦の延長線上にあるフリゲイトであり、小型であると共に対潜能力、特に戦略ミサイル原潜を識別できる性能も配備数も限られています。今後フランスは今回の様か訓練の頻度を高め、南シナ海へ本国艦隊の定期展開を行う可能性があります。

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