北大路機関

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【防衛情報】アメリカ級強襲揚陸艦LHA-9ファルージャと強襲揚陸艦キアサージ近代化改修,将来揚陸戦の代役部隊

2023-02-13 20:19:35 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 今回の特報はアメリカ海軍の強襲揚陸艦についてでサンディエゴでのボノムリシャールの火災による廃艦による穴が漸く埋まりそうです。

 アメリカ海軍は10月末、ハンティントンインガルスインダストリアルHII社との間でLHA-9アメリカ級強襲揚陸艦の建造について24億ドルの契約を結びました。この24億ドルは固定価格契約となりますが付帯契約とむ鴟尾全体の計画費用は32億ドル規模となります。このLHA-9はアメリカ級強襲揚陸艦の4番艦となり、両用作戦の中枢を担います。

 ハンティントンインガルスインダストリアル社はアメリカ有数の歴史を誇る造船所であり、建造はHII社のインガルス造船所において実施、インガルス造船所では現在、アメリカ級強襲揚陸艦3番艦のブーゲンビルが建造されているさなかです。遠征打撃群という強襲揚陸艦を中心とした水上部隊では、アメリカ級は多数の航空機を運用する艦となっています。

 アメリカ級強襲揚陸艦はワスプ級強襲揚陸艦に続いて建造された強襲揚陸艦で設計の特色は全通飛行甲板を有し、F-35B戦闘機やMV-22可動翼機を運用することにあります。当初アメリカ級は航空機運用に特化し揚陸艇を収容するドックを有していませんでしたが、両用作戦の輸送能力には不利であるとして、ドックを追加した設計となっています。

 アメリカ海軍は強襲揚陸艦キアサージの近代化改修についてイギリスのBAEシステムズ社とのあいだで2億9500万ドルの契約を結びました。今回の近代化改修ではメンテナンスとともにオーバーホールおよび近代化改修がおこなわれ、特にF-35B戦闘機運用能力強化が期待されています。改修のキアサージはワスプ級強襲揚陸艦の四番艦となっています。

 キアサージの近代化改修はBAEシステムズ社のノーフォーク造船所において行われることとなっていて、その改修期間は20ヶ月間を予定、2023年4月から近代化作業が開始され、6月にはドックへ入るという。近代化改修にはさらなるシステム改良や能力向上プログラムがオプション契約されており、これを行使した場合は3億ドルを超える契約になるという。

 ワスプ級強襲揚陸艦はCH-46ヘリコプターなど48機とAV-8ハリアー攻撃機6機を搭載する能力を有していますが、CH-46ヘリコプターは先進的なMV-22可動翼機に置き換わり、そしてAV-8ハリアー攻撃機はF-35B戦闘機へ転換する海兵隊航空の転換期にあります。一方、海兵隊は海兵遠征群から海兵沿岸連隊へという歴史的な転換期のさなかにもあります。

 アメリカ海軍はアメリカ級強襲揚陸艦LHA-9の艦名を"ファルージャ"と命名した。これはアメリカ海軍カルロスデルトロ長官が12月14日に発表したもので、ファルージャとはアメリカ海兵隊の激戦地の名を冠したものとなります。ファルージャの戦いは2004年イラク戦争における最大規模の市街戦で、イラク戦争由来の艦は本艦がはじめてとなります。

 ファルージャの戦いのほかに、アメリカ海軍では強襲揚陸艦イオージマ級や強襲揚陸艦タラワ、フィリピンシーなど海戦や激戦地の名が冠せられた事例は多く、日本へ初めて前方展開した航空母艦も空母ミッドウェーでした。ヨークタウンなどアメリカ独立戦争や南北戦争の戦場名も冠せられていますが、強襲揚陸艦に海兵隊の激戦地ファルージャ命名です。

 アメリカ級強襲揚陸艦はF-35B戦闘機の運用を最初から念頭として設計された初の強襲揚陸艦です、この強襲揚陸艦とはヘリボーンを水陸両用作戦の主柱と位置づけるアメリカ海兵隊にとり、多数のヘリコプターを同時運用するべく全通飛行甲板を採用した点に特色があり、ファルージャは加えてドックが有り揚陸艇や水陸両用車両の母艦能力があります。

 アメリカ海兵隊では"代役部隊"として無人舟艇を活用した将来の水陸両用作戦能力構築を進めているとのこと。"代役部隊"とは中国などを念頭に沿岸部への接近が機雷や地対艦ミサイルなど厳重な防御により従来の水陸両用作戦が事実上不可能となる現実に対応すべく構築される能力であり、小規模な部隊を機動運用する想定で進められています。

 代役部隊、これにはUSV遠征戦闘無人艦としてアメリカ海軍研究所と海兵隊戦闘研究所が新技術の開発を進めており、従来の水陸両用艦船を補完する装備体系を目指しているとのこと。具体的には沿岸部目標や障害物の偵察、また有人部隊揚陸に先立つ戦闘や、沿岸部への攻撃なども水陸両用装甲車ではなく無人艦艇の任務とする可能性など、です。

 USV遠征戦闘無人艦は現在開発されているものは小型の哨戒艇規模のものですが、RWS遠隔操作銃塔を筆頭に武装と、各種センサーを装備、このまま上陸することはできないものの、地対艦ミサイルへのおとりとなり炙り出す任務、また沿岸部の防御陣地への攻撃が可能となります、いわば有人部隊の代役を、損耗も含め無人艦艇に与える構図です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ロシア軍-ウクライナ東部で大攻勢,バフムト近郊で一定の前進も無謀攻勢に毎日924名死傷-英戦争研究所分析

2023-02-13 07:00:16 | 国際・政治
■臨時情報-ウクライナ情勢
 ロシアとの有事が顕在化した場合にはこんな連中と戦わなければならないのかと逆に考えさせられる数字が。

 824名、イギリス国防省戦争研究所の分析としてロシア軍はここ数日間、大規模な攻勢に出ており、不充分な装備と訓練不足により1日当たりの死傷者数が824名という驚くべき状況に上っているという数字が示されました。ここ数日間のロシア軍大規模攻勢は、侵攻開始から一年となる今月24日までに何らかの戦果を挙げる事が目的とおもわれるものです。

 824名、毎日BTG大隊戦術群が丸ごと消えている数字です。いや、ロシア軍はBTG大隊戦術群の火力偏重で近接戦闘能力に欠けた運用を見直し、近接戦闘能力を相応に重視した編成で戦闘に臨んでいるのですが、火力支援や適切な装甲車両による防護の無い状況での歩兵部隊大量投入が、結果的に毎日これだけの損耗を出している点は驚きと云えるもの。

 攻撃衝力持続性や攻勢限界点というような軍事的指標に基づいて戦闘を行っているのかは多分に疑問符が付くところなのですが、これだけの損耗によりロシア軍は確かに前進しています、東部のバフムト近郊で前進しており、数日内にバフムトと周辺地域を連絡するウクライナ軍補給路を遮断する勢いであり、ウクライナ軍も確かに後退し損耗は増えている。

 しかし、数日内にバフムトを包囲出来たとして、バフムト攻略は続く東部の要衝クラマトルスクを占領する事に在り、確かに一ヶ月程度この攻勢を維持したならば、数字の上ではクラマトルスクまで到達する可能性はあります、ただ、その場合の死傷者は数万、ソ連時代のアフガン侵攻10年間の戦死者を凌駕する死傷者が春になるまでに出る計算、という。

 30万の動員に続いてロシア国内では二次動員の動きがある。故に損耗には耐えられるのかもしれません、この点ウクライナ軍参謀本部が8日に発表した情報として、戦時発表故に差し引く要素は多分にあるが、ロシア軍の開戦以降11カ月の戦死者数を13万4100名、直近24時間の戦死者を910名、と数字を示しています。死傷者と死者の違いこそあれ、現実的な数字ながら陸上自衛隊丸ごとと同じ人数だ。

 こうした国が隣国に居るという日本ですが、他方でロシア政府としては、どの程度までの損耗を見込んで特別軍事作戦を開始したのかは、最早今となっては計算不能です。しかし、ここまでの人的損耗が重なりますと、権威主義国家とはいえいずれ世論の影響は顕在化します。その為には出口戦略として一定の戦果を示せねばならず、逆に考えるならば出口を模索しつつ遠ざかっているよう、懸念するのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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