北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

レオパルド2主力戦車供与とウクライナ軍-第三世代戦車により初めて実現されるNATO方式の現代地上戦闘

2023-02-09 20:00:43 | 先端軍事テクノロジー
■最初の大隊は三月にも供与
 90式戦車はじめ第三世代戦車は長年の課題であった攻走守の三要素を全てを充分満たした装備です。

 ドイツのピストリウス国防相は訪問先の8日に発表したところによれば、ウクライナへ供与される第三世代戦車、レオパルド2戦車による最初の戦車大隊は早ければ来月、若しくは4月にも供与されるとのこと。この大隊は31両編成という。ドイツの供与決定と共に欧州各国は供与方針を相次ぎ表明、旅団規模のレオパルド2主力戦車が引き渡されるもよう。

 ロシア軍がレオパルド2戦車とエイブラムス戦車を警戒する理由、ロシアのT-90戦車では歯が立たないという理由が最大のものなのですけれども、それ以上に”ネットワーク中心の戦い”という1990年代以降アメリカと欧州NATOや自衛隊と豪州軍などが丹念に組み立てた先進的な戦い方を仕掛けられることを極度に警戒している為なのかもしれません。

 RMA軍事における技術革命、として1990年代後半から2000年代に説明されたものですが、第三世代戦車の一つ一つの装備は強力な通信ネットワークにより結ばれています、分散して浸透する、昔ならば分散していれば各個撃破されたものの、データリンクにより敵を避け、ほんとうに分散し、ただし攻撃の瞬間だけ集結して集団としての威力を発揮する。

 この戦いには、昔の第一次大戦中の浸透戦術を師団単位で行う様なもので、ネットワーク化されてこそ可能な戦いです。分散して前進しますと、敵もどの部隊が主力であるのかが分り難く、また砲兵火力を集中させようにも分散しています。分散した部隊は此処に補給点も分散し、沁み込むように、しかし70km/hの機動力で浸透してゆく戦いかたとする。

 主力戦車、分散して各個撃破されない為には堅い装甲と機動力を備えた装備が必要です、要するに分散した一つ一つの小規模な部隊が、ロシア軍戦車部隊等と遭遇した際に情報を共有するまでの部隊の生存を図る装備、それが戦車です。まさに、電子機器と通信能力を高い機動力と防御力と共に浸透の先鋒を担う戦車は正に中心的な装備なのですから、ね。

 分散して浸透する、ウクライナへ供与が決定している装備にはM-2ブラッドレイ歩兵戦闘車やマルダー1装甲戦闘車があります、これはM-113装甲車のような箱型で不整地を移動させる点に特化した装甲車よりも進み、高い機動力を持つ第三世代戦車が最大限前進する機動力に随伴できる機動力と一定の敵の反撃に耐える防御力を持つ歩兵の機動手段です。

 M-109自走榴弾砲やAS-90自走榴弾砲にPzH-2000自走榴弾砲、つまりトラック機動ではない装甲防御力を持つ自走砲、そして装軌式のMLRSも、こうした分散して浸透する機械化部隊へ随伴できる装備です。ロシア軍はウクライナ軍から物資集積所などを離隔しては位置しているようですが、第一次世界大戦中の西部戦線とは違い、前線防御には隙が有る。

 アメリカが供与したHIMARSの射程80kmというGMLRSロケットによる精密誘導攻撃にロシア軍は大損害を被り、基本的に前線から80km圏内に弾薬や物資集積所を置かないという方法で対応しています、この為にウクライナはATACMS陸軍戦術ロケットなど射程の更に長い装備を求めていますが、ウクライナは射程の長いミサイルを求めているが。

 長射程ミサイルを補う装備、その役割を果たすのは"戦車"なのかもしれません。これはレオパルド2A6やM-1A2エイブラムス戦車がデータリンクにより結ばれた戦車という点であり、相当数のM-2ブラッドレイ歩兵戦闘車とマルダー装甲戦闘車も供与され、機械化部隊が編成可能となります。すると、西側の軍隊は、自衛隊は未だ装甲戦闘車が足りませんが。

 最前線が昔のフランスのマジノ線のように固く万遍なく防衛されている場合を除けば、少数で浸透攻撃を行います、これを普通の昔ながらの戦車で行えば孤立して各個撃破されますが、データリンクで結ばれている場合、補給も火力支援も敵のいない地域も情報を共有し、とんでもも無い所まで奥深く浸透できる、ここにHIMARSを随伴させるならば。

 MLRS,いや出来ればHIMARSよりもイギリスが供与したMLRSのほうが装甲が厚いのですが、GMLRSで敵の深部をも一掃できるのです。射程が足りなければ分散して肉薄する、相手が密集している場合にはMLRSの最大の強みである面制圧火器としての威力を発揮出来ますし、小規模目標である場合でもPzH-2000やAS-90自走榴弾砲が威力を発揮する。

 戦車というものは、時代遅れではないか、2020年のナゴルノカラバフ紛争でも今回のロシアウクライナ戦争でも、いや1973年の第四次中東戦争以降、メディアに今風の視点ということで毎回のように喧伝される視点なのですけれども、近接戦闘という戦争の実態が不変である以上、特に前線に楔を打ち込み穿つという点で戦車の重要性は当面続きそうです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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トルコ南部地震-死者1万名超す,迫る"人命救助-72時間の壁"救助活動尽力の努力と届かぬ支援の現実

2023-02-09 07:01:44 | 防災・災害派遣
■臨時情報-トルコ南部地震
 小牧基地では地震の在った当日も日常訓練が続いているのですが、トルコは欧州NATO最大というかなりの規模の陸軍を有しているもののこういうときには不足する、支援できないものか。

 トルコ南部地震、死者数は時間と共に増大しており、直下型の振動周期が短く瞬間的な揺れが集中して建物に負荷をかける揺れが、現地の構造物、特にトルコの現在の耐震基準よりも前に建設された建物、中層建築物を崩壊に至らせたという、パンケーキクラッシュ、こう説明される、一つの階層が崩壊する事で将棋倒しのように潰れる破壊が多数あった。

 シリアとトルコの死者数は1万1200名と日本時間8日時点で大台を超えており、兎に角救助隊を現地に運び込むためのヘリコプターと機動車輛の不足が現地から伝わります。この点、思い切ってトルコの加盟するNATOと共に日本もUH-1多用途ヘリコプター位を災害派遣という事で輸送機により現地へ展開させられないものか、と考えるのですけれども。

 72時間、過去には瓦礫の下で一週間以上生存した事例もあるのですが、これは奇跡的な救助事例というものであり、一般論として瓦礫に閉じ込められ、飲食出来ない状態で体の一部が圧迫され続けている状況での人命生存時間は72時間を境に急激に生存性が下がるとされています、だからこそ急いている一方、現地では支援の届かない現場も多い現状がある。

 阪神大震災における災害派遣の自衛隊記録を当時の中部方面隊がまとめた資料があるのですが、鶴嘴や円ぴでの災害派遣、つまり専門工具の無い当時の災害派遣装備では、普通科部隊などは、倒壊したビルの生存者を探すにも、叩いても先ず穴をあける事が難しい、一つ穴をあけたとしても、中の生存者を探せる規模までは人力では無理、できなかった、と。

 人命救助システム、陸上自衛隊は全国の駐屯地へ阪神大震災の教訓を受け、災害派遣に際してまず必要であった装備品、一つ一つは専用装備でも、また高いものではなく可搬性が有るものの、しかし災害現場には在りそうでないものを一つのコンテナに収容した人命救助システムという装備品を阪神大震災以降、極めて短期間で全国の部隊へ配備しました。

 エンジンカッターにエアジャッキと油圧式ジャッキ、エンジン削岩機と手動式ウインチ、可燃性ガス検知装置に捜索用音響探知機や非破壊構造物探知装置、小型消防装備と携帯式消火装置、作業用照明装置に発動式発電機、移動式トイレなど。こうしたコンテナごと減りでも運べる装備品を被災地に運び込めないものか、災害報道を前に考えてしまいます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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