北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

AH-2/UH-2新対戦車ヘリの可能性を考える【2】UH-2多用途ヘリコプターをガンシップ化する運用上の難しさ

2024-02-10 20:24:13 | 先端軍事テクノロジー
■日の丸ガンシップ考察
 陸上自衛隊は過去にHU-1B用ハイドラ70ロケット弾発射機10機分を調達し実験した上でAH-1Sを選んでいます。

 富士重工スバルがUH-1Jの後継に手堅い設計のUH-2を開発した、そして富士重工時代にUH-1Hをライセンス生産していた傍ら、AH-1Sをライセンス生産していました、さらに重要なのは現在のUH-1Jというのはエンジン部分をUH-1HではなくAH-1Sと共通化させることで運用互換性を高めたという点です、そういう意味で姉妹機といえましょう。

 AH-1SからUH-1Jが誕生した、ふつう逆だろうと思われるかもしれませんが各国が冷戦時代のUH-1H、これは分隊を輸送できないUH-1Bを置き換え機内容積を拡張したという意味で非常に有意義な選択肢であったのですが、延々UH1-Hを造り続けるのではなくAH-1Sとエンジン互換性などを持たせた、という意味で大きな意味があったといえます。

 UH-1H,考えますと欧州は後継にNH-90を開発、非常に優れた機体ですが一時間当たりの飛行コストがユーロファイタータイフーンと同程度という高コストに悩んでいますし、アメリカはUH-60Aを開発しましたが全てを置き換えられず州兵用にUH-72A/Bラコタを開発し二分化、どの国も苦労している中、UH-1Jはある程度合理性を持たせられた。

 UH-2をもとに、AH-1Sを、そのまま移植した場合は武装システムが40年以上前ですのであんまりですから多少は能力向上し、操縦装置はUH-2並、ミサイル射程を延伸しデータリンクシステムもせめて広帯域無線機コータムに対応させる必要がありますが、AH-2として完成させることができれば、コスト面と運用面で理想的選択肢とはならないでしょうか。

 ベルヘリコプターテキストロン社はAH-1Wスーパーコブラ、AH-1Sを双発化した機体を既に1980年代に完成させ2000年代には四枚ローターとエンジンや駆動系を一新したAH-1Zバイパーを完成させていて、こちらはヘルファイアミサイル運用能力やスティンガー空対空ミサイルなどによる空対空戦闘能力を既に備えたものが市場に提示された。

 AH-1Zバイパーを調達したら良いではないか、という反論があるでしょうがUH-2はUH-1Yヴェノムではないように、自衛隊の場合UH-1Yと大半が部品として共通であるAH-1Zを導入する必然性はなく、またアメリカ海兵隊の運用に適合するように設計されているAH-1Zは必ずしも安価ではありません、政府武器援助があって安価となるだけです。

 チェコ軍がAH-1Zを導入し、比較的安価な取得費用であったとして話題になりましたが、これはチェコ軍がAH-1Zで置き換えた機体がMi-24ハインド攻撃ヘリコプターで、アメリカ政府はチェコがハインドをウクライナへ武器援助する見返りに安価にAH-1Zを供給、つまりAH-1Zをウクライナへ提供できないため迂回供与のかたちをとったわけです。

 自衛隊の場合はさすがにAH-1Sをウクライナへ供与してアメリカからウクライナ武器援助予算を流用して安価にAH-1Zを取得するという選択肢はとれません。他方、前述したような単純にUH-2をガンシップとしてAH-1Sの後継に充てることもできないのです。もちろんスタブウイングを増設してロケット弾等で武装することは可能なのでしょうけれども。

 キングコングでは一見有用に見えた方式ですが、日本にとり有用ではないという背景には、ヴェトナム戦争での運用で既に指摘、つまり1970年代から指摘されていることなのですけれども、機外に装備されたさまざまな武装は、その種類にもよるのですが物凄い空気抵抗になる、ということ。飛行性能、速度も落ちてしまいますし、なにより航続距離に響く。

 UH-2をガンシップ化する、もちろん搭載することそのものはベル412がガンシップ型を開発していますし、十分可能なのでしょうが陸上自衛隊が求めている航続距離を維持できるかについては、要求仕様にガンシップ装備での南西諸島での運用性能が含まれていませんので、確証できないところがあります、そこでAH-1の後継機という視座、つまりAH-2へ。

 AH-1が胴体を細身としたのは、対空砲火から機体が被弾しにくくするため、という視点は前述の通りですが、同時に細身とすることで空気抵抗を抑えるという効果も期待されています、つまりUH-1とAH-1が一緒に飛行することを念頭としたのです、AH-1はUH-1の降着地域への火力制圧やUH-1での空中機動部隊の近接航空支援も担う必要があります。

 ガンシップの難しい背景をもう一つ挙げますと、一見安価にみえるガンシップですが機銃ポッドとロケット弾発射装置だけならば装備は可能です、70mmロケット弾でも2000m程度の射程はありますし、機銃ポッドもM-134ミニガンを装備しましたらそれなりの制圧力があります、しかし対戦車ミサイルとなりますと、照準器が必要で高価となるのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都幕間旅情】榛名さんの総監部グルメ日誌:京都-北大路,福知山トンコツラーメンと門司発824レ普通列車

2024-02-10 14:44:23 | グルメ
榛名さんの総監部グルメ日誌
 こうも体調がすぐれないと写真さえ後ろ向きになってしまうものなのです。そんななかで今回は北大路駅にあります福知山ラーメンの話題をちょっと考えてみました。

 福知山といえば、東舞鶴行普通列車の始発駅でもありまして、綾部駅で乗り換える際に青春18きっぷなどで移動する際には、結局綾部で延々松よりはと福知山まで暖かい、若しくは涼しい空調の利いた列車に乗って行って、東舞鶴へと折り返したものなのですが。

 ふくちゃん。いま福知山のラーメンが熱い。いや、この季節にラーメンが熱くないのは中華サカイの本店くらいだろう、とつっこまれるかもしれませんが、胃腸をやられて満足に食事できないとき、明るいうちの一食ということでラーメンで気力を繋いだことがある。

 北大路駅の北大路ビブレ、もといイオンタウン北大路には地下鉄エスカレータを出たすぐ隣にラーメン屋さんがありまして、福知山に本店があるラーメン屋さんなので時折頂いています、食券を買う方式で昔は和食屋さんがはいっていたところに暖簾を掲げている。

 ふくちゃんさん。トンコツラーメンのお店です。細麺に、九州の博多とはちょっと違うけれども、しかし九州には負けていないトンコツラーメンを供してくれる。塩分過多といわれても、一色で気力を繋がなければならない時ラーメンは心強い、絶対量で過多ではない。

 博多でもないのに何故トンコツなのだろう、これ、ちょっと考えたのですが、福知山から門司まで昔、普通列車が運行されていたのですよね。595kmを19時間かけて早朝の門司を福知山へ走っていたという。もう昭和の頃に廃止されてしまった長距離列車なのですが。

 824レ列車というものだそうですが、特急でも10時間かかる山陰本線ほぼ踏破経路、考えれば福知山駅というのは駅前サウナが残っていたりで長距離列車基点駅の風格があります、京都駅とか岐阜県の大垣駅のような、寝台特急全盛期は山陰線寝台特急は福知山経由です。

 トンコツラーメン、なんでうまうとんこつラーメンが福知山に、とおもったのですが考えてみれば昔は毎日、とんこつラーメンの本場は門司駅から関門海峡と山陰線を越えて福知山まで普通列車と特急列車が結んでいたのだから当然、といえるのかもしれませんよね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-ゼレンスキー大統領,ザルジニー総司令官を交代-新総司令官にシルスキー陸軍司令官を補職

2024-02-10 07:00:06 | 国際・政治
■防衛情報-ウクライナ戦争
 総司令官の交代は以前から可能性が報じられていましたが。司令官の交代というのは日露戦争の第三軍司令官を観れば分かるように生殺与奪の掛かる軍事機構においては大きな影響があります。

 ウクライナのゼレンスキー大統領はウクライナ軍総司令官の後退を発表しました。今回後退したのは開戦前の2021年より現職のザルジニー総司令官で、後任に陸軍のシルスキー司令官を補職しています。ザルジニー総司令官はキエフ防衛線やハリコフ反攻戦とヘルソン奪還戦など困難を成功に導いた事でウクライナでは大きな知名度と人気を誇ります。

 ザルジニー総司令官交代の背景には、昨年イギリスメディア取材に対し、ウクライナ東部戦線の膠着を率直に認めた事で、こう着状態を政治的に認める事が出来ないゼレンスキー大統領との認識の相違点がもたれたとされていますが、昨年の夏季反転攻勢への全周囲攻撃か一点集中攻撃を行うかで認識の不一致があったなど確執が深まっていたともいわれる。
■ザルジニー総司令官
 ザルジニー前総司令官は今後どうウクライナ政府が活用するか。

 ゼレンスキー大統領は、しかし総司令官交代に際しザルジニー総司令官との対談写真をこうかいするなど、不なかによる更迭ではないと強調していますが、後任のシルスキー司令官は軍事高等教育をモスクワで受ける等、ソ連式の全縦深攻撃ドクトリン採用で知られ、固守に固執し多数の戦死者を出すなど過去の指揮は現場から必ずしも支持されていない。

 ザルジニー前総司令官のこれからの去就は明らかにされていませんが、例えば駐米大使や駐英大使といった、アメリカやNATOからの防衛協力や軍事援助の更なる強化に向けて活躍が求められるのかもしれません。他方、昨年の夏季攻勢事実上の失敗を、今年の反転攻勢にシルスキー新総司令官がどう取り組むのかは、欧州の未来が賭かる関心事となります。
■シルスキー新総司令官
 新しい司令官就任ですが。

 シルスキー新総司令官は陸軍司令官の出身ですが、今後ウクライナの将来を左右するのは間もなく開始されるF-16戦闘機ウクライナ配備、つまり空軍力に左右されることとなるのかもしれません。F-16は昨年六月からの反転攻勢の時点で必要とされた装備ですが、MiG-29とは根本から異なる装備故に訓練が追い付かず、配備は今年春からとなるもよう。

 F-16戦闘機については、オランダやデンマークとノルウェーのF-35配備に伴う余剰機が供与されるため、かなりの数となります。奇しくもザルジニー前総司令官は制空権の重要性に関する論文を発表したばかりであり、F-16配備間近を受け、ロシアのプーチン大統領も武器供与の中止を欧米メディアの取材に応じ訴えかける等、状況は変わりつつあります。

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