北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】P-1哨戒機派生型電子作戦機と護衛艦用新戦闘指揮システム,新艦対空誘導弾能力向上型開発開始

2024-02-26 20:23:50 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 今回は防衛省が発表した新しい装備開発についての情報です。

 防衛省は新たにP-1哨戒機派生型の電子作戦機の開発の開発を開始します。海上自衛隊は現在、EP-3多用途機を運用していて、これはアメリカ海軍が電子偵察機として運用しているEP-3と同様の運用に当てられる航空機です、しかしP-3C哨戒機派生型であり、P-3C哨戒機が徐々に耐用年数を迎えている通りEP-3も耐用年数限界が近づいている状況です。

 電子作戦機は主として電波情報収集と画像情報収集を敵脅威圏外より実施するとしており、また探知と追尾に類別確認を行い、我が方の艦艇や航空機を直接支援するという。具体的にはEP-3に加えてOP-3画像情報収集機の後継機を目指しているといえるもので、EP-3とOP-3を一機種で統合する事で電子情報収集機の機数を増強させる可能性があります。

 EP-3とOP-3の後継として興味深いのは敵の識別対象として脅威艦隊の他に漁船群という名称がイメージ図に添付されており、現在南シナ海などで問題視されている海上民兵の行動を他の漁船と識別する為の情報収集能力も求められているのでしょう。EP-3の耐用年数は令和10年代半ばといい、ライフサイクルコストは7658億円を見込んでいるもよう。
■12式魚雷改良型
 魚雷で魚雷を。一部の国ではかつて自衛隊も装備していたボフォース対潜ロケット弾を魚雷迎撃用に転用する動きはある様ですが本邦は別の方策を目指す模様です。

 防衛省は12式魚雷の魚雷防御機能付与型開発を発表しました。これは潜水艦などから発射される長魚雷について、そのセンサー部分の探知性能が向上しており、なかでも航跡追尾方式の魚雷に対しては従来のデコイやジャマーによる音響欺瞞に効果が無い事から、魚雷そのものにハードキル機能を付与したものを新たに開発を開始するとのことです。

 12式魚雷は護衛艦などの水上戦闘艦に搭載するもので、潜水艦より発射される音響ホーミング魚雷などについてはデコイやジャマーといったソフトキルにより対処出来るという年頭の上で高性能魚雷に対抗する際にこちらから相手の魚雷にこちらの魚雷を命中させて無力化するという方式、これは無誘導魚雷に対してもある程度対抗できる余地があります。

 誘導魚雷について。実のところ世界海戦史を見る限り誘導魚雷による実戦戦果は未だ上がっていません、フォークランド紛争でもイギリス原潜コンカラーは敢えて無誘導魚雷を使用しアルゼンチン海軍巡洋艦を撃沈しています。なお、この改良型12式魚雷の本体製造費を含まないライフサイクルコストとしては774億円が見込まれているとのことでした。
■護衛艦用新システム
 むらさめ型護衛艦の次がそろそろ見えてくるのでしょう。

 防衛省は護衛艦用新戦闘指揮システムの研究を開始します、これは護衛艦隊護衛隊群へ配備される汎用護衛艦の後継となる将来護衛艦導入に繋がる要諦の一つとなるでしょう。現在、もがみ型護衛艦とこれを拡大改良型とした新型護衛艦の建造計画がありますが、はつゆき型あさぎり型を置き換えた護衛艦むらさめ型以降の護衛艦も老朽化が進んでいる。

 防衛省は護衛艦用新戦闘指揮システムを“戦闘様相の変化に応じた関連情報を抽出・整理し、的確かつ迅速な情勢判断に資する戦術情報の提供、最適処置の進言による意思決定サイクルの高速化及び省力・省人化を図るとともに、新規装備品の導入に伴う高い拡張性を有する護衛艦用の新たな戦闘指揮システムに関する技術を研究する。”と説明しています。

 将来護衛艦は現在の各種ミサイルに加えて高出力レーザー砲やレールガンに多数の無人航空機やマイクロ波兵器を搭載し、敵対勢力も従来のミサイル飽和攻撃や潜水艦攻撃に加えて無人機のスウォーム攻撃や超長距離からの各種兵器の攻撃や無人艇による飽和攻撃を想定する必要が生じる為、従来の判断速度では対応できない状況が想定される事となります。
■新艦対空誘導弾
 A-SAMがさっそく改良へ。

 防衛省は新艦対空誘導弾(能力向上型)の開発を発表しました。海上自衛隊はミサイル護衛艦に最大射程370kmともいわれるスタンダードSM-6の運用を開始しますが、今回開発される新型装備はミサイル護衛艦ではなく汎用護衛艦へ広範に搭載されるものとなります。現在、むらさめ型護衛艦の護衛艦は射程50kmのESSMミサイルを搭載していますが。

 A-SAM,能力向上型の原型となるミサイルは現在護衛艦もがみ型等に搭載を進めるミサイルで、陸上自衛隊が装備する03式中距離地対空誘導弾改良型と07式アスロックのブースター技術を応用したものとなっており、03式中距離地対空誘導弾そのものがESSMよりも射程が延伸されており、ブースター部分の強化と併せ一定以上の射程があるとされます。

 新艦対空誘導弾(能力向上型)は従来のレーダーでは捕捉が難しい低高度航空機や高高度高速目標を迎撃するとしており、これは具体的には極超音速滑空兵器や対艦弾道弾への対処能力を汎用護衛艦へも付与させるものと解釈できます。そして03式中距離地対空誘導弾についても現在同様の改良型開発が開始されており、歩調を合わせていると理解できます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-ロシア軍A-50早期警戒機また撃墜,各国早期警戒機に突き付けられる長射程地対空ミサイル

2024-02-26 07:00:34 | 先端軍事テクノロジー
■防衛情報-ウクライナ戦争
 A-50早期警戒機が先月に続きまた撃墜されました。ロシア軍のウクライナ侵攻には少なからぬ影響を及ぼしそうですが今回使用されたものよりも射程の長いミサイルをロシアと中国も保有する。

 ロシア空軍はアゾフ海近海のロシア領空圏内においてA-50早期警戒機を喪失しました。ウクライナ軍地対空ミサイルにより撃墜されたものとみられ、ウクライナ政府は撃墜の様子を撮影したという夜間映像を公表しています。A-50早期家回帰はロシア軍が現在8機を運用している早期警戒機ですが1月にも1機が撃墜、その前に地上でも破壊されました。

 ウクライナ側が公開した映像には夜間、IRフレアーのような機体自衛装置を連続作動させる航空機付近で爆発が連続し起こる様子が記録、1発は機体をやや離れた場所で爆発しますが2発目が命中する様子が記録、狙われた航空機はミサイルを回避するためにかなり低い高度まで退避しているものの明けきれなかった様子と墜落後の機体が映されていました。

 A-50早期警戒機の撃墜には不確定情報ですが、ウクライナ軍がソ連時代に運用していたS-200地対空ミサイルが使用されたものとみられます。これは1960年代の古いミサイルではありますが、射程が300kmと非常に長くミサイルの機動性は低いものの戦域後方の航空機などや高高度を飛行する偵察機を撃墜する為のミサイルでウクライナから撃たれたもの。
■防衛情報-ウクライナ戦争
 早期警戒機のレーダー警戒範囲は400kmから500kmで場合によっては射程300kmの地対空ミサイル圏内を飛行する必要があるし空対空ミサイルの長射程型も存在する。

 A-50早期警戒機撃墜は実戦における早期警戒管制機運用の様相を切り替える可能性があります。長射程ミサイルの脅威に対応しているのは我が国航空自衛隊で、ロシア軍長射程ミサイルの圏内付近を飛行する三沢基地や中国軍長射程ミサイルの圏内付近を飛行する那覇基地の早期警戒機には空母艦載機で小回りの利くE-2CやE-2D早期警戒機を配備する。

 E-767早期警戒管制機は後方の浜松基地に配備されていて、本州上空において防空作戦の中枢を担う、としています。アメリカ空軍などは大型のボーイング707旅客機を原型とするE-3早期警戒管制機の後継機として比較的小型のボーイング737を原型としたE-7早期警戒機へ置き換える方針でイギリスやNATOもE-3をE-7へ置き換え、イギリスは完了した。

 E-7早期警戒機はE-3よりは小型ですが、この他にG-550-AEWのような更に小回りに聞くビジネスジェット機を原型とした早期警戒機の配備を進めるポーランドや韓国、既に導入したスウェーデンやイタリアの事例などがあります。他方、同様の状況で運用される対潜哨戒機は、無人機や戦闘機、高い脅威地域での運用方法などが模索されている最中です。

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