■臨時情報-中東情勢
中東地域の緊張はまた一段増す事になるのでしょうか一過性の事態に留まるのでしょうか。そして何より日本にはどういう影響が及ぶのでしょうか。
アメリカ軍は1月28日に発生した中東ヨルダンのアメリカ軍施設へのイラン系武装勢力による無人機攻撃により死者が出た事を受け現地時間2日夜に報復攻撃に出ました。これによれば攻撃は30分間にわたり行われB-1爆撃機も参加し精密誘導兵器125発を使用、攻撃目標は武装組織の指揮所やミサイル及び無人機関連施設など85カ所にのぼるとのこと。
ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は日本時間3日に行われた会見において、初期段階での攻撃は成功したと発言した上で、報復攻撃は今夜始まった訳だが今夜終わる訳ではない、とし長期化する見通しを示しました。一方、カービー調整官は、アメリカはイランとの衝突も中東での衝突拡大も望んでいない、と事態鎮静化の要望を強調しました。
バイデン大統領は2日、デラウェア州を訪問し28日の攻撃により戦死したアメリカ兵3名の遺体アメリカ帰国に立ち会いました。そのうえでバイデン大統領は2日、声明を発表していて、バイデン大統領自身が攻撃を指示しイラン革命防衛隊と関連する武装組織が使用するイラクとシリアに所在する施設を攻撃した、われわれの攻撃は続く、としています。
バイデン大統領は重ねて、アメリカは中東での紛争は臨んでいないが、アメリカ国民に危害が加えられれば対応する、と次に攻撃が行われた場合でも報復を示唆しました。攻撃対象の施設は85カ所となっていますが、主に七つの地域に分かれている目標に精密誘導爆弾による攻撃を加えた事になります。現地では現段階で13名が死亡したとも伝えられている。
カタイブ・ヒズボラ、今回アメリカ軍が報復攻撃を行ったのはヨルダンのアメリカ軍施設などに対して攻撃を行ったとされるカタイブ・ヒズボラなどについてです。イラクやシリアにカタイブ・ヒズボラが影響力を行使しているのは2010年代中ごろに顕著であったイスラム過激派ISILの台頭で、新生イラク軍や内戦中のシリア軍に代わる防備組織が生まれる。
カタイブ・ヒズボラはイランの支援を受けISILと戦った民兵組織とされていますが、ISILの脅威が過去のものとなっても、新生イラク軍やシリア軍に地域防備を移管することなくイランの支援を受けたまま地域に影響力を行使し続け、そしてこうした武装勢力にも遠距離を攻撃できる無人機がイランより提供されたことで、ヨルダンへ攻撃が行われた構図だ。
イランへの攻撃は行われなかった。今回のアメリカ軍による報復攻撃は85カ所に及んだとされていますが、重要なのはアメリカ軍はイラン本土への攻撃を慎重に避けている、ということです。イランが支援する武装組織はヒズボラやイスラム聖戦など複数の組織が存在しており、アメリカ軍施設への攻撃は過去3カ月間でも80回を超えている状況があります。
イランへの攻撃は、例えば同じくイランが支援するイエメンのフーシ派による紅海海上への商船攻撃など、中東地位への不安定要素の源流がイランにある事から、アメリカ議会では共和党を中心にイランへ強い措置を行うべきとの主張もあり、今回懸念されたのは限定攻撃であってもイラン本土へ何らかの措置が行われ、緊張がさらに拡大する事でした。
紅海の緊張は緩和するのか。大きな関心事は日本への物流にも影響しているイエメンのフーシ派による紅海シーレーンへの攻撃です。既に欧州からアジアへの35フィートコンテナ運賃はフーシ派攻撃前と比較し1500ドルから5500ドルへ大きく高騰しています。アメリカ軍はイギリス軍と共に今回以前にもフーシ派地上施設への攻撃を行っていますが。
紅海の情勢は、しかし今回の報復攻撃とは別問題であり、影響は残念ながらないと言わざるを得ません。ただ、無人機攻撃がアメリカ関連船舶やアメリカ艦艇に対して行われる場合には、同様の措置が取られる事を示唆したことになるのかもしれません。一方、無人機等を供与しているイラン本土の関連施設が攻撃されない事は、状況が続く事をしめします。
商船攻撃について。既に護衛艦あけぼの近距離へ弾道弾が撃ちこまれていますが、日本企業が運行する船舶のフーシ派戦闘員による拿捕など影響は顕在化しているものの、日本側の措置は具体的なものが有りません。ただ、あけぼの交代へ護衛艦さざなみ派遣が予定されています、さなざみ、たかなみ型護衛艦で、僚艦防空能力などの戦闘能力はありません。
商船攻撃は、例えば安倍政権時代に制定された平和安全法制に想定されたホルムズ海峡封鎖と、現在のバベルマンデブ海峡の情勢は重なるものがあり、船舶防護について僚艦防空能力か広域防空能力を持つ艦艇の派遣は検討されるべ事態ともいえます。今回のアメリカ軍報復を受け中東地域が一層緊張度を増した場合、厳しい決断を迫られるでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
中東地域の緊張はまた一段増す事になるのでしょうか一過性の事態に留まるのでしょうか。そして何より日本にはどういう影響が及ぶのでしょうか。
アメリカ軍は1月28日に発生した中東ヨルダンのアメリカ軍施設へのイラン系武装勢力による無人機攻撃により死者が出た事を受け現地時間2日夜に報復攻撃に出ました。これによれば攻撃は30分間にわたり行われB-1爆撃機も参加し精密誘導兵器125発を使用、攻撃目標は武装組織の指揮所やミサイル及び無人機関連施設など85カ所にのぼるとのこと。
ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は日本時間3日に行われた会見において、初期段階での攻撃は成功したと発言した上で、報復攻撃は今夜始まった訳だが今夜終わる訳ではない、とし長期化する見通しを示しました。一方、カービー調整官は、アメリカはイランとの衝突も中東での衝突拡大も望んでいない、と事態鎮静化の要望を強調しました。
バイデン大統領は2日、デラウェア州を訪問し28日の攻撃により戦死したアメリカ兵3名の遺体アメリカ帰国に立ち会いました。そのうえでバイデン大統領は2日、声明を発表していて、バイデン大統領自身が攻撃を指示しイラン革命防衛隊と関連する武装組織が使用するイラクとシリアに所在する施設を攻撃した、われわれの攻撃は続く、としています。
バイデン大統領は重ねて、アメリカは中東での紛争は臨んでいないが、アメリカ国民に危害が加えられれば対応する、と次に攻撃が行われた場合でも報復を示唆しました。攻撃対象の施設は85カ所となっていますが、主に七つの地域に分かれている目標に精密誘導爆弾による攻撃を加えた事になります。現地では現段階で13名が死亡したとも伝えられている。
カタイブ・ヒズボラ、今回アメリカ軍が報復攻撃を行ったのはヨルダンのアメリカ軍施設などに対して攻撃を行ったとされるカタイブ・ヒズボラなどについてです。イラクやシリアにカタイブ・ヒズボラが影響力を行使しているのは2010年代中ごろに顕著であったイスラム過激派ISILの台頭で、新生イラク軍や内戦中のシリア軍に代わる防備組織が生まれる。
カタイブ・ヒズボラはイランの支援を受けISILと戦った民兵組織とされていますが、ISILの脅威が過去のものとなっても、新生イラク軍やシリア軍に地域防備を移管することなくイランの支援を受けたまま地域に影響力を行使し続け、そしてこうした武装勢力にも遠距離を攻撃できる無人機がイランより提供されたことで、ヨルダンへ攻撃が行われた構図だ。
イランへの攻撃は行われなかった。今回のアメリカ軍による報復攻撃は85カ所に及んだとされていますが、重要なのはアメリカ軍はイラン本土への攻撃を慎重に避けている、ということです。イランが支援する武装組織はヒズボラやイスラム聖戦など複数の組織が存在しており、アメリカ軍施設への攻撃は過去3カ月間でも80回を超えている状況があります。
イランへの攻撃は、例えば同じくイランが支援するイエメンのフーシ派による紅海海上への商船攻撃など、中東地位への不安定要素の源流がイランにある事から、アメリカ議会では共和党を中心にイランへ強い措置を行うべきとの主張もあり、今回懸念されたのは限定攻撃であってもイラン本土へ何らかの措置が行われ、緊張がさらに拡大する事でした。
紅海の緊張は緩和するのか。大きな関心事は日本への物流にも影響しているイエメンのフーシ派による紅海シーレーンへの攻撃です。既に欧州からアジアへの35フィートコンテナ運賃はフーシ派攻撃前と比較し1500ドルから5500ドルへ大きく高騰しています。アメリカ軍はイギリス軍と共に今回以前にもフーシ派地上施設への攻撃を行っていますが。
紅海の情勢は、しかし今回の報復攻撃とは別問題であり、影響は残念ながらないと言わざるを得ません。ただ、無人機攻撃がアメリカ関連船舶やアメリカ艦艇に対して行われる場合には、同様の措置が取られる事を示唆したことになるのかもしれません。一方、無人機等を供与しているイラン本土の関連施設が攻撃されない事は、状況が続く事をしめします。
商船攻撃について。既に護衛艦あけぼの近距離へ弾道弾が撃ちこまれていますが、日本企業が運行する船舶のフーシ派戦闘員による拿捕など影響は顕在化しているものの、日本側の措置は具体的なものが有りません。ただ、あけぼの交代へ護衛艦さざなみ派遣が予定されています、さなざみ、たかなみ型護衛艦で、僚艦防空能力などの戦闘能力はありません。
商船攻撃は、例えば安倍政権時代に制定された平和安全法制に想定されたホルムズ海峡封鎖と、現在のバベルマンデブ海峡の情勢は重なるものがあり、船舶防護について僚艦防空能力か広域防空能力を持つ艦艇の派遣は検討されるべ事態ともいえます。今回のアメリカ軍報復を受け中東地域が一層緊張度を増した場合、厳しい決断を迫られるでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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