北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】APMアドバンストペオロートモジュールとHALO極超音速航空機発射対艦攻撃プログラム

2024-02-20 20:01:08 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 今回はズムウォルト級ミサイル駆逐艦に重点をおいて。しかし例によって肝心の駆逐艦ズムウォルト横須賀寄港の際にしっかり撮影しておけばよかったと反省しつつ。

 アメリカ海軍のズムウォルト級ミサイル駆逐艦は2024年に極超音速ミサイル発射試験を行うとロッキードマーティン社が発表しました。ズムウォルト級ミサイル駆逐艦は満載排水量1万4797tの、日本の自衛隊ヘリコプター搭載護衛艦を除けば世界最大の駆逐艦として建造されたもので、統合電気システムの採用など画期的な水上戦闘艦でした。

 極超音速ミサイルシステムは、当初155mmAGS先進艦砲を搭載し将来的にレールガンを搭載するものと期待されていたものの、肝心のズムウォルト級が当初計画の32隻量産から海軍運用戦略の対テロ作戦偏重への転換などを受け3隻のみの建造となり、155mmAGSそのものが僅か6門しか運用されず量産効果は皆無、維持費のみが掛かる結果となる。

 海軍共通極超音速滑空体、アメリカ海軍は155mmAGSを再検討し、しかしAGSが求められた長距離打撃能力を極超音速ミサイルを2025年までにこのズムウォルト級に搭載することとしました。これは射程2875㎞以上、マッハ12まで加速した後にマッハ8で極超音速滑空するもので、先行して陸軍がLRHW長距離極超音速兵器として配備します。■

 アメリカ海軍のズムウォルト級ミサイル駆逐艦極超音速兵器搭載計画について。この計画は紆余曲折を続けている代名詞的な問題ですが、元々ズムウォルト級ミサイル駆逐艦は155mmAGS先進砲を搭載し、ロケット補助推進段により射程200㎞級の155mm砲弾を搭載する対地攻撃艦により地域紛争を制圧する、フロムザシー構想時代の設計でした。

 AGSは期待されていたものの、砲弾設計に失敗し事実上即応して射撃可能という砲弾がありません、この為に海軍はAGSを撤去し極超音速兵器を搭載する検討を開始しますが、いったん撤去した場合に砲弾が開発できた場合でも再度搭載が難しいとして、2門の艦砲をどちらか維持したまま極超音速兵器を舷側に搭載する方針を検討中です。

 APMアドバンストペオロートモジュールという、ヴァージニア攻撃型原潜用に開発されたトマホークミサイルなどを搭載するVPMヴァージニアペイロードモジュールの発展型がズムウォルト級には搭載され、これによりMk41VLSなどよりも大型ミサイルが搭載可能という。AGSを1基撤去した場合は極超音速兵器を最大4発搭載できるもよう。■

 アメリカ海軍のHALO極超音速航空機発射対艦攻撃プログラムについて、開発を担当するレイセオン社はその試作機の技術審査終了を通知されました。レイセオン社が開発する極超音速兵器は空母打撃群を構成する空母航空団の主力であるF/A-18E/F戦闘攻撃機が搭載機として検討されていて2023年内にそのフィットチェックが行われています。

 F/A-18E/Fは海軍へ第五世代機であるF-35C戦闘機配備と共に最新鋭機の座を譲りつつあるという印象がありますが、ステルス機ではない故に機体外部へ大型の兵装を搭載可能で、射程1000㎞級のスタンドオフミサイルもF/A-18E/Fが搭載を想定し、F-35C戦闘機はJSMミサイルなど射程350㎞程度のミサイルを搭載することともなっていますが。

 HALO極超音速航空機発射対艦攻撃プログラムは、中国の接近阻止/領域拒否戦略に基づく大量の防空艦配備や空対空ミサイルの長射程化に在って、その射程外から迎撃困難な誘導弾により攻撃を加える計画です。今回のフィットチェックはアリゾナ州ツーソンで実施され、今後アメリカ海軍は対艦兵器の極超音速兵器への世代交代に本格的に取り組みます。■

 アメリカ海軍のコンステレーション級フリゲイトは人員不足が建造に影響を及ぼしている、アメリカ国防総省のカルロスデルトロ海軍長官が海軍技術シンポジウムの席上で厳しい現状を明らかにしました。人員不足とは、建造を担当するフィンカンティエリマリネットマリーン社の造船所工員不足であり、建造期間は少なくとも一年遅れるとのこと。

 FFG62コンステレーションの建造は一年間遅れることで2027年に引き渡し可能になるとしていますが、コンステレーション級フリゲイト建造プログラムのアンディボサック副マネージャーは、どの程度遅れるかは不明であるとともにその進行中の課題を整理しているところとしています。コンステレーション級は西太平洋地域の防衛に必要な新型艦だ。

 フィンカンティエリマリネットマリーン社の造船所工員不足は、ホワイトカラーとブルーカラー共に不足しており、海軍はこの問題に対応するべく同社へ臨時ボーナス費用5000万ドルを投じ、2024年1月1日から12月31日まで離職せず雇用されている従業員へ海軍から5000ドルの追加ボーナスを支払う契約など、離職防止に尽力しているとのことです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-アウディイフカ撤退状況と払底する地対空ミサイルとロシア空軍跳梁,次のロシア軍攻撃正面

2024-02-20 07:00:48 | 防衛・安全保障
■防衛情報-ウクライナ戦争
 次は欧州でもその次は北海道という懸念から現状のようになりますと廃棄している90式戦車をそのまま解体せず供与してはどうかと考えるのです。

 ウクライナ軍のアウディイフカ撤退概況について、ISWアメリカ戦争研究所ウクライナ戦況報告2月17日付発表ではロシア側発表とウクライナ側発表の乖離を指摘しています。ロシア側はウクライナ軍をアウディイフカで包囲しウクライナ軍を壊走させ大きな打撃を加えたとしていますが、ウクライナ軍は撤退に成功したと主張し双方に食い違い。

 ロシア軍のアウディイフカ攻撃はウクライナ軍タヴリスク部隊の戦果発表としてロシア軍の人員2万0018名と戦車199両及び装甲戦闘車量481両を1月1日から2月15日までの戦闘において喪失させたとする一方、部隊司令官のタルナフスキー准将は、ウクライナ軍はロシア軍の包囲から逃れたものの何名かの捕虜が出たと損失を認めました。
■防空能力の低下
 日本のペトリオットをアメリカの戦時備蓄用に供与し逆に余剰となるアメリカのペトリオットをウクライナへ供与する施策は間に合うのか。

 防空能力の低下、ISWアメリカ戦争研究所ウクライナ戦況報告2月17日付発表で特筆しているのは、ロシア空軍がアウディイフカ周辺において一時的に制空権、絶対航空優勢を確保したことで近接航空支援を提供できたとしています。これはウクライナへ欧米諸国などが供与する防空火器の提供停滞がウクライナ軍防空砲兵火力を低下させた点だ。

 ロシア空軍はアウディイフカ攻撃に際して複数のSu-34戦闘爆撃機など戦闘機を喪失していますが、一方でウクライナ軍の地対空ミサイル備蓄が三月にも枯渇すると危惧されているように、防空砲兵火力が徐々に緩慢となり、アウディイフカではロシア軍は空からの攻撃を強化、これも戦況に響いておりほかの方面でも同様の状況がありえるとのこと。
■アウディイフカ以外
 次は何処がロシア軍に攻撃されるのか。

 ロシア軍アウディイフカ以外での進出状況について。ISWアメリカ戦争研究所ウクライナ戦況報告2月17日付発表では、ロシア軍はバフムト北西部でわずかに前進したとしていますが、これら東部戦線とは別に南部戦線での動きが指摘されています。ロシア軍はザポリージャ州において攻撃を再興しており、ロボティネに進出の動きがある。

 ロボティネは2023年ウクライナ軍夏季反攻においてほぼ唯一といえる奪還が実現した村落ですが、ISWによればロボティネ南部のウクライナ軍陣地がロシア軍に再占領されたことを確認したとしています。一方、東部戦線ではクピャンスク周辺でロシア軍がローテーションを開始したとウクライナ軍報道官が発言、攻撃準備の兆候といえます。

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