■新任務の駆け付け警護
政府は今日、安全保障関連法案に基づく国連PKO部隊への駆け付け警護任務付与を正式に閣議決定しました。今月第9師団より派遣される部隊より新任務が付与されることとなります。
南スーダンは2011年にスーダンからの独立が実現した新しい国です。UNMISSはこの南スーダンという新しい国家建設を支援するべく国連憲章七章措置に基づく国連安全保障理事会決議1996号により派遣が決定したもので、各国軍11350名及び文民職員と文民警察官1173名が派遣されています。司令官は現在、エチオピア軍のテスファマリアム中将で、副司令官は2200名と最大の派遣部隊を展開するインド軍のミストリー准将が務めています。
駆け付け警護は、国際平和維持活動等に対し後方支援等を重点として参加している自衛隊派遣部隊が、自隊へ直接危険が及ばない場合においてもNGO職員や国連関係者等が攻撃を受けた場合に、現場へ駆け付けて警護の任務を遂行しようとするものです。従来法規は自隊が戦闘に巻き込まれた場合以外、警護を行う事は出来ず当事者となる必要がありました。
新任務が付与される背景には、南スーダン情勢の混乱があります。建国後の南スーダンは主導権を巡り大統領派政府軍と元副大統領派反政府勢力との対立が激化、2012年12月21日にはジョングレイ州での戦闘でUNMISSヘリコプターが撃墜、2013年4月に輸送任務に当たったインド軍が待伏せ攻撃を受け戦死者が出たほか、北部で発生した戦闘で発生した避難民がインド軍宿営地へ保護され、攻撃する反乱軍との間に戦闘が発生しています。
南スーダン情勢の緊迫は2013年12月19日に発生したクーデター事件で、これを受け国連は当時7600名のUNMISSをクーデター事件に伴う全土への治安悪化を阻止するべく6000名の増派を安全保障理事会が決議しました。2014年4月17日に派生したボルでの戦闘ではUNMISS部隊宿営地も戦闘に巻き込まれ、2015年の国連報告ではスーダン人民解放軍による越境攻撃が発生、今年7月11日には首都ジュバでも大規模な戦闘が発生しました。
安全保障関連法整備以前では、邦人NGOや国連職員が攻撃された場合に見捨てる事は出来ず、1992年のカンボジア派遣では自隊が攻撃されている状況を構築するべく、戦闘防弾チョッキを複数着用し武装勢力と攻撃を受けている側の中間に挺身し、自らが撃たれる状況を醸成し、これを以て反撃する極めて無理な運用を想定していたとされます。これでは確実に死傷者が出る為、現実に対応するべく安全保障関連法の施行を以て是正されたかたち。
自衛隊UNMISS派遣部隊は正式名称を南スーダン派遣施設隊、各方面隊から中央即応集団を通じ国連UNMISS司令部隷下に置く形となります。部隊編成は、隊本部、本部付隊、3個施設小隊、施設器材小隊、警備小隊、対外調整班、警務班、以上350名の大隊規模部隊で、現在第10次派遣隊が活動中、2011年12月の派遣命令より継続して派遣されています。
駆け付け警護の想定は、自衛隊UNMISS派遣部隊の警備小隊が軽装甲機動車を装備しており、自衛隊宿営地が置かれる首都ジュバ近郊に限定し国連職員等が暴徒に包囲され孤立するような状況で、且つ自衛隊以外のUNMISS派遣国が対応できない場合に実施するとし、例えばUNMISS他国軍や避難民への駆けつけ警護は、政府によれば想定されていません。しかし、非常に抑制的ながら駆け付け警護は自衛隊の現実的な対応を可能としましょう。
宿営地共同防護、今後の課題となるでしょう。これは今回の駆け付け警護任務付与に続き自衛隊へ付与される新任務となり、政府は間もなく宿営地共同防護の実施についても閣議決定する方針です。これは自衛隊宿営地であるジュバ国際空港付近には自衛隊以外のUNMISS部隊が駐屯しており、この宿営地へ攻撃が加えられた場合、自衛隊が他のUNMISS派遣部隊と協同で防衛するもの。
政府は駆け付け警護の任務を付与すると同時に、PKO参加五原則が崩壊した場合にはUNMISS派遣部隊を撤収させるとしていますが、南スーダンでの情報収集体制へ専門部隊を置いている訳ではありません。また、突発的な事態に対して撤収する政治決定が間に合うのかという視点は手つかずであり、今年7月の戦闘では反政府勢力のT-72戦車と政府軍のMi-24攻撃ヘリコプターが交戦しましたが政府はこれを戦闘ではなく衝突としました。課題は多々ありますが、我が国は新しい国際貢献へ前進する事となりました。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
政府は今日、安全保障関連法案に基づく国連PKO部隊への駆け付け警護任務付与を正式に閣議決定しました。今月第9師団より派遣される部隊より新任務が付与されることとなります。
南スーダンは2011年にスーダンからの独立が実現した新しい国です。UNMISSはこの南スーダンという新しい国家建設を支援するべく国連憲章七章措置に基づく国連安全保障理事会決議1996号により派遣が決定したもので、各国軍11350名及び文民職員と文民警察官1173名が派遣されています。司令官は現在、エチオピア軍のテスファマリアム中将で、副司令官は2200名と最大の派遣部隊を展開するインド軍のミストリー准将が務めています。
駆け付け警護は、国際平和維持活動等に対し後方支援等を重点として参加している自衛隊派遣部隊が、自隊へ直接危険が及ばない場合においてもNGO職員や国連関係者等が攻撃を受けた場合に、現場へ駆け付けて警護の任務を遂行しようとするものです。従来法規は自隊が戦闘に巻き込まれた場合以外、警護を行う事は出来ず当事者となる必要がありました。
新任務が付与される背景には、南スーダン情勢の混乱があります。建国後の南スーダンは主導権を巡り大統領派政府軍と元副大統領派反政府勢力との対立が激化、2012年12月21日にはジョングレイ州での戦闘でUNMISSヘリコプターが撃墜、2013年4月に輸送任務に当たったインド軍が待伏せ攻撃を受け戦死者が出たほか、北部で発生した戦闘で発生した避難民がインド軍宿営地へ保護され、攻撃する反乱軍との間に戦闘が発生しています。
南スーダン情勢の緊迫は2013年12月19日に発生したクーデター事件で、これを受け国連は当時7600名のUNMISSをクーデター事件に伴う全土への治安悪化を阻止するべく6000名の増派を安全保障理事会が決議しました。2014年4月17日に派生したボルでの戦闘ではUNMISS部隊宿営地も戦闘に巻き込まれ、2015年の国連報告ではスーダン人民解放軍による越境攻撃が発生、今年7月11日には首都ジュバでも大規模な戦闘が発生しました。
安全保障関連法整備以前では、邦人NGOや国連職員が攻撃された場合に見捨てる事は出来ず、1992年のカンボジア派遣では自隊が攻撃されている状況を構築するべく、戦闘防弾チョッキを複数着用し武装勢力と攻撃を受けている側の中間に挺身し、自らが撃たれる状況を醸成し、これを以て反撃する極めて無理な運用を想定していたとされます。これでは確実に死傷者が出る為、現実に対応するべく安全保障関連法の施行を以て是正されたかたち。
自衛隊UNMISS派遣部隊は正式名称を南スーダン派遣施設隊、各方面隊から中央即応集団を通じ国連UNMISS司令部隷下に置く形となります。部隊編成は、隊本部、本部付隊、3個施設小隊、施設器材小隊、警備小隊、対外調整班、警務班、以上350名の大隊規模部隊で、現在第10次派遣隊が活動中、2011年12月の派遣命令より継続して派遣されています。
駆け付け警護の想定は、自衛隊UNMISS派遣部隊の警備小隊が軽装甲機動車を装備しており、自衛隊宿営地が置かれる首都ジュバ近郊に限定し国連職員等が暴徒に包囲され孤立するような状況で、且つ自衛隊以外のUNMISS派遣国が対応できない場合に実施するとし、例えばUNMISS他国軍や避難民への駆けつけ警護は、政府によれば想定されていません。しかし、非常に抑制的ながら駆け付け警護は自衛隊の現実的な対応を可能としましょう。
宿営地共同防護、今後の課題となるでしょう。これは今回の駆け付け警護任務付与に続き自衛隊へ付与される新任務となり、政府は間もなく宿営地共同防護の実施についても閣議決定する方針です。これは自衛隊宿営地であるジュバ国際空港付近には自衛隊以外のUNMISS部隊が駐屯しており、この宿営地へ攻撃が加えられた場合、自衛隊が他のUNMISS派遣部隊と協同で防衛するもの。
政府は駆け付け警護の任務を付与すると同時に、PKO参加五原則が崩壊した場合にはUNMISS派遣部隊を撤収させるとしていますが、南スーダンでの情報収集体制へ専門部隊を置いている訳ではありません。また、突発的な事態に対して撤収する政治決定が間に合うのかという視点は手つかずであり、今年7月の戦闘では反政府勢力のT-72戦車と政府軍のMi-24攻撃ヘリコプターが交戦しましたが政府はこれを戦闘ではなく衝突としました。課題は多々ありますが、我が国は新しい国際貢献へ前進する事となりました。
北大路機関:はるな くらま
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(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
清谷さんも記事を書かれています。
「自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない Japan in-depth」でググると出て来ます。
他人のブログを拝借するのは申し訳ないのですが、多くの知見が含まれていると思います。はるなさんと同じことを言っている点も多いです。
お二人の記事を読んで、私なりに考えると、優先順位の高い順に、
1:衛生問題の改善。
ファースト・エイド・キットを米軍共通仕様にし(コストはほとんど無視しうる、これを実施していないのなら無責任にもほどがある)、前線の医官の充実と、(海外だから、とか言い訳して)一般隊員による注射などの「医療」行為の許可が重要と思います。
2:個人用の防具の改善。
輸入で良いので、数個中隊分の最新の防具を装備すべきです。清谷さんの記事に触発されてちょっとググれば、確かに陸自のそれは非常に遅れていることはすぐわかります。防具の改善だけで、死傷率は劇的に下がるのではないでしょうか?
3:無線機の更新。
通信に不利な周波数を防衛省が使っている件は、(別に清谷さんだけではなく)以前から知られており、本当に深刻な問題です。制度上もできるのに、やっていない。正直言えば、それこそ首相が直接動けば、1−2ヶ月で解決するでしょうに。。。
4:UAVの輸入。
輸入品をじゃんじゃん買いましょう。中隊用UAVレベルであれば、それこそ戦車1台分のコストで、数個連隊分購入できるのでは?(国産品はあるが、あまり使われていないそうですが、事実でしょうか?清谷さんは、間違いなく取材はするのですが(=そこは信用できる)、広く取材しているかどうかは、微妙なときがあるので。。)
装甲車や武装の強化も重要ですが、優先順位はこの4つよりも大きく下がると思います。
聞き齧っただけで取材してない可能性が高いのは指摘されてます
取材と言っても広報に聞くのがせいぜいみたいだし、あまりに裏取りしてない様子がありありとしてます
コメントありがとうございます。時々抜けがあるのは私も思います。が、海外の武器展示会にもしっかり行っており(一方で防衛省の人間はほとんど行っていない・いなかったようですね)、(軍人ではなく)軍事ジャーナリストとして貴重な情報源であることは、間違いないと思います。
なお、衛生キットの件は、きちんと裏取りされているのでは?私自身は、清谷さんにコメントには、是々非々で臨んでいます。口調は攻撃的ですが、あれはジャーナリストとしての手段であって、基本的には正しいことをおっしゃっているので。
#今回の記事でも、「やるな!」ではなく、「やるべき、でもそのためには、**や**をしっかり準備しろ!」ですから。。。
むしろ足りないのは、自衛隊からの適切な情報提供・説明でしょう。清谷さんが求めている情報は、海外ではほとんどが公開されています。イギリス軍などは、納税者や国会議員に対して当然公開する、という立場ですから。
準備をせよ!と批判してるなら準備状況を取材せず批判するのはおかしくないかい?
元・医官の方が執筆されてました。
そこに詳しく書いてあったので、そちらの記事を参照されると良いかと…。
お返事ありがとうございます。おかしくないと思います。
清谷さんはジャーナリストなのですから、問題提起が第1です。逆に所詮ジャーナリストです。問題解決は防衛省の問題です。
隊員が注射をできるような法改正は、私の知る限りされていません。防衛省の発表資料で、ファーストエイドキットは少しは充実するようですが(素晴らしい清谷さん!)、まだまだ米軍レベルではありません。
防衛省向けの周波数の取り分が変わったという話も聞きません(携帯会社が文句を言うはずですが)。個人用防具も、決して最新ではない。(中隊規模の無人機はわからないので、そのようにコメントに明記しました。私なりに是々非々で臨んでいるつもりです。)
そんな状態で、本当に危地に送り出すのですか?
きちんと対策したのなら、防衛省は是非そのことを発表すべきです。西側の民主国家としては、圧倒的に情報開示が足りない軍隊ですから、、、。
流線形様
> 軍研
おっと、読み損ねていますね。。どんなことが書かれていたでしょうか。。。清谷さんの懸念はどこまで妥当で、どこからお門違いなのか。興味はありますね。。
さて、海外で自衛隊向けの周波数が特定の利用者がおり使用できない、となったらどうすんのかね?
という疑問が答えになるだろうね(笑)
清谷のあげた通信上の問題にしても、問題点がそもそも聞き齧りで原因が全く別のところに有ったのを分かってないんだよね、通信上の問題については東日本大震災での反省等の資料に出ており清谷指摘が原因、問題ではないことが分かってる
尚且つそれに対する当時の現場対応と反省も踏まえた対応処置が講じられている(ググると出てくるよ(笑))
それらを踏まえずに鵜呑みにした発言はどうかな?
それとね、個人装備やらの防護能力なんてどこのお国でも秘匿事項よ、それを清谷ごときがどうやって能力差を把握できんの?
広報で聞いたからエアコン無い!がまんま清谷のジャーナリストとしての資質の無さを示してるわな(笑)
海外展示会の写真しか価値が無いと言われる所以(笑)
お返事ありがとうございます。
>さて、海外で自衛隊向けの周波数が特定の利用者がおり使用できない、となったらどうすんのかね?という疑問が答えになるだろうね(笑)
答えになりませんよ?無線周波数の調整なんで、普通のことですよね。しかも「だから変な周波数で良いのだ」という議論にはならないですよね?
>尚且つそれに対する当時の現場対応と反省も踏まえた対応処置が講じられている(ググると出てくるよ(笑))
http://www.mod.go.jp/j/approach/defense/saigai/pdf/kyoukun.pdf
http://www.mod.go.jp/j/approach/defense/saigai/pdf/k_chukan.pdf
この2つですか?これは知っているのですが、周波数分配の問題「でない」という資料がちょっと見当たりません。なお、2012年の防衛白書に「運用に必要な周波数を総務省との連携により迅速に確保」という記述がありますが、これは達成されたのでしょうか?
また、この新型無線機は十分な性能なのでしょうか?また、全部隊にきちんと充足されたのでしょうか?前者はともあれ、後者の資料はありますでしょうか?
>それとね、個人装備やらの防護能力なんてどこのお国でも秘匿事項よ、それを清谷ごときがどうやって能力差を把握できんの?
body armor の防御力は英米では秘匿情報ではないと思います。公開された標準で議論しているようです。日本だけ秘密にする必要は全くないかと。日本は新しいbody armor3型を2012年から導入しているので、その評判は気になります。が、清谷さんがコメントしているのは、88式ヘルメットです。1988年から今までに、アフガンやイラクで、凄まじい量の戦訓があったはずですが、反映されているのでしょうか?もちろん、反映されているのなら問題ないのです。単に、その情報が見つからないだけなので。。。
こんな話、本来なら、全然秘密ではないと思いますが。
10式のクーラーの問題は、(電子機器用のクーラーの存在は清谷さんも最初から述べていられたようなので)、「日中の砂漠で10式が使えるか?」「真夏の日本で、NBC状態で、数日間、中の人間が生きられるのか?」という問題ですよね?答えは、まだ公開されていない=決着がついていないと思いますが。。。
別に清谷氏の名誉なんぞどうでも良い。興味ありません。大事なのは自衛隊の装備体系の話です。特に衛生については、非常にまずい状況であるのは、間違いなさそうなので、非常に心配しています。
http://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/meeting/seisan/sonota/pdf/06/002.pdf
http://dragoner-jp.blogspot.jp/2012/11/blog-post_6630.html
この辺でも見れば(笑)
ではドナルドちんは逆に広多無が低性能であることをどう証明できるの?
現在では問題とされてるような事は出てないらしいですが
周波数の問題は海外で使うに当たって問題ないとドナルドちんも認めるのですね、ですよねえ