■防衛フォーラム
今回は各国の潜水艦関連の最新情報を纏めてみました。
オーストラリア海軍が暫定貸与を受けるヴァージニア級潜水艦の建造が大幅に遅延する可能性が出てきました。オーストラリア海軍は当初フランスからバラクーダ級潜水艦、原子力潜水艦を通常動力推進方式に転換するという無理を押し通した潜水艦を導入する計画をイギリスやアメリカから原子力潜水艦を導入すると一転させています。
ヴァージニア級攻撃型原潜をアメリカから2030年代半ばに借用し運用の実績を積むとともにイギリスより技術供与を受けオーストラリア国内に既存のASU造船施設を利用するか新しく潜水艦造船所を建設し2050年代に独自の原子力潜水艦を建造するという計画でした。しかし今回、ヴァージニア級のアメリカでの建造が大幅に遅れるという状況が。
バイデン政権が発表した2025会計年度の海軍計画では2024年度起工予定のヴァージニア級攻撃型原潜が2隻の予定を1隻に半減させたことでオーストラリアに回す潜水艦よりもロスアンゼルス級攻撃型原潜後継艦を優先した場合、オーストラリアに回す潜水艦が遅れるとともに次期攻撃型原潜への移行期と重なる懸念が出てきてしまったのです。■
カナダ海軍の次期潜水艦について日本の潜水艦たいげい型が候補の一つとして想定されているとのこと。これは昨年夏に韓国国内報道としてカナダ海軍次世代潜水艦に日本製潜水艦と韓国製潜水艦の二つが有力視されている旨の報道があったのに続き、3月29日に日本経済新聞が報道したもので、日本案が浮上しているという程度の報道ですが。
たいげい型潜水艦輸出案は、通常動力潜水艦としては航続距離や行動半径の大きさと静粛性やオホーツク海などの低温海域から沖縄以南の高温海域まで対応可能という適合性の高さ、そして稼働率の高さが利点となります。難点として、技術移転と機密保持の難しさ、毎年1隻の建造という建造能力の限界、教育訓練支援能力の限界などがある。
韓国製潜水艦としては、弾道ミサイル潜水艦を既に韓国海軍へ納入するなど要求に応じた多彩な設計能力とともに今回韓国はイギリスのBAE社と共同でカナダなどに潜水艦を提案しており、BAE社との協力により様々な技術支援や整備支援などを行うことが可能、ということ。カナダ海軍は稼働率低下が著しいアップホルダー級の後継を模索中です。■
インドネシア海軍はフランス製スコルペヌ級改良型潜水艦の導入を計画しています。この計画は既に2022年に技術移転及びインドネシア国内での建造に関する覚書を、フランスのナーバルグループとインドネシア海軍との間で交わしていますが大きな進捗が無く、しかし2024年に入り、具体的な建造契約へ進む道筋が見えてきたとのことです。
インドネシアは国有PT-PAL造船所での建造を希望しており、インドネシアには韓国からのドイツ設計209型潜水艦発展型技術移転を受けた際の施設が既に東ジャワ州スラバヤで稼働中です。ただ、課題はインドネシアもすべての技術移転を受けた場合でも国内生産部品だけでの自己完結した建造ができず、また仕様変更をどこまで盛り込むかでした。
ナーバルグループによればスコルペヌEvolvedというリチウムイオン電池採用型の最新型が提案されており、これにより水中高速性能が改善、搭載燃料により8000浬の航続距離を有し80日間の連続航行が可能となり、また計画では2隻で21億ドルの調達計画となる見通しですが、三分の一は建造等でインドネシアに還元されるとのことでした。■
ブラジル海軍が導入する新潜水艦トネレロが進水式を迎えました。フランスのナーバルグループが現地建造を進めていたもので、リオデジャネイロ州のイタグァイ海軍施設において行われた進水式には関係両国首脳であるブラジルのルイスイナーシオルーラダシルバ大統領とフランスのエマニュエルマクロン大統領が揃って臨席しました。
プロサブ計画としましてブラジル政府は潜水艦の建造能力を独自に保有することを強く希望しており、今回の潜水艦建造は2008年にナーバルグループとの間で結ばれたスコルペヌ級潜水艦改良型建造契約として建造、スコルペヌ級潜水艦を初期にはフランスで建造し、続いてノックダウン生産に移行、最終的に完全な建造能力獲得をめざす。
トネレロはブラジル海軍向けスコルペヌ級潜水艦では3番艦にあたり、また4番艦としてアンゴスチュラが2025年に進水式を迎える計画です。トネレロ進水式は3月27日に行われましたが、2025年には竣工を予定しており、ブラジル海軍は今後進水した潜水艦の艤装工事を進めるとともに早い段階で公試に移行するものと考えられます。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
今回は各国の潜水艦関連の最新情報を纏めてみました。
オーストラリア海軍が暫定貸与を受けるヴァージニア級潜水艦の建造が大幅に遅延する可能性が出てきました。オーストラリア海軍は当初フランスからバラクーダ級潜水艦、原子力潜水艦を通常動力推進方式に転換するという無理を押し通した潜水艦を導入する計画をイギリスやアメリカから原子力潜水艦を導入すると一転させています。
ヴァージニア級攻撃型原潜をアメリカから2030年代半ばに借用し運用の実績を積むとともにイギリスより技術供与を受けオーストラリア国内に既存のASU造船施設を利用するか新しく潜水艦造船所を建設し2050年代に独自の原子力潜水艦を建造するという計画でした。しかし今回、ヴァージニア級のアメリカでの建造が大幅に遅れるという状況が。
バイデン政権が発表した2025会計年度の海軍計画では2024年度起工予定のヴァージニア級攻撃型原潜が2隻の予定を1隻に半減させたことでオーストラリアに回す潜水艦よりもロスアンゼルス級攻撃型原潜後継艦を優先した場合、オーストラリアに回す潜水艦が遅れるとともに次期攻撃型原潜への移行期と重なる懸念が出てきてしまったのです。■
カナダ海軍の次期潜水艦について日本の潜水艦たいげい型が候補の一つとして想定されているとのこと。これは昨年夏に韓国国内報道としてカナダ海軍次世代潜水艦に日本製潜水艦と韓国製潜水艦の二つが有力視されている旨の報道があったのに続き、3月29日に日本経済新聞が報道したもので、日本案が浮上しているという程度の報道ですが。
たいげい型潜水艦輸出案は、通常動力潜水艦としては航続距離や行動半径の大きさと静粛性やオホーツク海などの低温海域から沖縄以南の高温海域まで対応可能という適合性の高さ、そして稼働率の高さが利点となります。難点として、技術移転と機密保持の難しさ、毎年1隻の建造という建造能力の限界、教育訓練支援能力の限界などがある。
韓国製潜水艦としては、弾道ミサイル潜水艦を既に韓国海軍へ納入するなど要求に応じた多彩な設計能力とともに今回韓国はイギリスのBAE社と共同でカナダなどに潜水艦を提案しており、BAE社との協力により様々な技術支援や整備支援などを行うことが可能、ということ。カナダ海軍は稼働率低下が著しいアップホルダー級の後継を模索中です。■
インドネシア海軍はフランス製スコルペヌ級改良型潜水艦の導入を計画しています。この計画は既に2022年に技術移転及びインドネシア国内での建造に関する覚書を、フランスのナーバルグループとインドネシア海軍との間で交わしていますが大きな進捗が無く、しかし2024年に入り、具体的な建造契約へ進む道筋が見えてきたとのことです。
インドネシアは国有PT-PAL造船所での建造を希望しており、インドネシアには韓国からのドイツ設計209型潜水艦発展型技術移転を受けた際の施設が既に東ジャワ州スラバヤで稼働中です。ただ、課題はインドネシアもすべての技術移転を受けた場合でも国内生産部品だけでの自己完結した建造ができず、また仕様変更をどこまで盛り込むかでした。
ナーバルグループによればスコルペヌEvolvedというリチウムイオン電池採用型の最新型が提案されており、これにより水中高速性能が改善、搭載燃料により8000浬の航続距離を有し80日間の連続航行が可能となり、また計画では2隻で21億ドルの調達計画となる見通しですが、三分の一は建造等でインドネシアに還元されるとのことでした。■
ブラジル海軍が導入する新潜水艦トネレロが進水式を迎えました。フランスのナーバルグループが現地建造を進めていたもので、リオデジャネイロ州のイタグァイ海軍施設において行われた進水式には関係両国首脳であるブラジルのルイスイナーシオルーラダシルバ大統領とフランスのエマニュエルマクロン大統領が揃って臨席しました。
プロサブ計画としましてブラジル政府は潜水艦の建造能力を独自に保有することを強く希望しており、今回の潜水艦建造は2008年にナーバルグループとの間で結ばれたスコルペヌ級潜水艦改良型建造契約として建造、スコルペヌ級潜水艦を初期にはフランスで建造し、続いてノックダウン生産に移行、最終的に完全な建造能力獲得をめざす。
トネレロはブラジル海軍向けスコルペヌ級潜水艦では3番艦にあたり、また4番艦としてアンゴスチュラが2025年に進水式を迎える計画です。トネレロ進水式は3月27日に行われましたが、2025年には竣工を予定しており、ブラジル海軍は今後進水した潜水艦の艤装工事を進めるとともに早い段階で公試に移行するものと考えられます。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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