北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ウクライナ情勢-シリアアサド政権崩壊が意味するアフリカ中継地喪失,ロシアウクライナ戦争への間接的影響

2024-12-17 07:00:56 | 国際・政治
■防衛情報-ウクライナ戦争
 シリアでの変化はロシアの戦争継続に間接的な影響を及ぼすのかもしれません。それはグローバルなパワープロジェクションとそれを実現させる中継地という我が国で忘れられがちな視座から考えてみましょう。

 シリアのアサド政権崩壊はロシアのウクライナ侵略をはじめとした戦争継続能力に大きな影響を与えるのかもしれません、それは必ずしもウクライナ侵略を断念するという短期的成果には結びつかないのでしょうが、戦費等の面で大きな影響が及べば、ロシア軍は更に重装備に代えて歩兵の無謀な攻撃に依存し、長期的な影響に繋がる為です。

 アサド政権は僅か10日間の武装勢力攻勢により、首都ダマスカスを放棄し政権崩壊へ繋がりました。ここにおいて2011年より継続していたシリア内戦は終結を迎えると共に、2016年より8年間にわたり実施されていたロシア軍のシリア軍事介入も同時に終了することとなりました。これは言い換えればシリア駐留兵力をウクライナへ転用できるわけですが。

 ロシア軍のシリア領における空軍基地と海軍基地、ロシア空軍はウクライナにおける戦術航空機の大きな喪失により、シリア領内の空軍基地へも若干の戦闘爆撃機を派遣していたのみでした、言い換えれば武装勢力大攻勢に際し、大幅に縮小されていた航空打撃力では、アサド政権を崩壊から守る事が出来なかった、と視る事も出来ますが、もうひとつ。

 ロシアはアフリカ大陸に大きな権益を、鉱山経営などを通じて有しています。これは民間軍事会社ワグネルなどを通じて、非公式の事実上派兵を行い、アフリカ地域の紛争沈静化を行う一方で、権益保護を進めていました。ただ、ロシアにとり重要なのは中継地の確保で、海軍拠点と空軍拠点、アフリカへの中継地として有していたのは、シリアのみという。

 アフリカ権益がどの程度の経済的恩恵をロシアにもたらしていたのかは、不透明な部分が有ります、しかし不透明である故に正規の航空航路や船舶航路では運べない人員や物資を秘密裏に輸送していた中継地が中東のシリアであり、シリアに代わる中継地は、ロシア友好国で経済制裁下でも手を差し伸べる国と云えば、中継地としては遠いイランくらい。

 アフリカ地域で入手したレアメタルや貴金属は、ロシアとしてはバーターでロシア産石油などを提示して入手でき、戦争継続の為の資金源となっていた事は確かです。しかしその輸送の為の中継地シリアの親ロ的なアサド政権の崩壊は、アフリカへのアクセスを難しくすることを意味し、またロシア軍は更なる戦費不足と装備不足に見舞われるでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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