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トランプ新大統領の外交国防戦略【02】 三五〇隻海軍構想、大型艦量産は財政難下の困難な提案

2016-11-23 21:32:44 | 北大路機関特別企画
■アメリカ海軍を何処に向けるか
 トランプ新大統領の外交国防戦略、第二回目は前回に続いて三五〇隻海軍構想、その実現性や方向性を視てみましょう。

 海軍現況は、航空母艦10隻、戦略ミサイル原潜/巡航ミサイル原潜18隻、攻撃型原潜56隻、巡洋艦22隻、駆逐艦63隻、フリゲイト(LCS)8隻、の177隻です。強襲揚陸艦9隻、ドック型揚陸艦/輸送揚陸艦22隻、機雷戦艦艇11隻、これで219隻となる。戦闘支援艦/補給艦32隻を加えて251隻です。三五〇隻海軍構想の具現化には99隻の増強が必要だ。

 第二次世界大戦中にアメリカは、戦艦10隻、正規空母30隻、護衛空母100隻、巡洋艦50隻、駆逐艦350隻、護衛駆逐艦1000隻、を揃えたアメリカの造船能力を考えれば99隻等年内に揃えられそうな印象はありますが、電波や音響でステルス性を有しデータリンクさせ、各種ミサイルと管制装置を有する現代の水上戦闘艦の建造費は安い物ではありません。

 ズムウォルト級ミサイル駆逐艦はアメリカ海軍の駆逐艦として初めて満載排水量が10000tの大台を超え14000tという空前の規模となりましたが、建造費も一隻30億ドルと、1990年代に建造されたニミッツ級原子力空母の建造費50億ドルへ迫るものとなっています、元々30隻程度を建造する計画でしたが、費用高騰を受け縮小され、単価へ響いたかたち。

 沿海域戦闘艦、アメリカ海軍が現在進める新しい建造計画は満載排水量3000t前後で高度なステルス性を有し高速巡航能力を持つ軽量水上戦闘艦フリーダム級とインディペンデンス級を大量建造する計画でした、しかし、軽武装過ぎ、南シナ海では中国海軍艦艇の恫喝を受ける状況となっており、技術的問題も多く建造は32隻で打ち止めとなりました。

 現在アメリカ海軍の将来艦建造計画は沿海域戦闘艦への対艦ミサイル搭載など限られたものであり、新しい艦船、即ち現在の艦艇を置き換えるような新世代の水上戦闘艦を新しく設計するには、どうしても時間を要します、何故ならば公約は任期中に実現する必要があるためで、この為のコンセプト画定を行おうにも、外洋作戦を重視するのか、専守防衛の沿岸用とするのかで全く設計が違ってきます。

 アメリカの変容を前にした各国ですが、一方で、国際政治学でいうところの覇権国としての地位を維持しているのはアメリカです。東西冷戦の二極論からアメリカを中心とした単極体制へ転換していったわけですが、ここに新しい変容の可能性が生じる一方で、アメリカが覇権国であるという現状を変更する事に、アメリカ自身がどう現状を認識するのか。

 パクスアメリカーナへどのような認識を持っているかが、第一の未知数であり、何を実行するのかが分からない、という部分を不確定要素、言い換えれば未知数の可能性、として政権に就くこととなった新大統領の真意は、アメリカが引くのであれば、引いた地域に自国を進出させよう、と考える諸国には、アメリカの国際政治や地政学観を見極めたい。

 世界の警察官の地位を放棄し、在外米軍の撤退示唆する、しかし、三五〇隻海軍構想として海軍力の再建を図る、この方向性が地域的な後退に留まるのか、地域的な後退がドル基軸体制をはじめとしたアメリカの世界への影響力を支えた様々な枠組みの交代に繋がる事を見越しているものなのか、未知数な部分が多く、世界各国は新政権がどこまで矛盾に気付かないのかを見極めようとしています。

北大路機関:はるな くらま
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4 コメント

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Unknown (KGBtokyo)
2016-11-24 18:01:09
トランプ新大統領の軍備再生計画の中で海軍が突出しています。
まだトランプ新大統領には具体的戦略構想がある訳でなく、強いアメリカの復活の象徴としての350隻構想でしょう。
しかし政権には有能な軍事安保専門家が入り、議会も共和党が上下両院多数なので、真っ当な軍備再生が期待できるのでは?
短期的に頭数だけ揃えるならLCS50隻調達復活でしょうが、使い物にならないことが明らかになっているLCSではなく空母戦闘群増加に進むのが妥当でしょう。
新大統領の発言をマスコミタイトルではなく、前後を読み真意をきちんと読んでいけば、単なる在外戦力撤退やコミットメント減少ではなく、同盟国や当事国が責任をまず果たせということです。
日本においても、狭義の駐留経費2,3千億の負担どうこうという低レベルの話ではなく、相互防衛の完全履行や中国軍拡に対応できる防衛費増大(年数兆レベル)が求められるでしょう、日本がそれをしなければ東アジア覇権は中国に与えるということもありえる。
これはNATO諸国にも当てはまる。
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Unknown (月虹)
2016-12-03 22:29:03
アメリカはレーガン大統領の時代にスターウォーズ計画など国防予算を増額させることで対立するソ連の財政赤字を増大させそれは間接的にソ連邦崩壊というシナリオを導きました。

中国に真っ向から対決姿勢で臨み国防予算の増額によって国内経済の回復と海洋覇権を進める中国の弱体化を図り再び偉大なアメリカを取り戻す。それがトランプ新大統領の狙いなのかも知れません。中国に対しては強気の姿勢で臨む、それは大統領就任前に台湾の蔡英文総統と電話会談するなどの行動に現れています。
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ズムウォルト級などの将来艦 (はるな)
2016-12-25 22:33:46
KGBtokyo 様 こんばんは

トランプ氏の海軍構想ですが、ここ一週間のF-35に関する発言から垣間見えるのは、ズムウォルト級などのような質よりも量を重視し先端技術など目に見えにくい物よりも重厚な装備体系を重視する点です

ここで350隻艦隊構想の具現化に一つの可能性を示すのは、モスボール保管されているOHペリー級やスプルーアンス級等旧式艦艇を国内工場にて再生加工させ雇用を創出すると共に低コストで艦隊の再建を目指す方策を新型艦建造に並行して提示する可能性はないのか、と考えたりしました

同盟国への負担ですが、相応に増加するでしょう。この点と安全保障条約関連の様々な視点を絡めて、新年特集を、と考えています
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NATOや日米との関係 (はるな)
2016-12-25 22:37:56
月虹 様 どうもです

ご指摘の点ですが、レーガン政権時代と比較しまして、まず、アメリカはNATOや日本との関係を新政権樹立前にかなり溝を空けていますので、その上でロシアに加え冷戦時代脅威度が薄かった中国との関係を強硬で臨むには、相手を弱体化させる以前に自国が持続性を維持できなくなるのではないか、という懸念もあります、この点をどう認識するか、重要でしょうね
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