北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

航空自衛隊F-X 米:対抗する次世代機はロシア2016年・中国2021年に配備と分析

2010-01-11 22:42:50 | 先端軍事テクノロジー

◆第四世代機の近代化でも対応可能と考えるのだけれども・・・

 本日の話題は、F-Xについて。F-35が有望、というようにアメリカ側からの働き掛けがあり、共同開発を持ちかける話が続き、後に日本仕様の部品を生産すれば早期に調達できる、という話が出ている中のお話。

Img_9540  航空自衛隊は、高い制空戦能力を発揮するステルス戦闘機F-22の導入をかなり以前から構想していた。制空権、という言葉は相手側に一機でも戦闘機の稼働数があれば部分的に喪失する可能性があることから、絶対航空優勢、という言葉が使われるようになっているのだけれども、F-15は相手の勢力圏に乗り込んで航空優勢を獲得できるという意味から制空戦闘機、という呼称を意気込みとともに名乗っている。他方、F-22は、飛行しているだけで他の敵対航空機の飛行を許さない状況を構築し、絶対航空優勢を維持する、つまり事実上の制空権を獲得できる、という意気込みから、一歩進んで航空支配戦闘機、という言葉を冠されたF-22。しかし、F-22は機体のステルス形状や、共同交戦能力はもちろん電子偵察能力すらも備えたレーダーと火器管制システムなど、機密性が非常に高く、アメリカ側が日本にはライセンス生産はもちろん、国内で組み立てるノックダウン生産も、更には直輸入にあたる有償軍事供与も不可能であるとしたうえで、生産終了か、スペックダウンした輸出型を開発するのか、という議論が続いている。ここで、アメリカが日本に提案したのは、開発中の統合打撃戦闘機F-35である。エンジンが一基の単発機でありながら、史上最強の出力重量比を有するエンジンを搭載し、ステルス機としての機体形状を有するほか、対地攻撃能力では空対空戦闘を第一に設計されたF-22とは比較にならない能力を有する。ただし、まだ開発が完了していない、という大きな問題点を抱えているのだが。

Img_9470  こうした中で、共同通信の記事を引用・・・ロシアは16年、中国は21年以降 次世代戦闘機配備で米分析:主要国が激しい開発競争を繰り広げる次世代(第5世代)戦闘機の実戦配備時期について、ロシアは2016年、中国は21年以降になると米当局が分析、日本政府に伝えていたことが10日、分かった。日米関係筋が明らかにした。中ロの次世代機開発は軍事機密のベールに覆われており、配備時期に関する米政府の具体的情報が明らかになったのは初めて。第5世代戦闘機はレーダーに捕捉されにくい高度のステルス性と超音速巡航能力を兼ね備えた最新鋭機。米国は第5世代機のうち、F22を既に配備しており、中ロに対する戦略優位が続くことになる。日本は航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)選定をめぐり、中ロをにらみ早期の第5世代機導入を目指しているが、両国の配備になお6年以上を要するとの情報が示されたことで、導入計画に影響も出そうだ。米側が機密に属する情報を日本に伝えた背景には、直ちにF22を導入しなくても日本の防衛に大きな支障は出ないとの立場を示し、F22の導入断念を促す狙いもあったとみられる。2010/01/10 16:50   【共同通信】

Img_9902_1  F-35とは直接関係のない記事なのだけれども、指摘したいところとしては“中ロの次世代機開発は軍事機密のベールに覆われており、配備時期に関する米政府の具体的情報が明らかになったのは初めて”という部分について、とりあえず、報道に載っているということは、そこまで機密性が高くは無いのではないか、という事、この見積もりはいつごろに提示されたのかが明らかではないので、何とも言えないという事、そもそもロシアの次世代機はもう少し早い時期に開発されるという見通しがあったのだが、何故伸びているのか、ということ、更には、この情報が伝える第五世代戦闘機というものの定義はどのよなものなのか、“レーダーに捕捉されにくい高度のステルス性と超音速巡航能力を兼ね備えた最新鋭機”とされているのだが、高度のステルス性というものは、どの程度なのか、F-22のレーダーにF-22はどのように映るのか、という話ではないのだけれども、F/A-18Eなどは設計にかなりステルス性が配慮されている、高度なステルス性がどの程度なのかが未知数であるということと、もうひとつは超音速巡航という言葉であるが、F-22の超音速巡航能力はアフターバーナーを焚くことができる時間がF-22は限られているからの、ミリタリーパワーでの超音速飛行能力を有しているのであり、長時間飛行することができるわけでもないし、F-35には超音速巡航能力はアフターバーナーを使用した場合のことを意味する、超音速巡航の定義がちょっと不明確だ。あたかもF-15Jの近代化改修やF/A-18E,F-15Eというような既存機でた対応できないような機体を示すのか、ということが、やや疑問に思えてくるのだが、背景にあることを幾つか考えてみたい次第。

Img_8282  まず、次世代機が配備、これも試作機か、量産機を示すのかということが出来るのだけれども、“国の配備になお6年以上を要するとの情報が示された”ということ、六年程度ある、この情報は、F-22が不要、ということなのだけれども、六年あるのだからそのころにはF-35は完成しているだろうからF-35の計画に参加してほしい、という意味にとることは出来る。自動的にF-4を後最低でも六年、後継機が決定しないまま推移する、ということになってしまうのだが、この問題がどのように解決するべきなのか、という事。もちろん、F-35の開発に参加し、優先顧客以上の立場にて参加すれば、アメリカはF-35の調達計画を下方修正しているばかりなのだし、イギリスもF-35の調達を見直す可能性を示唆している中で、教育訓練体系や整備補給体系に無理を掛けるという前提のもとで、一気にF-4後継機所要の機体を導入することも出来るだろう。しかし、基本設計はF-104よりも古いF-4を、2010年代後半まで運用するということ、少しこの案には無理があるようにも思えてくる次第。しかし、六年はあるのだから、F-Xは、とりあえず無難な機体を、という流れも一考の余地はある。F-15EやF/A-18Eを導入してしまうと、ライセンス生産を行った場合、F-4EJ改の後継所要である二個飛行隊だけではライセンス生産に伴う生産設備整備の投資を回収することは出来ず、しかも、二個飛行隊だけ異なる機体を要撃機体系に組み込むことは運用体系を混乱させてしまう要素にもなる。

Img_2393  戦闘機生産基盤に関する懇談会では、F-2生産終了後の戦闘機国産技術が非常に危険な状態に曝されてしまう事を指摘しており、先端技術実証機を開発して国産戦闘機の開発技術への基礎研究の成果を示したとしても、基盤となる部品供給技術が失われてしまってはナンセンスである訳で、六年あるのならば、と日本としてはF-2支援戦闘機の生産延長を提示して、アメリカ生産部品の生産基盤引き受けによる日本国内調達を図るか、何らかの方法でF-4の後継機にF-2を充当し、六年以内に第四世代戦闘機で第五世代戦闘機への対処を構想するべきでは、と考える次第。なにしろ、F-4EJ改であっても、第四世代機の脅威に対して航空自衛隊は対処してきたわけであるので、第四世代機であるF-15や同世代機であっても、と考えれば幾分視野は明快になる。一方で、六年しかない、と考えるのならば繰り返し、F-22の輸出型を開発するようアメリカに働きかける事も必要なのではないか、と考える次第。個人的には、F-35が相応のかたちで完成した後で、導入を模索するという視点、更にはそれまでの期間、二個飛行隊所要だけで次のF-XとなるF-15J後継機に第五世代機を充てる見通しならばF-2の増産を、第五世代機の本格配備が開始されるまでに、もう少し時間を要するのならば、F-4EJ改とともに、F-15J初期の機体を置き換えるために、F/A-18Eかタイフーンを、F-35の侵攻打撃能力を評価したうえで将来調達することを考えるのならば戦闘爆撃機としての性格を有するF-15Eを、導入しては、と考える次第。他方、最近、新しい動きが無いF-15SE、F-15Eの最大の弱点はステルス性への配慮が無いF-15を単純に戦闘爆撃機としたものであることで、ステルス性を配慮した形状としたF-15SEであれば、この問題は低減される訳であるので、興味は湧いてくる次第。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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航空自衛隊次期輸送機C-X、今月(2010年1月)にも初飛行

2010-01-10 20:51:50 | 先端軍事テクノロジー

◆中日新聞が報じたC-X最新動向

 本日、習志野演習場では第一空挺団2010年降下訓練始めが行われたが、参加した航空自衛隊の輸送機はC-130H輸送機2機、C-1輸送機2機であった。他には、ヘリボーンにて展開した一部の車両を除き、基本的に車両は自走して展開したようだ。

Img_2063  もちろん、習志野演習場の面積的な問題から全て空挺降下させる、ということは難しいのだが、一方で、輸送機の数にも限りがあることも事実である。現時点で、航空自衛隊は、入間基地、美保基地、小牧基地に輸送機部隊を展開させ、運用しているが、C-1輸送機が約30機、C-130H輸送機が約15機であり、その空輸能力には限界がある。もちろん、これには政治的な背景があり、輸送機による空輸能力を充実させることができなかった日本の国情を無視するわけにはいかないのだが、国際平和維持活動、国際緊急人道支援任務など、自衛隊の活動範囲がグローバル化する現在、輸送能力の不足は大きな問題として認識されている。こうして現在、これらの長距離飛行任務にも対応できる長い航続距離と搭載能力を有した次期輸送機としてC-Xの開発が進められているのだ。C-1輸送機を代替すると同時にこの次期輸送機は、海上自衛隊が運用するP-3C哨戒機を置き換える次期哨戒機P-Xとも可能な限りの部品共通化を図り、プロジェクトコストを低減させるという意欲的な試みが為されているもので、当初は、全く飛行特性が異なる二機種を開発することに様々な方面からの疑問が寄せられていたものの、P-Xは初飛行を果たし、海上自衛隊へ引き渡し、現在はP-1哨戒機として現在試験中である。

Img_2058  C-X、これについて、中日新聞に新しい動きが報じられていたので、本日はこの記事を紹介したい。空自次期輸送機CX、今月にも初飛行・・・2010年1月8日 09時10分: 防衛省が導入を目指す航空自衛隊の次期輸送機(CX)開発計画で、同省やメーカーが今月中にも、岐阜県各務原市の空自岐阜基地で試作機の初飛行を実施する方向で調整していることが分かった。複数の関係者が明らかにした。初飛行が成功し、安全性が確認されれば納品される。CXは緊急援助や平和協力など海外での活動も想定し、防衛省が国産のC1輸送機の後継として2001年度から開発に着手。川崎重工業を中心に、岐阜基地隣の同社岐阜工場で開発している。当初は07年9月に初飛行が予定されたが、機体の組み立てに必要な鋲(びょう)や胴体フレームの強度不足などの不具合が相次いで判明。開発スケジュールが大幅にずれ込んでいた。CXは全長、全幅とも44メートルでC1の1・5倍。エンジンは米国製で日本が自主開発する機体としては最大規模となる。航続距離や輸送量はC1の4倍でイラクに派遣された米国製のC130輸送機の性能も上回る。CXは既に完成した海自の次期固定翼哨戒機(XP1)と同時開発。将来的な民間転用も検討されており、量産化されれば東海地方の航空機産業への波及効果が期待される。(中日新聞)http://<wbr></wbr>www.chu<wbr></wbr>nichi.c<wbr></wbr>o.jp/s/<wbr></wbr>article<wbr></wbr>/201001<wbr></wbr>0890091<wbr></wbr>001.htm<wbr></wbr>l

Img_2070  次期輸送機C-Xは、防衛省により26㌧を搭載しての航続距離が発表されていたのだが、同時に川崎重工が発表した民間型の最大搭載量は37㌧、という数字が載せられており、現状のC-1輸送機が有する輸送能力、8㌧を大きく上回るものとなる。それだけに、長い航続距離と高い輸送能力を持つ新型機の完成は待たれていたのである一方、機体強度と一部の構造設計にミスがあり、初飛行が遅れていたものである。幸い、エンジンは信頼性の高い米国製を採用しており、設計重量の超過などの他の大きな問題は無く、現在解決にあたっている構造強度の問題さえ目途がつけば初飛行にこぎつける位置にある。この種の輸送機としては、C-17も開発当時は強度不足が指摘され、補強材などの配置が行われてことであるし、他方、昨年末に初飛行を果たしたエアバスA-400のように、構造重量の大幅な超過やエンジン出力の問題、という深刻な問題点は生じていない。特にA-400は、C-Xよりもはるか前から発動した開発計画であることから、開発出資者である独仏政府から、2009年内に何らかの技術的進展を求めた、という話もあり、今後A-400は所要の性能を満たすためには幾つかの障壁を乗り越える必要がある。

Img_1852_2  初飛行は今月中に行われたとして、即引き渡し、量産開始、第一線配備、運用開始、というようにはいかず、一年程度技術研究本部により各種飛行試験が繰り返されたのち、航空自衛隊に引き渡される。航空自衛隊では運用試験を飛行開発実験団により実施し、実用に耐える、と判断された時点で本格的な生産が開始されることとなる。現時点で、入間基地、美保基地に配備されることが予想されるが、主契約企業である川崎重工は、民間型の生産販売も計画しており、C-130H輸送機に代わる貨物機として、また、場合によっては、つまり武器輸出三原則に柔軟運用の解釈が行われるのであれば、政府用輸送機として各国に販売される可能性もあるわけだ。C-1輸送機もそうした構想はあったものの、実現には至らなかったのだが、C-Xは可能性として輸出があり得るのか、興味がもたtれる。さて、C-1輸送機は、横田基地日米友好祭などで、米空軍の戦域輸送機C-17と対面に並べられると、そのコンパクトさが目立ってしまう。この点、C-Xは、C-17ほどではないが、相応の大きさを誇っており、並んだ姿も様になるのではないだろうか。C-X,いやXC-2と間もなく名前を改めるであろう新型機には、より幅広い活躍を期待したい。もっとも、飛ぶらしい、ということが報じられただけであり、まだ実際に飛行したのではないのではあるけれども。

HARUNA

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F-35統合打撃戦闘機、アメリカ国防省が調達計画の見直しを発表

2010-01-09 18:32:22 | 防衛・安全保障

◆日本に開発参加を求める背景には資金難も

 イギリスがF-35Bの調達価格が1億ポンドを超えそうな状況で、F-35Bを搭載し今後英海軍半世紀の体系を創ろうと考えたクイーンエリザベス級空母が暗礁に乗り掛けているという状況。

Img_1939  F-35はステルス性を備えた超音速次世代多用途戦闘機として開発がすすめられ、F-22よりも低価格で、高い航空打撃力を発揮出来る機体としてアメリカを中心に国際共同開発が行われている機体である。しかしながら、前述のように、計画は開発プロセスが国際共同開発という、各国の関係者が各国の航空戦力整備計画を技術者とともに送りこむという、複雑化しやすい構図の中で行われているため、機体重量超過、エンジン推力不足など2008年には生産が開始される、と90年代に出された計画は遅れに遅れている。

Img_2035  その中で、もうひとつ動きがあったので、共同通信配信記事を一つ引用したい・・・米、F35の調達計画見直し 日本のFX選定に影響か:【ワシントン共同】米メディアは8日までに、ゲーツ米国防長官が航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)の候補になっている次世代戦闘機F35戦闘機について、国防総省の調達計画を見直すよう命じたと報じた。見直しは、開発の遅れを予測する声があることが理由とみられる。F35は老朽化が進む空自F4戦闘機の後継機を決めなければならない日本に対してゲーツ長官が推奨している機種だが、開発中のため日本が調達可能になる時期が見通せないのが難点。実際に開発に遅れが生じれば、日本のFX選定作業に影響を与える可能性がある。同省は2015年までに計483機を調達する計画だったが、ゲーツ長官は昨年12月23日、このうちの約25%に当たる122機の調達を控えるよう担当者に指示。皮切りとして11会計年度(10年10月~11年9月)分は当初予定よりも10機削減する。調達予算のうち28億ドル(約2615億円)以上を開発や性能評価試験などの費用に充てるという。国防総省は34年までに計2456機を調達する方針。同省の予算資料は、この全体計画を縮小するかどうかについては言及していない。 (2010/01/08 16:45 【共同通信】)http://<wbr></wbr>www.47n<wbr></wbr>ews.jp/<wbr></wbr>CN/2010<wbr></wbr>01/CN20<wbr></wbr>1001080<wbr></wbr>1000532<wbr></wbr>.html

Img_1945  1994年の段階で、JSF計画では、各国空軍に配備されるアメリカ空軍向けA型が単価2800万㌦程度、アメリカ海兵隊・イギリス海軍向けの垂直離着陸が可能なB型が3000~3500万㌦、アメリカ海軍空母艦載機のステルス性が最も高いC型が3000~3800万㌦と計画されていた。この価格に開発に関与しない国が購入する場合、様々な費用が重なるし、F-35は、ボーイングのX-32か、ロッキードのX-35か、試験機を開発中の段階であったのだが、当時のF-16Cが2000万㌦、と言われていた時代、確かに高いものの、C型でもF-22の半額以下ということもあり、注目を集めた。

Img_2127  アメリカ海軍、空軍と海兵隊が約2400機、イギリス海軍が138機、イタリア空軍と海軍が131機、オーストラリア空軍が100機、トルコ空軍も100機、オランダ空軍でも100機を、カナダ空軍は80機、イスラエル空軍が75機、ノルウェー空軍が56機、デンマーク空軍は48機、それぞれ導入するべく、開発計画に参加、もしくは関与し、シンガポール空軍や韓国空軍も興味を示している、とされる。今回のアメリカが示した装備計画の見直しは、最終的な調達計画下方修正へ繋がるかは未定、との見方が示されているものの、量産開始時の量産計画が下方修正されるということは、初期の機体の単価が上昇、という結果に繋がるため、開発難航に伴う単価上昇に、調達計画下方修正に伴う量産効果悪化が要因となる次の単価上昇、それが各国の調達計画に影響するという悪循環へ展開することは容易に予想できる。

Img_1922  そこで、航空自衛隊次期戦闘機選定で、F/A-18EやF-15FXとともに、F-22のようなステルス機を導入する必要性が高く認識されていることに注目が集まったわけだ。ゲーツ国防長官が、12月末になり、日本に開発計画への参加や共同生産を持ちかけてきた次第。F-35の国際共同開発に際しては、開発計画コストへの出資度合により、開発計画への関与度合いが決められることとなっており、出資度合10%では開発性能に決定的な関与が認められイギリスが、出資度合5%で開発性能への限定的な関与が認められ、イタリア、オランダが、出資度合1%前後では開発資料の閲覧が認められオーストラリア、トルコ、カナダ、ノルウェー、デンマークが、5000万㌦を支払えば優先顧客として開発に参加せずとも購入が認められ、イスラエル、シンガポールが該当する。

Img_1826  開発費が高騰し、不具合を是正することがなかなか出来ない状況下、新エンジンを開発して出力不足を補うという提案がオバマ大統領により却下され、暗礁から離れることは難しくなってきている状況、さりとて今更計画を中止することも出来ず、新しい出資者を求めているという状況に際して、アメリカは参加を求めてきたわけだ。日本に開発参加を求めることは、ゲーツ国防長官によれば、開発計画へ参加することにより、計画とは無関係な状態よりも早期に調達することができる、という利点を強調されていたが、もう少し慎重に考えなければならない。開発に参加するだけでかなりの費用を必要とするのだが、一方で、開発がいつ完了するかは別の問題であり、F-4戦闘機後継機として航空自衛隊が求めた場合、納期が未定、という最大の問題が立ちはだかる。F-35は、日本でライセンス生産が認められるか、現時点では、アメリカが参加を求めてきた以上、足元を観ることができる状態に入りつつあるのかもしれないが、リスクが大きすぎる。他方で、日本の航空産業、特に防衛省用航空機の生産基盤はF-2生産終了で次の発注が無ければ、危機にさらされていると、繰り返し問題となっており、F-35の参加はもう一つのリスクを抱えることになる。さて、航空自衛隊F-X選定は、どう進むのだろうか。

HARUNA

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平成二十一年度一月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報 1

2010-01-08 23:12:53 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 中日新聞が、次期輸送機C-X初飛行について、今月中に行われる予定であることを報じた。いよいよ、いろいろ聞いた不具合が是正されたのだろうか。

Img_3807  第一空挺団降下訓練始め、一月と言えば空挺初降下である。平成22年降下訓練始めは、1月10日日曜日、千葉県の習志野演習場において行われる。時間は1100~1200時の予定で、C-1輸送機、C-130輸送機、CH-47輸送ヘリコプター、UH-1J多用途ヘリコプター、UH-60JA多用途ヘリコプターといった各種航空機からの降下とヘリコプター戦技訓練展示が行われる。

Img_3850  なお、強風の場合は習志野演習場の外に降下する危険から落下傘降下は行わず空中機動のみ、荒天の場合は航空機が飛行できない場合地上での展示、降雪の場合は冬季迷彩で実施される。しかし、それ以上の荒天という状況にあっては、訓練そのものを中止にする、ということもあるということだ。

Img_3979  第一空挺団といえば、防衛長官直轄緊急展開部隊として知られ、防衛省発足後の現在は、中央即応集団の基幹部隊となっている。輸送機やヘリコプターにより迅速に展開、落下傘により戦略上重要な地域へ降下し、飛行場占領、敵攻撃前進の阻止、補給線寸断、後方撹乱などを実施する部隊だ。

Img_4024  装備は、小銃、機関銃、迫撃砲、対戦車ミサイル、携帯無反動砲、携帯地対空ミサイルなど重装備は比較的少ないものの、最高の人員を備えている。100km持久走を筆頭に高い基礎体力に裏打ちされた様々な能力、つまり落下傘一つで後方に展開し、任務を遂行することができる一人一人の隊員こそが、空挺団が最強である所以といえる。

Img_3754  会場は習志野演習場。習志野駐屯地ではなく習志野演習場だ。国道296号沿い、テルウェルホームセンター近傍に入場ゲートがあり、0830時に開門されるとのこと。近傍の駅は新京成電鉄習志野駅から薬園台高校方面に進んで成田街道(国道296号線)に沿って、習志野駐屯地方面に行くと徒歩30分。

Img_3898  新京成電鉄薬園台駅からはバスで数分とのこと。京成本線の八千代台駅や、JR総武線の津田沼駅からもバスかタクシーで行くことができそうだ。演習場入口からはシャトルバスが運行されるとのこと。なお、安全確保の観点から会場へは手荷物検査が実施されるとのことである。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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普天間移設先、沖縄駐留海兵隊戦闘部隊より飛行20分以内

2010-01-07 22:08:45 | 国際・政治

◆米海兵隊が見解表明

 米海兵隊は、普天間基地代替について、地上部隊と航空部隊の一体的な運用を維持する観点から沖縄県駐留の海兵隊戦闘部隊からヘリコプターで飛行して20分以内の場所に移転することを求める方針を明らかにした。

Img_9933  海兵隊地上部隊は、沖縄本島のキャンプハンセン、キャンプシュワブに駐留しており、“20分以内”という具体的数値を示したこととなる。これは現在の日米合意に基づく沖縄本島の名護市キャンプシュワブ沖合への移転を強く求めているものとみられ、現在政府部内で検討されている本島北東300kmの離島、沖縄県宮古島市下地島への移転や九州の海上自衛隊大村航空基地への統合は事実上却下されたかたちとなる。結果、嘉手納弾薬地区近傍に新飛行場を建設する案、伊江島補助飛行場、この二つが現実的な案として残る。

Img_2361  海兵隊が航空機との一体性を重視するのは乏しい陸上火力や機甲部隊による打撃力を航空機による近接航空支援や空中機動力を以て補っているためである。自走榴弾砲を持たず牽引式榴弾砲と迫撃砲に火力を依存し、戦車定数は海兵師団でも陸軍機械化師団より少なく、装甲車も軽量なものだけである。しかも沖縄の第三海兵師団は戦車を持たず火砲をはじめとした火力も小さい。海兵隊の海兵航空群への信頼は、絶大なもので、本来空軍が運用するような戦闘機、攻撃機を運用する意義は、実はここにある。戦闘部隊から100浬(185km)以内にヘリコプター部隊を置く、という内規が2003年のイラク戦争にともなう陸軍の支援要請に際して示された。海兵航空部隊は、海兵隊の支援を行うものである、という認識のもとで提示されたものだ。

Img_9927  個人的には、手狭となった民間空港の那覇空港代替施設を名護市沖合に建設し、那覇空港跡地に海兵隊ヘリコプター部隊を移転させ、航空自衛隊那覇基地、海上自衛隊那覇航空基地、陸上自衛隊那覇駐屯地と一体的な運用を行うことが望ましいように思う。名護市沖合の新空港は、最初に滑走路一本の暫定飛行場として開港し、この時点で海兵隊を一時的に移駐、第二滑走路完成とともに那覇に海兵隊が移動する、という提案。ボーイング747よりもCH-53Dは騒音が小さく、那覇空港周辺住民への一応の配慮にもつながる。

Img_8722  次善の策は、嘉手納基地に隣接する嘉手納弾薬地区に海兵隊ヘリコプター部隊向けの飛行場を新設することだろう。嘉手納統合案ではなく嘉手納隣接案。現時点で日本本土、朝鮮半島や台湾海峡などにおける有事の部隊受け入れを考えれば嘉手納基地に海兵隊ヘリコプターを受け入れることは現実的ではないが、隣接する嘉手納弾薬地区であれば交渉の余地はあるかもしれない。事実、自民党政権時代に検討されたとされ、他方、嘉手納基地周辺の騒音増大、弾薬地区での墜落事故の危険性などが配慮されたのか、現行案に落ち着いたとされる。実質的に嘉手納基地の隣にもう一本滑走路が増設されることとなり、騒音は増大する。住民の理解が得られるのか、ということが分水嶺となる。

Img_9936  伊江島補助飛行場、本島の北西9kmに浮かぶ離島で、周囲22km、人口5000名弱の伊江村には旧石器時代から縄文時代の遺跡が点在するとともに農業が営まれる島だ。この伊江島北西部には、海兵隊ヘリコプターやハリアー攻撃機が発着可能な補助飛行場があり、普天間などの訓練騒音を分散する目的で、補助飛行場が運用されている。伊江島単体で普天間基地の機能を担うことは当然不可能であるが、本島との間に9kmの橋梁を建設すれば本島との連絡や基地機能維持へのインフラ依存が可能となる。また、地域振興にも繋がるのだが、伊江村の本島海兵隊訓練負担軽減という善意から補助飛行場運用を受け入れている現状に、更に普天間の基地機能移転を受け入れられるのか、ということは慎重に観てゆく必要がある。なお、伊江島の35%は補助飛行場となっているが、補助飛行場には村民人口の約一割が居住しており、基地建設には住民の立ち退き交渉を行う必要があり、これが伊江島移転案の最大の難点となろう。

Img_51461  米海兵隊の組織や運用体系、訓練体系を考慮すれば、長期間、自民党政権が交渉を行い、妥協点を見出した名護市沖合以外に妥結点を見つけ出すには相当の労力が必要であり、果たして決定の期限として現政権が提示した五月という期限までに妥結できるのかは、非常に微妙な状況である。アメリカは、ラムズフェルド国防長官時代に決定した普天間移設を、政権が代わったからと言って投げ出すようなことはしないし、厚木の岩国移転も級に白紙撤回を突き付けるような非常識なことはしない。国際的に非常識を押しつける、これが現在の政権交代の在り方なのだろうか。

HARUNA

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ブルーインパルス 本日飛行始め 松島基地では本日、31機が飛行

2010-01-06 17:46:08 | 航空自衛隊 装備名鑑

◆ブルーインパルス2010始動!

 ブルーインパルスの2010年における飛行訓練がホームベースである宮城県の松島基地にて、本日から開始されたとのこと。

Img_0431 報道によれば5日、藤井財務大臣が体調不良により財務大臣を辞任する意向を表明したとのこと。ほかには、東京地検は民主党の小沢幹事長の資金管理団体について、土地購入資金を政治資金収支報告書に記載しなかった問題で、近く事情聴取を要請するとのこと。また、シーシェパードの抗議船が南極海にて日本捕鯨船団の一隻に衝突し、大破したとのこと。こうした話題がある中で、本日はブルーインパルスの新年の話題を掲載したい。

Img_45321  NHK仙台放送局がお昼のニュースで報じたところによれば、航空自衛隊のアクロバット飛行部隊として知られるブルーインパルスの飛行始めが本日、航空自衛隊松島基地において行われたとのこと。飛行始めは、その年最初に行われる各部隊の訓練を意味する。本日の松島基地は通常離陸では編隊離陸を行うところを、気象条件の関係から一機づつの離陸となったとのこと。

Img_4649  離陸したブルーインパルスは編隊を組み、金華山沖の太平洋において訓練飛行を行ったという。松島基地では、本日、F-2BやT-4など31機が本日、飛行訓練を実施すると発表しており、航空自衛隊の2010年が本格的に始まる。また、岐阜基地や小牧基地でも飛行訓練が始まった模様。

Img_4552  このほか、中国新聞によれば、昨日、岩国航空基地で海上自衛隊のヘリコプターが年頭飛行の編隊を組んだとのことで、今週中に陸上自衛隊でもヘリコプター部隊の飛行始めが行われるようだ。陸上自衛隊の飛行始めは、多数のヘリコプターを用いての大編隊での飛行となり、例年の事例から今週の木曜日か金曜日あたりに行われるのでは、と推測。

Img_4513  2010年最初の訓練としては、1月10日の日曜日に、習志野において第1空挺団の降下初も行われ、こちらは一般公開されることとなっている。第一空挺団の行事については、訓練展示模擬戦も含めかなりの迫力で定評があり、こちらについてはその実施など、後日詳しく掲載したい。

Img_3371  さて、ブルーインパルスの飛行訓練開始とは直接関係ないが、今年こそ次期戦闘機F-Xの決定や戦闘機国産技術維持の明るい見通し、次期対戦車ヘリコプターの見通し、そして次期輸送機C-Xの初飛行、などなど、今年は航空機関連のさまざまな難題についても打開の見通しを期待したいところ。

Img_4581  航空自衛隊航空機操縦技術の象徴であるとともに最大の広報効果を誇るブルーインパルスの訓練が開始されたということだが、ブルーインパルスの訓練初めを筆頭として全国の自衛隊航空部隊での訓練が本格化するのだが、本年は、重大事故のない中で精強な部隊錬成が行われることを祈念したい。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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普天間飛行場移設先に海上自衛隊大村航空基地案 琉球新報が報じる

2010-01-05 23:51:40 | 国際・政治

◆現実的には難しい案

 琉球新報などが報じた記事によれば、普天間基地代替施設を長崎県の海上自衛隊大村航空基地に建設する構想が政府内にあるとのこと。大村航空基地は、哨戒ヘリコプターを運用する第22航空群が展開している基地だ。

Img_4043  毎日新聞1月3日:米軍普天間飛行場の移設問題について長崎県大村市の松本崇市長は09年12月31日、「普天間移設に関し、最初から聞く耳を持たないというわけではない」と述べ、大村市の海上自衛隊大村航空基地への移設について政府から要請があれば検討する考えを示した。琉球新報社のインタビューに答えた。一部週刊誌は、政府が普天間基地の移設先として大村航空基地を候補地とする検討を始めたと報じた。松本市長は報道について、「全くの寝耳に水で驚いている。政府からは報道後も特に説明はない。国会議員に確認したが『そんな話はない』と否定された」と述べ、市としては当面、静観する考えを示したhttp://mainichi.jp/area/okinawa/news/20100103rky00m010006000c.html

Img_4158  記事を読み解くと、現時点では多数ある案の一つであるとみられ、現在政府部内で検討されている沖縄本島近傍の伊江島、沖縄県内の下地島が普天間代替施設を受け入れる基地基盤として成り立ち得ないとの批判から、比較的人口密集地に近く、加えてアメリカ海軍揚陸艦が前方展開する佐世保海軍施設にも近い大村航空基地が、その名前として挙げられたようだ。大村航空基地にはSH-60J/Kが多数展開しており、回転翼航空機の運用基盤は確立している。一方、自治体に打診などは行われておらず、従って具体案としてだされたものでもない、という位置づけにみえる。

Img_4146  どの程度現実性のある意見かは別として、大村航空基地は、沖縄本島の海兵隊戦闘部隊との間で距離が離れすぎているという問題がある。海兵隊とヘリコプターは一心同体である。そして、戦闘部隊は基本的に海兵隊グアム移転後も沖縄に駐留することとなっている。無理を乗り越えて、どうしても、というのであれば陸上自衛隊第四師団の一部部隊を沖縄に振り分け、逆に海兵隊の訓練や駐留を九州にシフトする必要も出てくるが、キャンプオオムラ、というものは現実的に考えにくい。また、九州は演習場の不足という問題もあり、加えて、海上自衛隊の航空群が展開する以上、現状のままでは大村に受け入れることも難しい、拡張が必要となろう。このように、大村移転案というものは、少し現実から乖離しているように思えてくる。

HARUNA

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アフガニスタン情勢逼迫 2009年の米軍戦死者は304名、英軍戦死者は107名

2010-01-04 23:02:07 | 国際・政治

◆苦戦続く各国アフガン派遣部隊

 年末年始に普天間問題を鳩山首相が水面下でなにかしら打開案を調整・模索し提示してくれるのではないかと淡い期待を思い描いていたのだが、なにも無い一方で、アフガン情勢の逼迫化が報道されている。

Img_7588  北大路機関は、極力ブレない。普天間基地は、海空自衛隊の那覇基地に統合し新基地を建設せず在沖米軍戦闘部隊の支援を可能な位置に移転し手狭となった那覇空港をキャンプシュワブ沖合に移転し沖縄空港とするべし、戦闘機国産技術の維持には垂直離着陸が可能な艦載機で生産が終了したハリアーをライセンス生産しF-35Bの開発難航に際して各国に日本から供給するべし、航空自衛隊F-Xはライセンス生産が可能なF-35以外の機種を模索するべし、海上自衛隊は八個護衛隊群護衛隊に各ヘリコプター護衛艦とMD対応型ミサイル護衛艦を装備した新八八艦隊にて戦力投射能力の充実と展開能力を維持すべし、といった北大路機関の主張は、今年ブレないようにしたいもの。

Img_6248  こうした中で凶報は届いた。毎日新聞2010年1月3日朝刊より引用:アフガニスタン 米兵死者が過去最悪に・・・AP通信は12月31日、アフガニスタン駐留米兵の09年の死者数が30日までの集計で304人に上ったと報じた。01年に米軍がアフガン攻撃を開始して以来最悪だった08年の151人のほぼ2倍。英兵も過去最悪の107人、カナダ兵が32人、その他の国が59人。駐留外国部隊の死者の総数は計502人となり、01年以来最悪だった08年の285人を大きく上回った。一方、イラクでの米兵の死者数は、08年の314人からほぼ半減し、09年は30日までに152人となった。【共同http://mainichi.jp/select/world/news/20100103ddm007030008000c.html

Img_9050  Weblog北大路機関では、繰り返し掲載しているように1月15日にこれまで2001年11月9日以来続けられれ来ており、例外を除き継続された海上自衛隊のインド洋海上阻止行動給油支援任務が終了するのだが、給油支援任務に続き行われると民主党政府が野党時代から主張してきたアフガニスタン復興人道支援任務への陸上自衛隊派遣は全く具体化しないまま、現在、アフガニスタン情勢の悪化という状況に至っている。現時点でアフガニスタンへの民間人派遣による復興人道支援はあまりに非現実的なのだが、米軍支援が社民党との連立上、難しいのであれば苦戦しているヘルマンド州の英軍支援に輸送ヘリコプターを派遣してはどうかと昨年掲載した次第。

Img_8690  日米は、現在、普天間基地代替施設の建設問題で政権内部にて合意形成すら行うことが出来ない中、日米関係の摩擦に繋がっている訳なのだが、群に安全保障の問題は上記のように多数の戦死者を出しているアフガニスタンというシビアな問題を抱えている一方で、連立与党として政権の一員である社民党が軍隊に依らないアフガニスタン戦解決を提示し、同時に普天間については在沖米軍のグアム全面移転を提示するなど、日米関係を捩れさせる提案を連発しており、最高の二国間同盟と呼ばれた日米の半世紀以上に及ぶ同盟関係に次々と罅をいれている状況である。

Img_7896  武力にてアフガン情勢が解決できない、と社民党が主張するのならば、かつて実弾射撃訓練反対を唱えた市民団体が富士演習場畑岡地区着弾地に決死隊を座り込みさせた要領でアフガニスタンにタリバン和平交渉決死隊を派遣しては、と思うのだが、これは犠牲者を出すだけであまり意味は無い。こうした中で、思い切って、苦戦続くアフガンの米軍や英軍を支援するべく、陸上自衛隊のヘリボーン部隊を空挺部隊とともに派遣する検討を行っては、と思う次第。

HARUNA

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海上自衛隊の全通飛行甲板型護衛艦による固定翼機運用を考える

2010-01-03 23:41:38 | 防衛・安全保障

◆クイーンエリザベス級のスピンオフ記事

 本日は、クイーンエリザベス級についての記事、これは今月の世界の艦船を読んでF-35とは、空母計画を揺るがすほど高価なのか驚いた、という話題から出た記事コメントからのスピンオフ記事。http://blog.goo.ne.jp/harunakurama/d/20091229

Img_6443  スピンオフ作品は、いろいろとある。映画砂漠の狐と砂漠の鼠、独立愚連隊と遊撃戦(DVD入手失敗した)、Fate stay nightとプリズマ☆イリヤなどなど、多いようなので、Weblog記事も、コメント欄からスピンオフ記事が出てもいいのでは、と考えた次第。さて、海上自衛隊が、22DDHを将来的にヘリコプター搭載護衛艦ではなく、一歩進んだ航空護衛艦として運用する場合、その問題点についての話題。

Img_6836  大前提として、ひゅうが型、19500㌧型護衛艦は、護衛艦ではあり、航空母艦ではない、という前提を置いたうえで、考えてゆきたい。ひゅうが型に続く新しい護衛艦22DDH、19500㌧型護衛艦は、平成22年度防衛予算にその建造費が盛り込まれ、満載排水量で27000㌧以上となるだろう大型護衛艦が、いよいよ建造されることとなった。

Img_7455_2  22DDH事業仕分、22DDH予算、22DDH建造、22DDHとは、などなど、ヘリコプター搭載護衛艦を検索キーワードとしてこちらのWeblogを訪問されるということも多いので、もう少し掘り下げてみる。かなり方々を掘っているようにも思うのだけれども、記事をもう一つ掘り下げる次第、どんどん掘り下げて、いつか22DDHの話題だけで塹壕か地下鉄が出来ると思う次第。

Img_7940  海上自衛隊が護衛艦の軽空母的な運用を考慮した場合、①艦載機を含めた予算体系、②直衛艦となる護衛艦の数量、③米海軍のような運用にあたる指揮官、④米海軍の空母を護衛した護衛隊群のポテンシャルをどう引き継ぐか、⑤日米の同盟関係という視点からの独自作戦能力について。

Img_5873  これらがF-5様のコメントからの考えるべき命題として提示されていましたので、考えてみましょう。・・・、コメント欄に書くと長くなるので今日の記事の代わりに、という訳ではなく(多分)、今年最初の記事は、22DDHをもっと深く考えてみよう!、という位置づけ(恐らく)。

Img_9989  艦載機を含めた予算体系について。外務官僚と防衛官僚の競合ですが、そもそも両省ともに安全保障を扱う組織ですので、これは致し方ないのだろう、と思います。安全保障は、軍事はもちろん、国際関係から資源外交、疾病予防、食糧確保、社会保障まで含めた広義のものでして、この分担を考えなければならないようにも思います。

Img_5902  防衛省は軍事安全保障全般を防衛力整備により達成し武力紛争を抑止し軍事力により直接的間接的に及ぶ脅威を鎮めることを主管とする機構。外務省は国際関係展開の全般を所管する機構であり、以て国家の対外政策を遂行し国際関係の視点から安全保障を担い、在外邦人の権利を保護することを主管する機構。縦割りではなく、日本国家国民への安全と利益を以て世界への安寧と平和を追求するという一つの目的に向かっているため、相互作用は決して不利益にならないだろう、と考えることができます。

Img_8753  他方で、仮にF-35のような高価な航空機を多数、海上自衛隊が護衛艦に搭載するために航空集団に装備させることを考えた場合、予算体系での航空自衛隊戦闘機調達との競合は起きるでしょう。これは、冷戦初頭に核戦力の投射手段として米海軍の超大型空母から運用する核攻撃機か、空軍が構想する長距離戦略爆撃機による戦略核兵器運搬か、大きな議論となり、この種の競合は、どういった場合でも起きるもので、こちらも手段は違えど目的は同じであるのだから大きな不利益にはならないのだろう、といえるのではないでしょうか。

Img_5305  直衛艦について。ヘリコプター搭載護衛艦を中心とした護衛隊群は、どういった編成が考えられるでしょうか。海上自衛隊と米海軍の合同演習等の際に、空母を中心として密集した艦隊陣形が組まれているものがあり、迫力がある一枚を観ると感嘆するとともに、こうした機動部隊を年頭にして海上自衛隊の全通飛行甲板型護衛艦を中心に部隊を組むことを考えれば、果たして可能なのだろうか、ということが気になってきます。

Img_5353  しかし、実は航空母艦を中心に艦隊が集まった写真、そうした写真を撮ったことが無いので写真を掲載できないのは恐縮ですが、あれは特殊陣形のなかで広報陣形と呼ばれる陣形で、迫力はあるものの、あそこまで密集する陣形は、実戦では考えられないものです。航空母艦の両脇に駆逐艦が、という陣形は、第二次大戦中では、接近する航空機や潜水艦の攻撃に対して考えられてはいたのですが、現実はそううまくいかなかったようです。

Img_7906  書架から世界の艦船515号(1996年10月号:特集艦隊陣形の歴史)を取り出してみます。元海将寺部甲子男氏の“艦隊陣形とは”によれば、真珠湾攻撃では、空母1隻にたいして真後ろに駆逐艦1隻がつくという編成であったと書かれています。先頭に水雷戦隊と戦艦、後方に主力の空母がつく、という編成となっていました。

Img_1970  前衛が軽巡洋艦と駆逐艦各1隻、続いて三角陣形にて戦艦二隻を中心に両脇を15kmおいて軽巡洋艦各1隻と先頭10km先に駆逐艦1隻という編成、6隻が前衛を務める編成を採りました。空母は、後方に、2×3の陣形で6隻が並び、空母部隊の両翼を15km離れて駆逐艦各1隻が固め、空母の後ろには各1隻の駆逐艦、計6隻が展開しました。殿には潜水艦3隻が後続という、空母6隻、戦艦2隻、軽巡洋艦3隻、駆逐艦9隻、潜水艦3隻、という編成でした。

Img_5490  マリアナ沖海戦の際の小沢部隊は、もう少し充実した編成でしたが、前衛部隊に主力戦艦部隊である第二艦隊が展開するなど、日本海軍の総力を結集した編成といえますので、大なり小なり、航空母艦に充実した護衛をつけるならば、一国の海軍力を結集して、ということは致し方ないのかもしれません。もっとも、逆因果関係で、一国の海軍力を結集してでも守らなければならないのが航空母艦、ということもできるのでしょうけれども、ね。

Img_9192  さすがに第二次大戦中の陣形では古すぎますので、ミサイル時代の空母機動部隊として、1982年のフォークランド紛争におけるイギリス海軍の編成をみてみましょう。イギリス海軍の空母機動部隊は、前衛と主隊、輸送船団という編成より成り、前衛は中距離対空護衛として艦対空ミサイルを搭載した42型ミサイル駆逐艦3隻、その直後に対潜護衛として22型フリゲイト3隻が続きます。

Img_9088  主隊の空母ハーミーズ、インヴィンシブルには、至近距離直衛として21型フリゲイトが2隻つきます。補給船団は最後尾で、前方は空母艦載機ハリアーにより戦闘空中哨戒が実施、周囲には原子力潜水艦が移動哨戒を実施していました。空母2隻の護衛にミサイル駆逐艦3隻、対潜フリゲイト5隻がつくという編成でした。

Img_7164  こうした編成であれば、ヘリコプター搭載護衛艦1隻と、ミサイル護衛艦2隻、汎用護衛艦5隻からなる護衛隊群でも実現可能な護衛といえます。ちなみに、イギリス海軍空母機動部隊は、エクゾセ対艦ミサイルを搭載したシュペルエタンダール攻撃機、そしてミラージュ戦闘機やスカイホーク攻撃機を運用するアルゼンチン空軍の攻撃から、空母二隻を護りきることが出来ました。戦後にエクゾセ空対艦ミサイルは五発しかなかったなど、意外な事実が判明しましたが、ミサイル時代の空母部隊として、一つの戦訓を提示してくれています。

Img_5667  米海軍のような空母部隊の指揮官、これについてはどうでしょうか。海上自衛隊は、はるな、ひえい、しらね、くらま、という四隻のヘリコプター搭載護衛艦を1973年から順次整備し、運用研究を継続してきました。艦船に給油を行う補給艦、そしてヘリコプターの発着を重視するヘリコプター搭載護衛艦は、最高の操艦技術を求められる海上自衛隊の艦船にあって考え得る最も高度な操艦を求められるものです。

Img_3937  他方、ヘリコプター搭載護衛艦の副長には、飛行長があたっており、飛行長はウイングマークをもつパイロットがあたっていますので、護衛艦の運用についてヘリコプターパイロットの視点から的確に補佐する、という運用が採られています。

Img_7455  ここが、通常の護衛艦とヘリコプター搭載護衛艦の異なるところでしょうか。1973年の護衛艦はるな就役以来、海上自衛隊は艦上航空機運用体系を研究構築してきており、ノウハウの蓄積はかなりのものです。この経験を活かせば、ひゅうが型、そして22DDHであっても、日本型の運用を構築することはかなり容易なものとなるはずです。

Img_9936  他方で、海上自衛隊の航空集団は、F-4やAV-8のような戦闘機を運用した経験がありませんので、この点のノウハウは、求められなかったこともあり、現在も今後も、構築するのならば航空自衛隊の整備補給体系と運用体系とともに協力を受ける必要があるでしょう。ですが、SH-60J/Kの艦上整備機構から応用できるものも少なくない訳でして、この点を考えるべきでしょう。

Img_6639  既存の体系を応用するという前提で、艦上固定翼機運用の端緒にさえ就けば、あまり長くない期間で運用体系や整備補給体系は構築できるかもしれません、そういう意味では指揮官養成も行わなければ進みませんが、始めれば実現に向けて前進することは出来ます。日本も中国も、この点同じでして、意欲はあっても動かないよりは、最初の一歩を踏みだすことの方が重要なのではないでしょうか。

Img_6660_1_2  米海軍の空母機動部隊を護衛してきた海上自衛隊護衛隊群が、ヘリコプター搭載護衛艦を中心とした独自運用を開始した場合、空母の直衛はどうなるのか、ということについて。この点は、太平洋正面については、海上自衛隊が米軍の護衛から自らの部隊の自衛へと一歩踏み出すことにより、同時にこれまで沿岸防備で手一杯という状況にあった韓国海軍が新しい一歩を踏み出しています。

Img_1791_2 韓国海軍は、東海第一艦隊、平澤第二艦隊、木浦第三艦隊ともに駆逐艦・フリゲイトの戦隊と防備戦隊を合わせた一昔の海上自衛隊地方隊のような編成で、鎮海基地の第5対潜戦隊だけが機動運用部隊となっていますが、1998年の建国50周年国際観艦式では、海軍に3000㌧以上の大型水上戦闘艦は1隻だけだったのが、今日では、3855㌧のクワンゲトデワン級駆逐艦3隻、5500㌧のチュムンゴンイスンシン級ミサイル駆逐艦が6隻、それにイージスシステムを搭載した10290㌧のセジョンデワン級が1隻、2011年にもう一隻、2012年に最後の一隻が就役する予定です。

Img_1921_2 このように、大型水上戦闘艦の勢力は、海上自衛隊に例えれば従来型DDHを運用する一個護衛隊群と同規模の能力を有しているわけです。このほか、あぶくま型護衛艦よりもやや小さいですが、ウルサン級フリゲイトが9隻、いしかり型よりも小型ですが、ポーハン級コルベット24隻が整備されています。

Img_7606 1980年第から整備されたもので、遠からず後継艦が必要となりますが、これらの後継艦は、ミサイル艇と、ヘリコプターを搭載するフリゲイトとしてやや大型のものが建造される計画とされています。もちろん、予算的に大型水上戦闘艦に置き換えるならば1:1での代替は不可能でしょうが、海上自衛隊の90年代における二個護衛隊群程度の能力を有することは期待できます。米韓関係を考えれば、海上自衛隊が独立したのちは、米空母を護衛するのは、韓国海軍が担うもの、と考えればどうでしょうか。

Img_2504  最後に日本独自の第一撃能力を保有することについて、アメリカの視点。冒頭に述べたようにヘリコプター搭載護衛艦であって、ニミッツ級のような戦略兵器としての性格を有するものではないのだから、そこまで大袈裟に考える必要なないのかもしれない、と思う次第です。この点で、リチャードアーミテージ氏がその昔、空母の保有に反対する発言を行ったこと思い出しましたが、最近は日本も空母を保有するべき、と大転換した発言があります。

Img_8790  どういった装備品を保有しようとも、諸外国から反発はあるのですし、日本の政治システムから考えて、アメリカという同盟国に相談も無く、憲法上かなりの問題があるだろう第一撃を行う、ということも少し現実的ではないように思える次第でして、独自作戦能力というものも、常識的に考えられる範囲内であれば、日米関係に影響は及ばない、といえるでしょう。

Img_9081  全通飛行甲板型護衛艦は、その有用性について、これまでの護衛艦とは比較できないほどの利点があります。22DDHや、ひゅうが型について、AV-8なり、F-35なり、Yak-141(これは無いか)なりを搭載して、固定翼機搭載護衛艦として運用する場合、現在の護衛艦八隻からなる護衛隊群の運用体系は、文字通り革新的な一歩を進むこととなります。

Img_8639  艦隊防空に関してもイージス艦による極めて高度で洗練されているが受動的な運用から、艦隊の前方に進出し、射程が増大するAMRAAMを用いて(Yak-141には搭載できないね)積極的な艦隊防空任務を遂行可能となる。ひゅうが型や22DDHは、軽空母と揚陸艦双方の特性を有する戦力投射艦としての運用が可能であることとなるでしょう。

Img_6014  飛行甲板に艦上係止すれば、格納庫と併せて相当数のヘリコプターを搭載できることから、CH-47JA輸送ヘリコプター4~6機を甲板に、艦内の格納庫にUH-60JAか輸送用に対潜機材を下したSH-60Kを搭載、国際平和維持活動に対応できますし、必要ならばAH-64D戦闘ヘリコプターも搭載可能になります。

Img_8909  必要に応じて科員居住区の二段ベッドと三段ベッドとすることができるので陸上自衛隊の要員を乗艦させ、国際平和維持活動や緊急人道支援任務にも対応することができるわけです。車両の搭載は、かなり限定的ではありますが、航空母艦が陸上車両を輸送した事例もありますので、対応は充分可能性があるでしょう。

Img_2210_1  対潜任務中枢艦としても現在のSH-60Kに続いて、より大型のMCH-101を原型としたSH-101が採用されれば、哨戒飛行時間は大幅に増大し、対潜任務は、より広範囲に実施することが可能となるものです。ディッピングソナーを搭載し、大きな機体には多くのソノブイなどの対潜機材が搭載可能であるとともに、水上戦闘艦への順応性は高い機体です。

Img_7226  もともと3500㌧クラスのフリゲイト(はつゆき型で、4000㌧、後期型で4200㌧)での運用を念頭に開発されたヘリコプターですので、従来の護衛艦での運用も可能で、三発機というエンジンの多さを、DDHが整備する、というかたちでの艦隊航空全般の充実、という運用も可能でしょう。

Img_7176 また、SH-60Kのように、機内機材を置き換えることでSH-101にも運用柔軟性を付与する、という構想で整備すれば、必要に応じて対潜哨戒から対機雷戦への掃海ヘリコプター転用も即座に行うことができるかもしれません。様々な困難があるとしても、思い切って乗り越えるに充分な利点を列挙することができ、運用体系を模索してゆくべき、と考えます。

Img_20901  海上自衛隊は、ニミッツ級原子力空母のようなものを、信濃、として整備するのはフィクションの中だけに留めておくべきかもしれません。行うとすれば現在の予算・人員・装備体系を根本的に改める必要はあるでしょう、それを行う勇気を持つのならば別ですが、その分、難易度は高くなります。

Img_8780  しかし、イタリア海軍のカブール、フランス海軍がかつて運用したクレマンソー級、そしてイギリスのインヴィンシブル級のような装備と運用体系、というものならば、実現性は高くなるかもしれません。海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦は、護衛艦ではあるのですが、従来の護衛艦よりは一歩進んだ運用が可能であり、この独自の護衛艦を活かした運用体系を模索することが、日本防衛に関する大きな飛躍点となることを期待したいです。

HARUNA

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名古屋鉄道社史(1960) 念願の一冊を古書店で入手!

2010-01-02 23:56:19 | 北大路機関特別企画

◆師走に入手したこの一冊

 古書店散策は、その昔は比較的安価に専門書を入手するため、昨今は神川彦松先生の著書を探すための一つのライフワークです。

Img_2134  そうした中で、十年来探していた一冊、というものとであったりすることは非常にうれしいもの。京都の古書店街は、いまや百万遍の古書店街が壊滅状態で、寺町も少なく、専ら神保町や鶴舞の古書店街の方が掘り出し物があるというのが実情、探している本は、京都でも掘り出すことができるのですが、東京う、名古屋の方が多いようにも。

Img_4332  師走にそうした散策の途上であったのは、1960年の名古屋鉄道社史。十数年前に一度だけ、貸していただいたことがあり、内容は、“新鋭電車の完成予想図”として今は無きパノラマカーの想像図が掲載されているほど、古い一冊。当時の主力特急は5500系で、フィルム時代に撮影したのみの車両、掲載されている電車は基本的に全て過去の車両である。

Img_2158  名古屋鉄道百年史と比べれば、草創期の都市間高速鉄道と地域密着市電統合の歴史、災害や戦争を乗り越えての躍進と、なるほど1960年の社史はドラマに満ちており、読みごたえのある一冊だ。実は、十年ほど前に、一度だけ古書店でこの一冊を見つけたのだが、当時としてはあまりに高く入手できず、永遠に入手出来ないかと思いきや、偶然入手できたのが今回、これだから古書店めぐりはやめられない。

Img_5035  5500系特急が見開きに掲載されている。1955年に登場した5500系は、日本最初の冷房付通勤車両として知られ、特急料金不要の特急車両体系に近代化の一歩を刻んだ歴史的車両である。片側2扉クロスシートで、通称タンコロ、名鉄の主力特急として活躍したが、21世紀の今日、全て廃車となってしまっている。

Img_5047  1960年にこの名古屋鉄道社史が刊行された時点では、このように7000系パノラマカーは新鋭電車として完成を待たれている状況。当然、5500系に続く名鉄の主力特急としての地位を約束された電車で、この車両も、今日では保管されている車両を例外として全て解体されてしまったのは寂しい限りである。

Img_5042  阪神大震災から間もなく十五年であるが、この名古屋鉄道社史は、太平洋戦争終戦十五年の年に刊行されたもので、戦争と鉄道、という視点から詳しく掲載されている。百年史では、企業説明のような無難なものであるが、空襲による会社施設車両人員への被害を前に物資不足、輸送需要の増大へ応えた様子が淡々と記されている。

Img_5040  鉄道は、戦時以外にも災害という難敵を前に社会秩序の象徴として、また公共交通の維持という義務を担っている。濃尾大震災や伊勢湾台風というような、東海地方を襲った幾多の災害の記録も盛り込まれており、名古屋鉄道を通しての東海地方年代記という視点からも、興味深い史料として仕上がっている。

Img_5036  名古屋鉄道は、合併を繰り返して今日の規模となっている。あの名古屋本線も、名古屋と岐阜を結んだ名岐鉄道、そして名古屋と豊橋を結んだ愛知電鉄が合併して誕生したものであり、多くの地方鉄道がどのように誕生したのか、愛知馬車鉄道を筆頭に其々の路線を記しているのもうれしい。

Img_5044  5000系電車。1000系の足回りを流用した現在の5000系と異なり、急行型としてデビューしたのが先代の5000系、いわゆる湘南型とよばれる車体形状を有する車両だ。明治村に走っている路面電車からはじまり、順調に高性能車を導入してゆく歴史、そしてともに発展する都市圏を、通常の市史とは異なる視点から俯瞰できる一冊だ。

HARUNA

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