北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

将来航空自衛隊練習機体系への一考察(第四回):T-4練習機軽攻撃能力付与とその断念

2015-05-21 22:57:36 | 防衛・安全保障
■日本版アルファジェットの現実性
前回からT-4練習機が純粋な練習機として完成した背景を掲載しました、その続き。

T-4練習機の軽攻撃型、実現すればアルファジェットのような航空機となったか、T-4練習機の機外搭載能力は1.3t、アルファジェットは2.5t、少々搭載能力は異なりますが、専用の攻撃機ほどではないにしろ一定の戦力投射は可能となるでしょう。何よりも数が多いわけですから、その分の補正があるわけです。

亜音速機ですので近接航空支援へは当時の超音速機よりも進入経路への自由度は高くなりますし、運動性の高さは超低空侵攻を可能に、複座型が基本の練習機ですので、目標情報と評定や前線航空統制要員との連携も単座よりは有利であると考えられていました、更に搭載量が少なくともクラスター爆弾を使用すれば一発で広範囲を一挙に制圧できました。

更に、航空自衛隊にはF-4やF-1といった対地攻撃能力を、F-4の場合はEJ改まで制限された状態ですが、保持する航空機がある中で、F-1は対艦戦闘、F-4には防空戦闘という重要任務への対応で手いっぱいとなる可能性が高く、近接航空支援及び航空阻止攻撃に専従出来得る航空機というものの意義は性能以上のものがあるといえるやもしれません。

しかし、開発が見合わされた背景には、軽攻撃型を前提とした設計を行うことは、例えば前線飛行場での運用を想定すれば着陸機構一つとっても非常に複雑化してしまいますし、火器管制装置や航法装置の高度化、整備体系の戦闘運用への一体化などを以て機体の製造費用が大きく増大してしまいます、これではかなりの機数を必要とする新練習機体系には合致しない、こうした背景があったわけです。

さて、こうした背景を元に開発されたT-4練習機は運動性と操縦性が良好でブルーインパルスにも採用、更に整備性の高さなどでも知られ、操縦要員以外に整備要員の養成にも大きく寄与しています。これにより200機以上の調達が実現しました。また、操縦技量維持や連絡任務にも活躍している航空機で、練習以外の実用機として機能、原子力事故では集塵線量測定支援にも活躍しました、ね。

この後継機ということで、問題が大きいわけです、すでに生産が終了していますので、再生産を行うことは難しい、対して需要は200機という大きなものですから、毎年20機という大老生産を行っても10年分の需要、国産かライセンス生産を行うか否か、この選択は我が国航空防衛産業の長期的な生産能力の維持にも大きな影響を与えるものです。

T-4は素晴らしい練習機ですが、いくつかの点で限界があるもので、一つは1980年代の戦闘機要員養成を念頭とした航空機です、操縦計器はすべてアナログ方式であり、フライバイワイヤ操縦系統も採用されていません、対して新練習機は2020年代の戦闘機操縦要員の養成がもとめられますので、このあたりの必要性能が違ってくるのです。

北大路機関:はるな
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陸上防衛作戦部隊論(第六回):戦車配備偏重がもたらす重整備基盤の問題

2015-05-20 23:46:36 | 防衛・安全保障
■戦車の訓練と整備基盤
本土運用への最適化、統合機動防衛力を考えた場合、という視点の続き。

結局輸送するとは本土にて戦車を使うということにほかならないのですから、本土での戦車運用研究を北海道の部隊が行わなければなりません、すると業務輸送の範疇ですが平時から転地演習を頻繁に行わなければなりません、これは大きな負担で、結局、北部方面隊を一種の緊急展開部隊のように広い日本列島で使い回す、ということにほかならないのですから負担は大きい。

本土運用に対応する戦術研究は、実際の北海道での演習上にて動いただけではわかりにくく、本土に戦車部隊がなくなる想定なのですから本土の運用研究から戦術の応用を行う基盤もなくなりますので、自分で出向くしかありません。この部分を欠くことは、一種おのぼりさんを有事の際に展開させ、試行錯誤の中で部隊を運用することになりかねません。

訓練基盤維持、本土に戦車部隊がなくなるものの有事の備えとして本土での運用研究を行うということは必然的に本土の演習場に展開する必要性が生じるのですが、先矢は演習場に大きな負担を与えます、雨天後一個中隊が通過するだけで泥濘を構成しますので演習場は戦車道を整備しほかの車両と通行を分けています、この負担をどうするか。

訓練展開する部隊が演習場維持を行うことが望ましいのですが、演習場管理は管区の師団ないし旅団が行います、しかし戦車が通行するだけで負担が大きくなりますが、戦車を廃止する旅団や師団が戦車部隊支援用の施設機材を多く維持する、という構図と負担が果たして合理的なものか、しかしこれを省くと戦車の運用基盤がなくなってしまいます。

そして最後に絶対無視できない問題は、戦車を配備しない地域が生じる事で戦車の修理基盤、特に戦闘において損傷した戦車の改修と修理を行う基盤が喪失する点で、現在は自衛隊が各方面隊の補給処において日常的に行っている整備支援が、戦車が配備されない方面隊が生じる事でこの部分の著しい不均衡が生じかねない、ということです。

重整備基盤は、野戦に際するものと整備施設を要するものがありますが、師団後方支援連隊多旅団後方支援隊での整備以上の重整備は多くの設備を要します、戦車は緊急展開の際に高速輸送する方法はいくつか考えられるのですが、残念ながら補給処の重整備能力を緊急展開する事は容易ではありません。

戦車は直接照準により戦闘を展開するのですから、近接戦闘部隊の宿命として一定以上の戦闘消耗が発生します、もちろん整備能力不足はその先頭消耗の速度を故障などにより増大させることとなりますし、予備の戦車が戦車数縮小により制限される事は、整備需要、その機動展開への需要も相応に増大する事を忘れるべきではないでしょう。

少なくとも本土有事の際には敵は上陸するならば必ず戦車を随伴してきますし、本土に上陸される状況ならば、制海権と絶対航空優勢に相応の支障が来しているところでしょう、そこにこうした負担を加えて戦車を輸送する、そしてそのための基盤を構築すること、不可能ではないでしょうが、合理的選択肢といわれるならば、装甲機動旅団として全国に戦車を少数配備する方が望ましいと考えるところです。

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原子力空母ジョージワシントン 母港横須賀を米本土へ出港、核燃料交換へ

2015-05-19 23:23:23 | 在日米軍
■さよなら!ジョージワシントン
 本日、横須賀を事実上の母港として前方展開する米空母ジョージワシントンがアメリカ本土へ出港しました。

 横須賀を出港したジョージワシントンの飛行甲板には”さようなら”の人文字が描かれ、東京湾にて海上自衛隊の最新ヘリコプター搭載護衛艦いずも、が合流、その全通飛行甲板には”ありがとう ジョージワシントン”を示す人文字が描かれ、帰途を見送りました。

 ジョージワシントンはニミッツ級原子力空母で、従来の通常動力空母キティーホークの後継として2008年に横須賀へ前方展開を開始しました。キティーホークの後継に原子力空母を充てるか、最後の通常動力空母となるジョンFケネディを配備されるかは、当時の米軍再編と前方展開に併せ大きな論議を呼んだことを思い出します。

 原子力空母ロナルドレーガンが続いて横須賀へ配備されるとのこと。横須賀をアメリカ本土へ向け出港したジョージワシントンは、原子力空母の定期整備として最も重要な核燃料交換を含む炉心交換を行うため数年間第一線運用を退きます、このためジョージワシントンに代えロナルドレーガンが日本へ前方展開し、サンディエゴにて乗員の多くが移乗するとのこと。

 海上自衛隊ではヘリコプター搭載護衛艦へ、いせ、ひゅが、等旧国名を当てますが米海軍では航空母艦へ人名を当てます、実はこの関係で日本配備の原子力空母を選定する際に米国防総省部内にて幾つかの討議がありました、当初はハリーSトルーマンの配備が計画されましたが、トルーマン大統領が日本への原爆投下を命じた大統領として、見送る事に。

 カールビンソンも、対日戦準備への海軍力増強を進めた議員という事で断念、セオドアルーズベルトは日露戦争の講和を仲介した事で有名ですがこちらが炉心交換に入らねばならない関係上不可能と、エンタープライズは老朽化が進み過ぎ不適当、そこでジョージワシントンかエイブラハムリンカーンを、となり、日本でも知名度が高いジョージワシントンになった、とのこと。

 原子力空母ロナルドレーガンの日本到着は秋ごろとなる予定で、ロナルドレーガンは東日本大震災における日本救援作戦トモダチ作戦にて主力を担った航空母艦です。中曽根総理との日米関係強化の際の有名な大統領の名を冠した空母の日本前方展開となるわけです。

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防衛省、陸上総隊司令部を朝霞駐屯地へ配置決定、政経中枢との一体性を重視

2015-05-18 23:52:47 | 防衛・安全保障
■陸上総隊、平成29年度設置
 防衛省は陸上自衛隊の戦闘部隊を統括する陸上総隊を新編後、その司令部を朝霞駐屯地へおく方向で決定したとの事です。

 朝霞駐屯地は埼玉県にあり、東部方面総監部等が置かれています。近傍には第1師団司令部等が駐屯する練馬駐屯地があり、東部方面隊は隷下の第1師団と第12旅団及び直轄部隊を以て関東甲信越地方の防衛警備及び災害派遣へあたる陸上自衛隊の方面隊です。

 新編される陸上総隊は、現在の陸上自衛隊が北部方面隊と東北方面隊及び東部方面隊と中部方面隊に西部方面隊と五個の方面隊が全国を五つの管区に分け防衛警備に当たっているのですが、その五つの方面隊へ上部司令部を置き、陸上自衛隊の戦闘部隊を統括指揮する為に創設される事となりました。

 この方式は、航空自衛隊では航空総隊、海上自衛隊では自衛艦隊司令部にあたります。航空自衛隊は航空総隊の隷下に実戦部隊として北部航空方面隊と中部航空方面隊に西部航空方面隊と南西方面航空混成団を置いています。ですから、航空自衛隊の方式に近いといえるかもしれません。

 海上自衛隊は司令部が航空自衛隊の方式とは若干異なります、自衛艦隊隷下に護衛艦隊や航空集団に潜水艦隊等を置き、加えて全国の沿岸部を横須賀地方隊と呉地方隊に佐世保地方隊と舞鶴地方隊及び大湊地方隊とし、有事の際に部隊を配備します方式へ転換しました。

 陸上自衛隊は、今後、統合機動防衛力として、方面隊の管区を超えた機動運用を基本として国土防衛を担う防衛体制へ変革してゆきます、このため、方面隊にくぎっての運用基盤では不十分であり、全国の方面隊を統括する上級司令部を置く必要が出てきました訳です。

 司令部が朝霞駐屯地へ置かれた背景ですが、朝霞駐屯地は首都圏あり政治の中枢との一体性を確保出来る、との理由から選ばれたとの事です。この他に、候補地としては座間駐屯地なども考えられました、例えば航空自衛隊はアメリカ第五空軍司令部の置かれる横田基地へ航空総隊司令部が置かれています、弾道ミサイル防衛などに際し即座に連携をとれる、ということ。

 海上自衛隊も自衛艦隊司令部は横須賀基地に置かれており、アメリカ海軍との連携を重視しています、従って座間駐屯地におきキャンプ座間の在日米陸軍司令部及び陸軍第1軍団前方司令部との連携を重視する選択肢も有り得たわけなのですが、陸上自衛隊はその中枢を朝霞に置くこととしました。

 朝霞駐屯地には中央観閲式を行う朝霞訓練場などが隣接していまして、面積の面での余裕はあります。今後、朝霞駐屯地へは平成27年度より司令部庁舎の建築を開始し、平成29年度をめどに陸上総隊を創設、新設される庁舎へ司令部を置くこととなります。

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現代日本と巡洋艦(第五回):巡洋艦の戦力投射任務と沿海域戦闘艦

2015-05-17 23:14:54 | 防衛・安全保障
■巡洋艦の戦力投射任務と現代艦艇任務
今回の議論は少々巡洋艦というには小型の艦艇を提示しますが、お付き合いいただければ幸い。

やはり我が国の場合、有事の際に実任務へ投入する前提の装備を以て、海賊対処任務や国際貢献に邦人保護任務へ対応可能な多機能艦を建造しなければなりません。しかし、新装備を導入すればその分の後方支援や整備基盤などが必要となり、余りに多機能を盛り込む場合、専用艦として特定任務へ投入する際に多用途機能で他の用途の部分が支障となる可能性も無視してはなりません。

ならば、専用の護衛艦を多用途に用いるとの前提で平時から十分な数をそろえる正攻法が望ましいところなのですが、十分な規模の護衛艦部隊というものが、年々護衛艦に求められる水上戦闘や対潜戦闘能力と個艦防空能力が脅威の増大に併せ高まり、併せて建造費も大きくなっているため、十分な数を、という施策は現実的に難しいことも事実でしょう。

米海軍の沿海域低戦闘艦構想のように敢えて低性能に甘んじ、数を確保する、という施策は逆にリスクがあります。沿海域戦闘艦計画、先日、この沿海域戦闘艦を示すLCSという呼称は両用戦艦艇と誤認するためとの理由からフリゲイトに呼称統合されましたが、高速度と航空運用能力特化に重点を置き、57mm砲と機関砲など最小限の装備とし、任務に応じ装備を積み替える方式は事業評価で低い評価を受けました。

フリーダム級とインディペンデンス級が建造されたLCSは、米海軍の水上戦闘艦が満載排水量9000t前後で推移するなか、最小限の性能を盛り込み3000t前後にとどめ、対水上戦闘や掃海任務などはコンテナ式モジュールを組み替えて対応する、という構想で整備されました、我が国へも再来年にも佐世保基地へ掃海艦の後継へ前方展開させます。

しかし、モジュールを換装する場合、そもそも平時使わないモジュールを陸上で保管する場合にも整備が必要で、モジュールはそれぞれ高価であることから、平時まったくつかわないモジュールを多数調達し整備の上保管し、加えてその操作に熟練した要員を養成し訓練し維持しなければなりません、これを多数部隊で維持することは負担が大きすぎるというもの。

この種の発想はデンマーク海軍が1990年代初頭にスタンフレックス300構想として、300t前後の船体に数カ所区画のモジュールを搭載し、ハープーンミサイルを搭載するミサイル艇、PAP-104掃海器具と曳航式機雷探知装置等を搭載する掃海艇、後部に機雷を搭載する機雷敷設艇、76mm単装砲と近接防護装置及びシースパローミサイルを搭載する哨戒艇、とモジュールを組み替え対応する方式を実施しました。

スタンフレックス300計画は鳴り物入りで導入開始されたのですが、結局、積み替え運用を行いませんでした。有事のさい必要になったとしても積み替えには一旦重整備が可能な母港へ戻らねばなりませんし、要員訓練とモジュールの整備は容易ではない、結局ミサイル艇モジュールを搭載したものはミサイル艇で、掃海艇モジュールを搭載したものは掃海艇で、ほぼ固定化した、とのこと。

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将来航空自衛隊練習機体系への一考察(第三回):T-4練習機開発と軽攻撃機設計の省略背景

2015-05-16 02:05:12 | 先端軍事テクノロジー
■T-4とT-2 練習機体系
T-2練習機、超音速飛行が可能な航空機で、無論指摘はいろいろとある航空機ではありますが補助戦闘機として運用可能でした。

F-1支援戦闘機、ASM-1を搭載した状態では機動性が、特に搭載するアドーアエンジンの推力不足により部隊での評価は、もう少し強力なエンジンが必要とJ-79エンジンの単発型採用などが検討案には上ったとのことですが、アドーアエンジン双発として完成しています。配備開始は1977年、1980年にはASM-1が完成したことで、能力は大きく引き上げられましたが、ここが原型機T-2の能力を端的に示していたといえるところ。

実際、T-2は後期型が補助戦闘機として有事の際、特に配備されていた松島基地がソ連空軍の大陸からの戦闘行動半径圏外にあったことで、特に1980年代から、三沢基地と千歳基地が機能不随に陥った場合に松島基地を拠点として防空戦闘を展開する構想だったとされますが、T-2は本土防空、松島へ接近する爆撃機への迎撃などを想定していたといわれます。

T-2は後期型がAIM-9サイドワインダーミサイルの運用能力を有し、これは脅威対象が中射程のセミアクティヴ誘導方式ミサイルを運用する戦闘機であった場合は対処が限定されますが、爆撃機であれば航空管制の支援を受け有利な条件での防空戦闘が可能です、運用を想定していた松島基地は大陸からの戦術戦闘機脅威の行動圏外ですが、MiG-21程度の機体ならば有効な空対空戦闘を展開出来得たでしょう。

さて、T-4練習機が開発された時代は、初等練習機T-34とT-3,中等練習機にT-33、高等練習機にT-2が運用されていた時代です、ここでT-33の後継に充てる、というもので川崎重工を中心に国産開発されました。正確にはT-33も武装が可能で、軽攻撃機としての能力を有していましたが、T-4練習機は最初から軽攻撃機としての運用を考慮せず完成しました。

こうすることで取得費用を抑えることが出来ましたT-4,実に多用途に運用されています、連絡機として機外搭載の輸送能力を合わせ連絡飛行に用いられることがありますし、航空祭では天候偵察に活躍する事が知られますが、技量維持飛行などの用途に使うことが出来るのはこの費用の安さ、性能を練習という一つに特化した為に他なりません。

一応、1.3tまでの機外搭載量を有していまして、開発段階では軽攻撃機型を検討はしていたとのことです、レーダーは空対空のものは搭載せずとも、赤外線誘導方式のAIM-9系列のものを自衛用に搭載し、500ポンド爆弾を数発搭載し、もしくはクラスター爆弾や70mmロケット弾を搭載して近接航空支援にあてる、という構想、実現すれば独仏共同開発のアルファジェットのようなものになったのでしょうか。


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平成二十七年度五月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2015.05.16-17)

2015-05-15 22:24:20 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
松江城が国宝となりました、国宝四天守閣が五天守閣になる、いやあ時代は動いているものです、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 今週末、最大の自衛隊関連行事は伊丹市千僧駐屯地にて行われます第3師団創設記念行事です。土曜日の予行と日曜日の本番が一般公開され、土曜日の予行では本番の招待席がそのまま一般に開放、手狭な駐屯地ですが伊丹空港に近く戦車や装甲車の躍動感と大気の振動を叩きつける迫力が有名です。

 霞ヶ浦駐屯地創設記念行事、帝国海軍霞ヶ浦航空隊の名高い霞ヶ浦駐屯地では航空学校霞ヶ浦校が置かれ幹部操縦課程飛行教育及び整備教育などを担います、航空教育体系はOH-6Dが全て新型のTH-480に転換され、編隊飛行が期待できるところ、またAH-64D戦闘ヘリコプターの飛行展示なども期待できるでしょう。

 新発田駐屯地創設記念行事、新潟県新発田市に位置するこの駐屯地は新発田城跡地に位置する事で知られ、駐屯地の一部にその情景が再現されています、第12旅団隷下の第30普通科連隊が駐屯しています、駐屯地祭は日曜日ですが明日の土曜日には新発田市本町交差点にて1400時から市街パレードが行われますので、是非どうぞ。

 高知駐屯地祭、高知県念願の普通科連隊駐屯が実現しました、第50普通科連隊の駐屯地で、2010年に沿岸部から高台に駐屯地が移転、従来は第14施設中隊の駐屯地でしたが、施設中隊が徳島駐屯地へ移駐し現在は普通科連隊の駐屯地となっています、駐屯地造成中に近傍の運動公園にて行事を行ったほどの待望の連隊駐屯で、ここまで愛される連隊というのも素晴らしいですね。
■駐屯地祭・基地祭・航空祭
・5月17日:霞ヶ浦駐屯地創設記念行事・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/eae/eadep/
・5月16・17日:新発田駐屯地創設記念行事・・・http://www.mod.go.jp/pco/niigata/HP/index.html
・5月16・17日:第3師団創設記念行事千僧駐屯地祭・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/3d/
・5月17日:高地駐屯地創設記念行事・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/14b/butaisyoukai/kakubutai/4_50i/
■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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日米南シナ海哨戒活動で協同を検討、東南アジア諸国との連携強化も視野

2015-05-14 23:52:35 | 防衛・安全保障
■海洋自由原則へ日米協力 
 ロイター通信などによれば、南シナ海において日米が哨戒任務等において協同を検討している、とのこと。

 南シナ海は北東アジア地域と東南アジア地域の中間にあり、多くの国々の島嶼部が連なる海域ですが、現在、中国が南沙諸島紛争を筆頭にその海域を事実上自国領域へ編入し、その占有への行動と周辺国への海軍力を用いた示威行動が拡大しており、刻々とその緊張度合が高まっています。

 日米の共同について具体的には、日米の防衛当局間では我が国の安全保障関係法整備を前提として、哨戒機による洋上哨戒等を展開するものが想定されているとのこと。更に、東南アジア諸国の哨戒活動を支援する形ともなり、併せて友好国の航空基地を海上自衛隊機などが補給や整備用に使用する検討事項の可能性も示唆されたもよう。

 海上自衛隊は昨日、フィリピン海軍との合同演習を実施し我が国では大きくは報じられませんがフィリピン国内ではトップニュースとして報じられ、特に自国領域の一部を中国へ不法占拠されているフィリピンでは海軍力の抜本的強化が進められており、アジア地域最大規模の海上防衛力を有する海上自衛隊との連携強化に意欲的です。

 併せて、近年海上自衛隊の練習艦隊による東南アジアへの外洋練習航海や遠洋練習航海の親善訪問が訪問国での歓迎行事が大きく報じられ、信頼醸成と災害対処を主眼としたパシフィックパートナーシップ演習では実際に演習実地国であるヴェトナムがその直前まで続いた中国公船による不法採掘行動等が自衛艦の往来により停止した事例もありました。

 南シナ海は我が国にとり重要なシーレーンでもあります、重要なシーレーンとしてマラッカ海峡の石油タンカー交通が提示されますが、マラッカ海峡だけであれば石油価格の上昇と引き換えにより豪州大陸やインドネシア南方海域を迂回する事は可能です、しかし南シナ海は東南アジアと北東アジア地域を結ぶ唯一の海域であり、この海域の海洋自由原則は我が国と東南アジア諸国の非常に大きな関心事です。

 今回必要とされるのは、中国の排除ではなく海洋自由原則の明示であり、海洋占有は許されないという原則の堅持を示すことです。ここ数年間、この地域において戦前より海洋自由に関する諸国を支援し続けてきたアメリカが積極的行動を避けている事から、力の空白を醸成してしまった事は否定できません。

 一方、なぜ今か、という視点ですが南シナ海では南沙諸島の環礁など浅瀬を埋め立て基地化工事が数か所で進められており、今後比較的短期間のうちにレーダーサイトや滑走路へ戦闘機部隊が展開する事で排他的行動を採りうる態勢が確立してゆくことは必至の状況であり、ここ数年間の軍事力の不均衡と空白が、一線を超える前に、というみかたがあるのでしょう。

 なお、南シナ海では既に2012年の段階でインド海軍が横須賀基地を親善訪問した際、東南アジア諸国との協力による哨戒任務への海軍部隊派遣の検討を発表しています。その後の親善訪問は定期的に続いていますが、この行動が実現する場合、インド海軍との連携、他の東南アジア諸国海軍との協同も視野に含められると考えられます。

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陸上防衛作戦部隊論(第五回):戦車の戦略輸送の高い難易度と海空自衛隊の負担増

2015-05-13 23:36:12 | 防衛・安全保障
■戦車少数と配備地域の偏重は負担増
前回までに戦車の運用基盤喪失に関する不安要素を示しましたが、今回はもう一つの視点を。

防衛省は統合機動防衛力として、必要な際には戦車を北海道から緊急展開させる方針を示していますが、これは逆に負担を増大させます、幾つか事例がありますが、作戦輸送能力、本土運用への最適化、訓練基盤維持などが大きなところです。戦車縮小が戦車を必要とする脅威の消滅ではなく減退であり、展開させる必要があるためこうした問題が生じるのですが。

作戦輸送能力、有事の際残念ながら自衛隊の戦車は狭軌鉄道輸送には大きすぎるため、トレーラー輸送か輸送艦による輸送が不可欠です、この点で海上輸送は鉄道輸送に並び中隊規模の部隊を一挙に輸送できる理想的な装備ですが、海上自衛隊は輸送任務を業務輸送と作戦輸送に区分しているのです、平時の輸送が業務輸送、有事には作戦輸送、と。

海上自衛隊が作戦輸送を行うには、輸送艦が必要となります。この点北海道から緊急展開を行うには、例えばいっこ戦車連隊戦闘団を輸送する、と仮定しますと、戦車は輸送艦おおすみ型一隻に10両から12両までしか搭載できませんので、自走榴弾砲大隊と自走高射機関砲中隊に装甲化された二個普通科中隊を含む戦車連隊戦闘団を輸送するには、おおすみ型輸送艦7隻から9隻が必要となります。

これだけの輸送艦を即座に稼働できる体制を構築すれば、どんな事態にも、南海トラフ地震にでも万全といえるところですが、半数が即応体制におく稼働率として輸送艦は14隻から18隻が必要となり、海上自衛隊はこの負担に耐えられません、輸送艦一隻は350億円、エアクッション揚陸艇が90億円、ですので海上自衛隊は戦車70両分の費用を要する輸送艦を十数隻増強しなければ統合機動防衛力は達せいできないのです。

米軍では事前集積船を準備し、統合輸送の困難へ対応するべく紛争地の近傍へ重装備や航空機を集積しています。大型貨物船に兵器のみ搭載し、有事の際には兵員のみ輸送機か徴用旅客機にて空輸するのです、ロシア軍でも事前集積船ではなく陸上格納庫へ余剰兵器を集積し、有事の際に人員のみ展開させる方策を研究中とのこと。

自衛隊は例えば東千歳駐屯地から九州南部の国分駐屯地や川内駐屯地まで1600kmの距離を隔てており、これはNATO域内に換算すればロンドンローマ間よりも距離があり、戦略輸送を行う前に事前集積か全国配備の方が現実的ともいえるやもしれません、もっとも、本論は新防衛大綱の戦車定数300両を前提としており、この定数の数値外に事前集積用車両数を含むには無理がありますので、この案は現実的ではありません。

予算は結局防衛省で一元化されるので、無理をするよりも、各方面隊に戦車を残し、訓練輸送として平時の業務輸送、平時の輸送では空襲や潜水艦の攻撃はありませんので、訓練展開するほうがまだ負担はありません。また輸送艦を多く整備しますと、その護衛に護衛艦が必要となりますので、ただでさえ足りない護衛艦が更に不足しかねません。作戦輸送の負担を考えますと、本土に戦車をおく方がよいでしょう。

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CV-22オスプレイ可動翼機、2017年より10機がアメリカ空軍横田基地へ配備開始

2015-05-12 23:44:38 | 国際・政治
■沖縄負担軽減の政治的象徴へ
 アメリカ国防総省は、アメリカ空軍の新型特殊戦航空機CV-22を2017年より横田基地へ配備する発表を行いました。

 現在、沖縄の普天間基地へ米海兵隊のMV-22可動翼機24機が配備されていますが、今回新たに配備される発表が行われた機体は空軍向けのCV-22可動翼機で特殊作戦航空機として運用される機体で、2017年に3機が配備され2020年までに10機が配備されることとなります。

 これは基地負担軽減の省庁となり得るやもしれません、むろん軍事的というよりも政治的な意味として沖縄の基地負担軽減に関する大きな政治的象徴という意味ですが。何故ならば2020年にはV-22系統、所謂オスプレイの配備数が沖縄と本土で機数が逆転する為です。

 沖縄は普天間基地の第36海兵航空群が第262海兵中型可動翼機飛行隊と第265中型可動翼機飛行隊の24機のみ、対して横田基地へ10機が配備され、佐賀空港へ新設される新駐屯地へ陸上自衛隊水陸機動団支援用のV-22が17機配備されるので、沖縄24機に対し本土27機、と逆転する、これこそ沖縄の基地負担軽減の象徴といえるでしょう。

 CV-22は現在空軍が戦闘捜索救難用に運用するHH-60特殊戦ヘリコプター、愛称ペイブホークの後継機として配備される航空機です。HH-60は航空自衛隊や海上自衛隊も救難用に運用するUH-60と同型機ですが、米空軍では戦場へ友軍機が不時着若しくは撃墜された場合に、脅威状況下へ敵を排除し乗員救出へ向かう戦闘捜索救難へ航空機を運用しています、この為に特殊戦用の機体、ということ。

 HH-60の後継機であるCV-22を横田基地へ配備する事は、沖縄の基地負担軽減を最大限配慮したものです、こういいますのもHH-60は嘉手納基地の第18航空団所属であり、横田基地の第374輸送航空団の機体ではありません、横田基地にはVIP輸送へUH-1を運用する第459輸送飛行隊も展開していますが、戦闘救難は戦闘機を運用する第18航空団の任務であり、嘉手納基地へ配備されるべき機体を横田基地へ配備する事となったかたち。

 嘉手納基地から離れた地域へ戦闘救難任務に当たる特殊作戦ヘリコプターを配備する事への不具合ですが、まず、CV-22の戦闘行動半径が非常に広い点、そして戦闘救難任務の想定を行う必要がない平時の救難任務については航空自衛隊の那覇救難隊がUH-60JとU-125を運用しており自衛隊により対応できる点、更に嘉手納基地の第18航空団と並び三沢基地にF-16を運用する第35戦闘航空団があり、その作戦管区は日本全土を含めている為沖縄ではなく本州に展開したとしても対応できる、という意味もあるでしょう。

北大路機関:はるな
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