北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

熊本地震九州震災、日奈久断層帯八代海区間での相次ぐ強震と震源南下による影響長期化懸念

2016-04-19 22:04:40 | 防災・災害派遣
■熊本地震,日奈久断層帯南下
 熊本地震、震度五の強震がこの24時間で相次ぎ、本震後の余震か、日奈久断層帯を南下する震源がまだ活動していない断層帯へ影響を及ぼしているのか。

 18日2041時ごろ、熊本県と大分県で震度5強の揺れを観測する地震が発生、震度五強の地震は16日に発生した熊本県阿蘇地方を震源とする0355時ごろの最大震度6強の地震を最後に、ここ数十時間沈静していましたので、専門家の次の活断層への影響が示唆されつつ、このまま収まってくれたならば、という願いをあっさり打ち砕きました、阿蘇地方を震源とする地震は熊本県阿蘇市と産山村に大分県竹田市という地域へ震度五強の揺れを観測する事となりました、マグニチュードは5.8、震源は9kmと浅く大きな揺れとなりました。

 更なる震度五強の地震は本日1752時、八代市を震源として発生しました。そして先ほど2047時にも八代市を震源とする震度五弱の地震が発生しています。気象庁は震源が南下しているとして、八代市付近の活断層活性化の危険性を指摘していましたが、今回の地震発生は不安ではあるものの、最大の不安は確実に発生する事だけは地殻の弾性限界から判明しているものの、発生日時は起きるまで分からない、という部分です、八代市の断層帯はマグニチュード7.5規模の地震を誘発する可能性が指摘され、発生すれば熊本地震の本震となる可能性も高いとのこと。

 震度五強の強震が数十時間ぶりに発生しました熊本県産山村の全域と阿蘇市の一部地域は、山岳崩壊や家屋倒壊の可能性から避難指示や避難勧告を発令しました。地震活動がおさまらない事を受けて、佐賀県や鹿児島県への広域避難の検討、識者などは様々なところで必要性を提示しています、視点としては児童生徒と被災地での生業に従事しなければならない条件を除き、広域避難、具体的には疎開を、検討しなければ、ここまで長期的に余震と遅れた本震と震源拡大には対応できないのではないか、と考える次第です。

 影響は長期化か。そして今週末も被災地に新たな被害の懸念となる悪天候の影響、天候は崩れるようです、気象庁によれば21日にまとまった雨が降り、NHK報道によれば、熊本県と長崎県、それに山口県で100ミリから150ミリ、大分県と福岡県、それに佐賀県で50ミリから100ミリと予想されている、とのこと。今回、熊本県の地震災害の特色は、姶良火山と加久藤火山に阿蘇山の火山性堆積物で構成されている地形となっており、火山性泥流ほどではありませんが、土砂災害は地震後亀裂が生じる事で危険性が高まる事は忘れてはなりません。火山地質と1週間以上前の雨で大規模崩壊の可能性、との報道も。これも一種のラハール災害、という事になるのでしょうか、地震により亀裂が入った台地や山頂部分に時間をかけ雨水が浸透し、深層崩壊に近い大規模な土砂災害を発生させる可能性があるとの事で、ラハール地形を上空から概略でも把握し、平時の土砂災害危険情報とは異なる大規模震災時に対応した地震対処の枠組も必要ではないか、と考えます。

 ここからは、影響の長期化について、二次被害を阻止する処方箋を提示します。この災害と人命救助をどの程度重要視するか、という価値観によるものですが、例えば九州には、ネットワークシステムを通じ昼夜全天候下で長距離監視を行い、上級司令部に情報を伝送可能な10式戦車が配備されていますし、移動監視隊の広域監視装置を用いれば、地滑りなどを、早期警戒情報を発令する事は可能です、災害に戦車、といいますと雲仙普賢岳火山災害で実際に出動した事例がありますので、使える装備を使わない事は義務の放棄です、南阿蘇など土砂災害の情報を早期に把握しなければ被災地に次の被害と捜索活動に危険を及ぼす状況へは、投入すべきでしょう。

 続く余震、安全判定完了の建物の4割以上が「倒壊の危険」 熊本市,厳しい判断ですが、併せて安全とされましたよく割近い建物の方も今後の余震がどこまで続くかにより数値は変わってくると思うのですよね、併せて余震がおさまった場合には、この判定も左右される事もあるでしょうし、補強を応急的に行えば倒壊を防ぐ可能性はあるのか、これも出来ない程の状況であるのか、地震活動は余震なのか、次に本震が来るのか、という状況ですので、現時点での判断はある意味不確定要素が大きいのではないか、と。

 熊本空港、暫定再開というべきでしょうか、朗報です。ただ、保安検査場設備が復旧していない為、手荷物検査が不可能となったことから、着陸のみ、帰路は鹿児島空港などへ自力で移動するか、不安定な鹿児島本線を経由して博多まででなければなりません。ただ、中央観閲式等での移動式金属探知機や可搬式X線検査装置を持ち込めば、普通に復旧する部分ですので、国土交通省が空港保安検査を代行し、手荷物検査を行う、という事は出来ないものなのか考えさせられるところです、空港の発着設備や滑走路が損傷しているのではなく、手荷物検査が出来ないので離陸できない、という発想、災害時という有事の状況下、これでいいのか、と考えさせられるところ。なお、午後から空港ターミナルビルが再開、この問題は解消されました。

 九州新幹線部分運転再開、明日から鹿児島中央と新水俣の間で運転を再開するとの事、八代から新水俣までは肥薩おれんじ鉄道の旧鹿児島本線が運行中で、これにより部分的ではありますが、日向灘大回りでの九州南北交通が再開する事となります、新水俣と鹿児島中央は94.8kmの距離で、九州新幹線288.8kmの一部で象徴的との印象はありますが、九州新幹線、熊本地震発災後初の営業運転再開となります。

 玄海原発、18日夜の地震でも異常なく運用できるようです、しかし、地震が続く中何故止めないのか、それは南九州の深刻な発電所の不足があるようです、鹿児島県川内発電所が重油方式の100万kW発電、これ以外南九州には火力発電所は無く、熊本県天草郡に苓北発電所があり石炭方式により140万kWの発電が可能なのですが、天草郡は離島、となっているわけですね。水力発電所も小丸川発電所という九州最大の水力発電所はあるのですが宮崎県側にあり、この発電力も玄海原発にはおよびません。

 北九州には新小倉発電所、戸畑共同火力発電所、苅田発電所、豊前発電所、新大分発電所、相浦発電所、大分共同発電所、とあるのですが送電網は北九州と南九州を結ぶ変電所が熊本空港から数kmの場所にある熊本変電所、地震の被害を受ければ、川内原発の二基の原子炉の発電能力が無ければ、南九州全域が大規模な停電となる危惧があるのです、しかし、脱原発を掲げた場合でも発電能力には地域偏差がありますので、日本全体の発電能力だけで計算するのではなく、代替電源開発を次の震災も含めて慎重に計画しなければならない、突き付けられた課題といえるでしょう。

 JR貨物が救援物資の無償輸送支援を開始するとの事、災害救援列車は貨物駅までではなく、その貨物駅から被災地までの輸送も対応してくれるとの事で、被災地との調整をWebや電話等により行えば、個人でも12フィートコンテナ分の救援物資を提供できる場合、運べる、との事です。ただ、12フィートコンテナ分の資材となりますと、大きくなりますので、市町村単位で物資集積センターを構築し持ち寄った物資を輸送してもらう、という施策も必要でしょう。農相の発言として「被災地支援の食料倍増への対応急ぐ」、とのこと。昔の様にOH-6観測ヘリコプターで米袋を積めるだけ搭載して、現地で井戸水と薪の調理器具を使って飯盒炊爨、というわけにはいかないようでして、難しいようです。他方、政府としては、指定協力企業を募って、主要道路不通区間や電力供給再開への財政支援等に重点を居た方が、インフラ供給能力は民間の方が政府が想定するよりも上の水準の供給が可能ですので、このあたりの対応が重要では、と。

 特に東日本大震災と比較し道路網の再開への所要時間の大きさが気になりまして、東日本大震災では急ぎ過ぎた事で平時の感覚では談合にあたる工事業者の調整が問題となりましたので、今後は、大規模災害などでは政府が非常事態宣言を発令する事で、公正手続きに重点を置くことができる一方煩雑な事務手続きを必要とする平時の行政手法を、平時では超法規措置となるほどの対処法が可能となるよう、平時と有事の切替を行う施策が、必要になっているのではないかな、と考えます。この背景に、避難所へ必要な物資等を集約するシステムが不十分であり、昔ながらの紙に手書きの必要情報を口頭と電話で要求する、この為に情報の収集に時間がかかりますので、物資調整の指揮所を通じて必要な物資を集約し、搬送し現地集積所に到達する頃にはニーズが変化している、という、一昔の状況と変わっていません、まず、避難所を設営する主体を明確化し、責任者と必要物資情報を即座に伝送し共有できる、いわば、BMSバトルマネジメントシステムの災害版を、自治体、総務省、農水省、何れかの災害主管官庁が整備する必要を痛感しますね。

 誤報と流言もSNSにて目立っています。SNSなど民間での震災関連情報は、公的機関からの情報公開が不十分であるからこそ生じるものです、こういいますのも、情報が充分整理され公開されているならば不正確な情報は情報需要の必要規格を満たさない不確定要素情報として自然淘汰されるわけですが、炊き出しや物資配給情報は、一元管理する主体が不明確であるからこそ、末端情報が伝聞の形で広がり、混乱を生んでいるというべきでしょう。無論、情報不充分を背景として個々人の情報発信は、情報不充分の状況下に追加する支援の形で行われているものであり、通信手段が存在する以上抑制する事は逆に社会不安を醸成しますので、情報の一元管理を行い、支援物資集積情報、配給情報と移動管理状況を広範にWeb等を通じ権威ある指揮中枢が発表するほか、誤情報を払拭する方法はありません。

 避難所について。どうも配給の方法が単純な長蛇の列になっている、自治体では大型行事の経験者を避難所管理においていないのではないか、避難所責任者には自衛隊の駐屯地祭のような御人数を整理する経験者が少ないのではないか。支援の食料を避難所へ直接配送 農林水産相の決定が伝えられます。さて、避難所の食糧配給、報道される長蛇の列を見ますと、整理券を配布し時間を区切って配給する、という、いわば駐屯地祭の戦車体験試乗整理券のような方式での配給を検討してもいいのではないか、と考えます。特に、食事の配給予定数は、自衛隊の野外調理器具では一基当たり毎時200食が調理可能となっていまして、菓子パンやカップめんなど加給食も予定数は数値化できるはずです、駐屯地祭にて実績がある整理券方式を多用し、確実に配布できる体制を明示する事で、長時間の行列を回避する方策が必要です。

 物流麻痺、被災地への救援物資搬送が遅れている、物流管理や必要物資の数量要求が要求集約の時点で遅延している、ということの現れですが、避難所の運営主体が明確化しておらず、仮に避難所に責任者がいた場合でも、避難所への補給基盤の構造を概略だけでも理解していない場合があり、手書きからFAXに音声電話からデータ通信まで多様なフォーマットで情報が氾濫している為管理できておらず、責任者が責任を果たせない状態が生じている状況です。この場合、全国統一規格の物流フォーマットは民間企業と自衛隊には整備されているものの、実際のところ避難所の管理責任者は、これを活かせていない。

 防衛省は2007年の防衛庁時代に三菱電機の協力を受けた、RFID電子タグ方式を採用しました国際協力任務用の電子タグ利活用検討実証実験を関東補給処にて実施しているとのことです、これは無線周波数ID方式の物流遠隔管理方式で、ICチップを利用しており、ICOCAなど鉄道用IC乗車券が民生利用で近いものです、ICOCAは改札で1cmまで背金させ読み取りますが、物流用のRFIDタグはUHF帯タグを追加する事で5m程度離れていても読み取りが可能です。二次元バーコード方式を採用する場合、物流管理に中央統制が必要となりますが電子タグと情報端末を利用すれば、クラウド化した補給が可能、となる。

 電子タグの実証実験は霞ヶ浦の関東補給処を基点に入間基地、横須賀基地、硫黄島航空基地を利用し実施され2007年の時点で防衛省はコンテナ単位、パレットと梱包、個品単位での物流管理は二次元バーコード方式を採用しています。RFID電子タグ方式は、聞くところでは意外なほどに普及しているとのことで、この度合は主観要素が加わるものですが、防衛省がサイバー戦専門部隊創設など、基盤を構築する背景にはRFID電子タグ方式でのインターネット回線利用が不可欠になる為という背景があるとされ、自衛隊の後方支援分野は一般に理解されるよりも進んでいるといえるでしょう。この種の基盤を、いわば自治体が完全に依存する形を採ってでも活用する運用が求められます。

 一方、自衛隊の給水車両からの水を生活用水に用いる事例があるようです、これは報道などで洗い物などの生活用水に配給された10lパック水を利用している様子が紹介されました、自衛隊が給水する水は、浄水セット逆浸透型を用いて、長毛ろ過機と限外濾過器を経て逆浸透濾過器により完全に浄水した上で水質検査を行い、滅菌剤を添加し安全を確認した飲料水です、被災者一人当たりの飲料水としての必要総量を計算の上で浄水し、供給体制を構築していますので、飲料水は人や動物の飲用以外には使わないよう、周知広報すべきです。

 避難所支所、こうした柔軟な発想も必要でしょう。避難が長期する中で地震が続く現状を見ますと鉄道コンテナや船舶用コンテナを自治体化国が応急借用若しくは確保し、住宅街で倒壊の可能性は最初のハンテ憂いではないものの損傷している家屋からの応急避難所として活用する施策を考えるべきでは、と。こういいますのも、「耐震基準は連続した大地震を想定せず」、NHKにて東京大学和田名誉教授の意見です、家財道具の運びだしなど要注意家屋での作業には十分すぎる注意を提唱していますが、自治体としては可能であれば自治会単位で不要船舶用コンテナなどを確保し、避難所支所のような要注意家屋での居住を支援する住宅街の応急避難所を配置する、熊本市街中心部など人口密集地では難しい選択肢ですが益城町や南阿蘇村と熊本市北区など郊外では検討の余地があるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
(本記事に掲載された災害情報は暫定的に収集した情報であり、最新情報は順次追記される)
(本記事引用時は記事は災害時の情報であることを留意し、掲載時の事実にのみ基づく速報情報であることを特に注意されたい)
(情報は適宜第二北大路機関により更新する)
第二北大路機関:http://harunakurama.blog10.fc2.com/
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする