北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

熊本地震、九州熊本・阿蘇・大分震災 日奈久断層帯八代海区間での地震誘発危惧と復旧挑戦

2016-04-18 22:29:57 | 防災・災害派遣
■熊本地震,活発な連鎖地震継続
 熊本地震、先ほどほんの二時間ほど前に震度五強の地震が阿蘇で発生しましたが、九州熊本・阿蘇・大分震災 日奈久断層帯八代海区間での地震誘発危惧と復旧挑戦について。

 熊本地震、この影響を受け次の大地震を誘発する恐れがあるのは、日奈久断層帯の日奈久区間と八代海区間が今回まだ動いていないとされ、特に八代海区間は熊本市南方の都市部で人口12万7000、新幹線も停車する八代市や人口62000の宇城市といった人口密集地域であることから、警戒が必要です。特に厳しいのは、動く可能性が高い、といわれますと、この地域での復旧復興活動そのものが停滞してしまうわけで、この波及効果の方は復興への影響として大きいといえるかもしれません。

 熊本城、この被災が熊本の厳しい現状を端的に示しています。ただ、大きな被害を受けていますが、石垣が崩壊している櫓は加藤清正の時代から今に至る宇土櫓 ではなく、飯田丸五階櫓、2005年に再建されたもの、近年に入り再建されたものですので、まだ、予算さえ確保出来れば時間はかかりますものの修復は可能とあると考えられます。一方、熊本城そのものは、明治熊本地震、西南戦争、陸軍第六師団司令部設置、アメリカ軍進駐、台風被害により幾度も破損していますが、補修を繰り返し、今に至ります、熊本城が熊本を象徴する建物であり、県民がいる限り、必ず修復される事でしょう。

 益城町の建物62% 倒壊のおそれある「危険」の判定、NHK報道です、余震活動は収まりつつあるものの繰り返し大地震が波状的に襲う状況、市街地の建物は一回程度の震度六強や震度七に十分耐える強度を有していたとしても、短期間で繰り返し烈震や激震が建造物に被害を与える、というものは、現在の建築基準法や耐震基準のもとでは十分配慮しているとは言い切れず、いったん安全認定を受けた場合でも、続く余震が別の危険を与える可能性も無視できないでしょう。

 熊本市の避難所でノロウイルス患者 衛生状態悪化、避難所での過酷な状況、東日本大震災でも問題となりましたが、熊本地震では、東北地方と九州地方、三月上旬と四月中旬、という時期や気候の差が感染症について問題が生じる事を端的に示しています、また、避難所の置かれる離隔距離、避難者の密度という視点からも、かなり過酷な状況であり、それだけではなく、地震津波が多いとする三陸地方と九州地方の防災体制、準備基板なども異なっている、という実情を鑑みれば、避難所の環境整備はかなり憂慮すべきものです。

 官房長官 被災者への90万食配布を倍増するよう指示、菅官房長官は被災者に配布する食料について停電断水による生活インフラの破綻が大きな課題となっており、避難所に入れず自宅駐車場などへの避難者には、炊事が出来ない状況があるとのことから被災者への食事配布計画を現在の90万食から倍増させるよう指示したとの事です。高速道路と鉄道輸送網が、熊本を中心に北九州と南九州で分断されている状況で、実は東日本大震災の高速道路網復旧状況よりも、懸念すべき状況です。東日本大震災では日本海側の交通網が無事であった為、櫛の歯作戦として日本海側から太平洋側へ交通インフラをフック打させる行動が可能でしたが、九州では物流が滞っており、被災地では食事にも自宅避難者は事欠く状況となっています。

 米軍オスプレイ機 被災地支援で展開です、MV-22、フェリー航続距離は3500kmkm、ペイロード2721kgの状態で垂直離陸により飛行する場合は1295kmの航続距離となっています、最大の輸送を行う場合は4536kg搭載で垂直離陸の場合で648km、とのこと。海兵隊では作戦行動半径を685kmとしているようですね、すると、岩国航空基地から熊本空港高遊原分屯地まで直線距離は206kmですので、充分行動半径に含まれています。他方、普天間から熊本へは870kmの距離を隔てています。

 MV-22,鹿児島であれば640kmですので作戦行動半径に含まれるのですが。航空基地を基点とした場合、MV-22は短距離滑走により航続距離を延伸する事が可能でして、短距離滑走により重貨物を輸送、被災地へは垂直離着陸し貨物を展開、空荷若しくは負傷者などを収容し離陸、というかたちで往復飛行が可能です。輸送力を考えますと、CH-53のほうがMV-22の倍という空輸能力がありますし、鹿屋航空基地へKC-130とともに幾度か訓練展開していますから、便利だったのかな、と。

 今回展開のMV-22は、フィリピンに訓練展開中の機体が4機、一旦普天間飛行場と岩国航空基地を経由し高遊原入りしています、高遊原から南阿蘇村までは40km程度、これならば吊下げ空輸力も大きなCH-53で一挙に運んでしまった方が、ともうのですが、MV-22がフィリピンから再展開、といいますので、この長距離の転進はMV-22の速度と航続距離があってこそのもの、というべきでしょう。

 地震影響の土砂災害 熊本中心に5県で71か所、この土砂災害は一般道での交通を寸断します、鉄道と高速道路が不通となり一部の港湾が液状化により使用出来ない、となりますと頼みの綱は空路と一般道となります、空路の輸送には限界がありますので、当面はRORO船と一般道頼みとなるわけですが、土砂災害により、辛うじてう回路と代替路となっている一般道路網を麻痺させるならば、かなり懸念すべき状況となるかもしれません。

 九州の物流はどの程度、復旧しているのかは不明ですが、鹿児島本線が本日復旧したとの報道も束の間、熊本駅構内での不具合により再度運転見合わせ、となったようです。冗談抜きで日豊本線経由の日向方面迂回経路を重点運行すべきですが、肥薩おれんじ鉄道線も八代駅と隣の肥後高田駅間で運休となっているのですね。肥薩おれんじ鉄道線の八代駅と 川内駅間116.9kmを経由すれば川内駅から鹿児島中央駅へ乗り入れられます。

 JRでの移動は八代市内の肥薩おれんじ鉄道肥後高田駅まで移動すれば、鉄道で鹿児島中央駅と宮崎駅に大分駅を経て博多駅までは移動可能です、交流電化路線で、もともと肥薩おれんじ鉄道は鹿児島本線なのですから、国土交通省が指導して乗り入れを行えば、普通に大回りでの運行は可能でしょう、他方、第三セクター路線への旅客鉄道車両乗り入れ緊急措置を国土交通省は平時から実績を積んでおかなければ、北海道新幹線や北陸新幹線開通による第三セクター鉄道路線の災害時利用でも課題を抱えたまま放置、ということになりかねません。

 熊本駅、安全点検終り鹿児島本線運行再開、とのこと。これでようやく今度こそ鹿児島本線にて博多まで移動できることとなりまして、この上で鹿児島本線旧線というべき第三セクターで九州新幹線開通位に経営分離された肥薩オレンジ鉄道線に乗り入れれば、川内経由で西鹿児島、つまり鹿児島中央と博多の直通運転が可能となります、他方、熊本駅ですが駅舎のエントランス付近の柱に亀裂が、といいますが、新幹線口の方から改札を通して在来線ホームに利用者を通行させる、という事は出来なかったのでしょうか、ね、新幹線ホームは裏側にありまして、臨時改札口を設ければ対応可能です、もしくは熊本駅は折り返し基点として客扱いと乗降を隣の上熊本駅空、とする事も出来たはずなのですよね、なにより、この駅舎点検で鹿児島本線が更に五時間半止まった訳ですので、柔軟な対応を行う事は輸送機関という使命を考えるならば必要だと考えます。

 熊本阿蘇の道路状況改善 国道57号のう回路開通、NHK報道です。48時間で南阿蘇方面への国道復旧、ですか。これにより県内の被災地域全体への孤立が漸く解除される見通しです、他方、物流基盤全体が麻痺している状況ですので、熊本市周辺の交通マヒが買い越しなければ孤立は回避されているものの、生鮮食品などの流通、続いて生活用品や燃料などの必要物資の供給体制は滞ったままで、復旧から復興への端緒がつかめません。被災地で給油待ちの列に割り込む 関テレの中継車、NHK報道です。

 さて、今回も我が国の公共心の高さと云いますか混乱は起きていません、ただし、です。視ていない、と思ってもみているものですよ、という一例です。そもそもロジスティクスが不充分の段階で中継車を無理に送っている事が間違いなのですよね。現地中継が必要ならば所要の期間中に必要な電源を確保し展開するべきで、不可能であれば、事前伝送した写真と中継点をおく無線機を併用し、現地からの音声だけを送ればいいわけです、出来ない事を無理に行うからこそ、こうした状況になる訳ですね。

 ガソリンスタンド100店舗以上休止 熊本県内、休業している店舗はNHK報道によれば減ってはいるようですが、物流が停滞していますね、燃料輸送車の手配に時間を要しているようですが、道路が復旧しなければこの種の問題はいつまでたっても解決しないと共に、避難所不足から車中泊を行う屋外避難者も多数いまして、暖房や冷房のためにエンジンを稼働させることで一定の燃料が消費されます、また、被災しようと仕事に行く必要があります、この為にも燃料は必要です。

 朗報は熊本空港の再開でしょう。熊本空港 あす19日から運航再開へ、ようやく熊本空港が再開という報道です、九州新幹線の復旧が予想以上に時間を要する中、空港が再開するという点はかなり大きな交通の改善です、熊本空港は益城町にありますので最も被害が大きかった地域です、空港は滑走路などの設備は損傷しておらず自衛隊の高遊原分屯地と併せ24時間での輸送拠点となていましたが、ターミナルビルの損傷により運行再開まで時間を要していました。

 避難所の体育館22か所使用禁止に 熊本市、こちらもNHK報道です。避難所の不足が報じられる中ではあるのですが、その避難所の一部が使用不能になるという輪をかけて厳しい状況となってきました、体育館部分が避難所として用いられているとのことですが、一方、校舎部分を避難所として用いている場合は、校舎の被害状況調査を行う必要が出てきます。こうした状況をみますと、多少無駄という批判が寄せられる覚悟で、空き教室を見込んで予め多めの部屋を学校施設の建設時には盛り込む必要が、今後は出てきますね。

 熊本県内のスーパー・コンビニなどの営業状況、ですが、可能な限り営業を行っているようです、イオンは全店舗で屋外を含め営業、ロッキー、ゆめマート、サンリブ、西友、等50件ほどが営業します、ただ、商品が品切れとなった際には早めの閉店もあるといいます。この物流の停滞ぶりを見ますと、海上自衛隊に大戦中のLST-1級戦車揚陸艦と同程度の輸送艦を50隻程度配備させ、予備海上自衛官主体に年間5~10日くらい平時は維持のために運用し、こうした大規模な震災に予備役から現役に復帰させ、管理輸送任務能力を基本とした輸送支援に充てる、という方策は必要かもしれません。

 LST-1、満載排水量4050tと輸送艦あつみ型と同程度、速力はもっと低く使いにくい船ではありますがトラック39両と軽車両6両を同時に輸送可能です、アメリカ陸軍にはフランクSベッソン級輸送艦としてLST方式で同程度の輸送艦もありまして、980 m²の車両甲板にはM-1戦車24両等重車両が搭載可能、作戦輸送は想定していませんが30名の乗員で運用可能です、LST方式ですので液状化した港湾施設を回避し海岸線に直接揚陸が出来ますし、有事の際の業務輸送として輸送艦へのハブ輸送に充てつつ、災害時には民生支援として輸送支援に充てる、陸上輸送が停滞した場合の海上輸送の重要性を突き付けられますと、どうしてもこう考えてしまいます。

北大路機関:はるな くらま
(本記事に掲載された災害情報は暫定的に収集した情報であり、最新情報は順次追記される)
(本記事引用時は記事は災害時の情報であることを留意し、掲載時の事実にのみ基づく速報情報であることを特に注意されたい)
(情報は適宜第二北大路機関により更新する)
第二北大路機関:http://harunakurama.blog10.fc2.com/
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